外史テイルズオブエクシリア 闇の魂を持つ者の旅路の記録 第13話
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第13話  影と闇

 

 

 

 

 

ミラは闘技場内へと入っていった。

 

「最初に登場したのは、キタル族代表だ! 昨日、不幸な事故はありましたが、大会執行部の努力により、本日の決勝戦が実現しました!」

 

ミラと対峙するように対戦相手がやって来るが、対戦相手は妙にでかい武器を持っているうえに見た目から怪しかった。

 

「その上で、今年の決勝戦は公平に行うため、過去の慣例にならい、前王時代のルールとなります」

「どんな理屈だよ……」

 

思わずそんなことを言うアルヴィン。

エリーゼも観客席を見てみると、そこにはイスラがいた。

 

「…………」

 

イスラは逃げる。

 

「あ、待って……」

 

エリーゼはイスラを追う。

その間に闘技場内では……。

 

「…………!」

 

ミラの対戦相手の持っていた武器は雷を帯、雷を放つ。

ミラはそれを紙一重で避けるが、険しい顔をする。

 

「……今、詠唱しなかった!」

「あれほどの力……まさかっ」

「黒匣(ジン)……!?」

「微精霊たちの悲鳴が……。また間に合わなかった……」

「何、や、やめて! 返して!」

 

突然エリーゼの悲鳴が聞こえてくる。

 

「やめろー、はなせー!」

「じゃますんな! コラ!」

 

エリーゼは突き飛ばされ、アルクノアメンバー数名が立ち去ろうとした時であった。

突然メンバーの目の前に小型ミサイル飛んできて、ミサイルがアルクノアメンバーに直撃し、黒焦げとなった。

 

「エリー!」

 

ティポが倒れたエリーゼのもとに駆け寄る。

 

「エリーゼっ!!」

「エリー!」

 

近くにいたドロッセルがエリーゼのところに駆け寄る。

 

「大丈夫? エリー?」

「何とか……」

「でも今のはなんだったんだろー」

 

先ほどのミサイルの正体、それはエリーゼとは反対方向にいた秋山の放った小型誘導ミサイル『アルテミス』であった。

 

「イカロス、安心しな。あいつらは殺してないからな。

俺も人殺しは趣味じゃねえからな」

 

秋山が闘技場内を見ると最初に入って来たアルクノアメンバーと同じような格好と武器を持った二人が同じようにミラを襲っていた。

 

「…………Artemis(アルテミス)」

 

アルテミスのミサイルが闘技場内のアルクノアメンバーを襲った。

 

「1体1を破ったのはおたくらだぜ」

 

秋山が闘技場内へと降りて来る。

ミラはアルクノアメンバーが持っていた黒匣(ジン)を破壊した。

 

「さてと、こいつらには聞きたいことがいくつかある」

 

秋山が闘技場内に倒れているアルクノアメンバー全員に秘孔を突く。

 

「今度は死なれないように手足の自由も奪っておいた」

「そうか……、アルヴィンにもいろいろ聞かないとな」

 

大会は波乱に終わった。

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大会を終えて、秋山達は宿屋にアルクノアメンバーを連れて自白させていた。

 

「さてと、お前達、本拠地はどこだ?」

「「「知らない…」」」

 

全員が口を揃えて答えた。

 

「貴様ら……!」

「ミラ、落ち着け。俺が突いた秘孔は完全に自白を強要させるものだが、知らないことまでは自白させられん。

つまりこいつらは本当に知らないってことだ」

「…………」

「じゃあ質問を変える。この近くにお前達の拠点はあるか?」

「ある」

「どこだ?」

「王の狩場を行った先のリーベリー岩孔」

「そんでティポを狙った理由は?」

「知らない」

「…………」

「とりあえずこんなもんでいいだろ。こいつら適当な道に捨てておくか。記憶の方は完全消去しておいてな……」

「いいんですか?」

「俺は人殺しは趣味じゃない。まあ、その後に魔物に食われたりするかはこいつらの運次第だ。そこまで面倒を見る気はない」

「…………アルヴィン、本当に知らなかったのだな?」

「俺は知らなかった! やつらの狙いはお前じゃなくて、初めからティポだったことを! 客席から狙ってるやつなんてのも、いなかったんだな……」

「アルヴィンさんも騙されていたってことに……」

「そうなるな。アルヴィン、信用されてないな」

「……………」

「まあいい。とにかくそのリーベリー岩孔に向かおう。まだやつらの手掛かりがあるかもしれない」

「ああ」

 

