IS学園にもう一人男を追加した 〜 56話
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獅苑SIDE

 

 

今日は日曜日。

『キャノンボール・ファスト』二日前に控え、『くー』と名乗る少女について保健室に療養中の楯無さんに相談してるのだが・・・

 

楯 「・・・ロリコン」

一 「犯罪者・・・」

獅 [・・・ブチッ!]

 

案の定、この扱いだ。

とりあえず、楯無さん(怪我人)と、何故かこの場にいる一夏(唐変木)を殴っておこう・・・

 

楯 「ぃっ・・・さ、さすがに今の冗談だから」

獅 「・・・だったら、二度と言うな」

一 「は、はいっ!」

楯 「ごめんなさい・・・」

 

・・・今回はこれぐらいでいいか。大切な用事もあるし・・・

 

獅 「そういえば、何で一夏が・・・って、『亡国機業』って奴らの事か」

楯 「そう・・・遅い説明だったけどね」

 

まぁ、この前まで寝たきりだったしな・・・

つか、毎日毎日、無理して簪を抱き枕にしようとしたから、回復が遅くなったんだから、自業自得だがな・・・

 

楯 「話を戻すけど、その『くー』って女の子を監視してればいいの?

獅 「いや、警戒してくれればいいです。たぶん、危害を加えに来たとは思えない・・・一夏も頼むぞ」

一 「分かってるよ。聞いたからには、手伝わないわけにはいかないし・・・それに、今からどこかに出かけるんだろ?」

獅 「ま、まぁ・・・」

 

俺の服装はIS学園の制服ではなく、以前見繕ってもらった服に黒のジャケット。

 

楯 「・・・はっはぁ〜ん。まさか、デートかな?」

獅 「っ・・・い、いや、その・・・」

 

楯無さんの言葉に不覚にもたじろいでしまい、その様子を見た楯無さんは不敵に笑う。

 

一 「ん? 顔、赤いぞ。獅苑?」

 

ここに来て一夏の鈍さが発動したのか、俺を更に追い詰めてきやがった。

 

獅 「・・・失礼、します」

楯 「は〜い、頑張ってねぇ〜」

一 「何か良く分からんけど、頑張れよ!」

 

2人の声援? を受けて保健室を退出。

 

獅 「・・・」

コ 『ぷっ・・・ロリコンだって』

獅 「・・・砕くぞ」

 

もちろん、そこまではしないが・・・

とまぁ、『くー』に一応、忠告しておかないと。

 

獅 「という訳だ」

く 「・・・思いっきり、省きましたね?」

 

二回も説明はいらんだろ・・・

 

獅 「昼飯は机の上に置いてある。あと、出来るだけ部屋から出るな。見つかると面倒な事になる」

く 「分かりました」

 

とまぁ、『くー』にも説明したし、部屋から学園の教員に外出許可証を見せて、学園の近くを通るバスに乗って駅まで。

おそらく、待ちぼうけを受けている本音は・・・

 

本 「[モグモグ]・・・あ、やっときたぁ!」

 

喫茶店でテーブルに座って、食事中の本音。

ちなみに、服装は白の垂れた犬耳フード付きパーカーに、下はキュロットとスニーカー。

パーカーは制服同様、袖が長すぎて、握っているフォークを袖で掴んでる感じだ。

あと、原理は分からんが、犬耳が振り振りと喜んでいる犬の尻尾のように揺れている。

・・・菓子、食ってるからか?

 

獅 「それにしても・・・よく食べる・・・」

本(獅 「ふぉあんふぅう「口に食べ物を入れながら喋るな」・・・[ゴックン] いや〜、今日が楽しみで昨日、何も口にしてなくて・・・えへへ〜」

 

・・・注意した方がいいんだろうが、何だろう・・・ちょっと嬉しい、かも

 

獅 「って、口元・・・ほら、拭いてやるから」

本 「ん〜ん〜〜・・・ありがとう〜」

 

口についた生クリームやら、スポンジのカスやらを布巾で拭う。

すると、本音は席から立ち、俺に領収書を持たせて・・・

 

本 「お会計、よろしくね〜」

獅(本 「え、どうし「よろしくね・・・」・・・はい」

 

何となく、何となくだが、本音から殺気に似た感じがした気がする。

 

[カンッ!]

本 「あ、落としちゃった・・・」

獅 「・・・」

(スパナ・・・?)

 

最近、そういう出来事がなかったから忘れていたが、常に持っているのか? 本音は・・・

って、こっちの事情で待ちぼうけにさせてしまったから、本音はキレてるのか?

