外史テイルズオブエクシリア 闇の魂を持つ者の旅路の記録 第12話
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第12話  闘技場に潜む影

 

 

 

 

 

一同はシャン・ドゥへと着いた。

 

「ここがシャン・ドゥ?」

「はい。ア・ジュールは古くから部族間の戦乱が絶えなかったため、このような場所に街をつくったそうです」

「人間が生き生きしているな。祭りでもあるのか」

 

レイアが先を歩いていると人の形をした石像があった。

 

「見て、こっちもおもしろい像だよー」

「あら、ホントね」

「偉大な先祖への崇拝と、精霊信仰が同一になったといわれる像だ」

「へ〜」

「その調子、その調子」

「ん?」

 

アルヴィンがよくわからないことを言ったので、レイアは疑問に思った。

 

「こっち見ないで、ほら見上げとけよ。たまに崖から落石があるぞ」

「え! 脅かさないでよっ」

「詳しそうな口ぶりだな」

「前に仕事で、だよ」

 

エリーゼが何かを気にするように周りを見る。

 

「どうしたの、エリー?」

「あれ、ぼく、ここ知ってるよー。ねえ、エリー?」

「うん……。え、えと……ハ・ミルに連れてかれる前に来たんだと思います……」

「それ本当なの? エリー?」

「以前、この辺りにいたのですか?」

「わ、わかりません……」

「あ、ごめんなさい」

 

謝るドロッセル。

 

「え、ちょっとアルヴィン君、どこいくの?」

「ちょっと用事があってな。んじゃ、そゆことで」

 

その場を後にするアルヴィン。

 

「もー! 協調性ないなぁ」

「どう……しよっか?」

「放っておいても、あいつなら帰って来るだろ」

「とにかくワイバーンを見つけよう」

 

皆が石像の前を歩く。すると突然、皆の上の岩が崩れる。

 

「な、崩れるぞっ!」

 

岩が落ちてくる。

 

「お嬢様!」

「エリーゼ!」

「レイア!」

 

ローエンがドロッセル、ミラがエリーゼ、ジュードがレイアを庇う。

 

「おおおわったぁ!」

 

秋山がジャンプして、拳のみで巨大な岩を完全に砕いた。

 

「思ったより脆い岩だな」

「お嬢様、お怪我は?」

「大丈夫よ、ローエン」

「エリーゼは」

「大丈夫……です」

「怖ー! ちょー、こわー!」

「レイア! しっかりして! 今、治療するから!」

 

ジュードは治癒術をレイアにかける。

 

「あ、ジュードも怪我してる。ごめんね……」

「僕のことはいいよ!」

 

そこに……。

 

「医者よ! 手伝うわ」

 

医者と名乗った女性がやって来て、治癒術をレイアに施す。

 

「ゆっくり立って……」

「ありがとう。えっと……」

「イスラよ。気にしないで」

 

女性はイスラと名乗った。

 

「無茶するな、レイア」

「まだ座ってた方がいいよ」

「…………」

 

ミラはあたりを見てみると少し近くにわずかにだが挙動不審な男が一人いたがすぐに去ってしまった。

 

「あれは……」

「イスラさん。本当にありがとうございました」

「イスラさんって、いい人ね」

「いいのよ。気にしないで」

「ところであなたたち、ここの人間じゃなさそうだけど、街には何をしに?」

「ワイバーンを求めて来た。この街なら手にはいるかと思ってな」

「ワイバーン……それなら、川の向こうに檻があって、おっきなのがいるわよ」

 

イスラはワイバーンがいるとされる場所を指差す。

 

「行ってみてはどう?」

「本当ですか! ありがとうございます。イスラさん」

「ふふ。お役にたてたようね。それじゃ、私はこれで失礼するわね」

「ありがとうございました」

「…………」

 

秋山は世界の記憶で知っていたが、改めて思った。

 

(あの女、心の闇がちっと濃いな……)

