インフィニット・ストラトス―絶望の海より生まれしモノ―#53
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「ふう、疲れたな。」

 

「まさか、最初のお店であんなに時間を使うとは想わなかったね。」

 

ちょうど時計の短針が十二を過ぎたところで、ラウラとシャルロットはオープンテラスのカフェでランチをとっていた。

 

メニューはラウラが日替わりパスタ、シャルロットがラザニアである。

 

「しかし、まあ、―――いい買い物はできたな。」

 

「折角だからそのまま着てればよかったのに。」

 

「い、いや、その、なんだ……そう、アレだ。汚しては困る。」

 

「ふぅん。あ、もしかしてやっぱりお披露目は一夏にとっておきたいとか?」

 

「な、!?」

 

「それとも空に?」

 

「ち、違う!だだ、断じて違う、違うぞッ!」

 

顔を赤らめて取り乱すラウラにシャルロットは『的中』を確信しつつも敢えて知らないふりをする事にした。

 

「そっか。変な事言ってゴメンね。」

 

「ま、ま、まったくだ!」

 

けれども、シャルロットの目は見逃さない。

 

「ラウラ、」

 

「な、なんだ。」

 

「スプーンとフォークが逆。」

 

「ッ〜〜〜!!」

 

シャルロットに指摘されて気付いたラウラはスプーンを放し、話を誤魔化す事にした。

 

「と、ところで午後はどうするのだ?」

 

「生活雑貨を見て廻ろうよ。僕は腕時計見に行きたいかな。日本製の時計ってちょっと憧れだったし。」

 

「腕時計が欲しいのか?」

 

「うん。せっかくだからね。ラウラはそう言うのって無い?」

 

「そうだな………以前、箒に見せてもらった日本刀は見事な物だった…」

 

「………女の子的なモノは?」

 

「………今まで、そのようなモノに縁がなかったからな。」

 

「そっか。それじゃ、これからゆっくりとみて見ればいいんじゃない?」

 

「うむ。」

 

「……………どうすればいいのよ、まったく………」

 

はぁ、と深淵の色すら見えるほどに深々とした溜め息付きの愚痴が二人の所まで届いてきた。

 

その方にはかっちりとしたスーツを着た二十代後半くらいの女性。

 

何か悩み事があるらしく、そして悩み続けているせいで注文したであろうペペロンチーノは冷めきってしまっていた。

 

 

「ねえ、ラウラ。」

 

「―――おせっかいは程々にな。((一夏|よめ))の様になるぞ。」

 

今度は逆にラウラがシャルロットの言葉を先回りした。

 

突然の事にびっくりしたシャルロットだが、すぐに嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「僕の事、ちゃんと判ってくれてるんだね。」

 

「た、たまたまだ。――で、どうしたいんだ?」

 

「うーん、とりあえず話だけでも聞いてみようかな。ほら、話すと楽になるって言うし。」

 

「なら、やってみれば良い。」

 

ラウラに背中を押され、シャルロットは行動に移る。

 

「あの、どうかされました?」

 

「え?―――!?」

 

二人を見るなり、『がたん!』と椅子を蹴倒さんばかりに女性が立ち上がり、シャルロットの手を握る。

 

「あ、あなた達!」

 

「は、はい。」

 

「バイトしない?」

 

「―――はい?」

 

突然の事に、二人とも一瞬目が点になった。

 

 * * *

[side:シャルロット]

 

「――と、言う訳で、いきなり二人辞めちゃったのよ。辞めたっていうか、駆け落ちしたんだけどね。はは………」

 

「はぁ。」

「ふむ。」

 

「でもね、今日は超重要な日なのよ!本社から視察に人間も来るし。だからお願い!あなた達二人に今日だけアルバイトをして欲しいの!」

 

有無を言わさずにつれこまれた場所は僕が声をかけた女の人が店長をしている喫茶店だった。

 

まあ、ただの喫茶店じゃなくて執事&メイド喫茶な訳だけど。

 

「それは良いんですけど………」

 

その話は制服に着替えさせた時点でやらせるの決定になってるからまあ良いんだけど…

 