一同はリーベリー岩孔を目指した。

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そして一同は王の狩場を通り抜け、リーベリー岩孔に着いた。

(その道中でアルクノアメンバーを捨ててきたのは言うまでもない)

 

「これまでの場所とは、ちょっと違う雰囲気だね」

「だが隠れ家にしてはちょうどいい雰囲気だ」

「あれ……」

「どうしたの? エリー」

 

エリーゼがシャン・ドゥに着いた時と同じような反応をしたのでドロッセルが尋ねる。

 

「ここ……見たことあります」

「うん、ぼくもあるよー」

「それ本当?」

「エリーゼはここに一度来たことがあるってこと?」

「……わかりません…………」

「けど、可能性はあるな」

「見てください。足跡があります。それもまだ新しい……」

 

ローエンが人の足跡を発見する。

 

「まだアルクノアがいるかもしれないね」

「探してみよう。ただし、慎重にな」

「ああ」

 

一同はリーベリー岩孔を隅々まで探してみる。

しかしアルクノアは見つからず、特にこれと言った手がかりはつかめなかった。

 

「エリー、何か思い出せた?」

「ううん……」

「こちらもダメか……」

「もぬけの殻か」

「仕方ねえさ。一度シャン・ドゥに戻ろう」

 

皆がリーベリー岩孔を去ろうといくつかの扉を開け、橋を渡ろうとした時であった。

上からなんとジャオが降りてきたのだ。

 

「すまなかったな。密猟者を追っていたのだ」

「ジャオ……!」

「ん、お前さんたちがどうして!?」

 

ジャオはとても驚いた様子でエリーゼを見た。

 

「娘っ子。とうとうこの場所に来てしまったのじゃな。覚えておるのだろう?」

 

エリーゼは思わずうつむいてしまう。

 

「エリーゼ、どういうこと……?」

「ここはお嬢ちゃんの育った研究所だったんだよ」

 

アルヴィンが代わりに答えた。

 

「以前、侵入者を許してしまっての。その時、この場所は放棄されたのだ」

「侵入者はお前だったのだろう?」

 

ミラがアルヴィンを見て言った。

 

「いい勘してんな……ああ、そうだよ。増霊極(ブースター)についての調査だったんだ」

「なんと……お前さんじゃったのか」

「増霊極(ブースター)って何なの?」

「ア・ジュールが開発した、霊力野(ゲート)から分泌されるマナを増大させる装置だよ。そいつだよ。ティポがそうだ。第三世代型らしいがな

「なっ!?」

「ティポ……そうだったんですか?」

「ぼく、わからなーい」

「ティポはエリーゼの心に反応し、持ち主の考えを言葉にするのじゃ」

「それじゃ、ティポはエリーゼの考えを喋ってたの?」

「ウソです! ティポはティポが喋っていたんです!」

「俺もそう思う」

 

秋山がエリーゼに賛同する。

 

「まあ全部が嘘だって否定するつもりはないけどな……。

確かに最初のうちはエリーゼの言葉の代弁だったろうけど、どんなものでも魂がある。

時間が経てば自我を持ち、自分の考えを喋ったりすることだってある。

だから今のティポはエリーゼの代弁するぬいぐるみじゃない。

ティポという確固たる存在の一つだ」

「……そうかもしれんのう」

 

ジャオも秋山の言葉を聞いて、少しは納得した。

 

「よくそんなこと言えるな、お前」

 

アルヴィンが皮肉そうに言う。

 

「実際そういうのに立ち会ったこともあるからな。そう考えたくなるのさ」

「ねえ、おっきなおじさんー! 教えてほしいんだー! エリーのお父さんとお母さんはどこにいるのー?」

「それはの……」

 

ジャオは言おうかどうか迷ったが、答えることにした。

 

「それはの……もうこの世にはおらぬ」

「え…………」

「お前が四つの時、野盗に遭い、殺されたのじゃ……」

「そんな……」

 

ドロッセルが口を押えるようなそぶりをして驚く。

 