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秋山達はワイバーンがいるとされる檻へと向かった。

するとそこには確かにワイバーンがいた。

 

「ヘヘヘイ。ヘヘヘイ」

 

ティポが挑発するとワイバーンが吼えた。

 

「ぎゃ!」

 

ティポは驚いて、後ろにいたジュードの頭を噛みつく。

 

「…………!」

 

ジュードは何とかティポを抜いた。

 

「君たち、何をするつもりだ? そのワイバーンは我が部族のものだぞ」

「このワイバーンを手に入れたい。どうやって檻を破壊しようか考えている」

「…………」

 

秋山は無言でミラの頭を叩いた。

 

「何をする!」

「堂々と言うな! それに俺達は強盗目的じゃねえだろ!」

 

秋山が珍しくツッコム。

 

(イカロスにやってる智樹の気持ちが分かってきた)

「あの……ワイバーンを貸してもらうことってできませんか?」

「いきなり何を言い出すんだ」

「こんなことしてる場合じゃない。早く代表者を見つけないと」

「…………」

 

ミラがワイバーンを見ているとワイバーンは大人しくなる。

 

「見たか? 獣隷術(じゅうれいじゅつ)も使わずに、ワイバーンを服従させたぞ。

この人たちなら、ひょっとして……」

「え……まさかこの人たちを? 本気なの!?」

 

その部族の人達は何やら深刻そうな顔で考えていた。

 

「私はキタル族のユルゲンス。街が賑わっているのには気付いたか?

実は十年に一度、部族間で行われる闘技大会が明日開催される。

だが、我がキタル族は唯一の武闘派である族長が王に仕えているため参加できないのだ。

伝統ある我が部族が、このままでは戦わずして負けてしまう……。

君には何か特別な力を感じる。どうだ、我々の一員として大会に参加してみないか?」

「はいはい! 参加します!」

 

レイアが元気よく手を上げて立候補する。

 

「レイア……」

「あはは……」

「参加すれば、この者たちを貸してもらえるのか?」

「そのつもりだ。ただし、優勝が条件だ」

「お安い御用だ」

「それと、事前に君達の力を見せてもらう」

「ミラ、いいよね!」

「うむ、ワイバーンを手に入れるためだ」

「やった! 闘技大会なんて燃えるなー!」

 

レイアは喜ぶ。

 

「部族の大会に、僕たちが出ちゃって大丈夫なんですか?」

「問題ない。優秀な戦士を連れてくることは、部族の地位を高める行為として過去にもあったことだ」

「ははっ。またずいぶんテキトーだねえ。少し目離しただけで、面白そーなのに首つっ込んじゃって。俺はまぜてくれないのかぁ?」

 

そこにアルヴィンもやって来た。

 

「アルヴィン君、どこいってたんだよー。こっちは恐怖体験したんだぞー!」

「わりーわりー。けど、なんかあったと思ってすぐに駆けつけたわけだし、勘弁してくれよ、な?」

 

アルヴィンが許してほしいと手のポーズを取る。

 

「仲間か?」

「そうだぜ。これで全員集合」

「では、力を見せてもらう。空中闘技場へ来てくれ」

「わかりました」

 

ジュード達はユルゲンスに言われて、空中闘技場へと向かった。

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「来たようだな」

 

ユルゲンス達は既に闘技場へと来ていた。

 

「さっそくだが、君たちには我が部族の魔物と戦ってもらう。

あくまで試合だが、不慮の事故が起きないとは限らない。そのつもりでいてくれ」

「わかった」

 

一同は闘技場内へと案内される。

 

「うわー。立派な舞台だね」

「あんまりはしゃがないでよ」

「男の子なんだから、もっとこう燃えてきたぜー! みたいのないの?」

「ないよ。そんなの。それよりケガは大丈夫?」

「え……うん。もう平気だよ! こんな状況になったら、治らざるをえないでしょ」

「そろそろ始めようと思うが、いいか?」

「ああ、始めてくれ」

「それじゃ、私たちは客席で見させてもらうよ」

 