それで殺されたら、笑えないけど・・・

 

店 「6700円になります」

獅 「・・・」

 

本音一人で良く食えたもんだ・・・せめてもの救いは、この喫茶店は比較的に商品が安い事ぐらいか。

とりあえず、お会計・・・

 

本 「それじゃあぁ、レッツゴー!」

獅 「そんなに騒ぐな・・・って、勝手に行くな・・・」

 

垂れ耳を揺らしながら駅のホームまで走り出す本音の後に俺も走る。

 

(・・・って、かなり時間に余裕があるんだが・・・)

 

 

一夏SIDE

 

 

楯 「はぁ〜・・・」

一 「?」

 

どうも、獅苑が退出してから楯無さんの様子がおかしい。

さっきから窓の方を見つめ、ため息ばっか。

 

楯 「デート、かぁ・・・私も一回ぐらい・・・」

一 「・・・羨ましいんですか?」

楯 「っ! ち、違うわよっ! 勘違いしないで!!」

 

顔を真っ赤にした楯無さんが枕を俺に投げつける。

 

一 「おっと!」

 

だが、俺だって鍛えられたんだ。

千冬姉や箒、そして楯無さん本人にも・・・

これぐらいの事は集中していれば避けられる

 

楯 「うぅ〜・・・あ!」

一 「ん?・・・え? あ、ちょ!」

 

怪我人のはずの楯無さんが、俺の首根っこを掴んで保健室から走り出す。

 

一 「ど、どこに行くんですかぁ!?」

楯 「2人の後を追うに決まってるでしょ!」

 

どこに行ったかも分からない獅苑をどうやって探すと?

 

楯 「あら、忘れた? 私は更識家当主よ」

一 「そ、それは知ってますけど・・・!」

 

俺が答えると、楯無さんはニッと笑って、携帯電話を取り出す。

 

楯 「なら、人探しなんて、お手のもん・・・あ、もしもし、虚ちゃん? 実は・・・」

 

 

獅苑SIDE

 

 

獅 [ゾクッ!]

本 「ん〜? どうしたの〜?」

 

現在、俺達は遊園地『Only TWO Dream』のすぐ傍のベンチに腰を下ろしている。

 

獅 「い、いや、何でもない・・・それより、やっぱり早く着すぎたな」

 

この場に着いて開場時間まで、1時間以上も時間が余ってしまったのだが、特にする事無く、ただ座って本音が俺の腕にしがみついていただけ。

 

本 「その分、獅苑くんにくっ付けるからぁ、いいの〜!」

獅 「・・・///」

本 「えへへ〜、顔真っ赤〜」

獅 「っ・・・さっさと行くぞ。開場時間だ」

 

つんつんと、指で頬を突く本音の置いて、通常の入り口とは異なる入り口に向かう。

 

本 「あぁ〜、待ってよぉ!」

 

だが、すぐに本音が俺の腕にしがみつき、入り口の係員に"優先チケット"を見せる。

この"優先チケット"は入場無料で半年前からハガキによる抽選で10組しか、手に入らないのだが・・・まぁ、"家系"の力って事か?

 

係1 「はい、確認しました。ようこそ『2人だけの夢の国へ』!」

 

係員達に迎えられて、俺達は園内に入る。

 

獅 「・・・『Only TWO Dream』2人だけの夢」

本 「夢の国・・・寂しいよね、2人だけなんて・・・」

 

まぁ、ここはカップルにとっては絶好のデート場所。

辺りを見渡すと、ベッタベタとくっ付き合う男女がウジャウジャと居る。

俺達もそのグループに入ってしまうのだが、本音がここを選んだ目的は・・・

 

本 「あ! あそこだぁ!」

 

この園内に設置されている喫茶店。

そこに売られている『レモンシロップケーキ』が絶品で値段もお手軽で、テレビに出るほど有名みたい。

つまりは、お菓子目当てでここを選んだのだ。

まぁ、俺も気になるが・・・

 

本 「♪〜・・・」

獅 「・・・」

 

おいしそうにケーキをほおばる本音を見て、無意識に笑みが零れてしまう。

俺もちょいちょいケーキを摘みながら、紅茶の入ったカップに口をつける。

だが、途中から本音の顔が険しくなり、食べ終えた皿にフォークを降ろす。

 

獅 「どうした?」

本 「う〜ん・・・やっぱり、獅苑くんとお姉ちゃんが作った物の方がおいしいな〜って・・・」

獅 「・・・そ、そう」

 

褒めてくれたのは嬉しいんだが、店内で言う事じゃないだろう・・・

店内が騒がしいから、店員さんには聞こえてなかったけど・・・

 

獅 「・・・なら、遊びに行くか?」

本 「うんっ!」

 

バッと、立ち上がった本音が俺を席から無理矢理立たせ、手を引かれる。

 

本 「全部の乗り物をコンプリートしちゃうぞっ! おうー!」

獅 「お、おう〜・・・」

 

 

投稿者SIDE

 

 

楯 「・・・」

 

2人の後をつける楯無はサングラスを下にずらして、目標を確認する。

その脇に簪のおさがりの服を着せた『くー』。

 

く 「・・・あの?」

楯 「しっ・・・今は大人しくしてて頂戴」

く 「・・・」

 

状況についていけない『くー』はとりあえず口を閉じ、楯無はトランシーバーを取り出した。

 

楯 「こちら"リーダー"、ターゲットが移動した。オーバー?」

虚 『確認しました。オーバー?』

簪 『こ、こちらも確認しました』

セ 『こっちも確認しましたわ』

 