「……もう、会えないんですね。お父さんにもお母さんにも……」

「エリーゼ……」

「気を落とさないで……」

「ジュードやレイアにはちゃんといるじゃないですか! みんな……」

「そんな人たちにエリーの気持ちがわかるもんかー」

 

エリーゼとティポは走って去ってしまう。

 

「エリーゼ、待って!」

「エリー!」

 

レイアとドロッセルが二人の後を追う。

そんな時、鉄砲の銃撃音が聞こえてくる。

 

「くっ、密猟者どもめ!」

 

ジャオはすぐに現場に駆けつけようとするが……。

 

「待て! なぜエリーゼは研究所にいた?」

「うむ……連れてこられた。売られたようなものだ。娘っ子のような孤児を見つけては研究所に連れて来ていた女に……名は……」

 

ジュードはなんとなく引っかかったことがあるので、その女と思われる名前を口にする。

 

「まさか……イスラ……?」

「おお。確かそんな名であった」

「密猟者みたいなもんだな」

「……わしが言えた義理ではないが、頼む。あの娘っ子を、これ以上一人にせんでやってくれ」

 

ジャオはそう言って、飛び降りて行った。

 

「とにかくエリーゼたちを追おう」

 

エリーゼたちは出口付近にいた。

 

「エリーゼはどうだ?」

「うん」

「…………」

 

エリーゼとティポは口を利かない。

 

「まだ元気はないけど……、エリー……」

「それより、ここは物騒だし、早く街に戻ろ」

「そうだな、問い詰めなきゃいけない奴がまた一人出来たしな」

「どうしたの? 秋山君」

「ちょっとね……」

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一同はシャン・ドゥへと戻った。

 

「ジュード、何か気がかりなのか?」

「え?」

「ジャオの話しを聞いてから様子が変だぞ?」

「……うん」

 

そこにイスラが走ってやって来た。

 

「犯人を追って王の狩り場へ行ったと聞いて、心配していたのよ」

「色々あったけど、とりあえずは無事、かな」

「偶然とはいえ、あなたたちを巻き込んでしまって、ごめんなさい」

「イスラさん……それウソですよね?」

「すべて嘘です!」

 

ジュードの言葉を強調するかのように秋山が強く言った。

 

「な、何? 私が心配したら変かしら」

 

イスラは明らかに挙動がおかしくなる。

 

「ジュード、どうしちゃったの?」

「イスラさんが僕たちと知り合ったのは、偶然じゃないんだよ。決勝を知らせる鐘が鳴った時、この街の人に言われたでしょ。

この時期に、よその人間が集まっていたら、それは闘技大会の参加者か観客しかいないって」

「あ…………」

 

イスラは明らかに反応した。

 

「そういうことか。私たちがイスラに助けられたあの時だな……」

「きっと言わないよね、あんなこと……僕たちに近づくよう言われたんでしょう、アルクノアに……」

「イスラさん……ウソだよね?」

 

レイアはとても信じられないという状態だった。

 

「あの人たち……ばれないから……平気だって言ったのに……」

「アルクノアの連中、この街の風習までは学んでなかったって事か。勉強不足だな。やるなら徹底的にやるだろ、普通……」

「でも、私だってあの人たちに……」

「脅されてたんだよね……弱みがあったから」

「昔の仕事ですか……」

「……ユルゲンスにバラされたいのかって……この子にはすまないと思っている。でも、あの時は私だって……!

お願い、彼には黙っていて!」

 

イスラは土下座する。

 

「ユルゲンスは知らないのか?」

「言えるわけないじゃない! ……ユルゲンスはとても純粋な人なのよ」

「なぜ話さないんだ? すでに過ぎたことだろう」

「あなたも女ならわかるでしょ。こんな醜い女(わたし)を彼が愛してくれるわけない。

あのことを知られたら……私は捨てられる。私は幸せになりたいだけなの。お願い……彼には言わないで……ください」

「おい、あんた……」

 

秋山がイスラの髪の毛を掴み、あげる。

 

「本当に謝る気があるのか?」

「え……?」

「本当に謝る気があるなら……」

 

秋山がイスラの髪を離し、イスラを突き飛ばす。

そして秋山は炎を出す。

 