ユルゲンス達が去ると、檻から魔物が出され、闘技場内に入って来る。

 

「さっさと始めようか」

 

皆が武器を取ったりして、構える。

 

「いくぞ!」

 

皆が戦闘を始める。

これと言った苦戦はなかった。

 

「いざとなったら出て行こうと思っていたが、必要なかったか」

 

ユルゲンス達が客席から降りてくる。

 

「あったり前だよー! えっへん!」

「すまなかった。君を見くびっていたようだ」

「ぼくだけー!?」

「ははは。誰が見たってそうだよな」

「むー……わたしの友達、バカにしないでください」

「ごめんごめん」

「だが、それだけ厳しい戦いなんだ。

かつては部族間の優劣を決めるために、相手を殺すまで戦っていた大会だ」

「え〜っ」

「今は大丈夫。現ア・ジュール王がその制度を禁止にしたからね」

「ア・ジュール王いい人ー!」

「それじゃ、本戦は明日だ。宿を用意したから、ゆっくり休んでくれ」

 

ユルゲンスに言われて、皆、ひとまず宿に行き、休むことにし、翌日となる。

 

「よく休めたようだな。さっそく今日の予定だが、参加数の関係で本戦は今日一日ですべて行うことになりそうだ」

「今日だけですか。ずいぶんハードなんですね」

「何戦なるかは、今日発表の組み合わせ次第だ」

「鐘が鳴ったら、闘技場まで来てくれ。それが大会開始の合図だ。私たちは闘技場で待っているよ」

「さて、時間ができたみたいだけど、どーするよ?」

「私は広場を見てくる。少し気になるのでな」

「あ、わたしも行く! じっとしてても緊張するだけだし」

「ん〜、じゃ、俺も行くか」

「俺も……一緒に行くか」

「僕は……」

「ジュード君、観光しよーよー」

「わたしも……色々みたい……です」

「いいわねー、行きましょう、エリー」

「エリーゼは街に見覚えがあるんだったね」

「では、私はお嬢様とエリーゼさんと行きましょう。ジュードさんもどうですか?」

「うん、そうするよ」

「それじゃ、鐘が鳴ったら、闘技場へ直行ってことで」

 

そして、ミラとアルヴィンとレイアと秋山組、ジュートとエリーゼとドロッセルとローエン組に分かれた。

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ミラは広場に来ると落石現場を見る。

 

「コレ見に来たんじゃないのか?」

「気にしないでくれ」

「あ、イスラさん!」

 

そこにイスラがやって来る。

 

「ケガの具合はいいようね」

「はい、イスラさんのおかげです」

 

イスラはアルヴィンをじっと見ていた。

 

「アルヴィン君がどうかしました?」

「い、いえ……」

「かまわないよ、イスラ先生。先生には母親を診てもらってるんだ」

「お前の母親を? この街にいるのか?」

「ああ! だからアルヴィン君、街に詳しかったんだね」

「ちょっと具合悪くてな。父親も兄弟もいないから、俺がいない間を先生にお願いしているんだ」

「なるほどぉ」

「今日はやけに自分のことを話すじゃないか。珍しいな」

「気のせいだろ。ただ……治してやりたいだけだよ。そんで故郷につれてってやりたいんだ」

「お母さんの故郷って遠いの?」

「めちゃくちゃな」

 

アルヴィンは少し寂しそうに空を見た。

 

「そうか。手を貸せることがあれば言ってくれても構わないぞ?」

「ああ、あればな」

 

そこに闘技場に行っているはずのユルゲンスがやって来た。

 

「ユルゲンス? 今日は闘技場じゃなかったの?」

「こっちに少し用があったんだ。それより、君たち、イスラの知り合いだったのか?」

「うん! イスラさんとユルゲンスさんも知り合いだったんだ」

 

