SAO 奇跡を掴む剛腕 『SAO record 05』
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結果から行ってしまうと、クラディールとのデュエルはキリトの勝ちだ。詳しくだが、簡単に説明するならば、キリトがクラディールの剣を折って((降参|リザイン))させただけ。いとも簡単に行ったそれは、武器破壊だった。

 

通常、武器破壊はその武器の耐久値が0になるか、((技|ソードスキル))の出始めか終わりの時に運よく構造が弱い部分に当って折れるかのどちらか。

基本的にそれ以外で武器が破壊されると言うことはないのだがキリトはそれを行い、HPを一ドットも削ることなくデュエルを終わらせた。

 

その直後、アスナとテラスの両名から護衛を解任させられ、さらには別命あるまでギルドで待機とまで言われたのだ。信じられないと言った表情でクラディールは転移結晶を取り出し、一人でおとなしくギルド本部に戻ったのだが、その最後の瞬間まで憎悪の視線を向けていたのは言うまでもないだろう。

 

結局、そのデュエルが終わると三人は早速冒険へと向かい、今に至る。

 

迷宮区へ続く森の小路で、『索敵』のスキルを完全習得しているキリトは、その索敵範囲ギリギリにプレイヤーを捉えた。テラスも『索敵』のスキルをもってはいるが、残念ながら完全習得まで至っていないため、反応することはできなかったのだろう。

 

キリトはメインメニューからマップを呼び出すと、アスナとテラスにも見えるよう可視モードを選択する。そこに映し出された緑色の光点の数は一二。パーティーメンバーとしては、十分すぎるほど多い数だ。普通なら、パーティーは連携がとりやすいよう五〜六人で組むもの。これを見たアスナは、小さく「多い」とつぶやいた。

 

「それに、この並び方」

 

「一応確認のため、隠れてやり過ごそう」

 

「そうね」

 

先ほどの一二個の光点は二列縦隊で行進していた。この並び方は、危険なダンジョンならば良くとるものだが、ここの様なたいして危険なモンスターがいるわけではない場所ではあまりやる必要のないものだ。集団を構成しているにしても、いささか警戒しすぎなのではないか。テラスはそう思いつつも、茂みに身を隠す。しかし、テラスはそこで気付いた。

 

「ぁ・・・」

 

「テラス君?」

 

「副団長・・・僕ら、この茂みじゃぁむしろ目立ってます」

 

「っ!?」

 

そう、格好だ。血盟騎士団の団服を着るテラスとアスナの姿は、白と赤の明るい色。影があると言えど、密集した灌木の中では十分目立つ。テラスの言葉に気付いたアスナは、静かだがどうしようと慌てだす。こんな時に着替えを持っていたら、なんて考えるが今更だ。

 

「少し失礼」

 

「っ? あ、ありがとう・・・」

 

その言葉と一緒に、キリトはいつの間にかストレージから取り出した黒いコート(のスペア?)を、アスナの頭からかぶせる。テラスから見ると、そのコートがあまりボロボロではないことから今着ているものがダメになったら使うつもりだったのだろうと推測した。それなので使用用途が((隠蔽|ハイディング))の為とは、アイテムだが少し可哀相だなと思ってしまう。

 

そんなことを考えていると、キリトは自分が来ているコートの前を開き、テラスの方を向いた。一瞬でどのような意味か理解したテラスは少し迷い、しぶしぶキリトの懐に移動する。ありがとうございますと軽く礼を言うテラスに対し、キリトはあまり気にしていなさそうだ。こういうこともあるだろうと思っているのかもしれない。

 

「来た・・・」

 

規則正しい足音に、テラスは言葉を漏らす。曲がりくねった小道から現れた集団の姿を見ると、それがどこのギルドなのかすぐさま理解する。

 

(軍・・・?)

 

全員が同じ黒鉄色(ガンメタ)の金属製鎧に身を包み、ヘルメットのバイザーをおろしていた。前衛六人が片手剣と大型の盾を装備し、後衛の六人は巨大な斧槍を持っている。彼らは、基部フロアを拠点として活動する超巨大ギルド『軍』のメンバーだった。

 

 

sideout

 

 

身長二メートルを超える骸骨剣士『デモニッシュ・サーヴァント』の攻撃に対し、テラスはその右手一本で持った自分の身長の二倍はあろう長剣の上の剣を力のまま、迎撃のためにふるった。

 

ガキンとぶつかる音とともに、デモニッシュ・サーヴァントが持っていた剣が中心の辺りで砕けて折れる。骨のくせに無駄に高い筋力値を持っているはずなのだが、その筋力値は『剛腕』の異名を持つテラスに敵わなかったようだ。そのことから、キリトのように技術で折ったのではなく、力で無理やり耐久値を0にしたのだと言うことが分かった。

 

剣が折れ、ひるむデモニッシュ・サーヴァントに、テラスは間髪いれずに単発片手剣スキル『ストライク』を下の剣でたたき込む。赤い光を伴った剣を、思い切り前に突き出すと言う簡単な動作の技なのだが、ステータスが高いため、十分な威力を発揮する。

 

テラスの場合、ユニークスキル『連結』のおかげかスタイルが若干異なる。片手剣の場合、剣と腕がまっすぐの一本の棒のようになるスタイルになるのだが、連結の長剣は二種類ある。一つは上の剣を、片手剣と同じように突き出すモーション。もう一つが、今テラスが行った下の剣を逆手持ちのようにして突き出すモーションだ。

 

「スイッチッ!」

 

叫びながら下がると同時に、後ろからアスナが駈け出してくる。その手に持った細剣で、八連撃の片手剣スキル『スター・スプラッシュ』を決めた。中段突きを三回の後、切り払い往復攻撃と斜めの切り上げ。そして上段への二回の突きが全てヒットすると、デモニッシュ・サーヴァントのHPはすでに三割をきっていた。

 

「テラス君、もう一回スイッチ!」

 

「えぇっ!?――――あぁ、もう!了解です!」

 

アスナの声に、テラスは驚きながらも再び前に走り出す。チラリと横にいたはずのキリトを見てみれば、他のモンスターの相手をしてたようで、手が離せないのがすぐ分かった。

 

テラスは、目の前にいる剣のない骸骨剣士の残りのHPを確認すると、少し口元を緩めた。これなら確実に削りきれると確信してのことだろう。デモニッシュ・サーヴァントが左手に構えた円形の金属製の盾を思い切り弾くと、テラスは連結用のソードスキル『レッド・ストーム』を繰り出した。

 

剣に赤い光を伴いながら、上昇しながら上の剣で下から斜めにかけて斬り上げ、次に下の剣で同じように斬りあげた後、最後の締めにと流れるように逆側から斜めに振り下ろす竜巻の様な三連撃。たった三連撃と、攻撃回数こそ少ないが、その威力はバカにならない。

 

HPが0になり、デモニッシュ・サーヴァントがポリゴンとなって消え去るのを確認すると、テラスはふぅと一息つく。持っていた長剣を右肩に担ぐと、左手でアスナに向かってグッドサインをした。

説明
HPが0になることは死を意味するデスゲーム『ソードアート・オンライン』。
攻略ギルド『KoB』に所属する主人公テラスは、『剛腕』の異名とともにアインクラッド攻略を目指す。
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