外史テイルズオブエクシリア 闇の魂を持つ者の旅路の記録 第14話
[全6ページ]
-1ページ-

 

 

第14話  始まりを告げるもの

 

 

 

 

 

チャット場面

 

 

「体の震え」

 

 

 

エリーゼ「寒いです……」

 

ドロッセル「カラハ・シャールにいた頃は、こんな寒さ、体験したことないわ」

 

ミラ「寒いがいい経験だ。体の震えが止まらん」

 

秋山「あまり体を長時間振るえさせるのはよくないぞ」

 

ティポ「どうして?」

 

ジュード「体が寒さで震える時は『シバリング』っていう現象で、体の体温を上げてるんだよ」

 

秋山「けど、シバリングは長くても2時間が限界だ。それ以上を越えると体は震えないどころか、体温が低下して死に至る」

 

ティポ「死ぬなんて怖いー!」

 

ミラ「体を震えさせるだけでか?」

 

ジュード「うん」

 

秋山「それに振るえるにも体力を使うしな」

 

ドロッセル「気をつけないと……」

 

エリーゼ「でも、秋山は体が震えてませんね」

 

ティポ「ミラ君の次に薄いのにね」

 

秋山「俺は慣れてるからな。寒さにも暑さにも……」

 

 

 

チャット場面終了

 

 

-2ページ-

 

 

モン高原を抜けて、一同はカン・バルクにたどり着いた。

 

「シャン・ドゥもそうだったけど、ここも少し変わった街だね」

「ア・ジュールはラ・シュガルに比べて精霊信仰が強いからな」

「わ、何あれ?」

 

一人で先に歩いていたレイアがあるものを見つける。

 

「あれが世界でもカン・バルクでしかお目にかかれない、空中滑車さ」

「空中滑車?」

「カン・バルクは山地につくられた街で、いくつかの地区をあれで繋いでいるのです」

「景色がよくて楽しそうだね」

 

レイアはエリーゼに振るが、エリーゼは無視する。

 

「…………」

「ユルゲンス、ア・ジュール王と会うにはどうすればいい?」

「ワイバーンの許可を取るついでに、謁見を申し入れてみるよ。ただ、多くの民が謁見を望んでいるから、ずいぶん待たされると思う。

宿をとって待っててくれ」

 

ユルゲンスにそう言われたので宿屋で待つことにした。

-3ページ-

 

 

宿をとってからどのくらいか時間が流れる。

 

「まだユルゲンスさん、戻ってこないのー?」

「まだだよ」

「ねえ、エリーゼ。街の観光でもしよーか?」

「…………」

「エリー、行きましょうよ」

「…………」

「エリーゼさん、行ってきたらどうですか?」

「…………」

 

レイア、ドロッセル、ローエンの言葉を無視し続けるエリーゼ。

 

「ねえ、エリーゼってば〜。

ティポがはしゃいでくれないから、わたしばっか、うるさいみたいだよ」

「前からそうでしょ?」

「べー!」

 

秋山がティポを見る。

 

(ティポは確かに独立した存在になっている。

そこは正史とは違うところだが、動力源はエリーゼの心というのは変わらない。

エリーゼが喋る気がないと、ティポも喋らないということか)

「じゃあさ、ティポみたいにエリーゼも元気におしゃべりしない?」

「エリーゼの口から、あなたのことをもっと教えてほしいな」

 

すると……。

 

「レイアはうるさいなー。みんなの足をいっつもひっぱってるくせにー」

「え…………」

 

ティポがとんでもないことを言ってしまった。

 

「エリーゼ、言い過ぎじゃないか? 謝った方がいい」

「ミラが言うんだから、相当だぞ」

「いや、ここは既に独立してるティポが謝るべきだな」

「ミラも……レイアも……!」

「ばーかー!」

 

エリーゼとティポは部屋を飛び出してしまう。

 

「エリー! どこ行くの!?」

 