ユルゲンスとイスラは顔を合わせた。

 

「知り合いも何もイスラは私の婚約者だよ」

「婚約……?」

「わぁ、すてきですね!」

「ははっ、ありがとう。イスラ、この人たちが我が部族の代表になってくれた人たちだ」

「へえ、そう」

「おお、あれか。結婚というやつだな。お前たちも、ネズミのようにたくさん子どもをつくるのだぞ」

 

秋山がワイバーンの時のようにミラの頭を叩いた。

 

「だからそんなこと言うんじゃねえええええ!!」

 

秋山が大声でミラに怒鳴る。

そんな時、鐘が聞こえてくる。

 

「大会が始まる」

「ユルゲンス、ごめんなさい。私、今日は仕事なの」

「そうか。仕方ない。勝利を祈っててくれ」

 

そしてミラ達はユルゲンスと共に闘技場へと向かった。

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ミラ達は闘技場へとやって来た

 

「ユルゲンス、一緒だったのか」

「ミラさん達の連れは?」

「すでに来ているわ」

 

ミラ達はジュード達と合流する。

 

「ジュード、聞いて!

ユルゲンスさんってイスラさんの婚約者だったんだよ」

「そうだったんですか。ご結婚はいつなんですか?」

「はは、もうやめてくれよ。まだ先の話さ」

「それとね、イスラさんって、アルヴィン君のお母さんの先生なんだって。

偶然がこんなに重なることもあるんだね」

「アルヴィンのお母さんが?」

「心配は無用だよ、優等生」

「そちらはどうだった。エリーゼのことは何かわかったのか?」

「うん。お父さんとお母さんのことを少し思い出したみたいなんだけど…手がかりになるようなものは何も…」

「そうか」

「気長に行こうぜ」

「さて、そろそろ始まるぞ。お遊びもここまでだ」

「期待してるわよ」

「頑張ってくれよ!」

 

一同は受付を終え、闘技場に入る。

 

「続いて登場するのは、キタル族代表だ!」

 

司会の声が聞こえ、ジュードは観客達を見る。 

観客の数はかなりのものだった。

 

「こんなに大勢……」

「過度の緊張は、本来の能力を低下させるという。気楽にだ、ジュード」

「う、うん……」

「ミラの言う通りだぜ。焦りとかも余計な緊張を生んで実力を半減させるって聞いたことあるしな。

まあ俺は焦ってはいても緊張はしないな。とにかく頑張ろうぜ」

 

ジュード達は闘技場内に入る。

 

「登録選手の中で魔物を操らない選手は彼らだけです。その実力はまったくの未知数。いかほどのものなのか」

「え、魔物?」

「おっと、ここで相手選手の登場だ」

 

相手チームは魔物を引き連れてやって来る。

 

「よし、やってやる!」

 

戦闘が始まる。

 

「氷結ライダーキック!!」

 

秋山のライダーキックとローエンのフリーズランサーが合わさり、秋山のライダーキックに氷の力が加わり、当たった魔物だけでなくその周りにいた魔物もその氷の衝撃で凍らされた。

 

「「ダークネス波動拳!!」」

 

秋山の波動拳とエリーゼのネガティブゲイトが合わさり、ティポの口から赤と黒の混じった波動が放たれる。

 

「「爆裂連牙!!」」

 

秋山の爆烈拳とアルヴィンの爪竜連牙斬が合わさり、秋山の拳に剣と銃の攻撃が混じった。

 

「「ダブルフレア!!」

 

秋山の炎弾(カオス版)とミラのファイアボールが合わさり、魔物を大きな炎の弾で挟み撃ちにする。

 

「「回転剣舞!!」」

 

秋山のクリュサオルとレイアの大輪月華が合わさり、クリュサオルがブーメランのように飛んでいく。

 

「「蹴剣撃!!」」

 