(カオス、昔のお前だったらやってるかもな……)

 

秋山はもう片方の手で大切断をし、床をはがす。

そしてはがされた床に炎を入れて、炎に上にはがした床を置く。

 

「焼き土下座だ」

「え?」

「本当に謝る気があるなら、その誠意を俺たちに見せろ。

そんなただの平謝りで誠意が伝わると思うか?」

「秋山君、これやりすぎでしょ」

「焼き土下座を3秒だけでいいんだ。

焼き土下座したところで、やけどが少し残る可能性があるだけだ。

だがエリーゼの受けた心の傷はこんなもんじゃねえ。イスラ、お前の腕一本でも足りないレベルだぞ」

「…………」

「3秒と言ったのは俺の慈悲だ。受けるか? 受けないか?

受けないなら、俺がユルゲンスに言うぞ」

「!?」

「秋山! それじゃあ、アルクノアと同じだよ!」

 

ジュードが批判する。

 

「悪いのはこいつだ。それに俺は元からいい人じゃない。自分勝手な人だ。

自分勝手に人を助け、自分勝手に誰かについていく。

結局は自己満足で動いてるだけだ。

それと今のこいつを見てイライラした。

こいつはユルゲンスを信用していない。心の底からな。

俺はユルゲンスと初めて会ったのは一昨日だが、それだけで十分だった。

あいつはとてもいい人だ。心の闇が見当たらないくらいのすんごい、いい人だ。

俺が見てきた中でもあれだけいい人はそうはいない。

それなのにお前はその人の行為を無碍にしようとしている。

俺はそれが許せないから、こうしてるだけだ。

どうする? 焼き土下座するか?」

「…………」

 

イスラは何も答えない。

 

「…………もういい」

 

秋山が炎を消す。

 

「さっさと失せな。俺の怒りが消えてるうちにな……」

 

イスラはそう言われて去っていった。

 

「ふん」

「と、とにかく、ユルゲンスさん捜そっか。ワイバーンの話しなきゃね」

「そうだな」

 

とりあえずユルゲンスには会う必要があるので、ユルゲンスを探そうとするが……。

 

「ちょっと寄って行くか」

「どこへだ?」

「おっと、聞いてたのかよ。

ヤボ用だよ。シャン・ドゥには、知り合いが住んでるんだ」

「そういえばそう言ってたな」

「全員で押しかけるものなんだしな……、分かれるか」

 

アルヴィン、ジュード、ミラ、エリーゼ、秋山はアルヴィンの知り合いの家に、レイア、ローエン、ドロッセルはユルゲンスを探すことになり、アルヴィン達はその家へと向かった。

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アルヴィンの知り合い、それはアルヴィンの母親の家であった。

家には寝たっきりのアルヴィンの母がいた。

 

「この人は……?」

「ん、俺のお袋。ちょっと具合が悪くてな。父親も兄弟もいないから、俺がいない間、イスラに看てもらってるんだ」

「あら、あなたは……」

 

アルヴィンの母が目を覚ます。

 

「ど、どうも……」

 

ジュードは思わず返事をした。

 

「バランじゃない。また家を抜け出して遊びに来たのね。せっかくバランが来てくれたのに、アルフレドったら、どこへ行ったのかしら?」

「この人、何言ってるのー?」

 

ティポが尋ねる。

 

「察してやれ」

 

秋山が静かに小声で答える。

 

「レティシャさん、アルフレドは、幼年学校の寄宿舎じゃないですか」

「ああ、そうだったわね……。あの子、きっと泣いてるわ。気が弱くて寂しがり屋だから……」

「大丈夫。元気だって手紙が届いています」

「ええ、休暇には帰ってくるんですって。大きな船で旅をする約束をしたのよ」

「……アルフレドも楽しみにしてましたよ」

「ふふ……あの子、手紙でね、私が泣いていないか心配してるのよ」

 

アルヴィンは思わず顔を背けた。

 

「おかしいでしょう? でも、とっても優しい子なの……」

 

そしてレティシャは再び眠った。

 

「若い頃に故郷を離れて苦労したんだ。親父も死んじまってさ。親父と暮らした家に帰りたいって、そればっかり言ってた……」

「…………」

「こんなになっちまったけど、故郷を思い出さない分、幸せなのかもな」

「アルヴィン……」

 