ドロッセルがすぐに後を追った。

 

「あ痛たた、今のは効いたな〜」

「レイアさん……」

 

レイアは笑いながら言うが、どう考えても無理している。

 

「ほら、わたしはいいから。エリーゼ連れ戻しに行こっ!」

「…………少しいいか?」

「なんだ、秋山」

「俺は確かにティポはもう独立した存在だと言ったのはわかっているよな?」

「ああ。確固たる存在だって断言してたな」

「断言はした。それを否定するつもりもない。

だが、さっきティポの言ったことはエリーゼが思っていたことそのものだった」

「それって……」

「完全に抜け切ってはいないってことだ。エリーゼの代弁をするぬいぐるみとしてな……。

俺は洞察力から生まれる読心術で何度かエリーゼとティポを見てきた。

ティポはエリーゼの代わりに喋ることはあった。だがエリーゼとは別の考えで喋る時もあった。

……どういうことか、わかるか?」

「ティポは本当にエリーゼの代わりに喋るとは限らないってこと?」

「そういうことだ。まあ今回はエリーゼの代わりに喋ったがな……。俺が言いたいのはそれだけだ。いくか」

 

秋山達はエリーゼとドロッセルの後を追った。

少し街を捜していると茫然と立っているエリーゼと肩に手をやっているドロッセル、そして近くにジャオがいた。

 

「安心せい。偶然会っただけじゃ」

 

ジャオはその場から少し離れる。

 

「エリー、レイアが来たよ」

「…………」

「さっきはごめんね。ティポや両親のことで、寂しい想いしてたのにね。ほら、わたしって遠慮なく言っちゃうとこあるでしょ。許してよ」

「……いやです……」

 

エリーゼの口からはっきり言った。

 

「そんなこと言わないでよ。ね!」

 

エリーゼは振り向いてレイア達に言った。

 

「レイアもミラもドロッセルもキライ! 友達だと思ってたのに!」

「エリー……」

 

ショックを受けるドロッセル。

 

「エリーゼ、わたしはただ、あなたが心配で」

「ウソ! わたしのことなんてホントはどーでもいいくせにっ! もう友達やめるっ!」

 

エリーゼが走ってその場を去ろうとした時であった。

 

「エリーゼ!」

 

秋山がエリーゼの前に立つ。

 

「ばかやろう!」

 

秋山はなんとエリーゼの頬を殴った。

平手打ちではない、拳で殴った。

 

「エリー!」

 

ドロッセルが駆け寄ろうとしたが、ミラが止めた。

 

「何で拳で殴ったか、わかるか?」

「…………」

「ミラやドロッセル、それにレイアは今殴られた痛み以上に心が傷ついたんだぞ!」

「…………!!」

「正直な話、拳で殴れば殴った奴も少なからず痛みが出る。だが殴られた奴はもっと痛い!

それでもな! 言葉の拳や刃はこれの何倍も痛いんだ! 心は肉体以上に脆いんだ!

どれだけ鍛えてもな! 心の方が肉体より強い奴なんて、まったくいないわけじゃないが、まずいないんだ!

お前だけじゃない! ここにいる全員! 俺も入れてだ!」

「レイアが……ホント?」

「あ、いや、傷ついたっていうかさ……その、へこんだっていうか……」

「わたし、レイアを傷つけてるなんて……思ってなかった……」

「少し話は違うかもしれないが、エリーゼ、俺はだいぶ前に、お前以上に小さな女の子と命がけで戦ったことがある。

下手をすればどちらかが死ぬ。それくらいのものだった。

戦いは俺の……いや、俺の仲間の勝利だった。その時少女は自分を殺してくれと頼んだ。

だが俺達はそれを聞き入れなかった。少女が肉体的にも精神的にも傷ついていたことを知ってたからだ」

「……その女の子はどうしちゃったの?」

 

ティポが聞いてきた。

 