秋山のライダーキックとドロッセルの突剣撃が合わさり、秋山の飛び回し蹴りとドロッセルのトンファーの間に魔物を挟む。

 

「「昇竜烈破!!」

 

秋山の昇竜拳とジュードの烈破掌が合わさり、秋山の昇竜拳は勢い余って何度も放たれるだけでなく、炎を纏っていた。(共鳴術技(リンクアーツ)でなくても本当は使えたのだが……)

 

「ふぅ……」

 

皆の力で決勝前の戦いは秋山達の圧勝で終わった。

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「やったー! わたしたち勝ったんだね!」

 

喜んで階段を下りてくる一同。

 

「なんとかって感じだったけどね」

「なっさけないなぁ、優等生は。楽勝だったろ」

「いえいえ。なかなか、厳しいものでしたよ」

「アルヴィン君はウソツキー。ね、エリー」

「うん……ウソツキ……です」

「お前らまで……」

「でも、思ったより楽しかったですよね?」

「ああ。もう少し大技出してもよかったが、決勝戦までお預けってことで……」

「確実に力がついてきている……これなら……」

 

階段の下にはユルゲンス達が待っていた。

 

「やったな! 見事な戦いだったよ」

「決勝は、食事休憩をはさんでから始まるわ。他の参加者も一緒だから、落ち着かないかもしれないけど、食事にしておきましょ」

 

そして皆が食堂で食事をしようとした時であった。

 

「…………」

「どうしたの? 秋山君」

 

秋山の顔がおかしいのでレイアが声をかけてきた。

 

「手前ら! それ絶対食うなよ!」

 

秋山が突然、大声を出す。

 

「秋山君?」

「おい、あんた」

 

秋山が食事を運んできた女性の肩を掴む。

 

「何でしょうか?」

「なんで全員の食事に毒が入ってるんだ?」

「!?」

「毒だって……!?」

 

ジュード達だけでなく、その場にいた人達がざわめきだす。

 

「何のことでしょうか?」

「俺は鼻がよすぎてな……。犬くらいだって自負できるぜ。そんであんたには食事に盛られた毒と同じ匂いが濃くする。

運んだだけなら、ここまで匂わない。

つまり毒を入れた犯人はあんただってことだ。そんでこれが証拠」

 

秋山がアルヴィンが飲もうとしたスープを取る。

そして壁に叩きつけると壁にわずかにだが毒の反応が出た。

 

「説明してもらおうか?」

「…………」

 

女性は懐からナイフを取り出し、秋山を刺そうとする。

しかし秋山はそれにすぐに気づいて、回避。

女性の体を指差す。

 

「秘孔を突いたから、手前は口を割るしかないぞ」

「なんだと……、それはあの女が……」

 

女性が口を割ろうとした時であった。

女性は持っていたナイフで自分の喉を刺した。

 

「むっ!?」

 

女性は血を流し、死んだ。

 

「大した奴だ」

「……」

 

アルヴィンはその場を走っていなくなってしまった。

 

「アルヴィン!」

「放っておけ。とりあえず運営に報告だ!」

 

その場にいた人達はとりあえずその場から離れて行った。

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秋山達は宿へと戻っていた。

 

「恐らくこの事件の首謀者はアルクノア」

「私の命を狙い続けている組織だ」

「え……それじゃさっきの毒は……」

「巻き込まれた者には済まないが、狙われたのは十中八九、私だろう」

「まさか……無関係な人をこれほど巻き込んで……一体それは……」

「うむ……もとより何でもありの連中だったが……今回は特にひどい」

「どうして!? 何故狙われているの、ミラ?」

「私が、やつらの黒匣(ジン)を破壊し続けてきたからだ。やつらが二十年前、黒匣(ジン)と共に突如出現して以来な」

「二十年前……」

「黒匣(ジン)と共に出現って……それじゃ、クルスニクの槍にも……黒匣(ジン)を使ってるあれにもアルクノアが関係してるの?」

「確証はない。が、あれの出所はアルクノアだと考えている。

やつらは見た目では判断できない。常に街の人間に溶け込んでいる。

私もこれまで、黒匣(ジン)が使われる際の、精霊の死を感じることでしか対処ができなかった」

 