エリーゼは悲しそうにアルヴィンの名前を言った。

 

「お前は今まで母親のために?」

「そ。ママのために汚れ仕事をこなしてきたんだ。美しい話だろ?」

「そんな言い方……」

「同情はいいって。実際、きれいごとじゃないんだ。たまんないよ、ほんと」

「とりあえずこれ以上いても困るかもしれんから、外に出るか」

 

アルヴィン達は外に出る。

すると外にはイスラがいた。

 

「あ、あの……」

「何か用か?」

 

秋山は左手に炎をだし、半ば脅迫状態になる。

 

「アル……」

「ありゃ、俺をご指名?」

 

秋山は炎を消す。

アルヴィンは呼ばれたので、イスラの元に行って、四人と少し離れたところで会話する。

 

「アル、あなたは知ってるわよね? 私も孤児だったって。

子どもが一人で生きていくには、あんな商売をするしかなったのよ」

「……ユルゲンスには黙ってろって?」

「とんでもないクズだな、あんた」

 

そこにいつの間にかいた秋山。

 

「あそこにいるあいつらに今ここでの会話を言う気はない。……が、人道に外れること、していいわけないだろ」

「…………それと……レティシャさんを看るのも終りにしたい。

アルクノアにも、もう私に関わらないように言って欲しいの」

「それは無理な相談だな。お袋を安定させる薬は、アルクノアの連中しかつくれない。それを処方できる闇医者も、お前だけだ」

「なるほど、お前たちがアルクノアに協力してた理由はそれか」

「もう裏稼業や嫌なのよっ!」

「……悪い。けど、口止め料としちゃ妥当だろ」

「ひどいわ! 私は、あの人と幸せになりたいだけなのにっ!」

「なれるさ。昔のこと知られなきゃな」

「いや、無理だな。

裏のことを隠して幸せになれる奴なんていない。さっさと白状しちまった方がどれだけ気が楽な事か……。

それをしたくないってことはあんたは幸せになりたくない、俺はそう捉えるぞ」

「う、うううっ……」

 

イスラは泣き出す。

 

「ただいま」

 

アルヴィンと秋山は戻って来る。

 

「……あの人……泣いてます」

「ああ、泣き虫なんだ」

「いいの?」

「気になるなら、慰めてやれよ。悲劇のヒロインさんを……さ」

「人間のクズの涙に興味はない」

 

そしてアルヴィン達はその場を立ち去っていった。

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合流した後も、ユルゲンスを捜すが……。

 

「ユルゲンスさんいないね」

 

ユルゲンスをどれだけ捜しても見つからない。

 

「エリーゼ大丈夫かな」

「ティポは多分問題ないだろうが、両親のことだな。

生きてると思ったら死んでましたは、どれだけ歳とっていようともきついもんだからな」

「増霊極(ブースター)について少し気に掛かることがあるのですが、秋山さん」

「なんだ?」

 

ローエンが秋山に尋ねる。

 

「ガンダラ要塞でナハティガルは何か実験をしていませんでしたか?」

「実験か……。俺はよくわからないが実験装置みたいなのは見かけたな。

ちらっとしか見えなかったが、マナ関係だとは思う」

「それはもしや増霊極(ブースター)を使用するためのものだったのではないでしょうか」

「増霊極(ブースター)がすでにラ・シュガルにも渡っているというのか?」

「そう考えるべきでしょうね」

「増霊極(ブースター)はエリーゼみたいな子でも魔物と戦えるようになるものだよ。大丈夫かな」

「両国の兵が増霊極(ブースター)をもって争えば、かつてないほどの惨事が待っている」

「ホントにそんな戦いが始まるの?」

「始まるだろうな。ナハティガルにはその戦いに踏み切れる理由があるしな」

「クルスニクの槍だね……」

「それを阻止しないといけませんね。私もお兄様のためにも……」

 

そこに……。

 

「おお、戻ったのか!」

 

ユルゲンスが来てくれた。

 

「イスラから戻ったことを聞いたんだ。無事でよかった!」

「は、はい……」

 

ジュードは元気なく答える。

 

「んなことより、約束のワイバーンの準備できてるの?」

 