「今じゃ……大切な俺の朋友(ぽんよう)、友達として生きてる」

「よかった……ですね……その子」

「ああ。本当にそう思う。その子もよくなってからはきちんと謝ったよ」

 

そこにジュードがやって来る。

 

「エリーゼ。それじゃあ、レイアに謝ろうか」

「でも、わたしひどいこと言っちゃった……」

「ちゃんと謝れば許してくれますとも。それが友達です」

「今言ったろ。その女の子もきちんと謝って、俺たちの友達になったってな……」

「レイア……ごめんなさい。許してくれますか?」

「うん。だけど、これからはエリーゼの言葉でエリーゼのことをもっと教えてほしいな」

「三歳しか違わないのにエラそうー」

「ダメ、ティポ! しゃべらないで!」

 

エリーゼがティポをおさえる。

 

「エリーゼ」

「は、はい……?」

「それでもわたしの方が年上だからねっ」

「は、はぅ……」

 

いばるレイア。

 

「レイア、怖ーっ!」

「ふふふ……ははは」

 

ミラはその光景を見て思わず笑う。

 

「あ、ミラが笑った」

 

ミラがここまで笑ったところを見たことなかったドロッセルは思わず反応した。

 

「うん? 思わずな」

「娘っ子、友達を大事にな」

 

ジャオはその場を去っていく。

 

「友達……大事……」

 

また変なところで片言になる秋山。

 

「そうそう、友達」

 

ドロッセルが秋山から教わった友達の印をエリーゼに向けてやる。

 

「友達……」

 

エリーゼも友達の印をやる。

 

「ドロッセルも許してくれますか?」

「もちろんよ。私もエリーとティポの友達だもん♪」

 

エリーゼの顔が明るくなる。

 

「ところで僕たちはどうしよう? ユルゲンスさんはまだ戻ってこないけど……」

「直接王城に乗り込んでみる?」

「だから、ユルゲンスさんに迷惑かけちゃダメだってば」

「ダメか……そのアルヴィンの案はしっくりくるのだが……」

 

ミラは共感をもち、全員が頭をがっくしと下げる。

 

「焼き討ちじゃない限りは大丈夫かもしれないけどさ……」

「けど、どうしよう」

「城の前までは行ってみるか」

 

一同はどうしようもないので城の前まで行くことにした。

-4ページ-

 

 

一同は城の門までやって来た。

門の前には人の行列が出来ていた。

見るだけな問題ないためか、門の内側に入ることが出来た。

 

「お城の前、行列だったね」

「みんなの声をちゃんと聞いてくれる、いい王様なんだね」

「現在のア・ジュール王は、かつて混乱を極めた国内をその圧倒的なカリスマで統率した人物だと言われています」

「それなら、わたしたちに協力してくれるよ」

「だが、影でエリーゼのような境遇の人間を生み出しているのであれば許せはしない」

「ミラ……ありがとう……です」

 

そうしているとユルゲンスが城から出てきた。

 

「ごめんなさい、待ちきれなくて」

 

ドロッセルが謝る。

「いや、ちょうどよかったよ」

「ワイバーンの方はどうなった?」

「問題なしだ。それと、ミラさんに頼まれた謁見の件だが、ちょっと驚いたよ」

「…………?」

「みんなの名を伝えたら、逆に陛下が会いたいと仰ったんだ」

「ひょっとして、ラ・シュガルじゃ有名人なのか?」

「あ、いえ、そんなことはないと思うんですけど……」

「闘技大会の結果が陛下に届いたのかな。それならキタル族にとっても栄誉だ。じゃ。私は一足先にシャン・ドゥに戻って、ワイバーンの用意をしておくからな」

 

ユルゲンスは少し嬉しそうにシャン・ドゥへ戻っていった。

 

「ふむ、思わぬ歓待だな」

「何かの罠だったりしないよね?」

「あまりいい予感はしませんね」

「そうかなー。会えないで帰るよりはよかったんじゃない」

「…………」

「また隠しごとかアルヴィン?」

 