「なぜ僕は執事の格好なんでしょうか。」

 

「だって、ほら!似合うもの!そこいらの男なんかよりもずっと綺麗でかっこいいもの!」

 

「そ、そうですか。」

 

何だろう、褒められてる筈なのに全然褒められてる気がしない………

 

だってねぇ、男装を褒められても『女の子らしくない』って言われてるような気分になるんだよ。

 

………僕もメイド服の方がよかったなぁ………ラウラ、すっごく可愛いし。

 

自分の執事服姿を見下ろして改めて思う。

 

 

確かに、IS学園に男子生徒として編入する為に『男になりきる演技』は仕込まれたけどさ………女の子に戻った後もこうなるなんて………

 

やっぱり、こういう方向性なのかな………

 

ちょっとしょんぼりしてたらメイド服に着替えた店長さんが近づいて来て手を取ってきた。

 

「大丈夫、すっごく似合ってるから!」

 

「そ、そうですか。あはは………」

 

ちょっとひきつってるかもしれないけど、なんとか笑顔と社交辞令くらいは返す。

 

でも、できれば声を大にして叫びたい。

 

『それが大問題なんだっ!』って。

 

特に、隣に居るラウラが似合いすぎるから。

 

う〜、羨ましいなぁ………

なんでラウラってこんなに可愛いんだろ。

 

きっと、ラウラなら男装しても『麗装の少女』になる。

…僕の場合は『可愛い男の子』になるけど。

 

あ、空もどちらかと言えば僕寄りか。

 

 

「店長、は、早く手伝ってくださいぃ〜!」

 

ヘルプを求める声に店長さんは身だしなみを整えてバックヤードの出口へと向かっていく。

 

あ、いけない。大事な事訊き忘れてた!

 

「あ、あの、もう一つだけ!」

 

「ん?」

 

「このお店、なんて言う名前なんですか?」

 

キョトン、とした後店長さんは笑みを浮かべながらスカートをつまみ上げ、大人びた容姿に似合わない可愛らしいお辞儀をして見せてくれた。

 

「お客様、((@|アット))クルーズへようこそ。」

 

僕たちは店長の背中を追って、((戦場|フロア))へと足を踏み入れた。

 

 

 * * *

 

僕たちがヘルプに入ってから二時間くらいが経った。

 

最初の頃はラウラが物凄い事をやらかして、でもそれが何故か大ウケしちゃって大騒ぎになったりもしたけど、店長さんの指示でだんだんと滞りがなくなっていった。

 

まあ、慣れない事をやってるからちょっと疲れたかな、って思った頃………

 

カラン

 

「いらっしゃませ、@クルーズへようこそ。おひとり様で宜しいでしょか。」

 

「ああ、後から連れが三人来るから、四人かな。」

 

「かしこまりました。」

 

新しいお客さんが………って、空ぁ!?

 

何で空が………これはちょっとヤバそうな気が……だって、ね。

空だって先生な訳だし、あと三人来るって言ってる事は他の誰かも来るって事だし、他の先生とか、箒とか簪とかセシリアとか鈴とかに見られたら、ああ、とくに箒と鈴には恨みかってるから何されるか判らないよどうしようどうしよう――

 

いい感じに頭が沸騰しそうになっていると、

 

「全員、動くんじゃねぇッ!」

 

ドアを破らんばかりの勢いでなだれ込んできた男が三人、大声でどなった。

 

 

一瞬、何が起こったのか判らなかった店の中の人たちだけど、次の瞬間に発せられた銃声に絹を裂くような悲鳴が上がった。

 

「きゃぁぁぁぁッ!」

「騒ぐんじゃねぇッ!静かにしろ!」

 

入ってきた三人組の服装はジャンパーにジーパン。覆面で顔を覆って手には銃。

背中の鞄からは紙幣が数枚はみ出している。

 

うん、なんというか典型的な…『お約束』的な強盗の姿だよね。

 

まるで古い漫画から飛び出してきたみたいな。

 

 

「あー、犯人一味に告ぐ。キミたちは既に包囲されている。大人しく投降しなさい。繰り返す―――」

 