精霊の死と聞いてジュードは驚く。

 

「え、精霊の死って……? 黒匣(ジン)は精霊を殺すの?」

「術を発生させる度に精霊を死に追いやる。

人間は精霊の力を借りることで暮らし、精霊は人間の霊力野(ゲート)が生み出すマナで生きる。

黒匣(ジン)は一見、夢のようなものだ。だが、黒匣(ジン)は世界の循環を確実に崩す。黒匣(ジン)が存在する限り、人間も精霊も安心して暮らしてなどいけない」

「ふむ……私もまだまだですね……。そのような大事を全く知らなかったとは……」

「知らなくて当然だ。人間に知られぬよう私が1人で処理してきたのだから」

「そんな……」

「じゃあ今までずっとミラは……」

「世界の、僕たちのために……一人でずっと戦ってたんだ」

「だが……私が四大の力を失ったせいでお前たち人間を巻き込んでしまったことになる。すまない」

「謝る必要は俺にはないな」

 

そこにユルゲンスが入って来る。

 

「ユルゲンスさん、どんな様子だった?」

「みなひどく動揺している。

あと……決勝は明後日以降に持ち越しになった」

「中止じゃないんですか!?」

「大会執行部でもずいぶんもめたみたいだけど、十年に一度の大会だからと……アルヴィンさんは? まだ戻ってないのか?」

「ええ」

「そうか。では、彼にも伝えておいてくれ。詳細が決まったらまた来るよ」

 

ユルゲンスは部屋を出ていく。

 

「大会、辞退した方がよくない?」

「あ、あの……わたしもそう思います」

「ええ……」

「うむ……」

「命が惜しかったらな……」

 

正直な話、あの時秋山は毒入りを食べても体に何の影響もない。

それどころか、殺すことも封印することも出来ないために、秋山が大会を辞退する理由がどこにもなかった。

 

「もう、今日は休みませんか? 色々あってお疲れでしょう」

「うん。そうだね」

 

皆が休むことにしたが、その日の夜。

 

「話とはなんだ? 秋山」

 

秋山はミラを一人だけ呼び出した。

 

「ミラ。率直に言う。アルヴィンはアルクノア関係者だ」

「何!?」

 

ミラが秋山の胸ぐらをつかむ。

 

「それは本当か?」

「本当だ。俺達がル・ロンドを出る前の日の夜にジュードの親父さんと話してたぜ。アルクノアと関係ないとか、イバルが『カギ』を持ってるとかでな……」

「ではイバルに手紙を送ったのは……」

「アルヴィンの仕業だろうな」

「そうか……」

 

ミラは冷静になって秋山の胸ぐらを離す。

 

「で、どうする?」

「決まっている。明日、直接アルヴィンに聞く」

「そうだと思った。俺も手伝ってやるぜ」

 

そしてミラと秋山は部屋に戻り、翌日となり、アルヴィンを探しに出かけた。

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「っと、驚かすなよ」

 

割と早くにアルヴィンを見つけ出した。

 

「ここがお前の家というわけか」

「親の、だな。勝手に抜け出して悪かったよ。もう宿にもどるからさ」

 

アルヴィンが歩き出そうとして、ミラがアルヴィンの胸ぐらをつかんで、壁に叩きつける。

 

「ってぇなー。何すんだよ」

「アルクノアのこと、どこまで知っている?」

「アルクノア……?なんだよ、食い物か?」

「俺たちがル・ロンドを出る前の夜、ジュードの親父さんと話してただろ」

「たぬき寝入りしてやがったのかよ。キタネーなぁ」

「いや、音が聞こえたから目を覚ましたんだよ」

「答えろ。お前もアルクノアか」

「カンベンしてくれよ。俺だってアルクノアの連中に仕事を強要されてこまってるんだ。抜けたいが、そうもいかないんだよ」

 