ミラに言われて、皆がアルヴィンを見た。 

 

「ったり前だよ。だから俺は魅力的なんだ」

「…………?」

 

呆れ顔になるジュードとミラ。

 

「ジュード、今のはどういう意味だ?」

「秘密のある男はかっこいいとかいうからね……ははは……」

 

もう何も言えないという感じで答えるジュード。

 

「さっさと、王様に会いに行こうぜ」

「アルヴィン、ウソはイヤだからね」

「お前たちが俺を信じてくれてるってのは知ってるよ」

「…………」

 

アルヴィンが先に行き、皆がそれを追いかける。

城の中に入り、玉座の間へと続く階段前で兵に呼び止められる。

 

「お待ちください。王への謁見は、城の外で順を待って頂かなければなりません」

「ア・ジュール王が僕たちに会いたがっていると聞いたんですけど」

 

兵士二人は顔を思わずあわせる。

 

「ミラ様ですか?」

「私だ」

「わかりました。このままお進みください」

 

兵士達は道を開ける。

 

「どうしたの?」

 

ローエンとエリーゼが進んでいないのに気付いたレイアが声をかけた。

 

「王との謁見にぬいぐるみはどうかと思いますので、預かって頂こうかと」

「いいの、エリーゼ?」

「はい」

「責任をもって私が預からせて頂きます」

 

兵士の一人にティポを預けた。

 

「さあ、参りましょう」

 

そして一同は玉座の間へとやってきた。

-5ページ-

 

 

玉座の間に行くとそこにはなんとジャオがいた。

 

「ジャオさんがどうして?」

「わしは四象刃(フォーヴ)が一人、不動のジャオじゃ」

「四象刃(フォーヴ)?」

「王直属の四人の戦士です。あの方がその一人だったとは……」

「どおりでなかなか強かったわけだ」

 

そして玉座の後ろから二人の男が現れ、男の一人は玉座にあぐらをかいて座る。

 

(あの二人は……王とその部下だったというわけか)

 

秋山はニ・アケリアで自分達を監視していたのが王だということは世界の記憶から知っていたが、実際に対面して改めて思った。

 

「イルベルト元参謀総長。お会いできて光栄だ」

「まさかア・ジュールの黒き片翼。革命のウィンガル……」

 

黒ずくめの男の名はウィンガルだった。

 

「お前がア・ジュール王か」

「我が字(あざな)はア・ジュール王、ガイアス。よく来たな、マクスウェル」

「お前たちは陛下に謁見を申し出たそうだが、話を聞かせてもらおうか?」

「ア・ジュールでつくられた増霊極(ブースター)はすでにラ・シュガルに渡っています。もし両国で戦争が始まれば、とりかえしのつかない事態になってしまうんです」

「ほう……それを伝えるためにわざわざ来たというのか?」

 

ガイアスは表情を変えなかった。

 

「は、はい……」

 

ガイアスの気迫に圧されたのか、ジュードは弱く答える。

 

(なかなかの気迫と覚悟の強さだ。敵に自分達の機密が漏れているというのに眉一つ動かさない。絶対の自信がある証拠だ。

星破壊の力とまではいわないが、俺も結構本気出さない限り、勝てない可能性があるな)

 

秋山は冷静にガイアスの力を量る。

 

「それでわたしたち、ラ・シュガルの兵器を壊そうと思っているんです。それがなくなれば、ラ・シュガル王は戦争を始められないんじゃないかって……協力とか……してもらえ……ませんか?」

「要件はそれだけか?」

 

ウィンガルの冷たい言葉にレイアもジュードも何も言えなかった。

 

「もう一つお伺いしたいことがあります。以前、王の狩り場にあったという増霊極(ブースター)の研究所についてです」

 

ジャオはそれを聞いてわずかにだがうつむく。

 