流石に駅前だけあって警察も素早く動いていたみたいだ。

窓の外を窺って見るとパトカーが道路を封鎖、ライオットシールドを構えた対銃撃戦装備の警察官が包囲網を作っていた。

 

「………なんか、」

「………警察の対応も、」

「………古。」

 

二十代の後半くらいの人たちがなんか呟いていた。

僕たちには判らない、妙な懐かしさでもあったんだろう。

 

 

「ど、どうしましょう、兄貴!このままじゃ俺たち――」

 

「うろたえるんじゃねぇッ!焦る事はねぇ。こっちには人質が居るんだ。強引な真似は出来ねぇさ。」

 

リーダー格らしき、ひときわ体格のいい男がそう言うと焦っていた他の二人も落ち付きというか、自信を取り戻す。

 

「へ、へへ、そうですよね。俺たちには高い金払って手に入れたコイツがあるし。」

 

じゃきっ、と固めの金属音を響かせてショットガンのポンプアクション機構を動かして装弾。

次は天井に向かっての威嚇射撃。

 

「きゃぁぁッ!」

 

蛍光灯が破裂して、パニックになった人が悲鳴を上げたけど、今度はリーダー格が拳銃を撃って黙らせた。

 

「大人しくしてな。俺たちの言う事を聞けば殺しはしねぇよ。わかったか?」

 

そう脅すリーダー格に悲鳴を上げていた女性客がきつく口をつぐむ。

 

まあ、何かやろうにもきっと空がどうにかしちゃうんだろうけど………

 

 

「おい、聞こえるか!安全に人質を解放したかったら車を用意しろ!もちろん、追跡の準備や発信器なかつけるんじゃねぇぞ!」

 

威勢よくそう叫んで駄賃だとばかりに拳銃を警官隊に向かって発砲。

 

弾丸はパトカーのフロントガラスを割っただけだけど、周囲の野次馬がパニック状態になっていた。

 

「へへ、奴ら大騒ぎしてますよ。」

「平和な国ほど犯罪はしやすいって話、本当っすね。」

「全くだ。」

 

暴力的な笑みを浮かべる男たち。

 

ここまでで確認できたのはリーダー格が今までに五発撃った拳銃と、一発撃ったショットガン、あと何発残ってるか判らないサブマシンガン。

他にも何か持ってるかもしれないけど……今居る場所からじゃちょっと判らないかな。

 

………空から身を隠そうと思って奥の物影に入ってたけど、助かったかな。

 

さて、人の配置は………って!

 

思わず目を疑った。

 

店の真ん中でラウラがそのまま立っていた。

 

マズイよ。思いっきり目立ってるし。

 

 

「なんだ、お前。大人しくしていろっていうのが聞こえなかったのか。」

 

案の定、リーダー格の男がすぐに近づいてきた。

 

まあ、ラウラならなんとかなるかもしれないけど、その後がね。

 

「おい、聞こえないのか!?それとも日本語が通じないのか?」

 

「まあまあ、兄貴、いいじゃないっすか。時間はたっぷりあるんスから、この子に接客してもらいましょうよ!」

「あぁ?何言ってんだ、お前。」

 

それには同意。

 

「だってほら、すっげー可愛いっすよ!」

 

うん、そうだよね。

 

「お、俺も賛成ッ!メイド喫茶って入った事無くて………」

 

二人してテヘヘと嬉恥ずかしそうにする手下にリーダーは苦い顔しながらソファにどかっと腰をおろした。

 

「ふん。まあいい。ちょうど喉が渇いていた処だ。おい、メニュー持って来い!」

 

ラウラは頷くでもなく、スタスタとカウンターの中へと歩いていく。

 

よし、今のうちにこっちも準備をしておこうかな。

 

と、ラウラが出てきた?

 

持ってるのは………氷の沢山入ったグラス?