ユルゲンスは頷いた。

 

「ただ、今は戦の雰囲気が高まっているとかで、王の許可なしには空を飛べないんだ。私はこれから主とカン・バルクへ行って、王の許可をもらってくるつもりだ」

「ねえ、ア・ジュール王に戦いが起きたら危ないってことを伝えた方がいいんじゃない?」

「王様、評判いいみたいだし、わたしたちと一緒に戦ってくれたりしないかな」

「おいおい、その戦いって戦争だぞ!?」

「私も直接会って研究所の真意を確かめたいと思っていた……」

 

アルヴィンはため息をつく代わりとばかりに頭をかく。

 

「ア・ジュール王に会いたい。すぐカン・バルクとやらに出発するぞ」

「あ、ああ。それじゃ、荷物をまとめてくるよ」

「ねえ、研究所の真意って?」

「エリーゼがいた研究所って、他にもたくさんの子どもが連れてこられてたらしいんだ」

「ジャオさんが言ってたの?」

 

ジュードは頷く。

 

「ア・ジュールお王が民を守る存在なら、私の望む答えをもちあわせているはずだ。

だが、別の答えをもつのであれば、金輪際やめると誓わせる。どんな手を使っても」

「うん、そうだね。ガツンと問いただしちゃおう!」

「あ、そうだ。そういえば宿屋に荷物置きっぱなしじゃない?」

「私たちが取ってきましょう」

 

レイア、ローエン、ドロッセルはエリーゼも連れて宿屋に向かった。

 

「そんじゃ、俺もちょっくら……」

 

アルヴィンもしばらく離れる。

 

「そろそろ私も……覚悟を決めなければいけないか」

「…………?」

「四大の力がなくても、今の私ならクルスニクの槍を破壊できるだろう」

「え? 四大精霊を解放する前に壊しちゃっても大丈夫なの?」

「まず四大精霊の命はないだろうな」

「ああ、……無事では済むまい。像をなさず霧散するだろう」

「でも大精霊は死なずの存在なんだし……」

「確かに時が経てば、再び大精霊は現出できるだろう。

だが、それは新たな意志をもった新たな四大だ」

「それって……ミラとずっといた四大精霊は消えちゃうってことだよね……」

「精霊は人格や記憶が重要なのではない。精霊は存在そのものこそが重要なんだ」

「…………」

「俺はそうは思わんな。確かに存在そのものが重要なのはあるだろうが、それが悪意の塊だったらどうするつもりだ?

存在が大事だから見過ごすっていうのか? 俺は……嫌だね」

「……そうなると私は、四大に恨まれるだろうな」

 

ミラは意外にも秋山の言葉に反論しなかった。

 

「ミラは……四大精霊も他の微精霊もみんな大事な存在なんだね」

「違うよ、ジュード。私には精霊も人間も関係ない。すべてが等しく愛おしい命だ」

「そうかい。だったら、なおさら今の四大も助けてやらなきゃならんな」

 

しばらくすると皆が準備を終えた。

 

「さて、カン・バルクへ出発だ」

 

一同はカン・バルクを目指すのだった。

説明
この作品は別の人の影響で作った作品であり、作者(BLACK)のオリジナルキャラ「秋山総司郎」を第3主人公として、テイルズオブエクシリアの世界に来たらで書かれました。

秋山総司郎が今まで出てきた作品一覧(作品検索)。

http://www.tinami.com/search/list?keyword=%E7%A7%8B%E5%B1%B1%E7%B7%8F%E5%8F%B8%E9%83%8E&genrekey=1

秋山総司郎の時系列

この世界を訪れる前の話

「そらのおとしものf 番外編 『カオスのとある日常(いちにち)  里帰り編』」


http://www.tinami.com/view/225368


この世界を訪れた後の話


「そらのおとしもの  外伝  もしもイカロスの次に地上に来たのがカオスでその次に来たのがニンフだったら…。(アニメ仕様)」


http://www.tinami.com/view/257088


となっております。
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コメント
イスラは哀れ・卑怯・ゲスなどがとても似合う人物ですよ。自分のことを愛しているユルゲンスのことを信じ切っていないのがそれが証拠。本当に愛しているのであれば包み隠さず己のことを言うべきだったな(レイフォン)
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