「あの場所に親を亡くした子供を集め、実験利用していたというのは本当か?」

「ふっ、何を言い出すかと思えば。精霊のお前に関係があるのか?」

「私はマクスウェル。精霊と人間を守る義務がある」

「精霊が人を守るとは。実に面白ことを言ったな」

「貴様は王でありながらも、民を自らの手で弄んだ、違うか?」

「その件はすべて私に任されている。あの研究所に集められた子どもたちは、生きる術を失った者たちだった。お前たちが想像するようなことはない。実験において非道な行いはしていない」

「じゃあ悪いのは手前か?」

 

秋山がウィンガルに睨みつける。それでもウィンガルはガイアスのように表情を変えない。

 

(ちっ、目的のためなら手段を選ばないタイプだな。俺の嫌いな部類だ)

「だ、だけど、わたしは……」

 

エリーゼを見たウィンガルはジャオに尋ねる。

 

「この娘……例の被験体か?」

「そうじゃ」

「エリーゼはハ・ミルの村でも閉じ込められていたんですよ。それじゃ、あまりにも……」

「非道だと?」

 

ガイアスがジュードの言葉の途中で言葉を入れる。

 

「え、あ、はい……」

 

ジュードは圧される。

 

「はっきり言ってやれよ、ジュード。

ま、これは俺の意見だが、そいつの意志がないことを強要させることは非道でもなんでもないぞ。まあ、悪意なら別だがな……」

「では聞こう。お前たちは民の幸せとはなんなのか、考えたことがあるか?」

「幸せ……?」

「人の生涯の幸せだ。何をもって幸せか答えられるか?」

「それは……」

「己の考えを持ち、選び、生きること」

「そう、僕もそう思う」

 

ミラの言葉を聞いてジュードも賛同した。

 

「ふ、俺は違う」

 

ガイアスは否定し、立ち上がる。

 

「人が生きる道に迷うこと、それは底なしの泥沼にはまっていく感覚に似ている」

「生きるのに迷う……?」

「そう。生き方がわからなくなった者は、その苦しみから抜け出せずもがき、苦しむ」

「…………」

「故に民の幸福とは、その生に迷わぬ道筋を見出すことだと俺は考える。

俺の国では決して脱落者を生まぬ。王とは民に生きる道を指し示さねばならぬ。それこそが俺の進む道……俺の義務だ」

「言うじゃないか。俺はそれを否定する気はない。だが、肯定する気もない」

「ほぅ……、ではお前の意見を聞こう」

 

秋山が自分の意見を言う。

 

「そもそも人の幸せなんて誰かが決めることじゃない。そいつ自身が決めることだ。

俺は色々見てきた。死ぬことで幸せを手に入れた奴、迷いながらも足掻いた末に幸福を見つけた奴、苦しみながらも自分の信じた道を進んで幸福と思った奴。

そして、あんたのいう生き方がわからなくなっても、必死に生きて来た奴。

それぞれが本当に違う考えを持って、幸せになっている。

まあ確かに王が道を示さないといけないとは思うが、あくまで道を決めるのは民一人一人だ。

そしてそれを強要する権利は誰にもない」

「ふん」

 

ガイアスは鼻で笑った。

 

「まあいい。お前たちをここに呼んだ理由を、単刀直入に話そう。

マクスウェル、ラ・シュガルの研究所から『カギ』を奪ったな? それをこちらに渡せ!」」

「断る。あれは人が扱いきれるものではない。人は世界を破滅に向かわせるような力を前に、己を保つことなどできない」

「結局あんたも力が欲しいだけか。民からの信頼の厚いア・ジュール王が聞いてあきれるぜ」

「俺の言葉が、お前たちには理解できなかったとみえるな」

「ふふ、どれだけ高尚な道とやらを説いたところで、人は変わらない。二千年以上見てきた」

(ミラ、そいつは違うぜ。確かに変わらない部分もあるが、変わる部分だってある)