 

「……なんだ、これは?」

 

「水だ。」

 

「いや、あの、メニューを欲しいんスけど……」

 

「黙ってこれでも飲んでいろ。―――――飲めるものならな。」

 

ラウラは突然トレーをひっくり返す。当然、氷水(氷過多)が宙を舞う。

 

ラウラはその氷を回転するような動作で掴んで、指弾の要領で弾いた。

 

「いってぇぇッ!な、なっ、何しやが――」

 

トリガーを離れていた人差し指に、瞼、眉間、喉。

的確に氷をぶつけ身動きがとれない一人(サブマシンガン装備)の懐に飛び込んでひざ蹴りを叩きこむラウラ。

 

 

「っざけやがって!このガキっ!」

 

一早く痛みから復帰したリーダーが早速発砲。

 

六、七、八、と撃っていくけどラウラはソファにテーブルに観葉植物に、ドリンクサーバーに――店内にあるありとあらゆるモノを盾にして、その素性を知らない人だったら予想もできないだろう速度で駆け抜けてゆく。

 

「あ、兄貴ッ!こ、こいつっ――」

 

「うろたえるな!ガキ一人、すぐに片づけて―――」

 

「はいはい、寸劇の続きは塀の中でね。」

 

完全に呆れてるような声。

 

「ふごぁッ!?」

 

ショットガンを持ってた方が突然白目をむいて泡を吹く。

 

何と言うか、見事としか言う事の出来ないアレを狙った一撃は男性客や男性スタッフが思わず青ざめて前屈みになるほどの精度でつま先が直撃したらしく完全に悶絶。

 

リーダーも思わず蹲りかけている。

 

 

折角だから僕も物影から飛び出して内また気味になってるリーダーの側頭部に跳び膝蹴りを叩きこんでおく事にした。

 

「ふっ!」

 

「ごあっ!?」

 

綺麗に決まってリーダー格もその場に崩れ落ちる。

 

一応、専用機持ちは必ずありとあらゆる場合――『ISが展開できない状況』も含めて『どうにかできる』ように訓練をされてるからね。

 

例外になるとすれば箒と一夏だけど、弾丸を切り払っちゃってるし、最近は空に訓練をしてもらってるらしいから、((化物|チート))の意味での例外になりつつある。

 

「目標、制圧完了。二人とも、怪我は無い?」

 

「大丈夫です、母様。」

見ればラウラも空を見習ってなのか気絶させたサブマシンガン男のアレを狙って思いっきり蹴りをくれたところだった。

その容赦の無さにまたもや…外で見てる警官も青ざめていた。

 

「まったく、二人とも行動が早すぎ。」

 

 

しん、とした店内で僕たち三人の声だけが妙に大きく聞こえる。

 

「えっと………」

「助かった、のか?」

「一体、何が………」

 

唖然としてたお客さんたちは呆然としてたけど『終わった』という実感がわいてきたらしく一気に湧き立つ。

 

「お、俺たち助かったんだ!」

「やった!あ、ありがとう!メイドさんに執事さん、ありがとう!」

 

突然に店内が騒がしくなる。

その様子を見て外に展開していた警官隊も詰めかけてくる。

 

「ふむ、日本の警察は優秀だな。」

「ラウラ、まずいって!僕たちは代表候補生で専用機持ちなんだから。ほら、空もIS学園の先生なんだし、公になるのは避けないと!」

 

「ふむ、それもそうだな。母様もこの辺りで――」

 

 

と、その時、

 

「掴まってムショ暮らしになる位なら……いっそ全部吹き飛ばしてやらぁッ!」

 

どうやら極まりが浅かったみたいなリーダーはちょっとふらつきながらも立ちあがって叫ぶなり革ジャンを広げる。

 

そこにあったのはプラスチック爆弾の腹巻だった。

 

起爆装置は――もちろん、その手に。

 

 

 

「わー、」

「最後まで古〜……」

 

誰ともなくそんな呟きがこぼれ、それを皮切りにさっきまで以上のパニックに陥る店内。

 

だけど………

 

「はいはい。散り際は潔くね。」

 

無造作に床に落ちていたフォークを拾った空がそれを投げる。

 

的確に起爆装置を持つ手に突き刺さると、リーダーは起爆装置を取り落とす。

 

「ラウラ!」

 

「了解ッ!」

 

すぐさまラウラが起爆装置を傍らに落ちていた拳銃で撃ち抜く。

 

これで予備の起爆装置なんて代物がなければ自爆はできないハズ。

 