ミラはその理由を考えてみた。

 

「……まさか母親を?」

 

ミラは手を離す。

アルヴィンは服を整え直す。

 

「信じてもらえるのか?」

 

ミラが後ろを向く。

 

「お前はウソツキだったな」

「そうそう。だから、何を聞いても無駄だぜ。俺ってそういう人間なのよ」

「……」

 

ミラは歩き出す。

 

「どこ行くんだよ?」

「アルクノアの連中を捜す」

「俺も行くよ。仲間だろ?」

「勝手にしろ」

 

アルヴィンもミラについて行く。

 

「さてと……、俺も行くとするか。

次は……イカロスの力でも使わせてもらうか」

 

秋山も二人について行く。

三人が橋の所まで歩くとジュード達と合流した。

 

「どこ行ってたの。心配したんだよ。秋山も……」

「あ、ああ。すまなかった」

「悪い悪い」

「アルヴィンも。これからは行先をいってよね」

「そんなに怒るなよ。それより、エリーゼがなんか言いたそうにしてるぜ」

「?」

 

皆がエリーゼを見る。

 

「あのね……イスラさんが……わたしのこと、何か知ってるのかも……」

「イスラが……?」

「うん。エリーゼをまじまじと見たあと……顔色変わってたから」

「でも、逃げるみたいにして、どっか行っちゃったんだー」

「そうか」

「イスラさんにあったら、もう少し詳しく聞こうね」

「……はい」

 

そんな時、鐘が鳴る。

 

「あんたたち、闘技場へ急いだ方がいいんじゃないの?」

「鐘が鳴ったら、大会が始まるのよー」

「え、大会始まっちゃうのー?」

「もしかして早くいかないと失格になっちゃたり?」

 

レイアがそのことを言いだしたので不思議に思ったミラ。

 

「いいのか? 大会の辞退を考えていたのだろう?」

「迷いながらでもやってみるのが人間、そう言ってくださったではないですか」

「うむ。そうだった。助かるよ、みんな」

「…………」

 

ジュードはふと疑問に思ったことがあり、そこにいる親子に尋ねた。

 

「あの、どうして僕たちが参加者だってわかったんですか?」

「…………?」

「この時期に、よその街の人が集まっていたらそれは参加者か観客に間違いないよ」

「そんなのここじゃジョーシキよ」

 

親子は去っていく。

親子から聞いた言葉を考える。

 

「ジュード……?」

「ごめん。何か頭の中でひっかかっただけで……」

「ま、とりあえず闘技場に急ごうぜ」

 

一同は闘技場へと向かった。

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一同が闘技場に行くと、ユルゲンス達がいた。

 

「ユルゲンス、さっきの鐘は何だ?」

「ああ、来てくれて助かった! 執行部が急遽決勝戦を行うと言い始めたんだ」

「それに突然、前王時代のルールに戻すなんてことも言い出している」

「前王時代のルールって……まさか!?」

「前に話しただろ。相手が死ぬまで戦うあれだ。言ってなかったかもしれないが、その上、この戦いは1対1で行われるんだ」

「どうする、ミラ」

「うむ……ワイバーンは必要だ。辞めるつもりはない。が、解せんな」

「何故前王時代のルールで行うことに……」

「やめておけよ」

 

アルヴィンが大会に出ることを辞めるように言う。

 

「こいつは、おたくの命を狙った、アルクノアの作戦だぜ」

「アルクノアの!?」

「あっれー? なんでアルヴィン君が知ってるのー?」

「いいのか?」

「さっきの礼だよ」

 

アルヴィンは少し照れ臭そうなしぐさをして、後ろを振り向きながら頭をかく。

 