「では、あなたに『カギ』の所在を聞くとしよう」

 

ウィンガルがそう言うとアルヴィンが前に出た。

 

「え……?」

「アルヴィン……ウソ……だよね?」

「……ひどいです」

「……アルヴィン」

「なんで……」

 

秋山とローエン以外は信じられないみたいなことを口にする。

 

「すまんね。これも仕事ってやつなのよ」

「アルヴィン。マクスウェルは『カギ』を誰に預けた?」

「巫子のイバルだ。今頃はニ・アケリアでおとなしくしてるんじゃないか」

 

そこに後ろからまた別の誰かがやってきた。

やって来たのはプレザだった。

 

「アル……どうしてあなたが!?」

 

プレザはアルヴィンを見て、信じられないという顔をしていた。

 

「よ、プレザ。久しぶり」

「プレザ。何用だ」

 

プレザは大事な報告なので、ガイアスやウィンガルやジャオ以外に聞かせるのはどうかと思ったが……。

 

「構わん。報告しろ」

 

ガイアスが報告するよう命令した。

 

「ハ・ミルがラ・シュガル軍に侵攻されました」

「なんですと……」

「村民の大半が捕えられ、ラ・シュガルへ送られた模様。殺害された者も多数おります。そして、その場には大精霊の力と思わしき痕跡が多数ありました」

 

先ほどまで眉一つ動かさなかったガイアスもさすがの事態だったのか、表情がわずかにだが変わった。

 

「大精霊? 四大召喚は二十年前から、召喚できなくなっているはずだったな」

 

ガイアスはミラを見た。

 

「……バカな、四大が解放されていれば感知できるはずだ。まさか、クルスニクの槍の力……ナハティガルは新たな『カギ』を生み出したのか!?」

 

ミラは非常に驚いていた。

 

「すべての部族に通告しろ。宣戦布告の準備だ。我が民を手にかける者は何人たりと許しはしない!」

 

ガイアスは後ろに下がった。

 

「さて、あなたたちはもう用済みになってしまったが……陛下が精霊マクスウェルを得たとなれば、反抗的な部族も従わざるを得ない」

「くっ!」

 

兵士達は後ろを囲む。

 

「アルテミス」

 

すると秋山の後ろからアルテミスのミサイルが現れ、兵士達を襲った。

 

『ぐわっ!』

 

兵士達は黒焦げとなった。だが死んではない。

 

「ティポ!」

「今のうちだー。逃げろー!」

 

皆が逃げ出す中、ジュードは後ろにいるアルヴィンを見る。

アルヴィンは悠長に手を振って見送った。

 

「マクスウェルを捕らえろ! 実験体も回収するんだ!」

 

ウィンガルが指示を出す。

-6ページ-

 

 

城の外に出ようとする中、エリーゼが秋山に尋ねた。

 

「あの時のあれ、秋山のだったんですね」

「アルテミスのことか」

「でもどうしてあの時、エリーとティポがアルクノアに襲われたのに気付いたの?」

 

ドロッセルも気になったので尋ねた。

 

「いや、俺は闘技場全体を見てたんだ。そんでたまたまエリーゼたちが襲われるのを見てアルテミスを発射したってわけだ」

「私とエリーゼさんの作戦が無駄になってしまいましたね」

「作戦って……ティポを兵士に預けたこと?」

「はい。なんといっても交渉するのはミラさんですから。ミラさんが意志を貫く時は……」

「悪かったな。お前たちの意図は読めてたんだが、確実にするには俺がああした方がいいと思ってやった」

「ところで、秋山さん、今のアルテミスというのはどうやって……」

「ノーコメント」

 

そして皆が城内を脱出するが、エリーゼが門の前でいったん止まってしまう。

 

「や、やっぱり……アルヴィンはウソつきです」

 

エリーゼの言葉を聞いて、皆も足を止める。

 