トドメと言わんばかりに空の金的がキレイに決まってリーダーは悶絶し崩れ落ちる。

 

「さ、偶然居合わせた教員が話しつけとくから。」

 

「はいッ!ラウラ、」

「ああっ!」

 

空を残して僕とラウラは大急ぎで店の奥へと向かい、これまた大急ぎで着替えてから逃げるように店から飛び出して行った。

 

 * * *

[ちょうどそのころ]

 

「なんか、大変な騒ぎになってるみたいだな。」

「うむ………だが、空なら心配はいらないだろう。」

 

「いざとなればISもあるし、簪さんも現場に残るって言ってたし。」

 

「そうだな。……で、私たちはどうするのだ?」

 

「ん?そうだな………貰った割引券は今度使えるみたいだから――――――お、クレープ屋発見。」

実は、三人が『仮想敵をやったお礼』として貰ったのは@クルーズの株主優待割引券であった。

何故そんなモノが有るかと言うと、深いようで浅い理由があるのだが、それはまた今度語る事にしよう。

 

 

(…そういえば、簪が何やら言っていた気がするな……確か『城址公園のクレープ屋でミックスベリーを食べると幸せになれる』だったか?)

 

「折角だし、食べてこうぜ。簪さんと空にはあとで持って行くか。」

 

「そ、そうだな。」

 

箒はそう言いつつ一通りのメニューに視線を流すがどこにも『ミックスベリー』がない事に気付く。

 

(幸せになれるというのは置いてある時と置いてない時があるという事なのか?)

 

「おじさん、注文いいかな。俺はブルーベリーで。箒は?」

 

「うぅむ……迷うな。――― 一夏に任せる。」

 

「ん、それじゃあもう一個はイチゴで。」

 

あいよ、と返事を返したおじさんに一夏はさっさと二つ分の代金を支払ってしまう。

 

だが、箒はおじさんの意味深な笑みに気をとられて気付かない。

 

「ほれ。」

 

「あ、ありがとう……」

 

出来立てのクレープをはむっ、とかじる。

 

「お、旨いな。」

 

「う、うむ。」

 

箒としては一夏と一緒にクレープを食べてるという状況だけでもだいぶプラスアルファ成分が大きいのだが。

 

「ところで箒。モノは相談なんだが…」

 

「?」

 

半分ほど食べた処で一夏が切りだしてきた。

箒はなんだか判らずに首をかしげる。

 

「それ、一口貰えるか?」

 

「ッ!?」

 

あまりのことに箒はクレープを落しそうになった。

 

「嫌なら別にいいんだが……」

 

「い、いや。べつに、構わない。」

 

「そうか。いや〜、ブルーベリーとイチゴで迷ったんだよ。二個買う訳にもいかないしさ。」

 

笑いながら言う一夏に、箒は恐る恐る自分のクレープを差し出す。

 

「ん、うまい。」

 

さっそくかじる一夏。

 

「ほれ、お返し。」

 

「う、うむ………」

 

箒も控えめながらに差しだされたブルーベリーのクレープをかじる。

 

(ブルーベリーも中々……ブルー((ベリー|・・・))?)

 

ふと箒は思い出す。

 

Q.イチゴは英語で?

A.ストロ((ベリー|・・・))。

 

思い出してしまえばここからは簡単な事である。

 

(こう言う事かっ!)

 

メニューにない、隠しメニューでもなさそうなミックスベリーの噂。

 

確かに、イチゴとブルーベリーに限らずとも意中の相手と食べさせあえばそりゃ幸せになれるというものだ。

 

みるみるうちに赤くなってゆく箒の顔。

 

その紅さはクレープのイチゴのソースにも負けないくらいだ。

 

「箒?」

 

「な、なんでもないっ!」

 

残っていたクレープを一気に平らげ、

 

「先に帰るッ!」

 

箒はそさくさと学園行きのバスが出るバス停の方へと逃げるように立ち去ってゆく。

 

「………俺、なにか悪い事でもしたかな。」

 

取り残された一夏は一人、首をかしげるのであった。

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#53:史上最強のアルバイト
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