「何の話?」

「アルヴィンは……アルクノアと関係している」

「え!? ウソ……でしょ?」

「んー、すまん。仕事頼まれたりしてたんだわ」

「まさか、今回の事件も……」

「ジュード。それはない。

アルヴィンもあの時、料理を口にするところだった。

俺があの時大声出さなかったら、アルヴィンはあの世行きだぜ。

まあ、アルヴィンがその毒に対する耐性か抗体を持っていたんなら話は別だけどな」

「意外に厳しいね、おたく。それに、仕事つっても、小間使いにされただけだしな」

 

「なら、アルクノアの仕事はもうしないって約束してくれる?」

「わかった。誓うよ」

「よかった……」

「…………」

「アルクノアの作戦はわかるのですか?」

「あ、ああ……俺が聞いた限りじゃ…… やつら、決勝のルール変えて、ミラを殺す気だ。

勝ったとしても、疲労困ぱいになったおたくを客席から狙い撃つ二段構えだとよ」

「なんて奴らだ。大会をなんだと思っている!」

 

ユルゲンスは怒る。

 

「ふ、何とも穴だらけの作戦だな。私が代表で出なければ簡単にくじける」

「そっか、そうだよね」

「だが……このくだらん罠にはまってやる。やつらを引きずりだしてやろう」

「おいっ! 正気かよ? なんで……」

「危険すぎます、命をかけるなど、今回ばかりは賛成しかねます」

「そうだよ。やめた方がいいって、ミラ!」

「ミラ! 危ないわよ!」

「ミラ君が死んじゃうー!」

「ジュードはそう思ってないようだぞ」

「俺もな……」

「ミラを客席から狙うアルクノアを、僕たちに止めて欲しい……そういうことでしょ?」

「うむ」

「ちょっと、ジュード?」

「普通ならいつ出てくるかわからないけど、今ならおびき出せる……理にはかなってるよね」

「今ここで手を打っておかないと、次の手を考える時間を与えてしまう。そうすれば、もっと被害が大きくなる可能性も否定できない」

「本当に出場する気なのか?」

 

話を聞いていたユルゲンスは本気かと尋ねた。

 

「お前の部族の誇りを託されたことも忘れてはいないからな」

「あなたって人は……」

「はぁ……なんとか成功させるしかないのですね?」

「なんとかじゃなくて絶対だな」

 

秋山が準備運動をする。

 

「さあ、行こう」

「ああ。人の命を顧みない奴らはこの俺が血祭りにあげてやる」

 

そしてミラは決勝戦に、ジュードや秋山達は観客席に潜むアルクノアに挑むのだった。

説明
この作品は別の人の影響で作った作品であり、作者(BLACK)のオリジナルキャラ「秋山総司郎」を第3主人公として、テイルズオブエクシリアの世界に来たらで書かれました。

秋山総司郎が今まで出てきた作品一覧(作品検索)。

http://www.tinami.com/search/list?keyword=%E7%A7%8B%E5%B1%B1%E7%B7%8F%E5%8F%B8%E9%83%8E&genrekey=1

秋山総司郎の時系列

この世界を訪れる前の話

「そらのおとしものf 番外編 『カオスのとある日常(いちにち)  里帰り編』」


http://www.tinami.com/view/225368


この世界を訪れた後の話


「そらのおとしもの  外伝  もしもイカロスの次に地上に来たのがカオスでその次に来たのがニンフだったら…。(アニメ仕様)」


http://www.tinami.com/view/257088


となっております。
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コメント
い、犬並みの嗅覚…これはある意味凄いよね。爆弾とかが仕掛けられてたら絶対に気づくってことでしょ?爆薬とかに。他には睡眠薬とかにも気づいて便利ですな。(レイフォン)
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テイルズオブエクシリア 秋山総司郎 オリ主 闇の魂を持つ者の旅路の記録 外史 第12話 

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