「事情があるのかとも思いましたが、今回はさすがに」

「アルヴィン君をダンザイしろー! 引きずりだせー!」

「ミラ……アルヴィン君はどうして?」

「さすがに本心まではわからないが……」

「何が僕たちが信じてるのを知ってるだ。アルヴィンなんか……もう!」

「そういうな。心の中では本当にそうかもしれんぞ」

「けど!」

 

警鐘音が鳴り響く。

 

「やつらは城外に出だぞっ!」

 

門が完全に閉められる音が聞こえ、駆けつけるが、門は閉じられていた。

 

「開かない!」

「俺に任せろ! クリュサオル!」

 

秋山がクリュサオルの剣を出す。

 

「(アストレア! やっぱりこういう時便利なバカだな!)どっせえええええい!!」

 

門を塞ぐものを完全に破壊する。

 

「すごい……」

「さっさと行くぞ!」

 

秋山はクリュサオルの剣を消す。

そして街の出口前には既にプレザとウィンガルがいた。

 

「私を置いて先に行くなんて、そんなやつ滅多にいないわよ」

「プレザといったな。まさかガイアスの部下だったとは。イル・ファンを脱出した私たちを初めから狙われていたわけか」

「ニ・アケリアじゃ、アルが陛下にあなたたちの情報を売ったのよ」

「やはりあの時か……」

「あの時って……」

「こいつら、俺たちがニ・アケリアを出る時に見張ってたんだよ。

まあ俺も気づいてたから睨みをきかしたつもりだったんだがな……」

「アルヴィンは……最初からあなたたちの仲間だったんだね」

「やめて」

 

プレザは明らかに不機嫌になった。

 

「あんな男……仲間でもなんでもないわ」

「…………?」

「ジュード、そいつを今、あの女に聞くのは野暮ってもんだぜ」

「?」

「……ふふ、私たちの関係はご想像にお任せするわ」

「やっぱり大体わかった」

「けど、アルは組織を渡り歩く、根無し草の一匹オオカミよ。誰にも心を許さない。信じた方が悪いわ、ボーヤ」

「戦になればクルスニクの槍が、最たる脅威となるのは明白。それがわからぬマクスウェルとお前ではないだろう」

「お前たちの縄張り争いに手を貸すつもりもない。あれをお前たち人間が手にすれば、待っているのは悲惨な結末だけだ」

 

プレザは本を持って構え、ウィンガルも剣を出す。

 

「ずいぶん、上から見られたものだな」

 

ミラも剣を構えようとするが、ローエンが前に出る。

 

「おやめなさい。戦巧者と名高いあなたでも、その誉、剣で得たものではないでしょう。

若さが見誤らせているのでは?」

「イルベルト殿。それがあなたの限界。古い。……故に間違い」

「…………っ」

「……逃げ出す! はあああああっ!」

 

ウィンガルが叫ぶと髪の色が白くなり、逆立つ。

 

「な、なにあれ!?」

「俺の真モードと似てるが、まったく別物だな」

「え? 真モード?」

「今言ったことは忘れろ。仲間でもいざとなれば容赦なく記憶消去する」

「は、はい」

 

秋山のぼやいたことを気にするも黙ることにしたドロッセル。

 

「マナが急激に……!?」

「増霊極(ブースター)……!」

「どうして……」

「なんだお前ーっ!」

「(エリーゼ、誰に向かってそんな口をきいてる?先輩には敬意を払うものだ)」

 

ウィンガルの話してる言葉が突然変わる。

 

「言葉が……」

「これはロンダウ語……!?」

「(マクスウェル、捕えるつもりだったが……殺した方が早そうだ)」

「お前たち、全員下がっていろ」

 

秋山が一人で前に立つ。

 

「秋山さん!?」

「ここは俺一人に任せろ言ってる」

「何故だ?

「無茶だよ! あの二人相手に……」

「お前たちの方が無茶だ。

この寒さにお前たちは慣れていない。

どういうことか分かるか?」

「?」

「お前たちは全力を出せないってことだ。

寒い中だと人ってのはどうしても筋肉とか思考とかが落ちるんだ。

だが相手はこの寒いところにいる連中、この程度の寒さはなんともない。

それに対抗するには寒さに強く、フルパフォーマンスの技を撃てる俺しかいないということだ」

 

秋山が一人でウィンガルとプレザと戦う。

 

「悪いが時間はかけさせん! いっきに片をつける!」

「(そうはさせん!)」

「私たち相手にそれが出来るかしら?」

「出来るってんだよ!」

「スプラッシュ!」

 

プレザはスプラッシュの魔法を秋山の頭上に放ち、秋山はそれを横に避ける。

そこにウィンガルが雷を帯びた剣で斬りかかる。

 

「(死ね!)」

 

ウィンガルの剣で秋山が斬れた。

いや、違う。

斬ったのは秋山の残像だった。

 

「(残像!?)」

「どこ!?」

「ここだ!」

 

秋山は既に二人の後ろにいた。

 

「調子にのるなよ!」

 

秋山は刀を召喚し、姿を消すと同時に素早い剣撃を二人に浴びせる。

 

「ああああああああ!!」

 

プレザはその剣撃を受け、倒れた。

しかしウィンガルはその剣撃を見切ったのか、剣撃を防ぎきる。

秋山は姿を現すと同時に既に刀を消しており、右手を構えていた。

 

「輝く神の名の元に、お前を打ち砕く! ビックバンパーーーーンチ!!」

 

金色の巨大な拳の氣がウィンガルを押し、秋山も駆け出し、秋山の右手がウィンガルの体に命中する。

 

「うおおおおおおおお!!」

 

ウィンガルを地面に叩きつけた。

 

「がはっ!」

 

ウィンガルは血を吐く。

それと同時に髪の色が元に戻る。

 

「ほっと!」

 

秋山は後ろにバック宙で下がる。

ウィンガルとプレザが起き上がる。

 

「まだ……相手をしてくれのかしら?」

「いくぞ。こいつらは時間稼ぎが目的だからな」

 

秋山が走って逃げ去る。

皆も秋山の後を追って逃げていく。

 

「また逃げるのか、イルベルト殿?」

 

ウィンガルに言われてローエンは足を止めてしまう。

 

「あなたが逃げたから、ナハティガル王は……!」

「…………っ」

 

ローエンは再び走り出した。

それを追う兵士達と、ただ後ろで見ていただけのアルヴィンがいた。

説明
この作品は別の人の影響で作った作品であり、作者(BLACK)のオリジナルキャラ「秋山総司郎」を第3主人公として、テイルズオブエクシリアの世界に来たらで書かれました。

秋山総司郎が今まで出てきた作品一覧(作品検索)。

http://www.tinami.com/search/list?keyword=%E7%A7%8B%E5%B1%B1%E7%B7%8F%E5%8F%B8%E9%83%8E&genrekey=1

秋山総司郎の時系列

この世界を訪れる前の話

「そらのおとしものf 番外編 『カオスのとある日常(いちにち)  里帰り編』」


http://www.tinami.com/view/225368


この世界を訪れた後の話


「そらのおとしもの  外伝  もしもイカロスの次に地上に来たのがカオスでその次に来たのがニンフだったら…。(アニメ仕様)」


http://www.tinami.com/view/257088


となっております。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
1099 1077 1
コメント
良かったなエリーゼ(涙)。さて、気になる単語があった・・・主人公の言っていた「真モード」のこと。うちのレオン君の場合は精霊との融合などがあるが、主人公はどんなモードなのか楽しみです(レイフォン)
タグ
テイルズオブエクシリア 秋山総司郎 オリ主 闇の魂を持つ者の旅路の記録 外史 第14話 

BLACKさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com