【編成】

楯無・(くーちゃん)

虚・一夏

箒・簪

セシリア・鈴

 

一 『って、ここまでやる必要があるのか? てか、何でみんな来てんだよ?』

鈴 『何言ってるのよ。こんな面白いイベント、見逃すはずないでしょ』

箒 『確かに、獅苑が一体、どういう反応するかは見物だな』

簪 『そんな、言い方は、ちょっと・・・』

セ 『そんな事より、2人が動き出しましたわよ』

楯 「各チーム、行動開始」

全 『了解』

 

 

 

 

獅 「・・・ジェットコースター、ね」

 

『Cries long time』

乗ってから5分以上もアクロバティックなコースを最高速度100km/hで走行するアトラクション。

夢の国に不釣合いなアトラクションなのだが、ここだけ特別って訳でもなく、ほか各所にもこういったアトラクションがある。

 

本 「うっわはぁ! 高い高〜いっ!」

 

チェーンリフトで徐々に地上から離れていくコースターにレバーで体が固定されている本音が腕や脚をジタバタさせて騒ぎ始める。

獅苑も内心、初めて乗るジェットコースターにかなり興奮していた。

そして、最初の下りの傾斜にさしかかり、コースターが速度を上げて急降下する。

 

全 「きゃああああああっ!!」

獅 「っ!?」

 

全員が叫びに近い声を張り上げてるのに、ビビる獅苑。

 

虚 「いやぁあああああっ!!!」

鈴 「ちょ! こんなに速いなんて聞いてないわよっ!!」

獅 「ん!?」

 

楽しげな叫びと混じって、虚の悲鳴と鈴の慌てた声が獅苑の耳に入る。

 

獅 (何で2人が・・・いや、でも、虚さんがあんな叫び声を上げるのは想像できないし、人違いか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、乗れなかったチームは近くの休憩所で、コースターの様子を見ているのだが・・・

 

楯 「・・・そういえば、虚ちゃん、絶叫系が苦手だった気が・・・」

簪 「あ・・・」

箒 「え! それって・・・かなりマズイのでは」

 

100km/hほどのスピードを出しているコースターに目を移す3人。

良く見ると、気絶している虚の肩を揺らす一夏と、その後ろの席で失神寸前の鈴が確認できた。

鈴の隣に座っているセシリアは、何か物足りそうな顔をしているが。

 

3人 「・・・」

く 「[モグモグ]・・・?」

 

急に黙り込む3人。

その様子をくーちゃんは首を傾げて黙々とランチを口にしていた。

 

簪 「・・・終わったみたい」

楯 「そ、そうね・・・」

 

 

 

 

 

一 「ちょ、ちょっと、虚先輩!? 大丈夫ですか!?」

虚 「・・・」

セ 「これは・・・重症ですわね。こちらもですけど・・・」

鈴 「世界が・・・ぐ〜るぐる・・・」

 

ベンチに腰を下ろして、遠くを見つめる虚と鈴。

 

セ 「以外ですわね。虚先輩もそうなのですが、鈴さんまでこんな状態になるなんて」

一 「絶叫系には強いと思ってたんだけど・・・」

 

一夏はコースターのコースを眺める。

 

一 「セシリアは平気だったんだな」

セ 「ええ。子供の頃から各国の乗り物に乗ったことがありまして。あれ以上のアトラクションは世界にいっぱいありますわ」

一 「へ〜、なら、いつか案内してもらおうかな?」

セ 「は、はい! その時はわたくしがエスコートいたしますわ!」

 

目を輝かせて、喜ぶセシリア。

 

虚 「・・・」

鈴 「・・・」

一 「で、この2人どうする?」

 

 

 

 

 

 

本 「あはは〜! 楽しかったねぇ!」

獅 「そ、そうか? 逆に酔いそうなんだが・・・」

 

口元に手を添えて、逆の手を本音に引かれている獅苑。

 

本 「次行ってみよぉ!!」

獅 「おー・・・」

 

さて、次は『ゴーストマンション』・・・単純にお化け屋敷のマンション版である。

 

獅 「リアルだな・・・」

 

エレベーターに乗ってマンション最上階へ。

ここから下まで下り、一階を目指すのだが・・・

 

お化け 「がぁあっ!」

 

当然、途中にはお化け(役の人)が驚かしにくる。

 

本 「わぁ! すっご〜いっ!」

お化け 「っ・・・」

 

だが、本音は業務中のお化けに詰め寄って、ペタペタと体を触れ始めた。

お化けは予想外の反応に戸惑い、その場で硬直。

 

獅 「仕事の邪魔をするな・・・」

[コツンッ]

本 「ん・・・えへへ、ごめんなさ〜い」

 

獅苑は本音の手を引き、業務中のお化けに頭を下げて、最初の階段を下った。

 

お化け 「・・・」

 

お化けは獅苑達が降りた階段を見つめた後、次のお客さんに備えて、身を隠す。

 

一 「お、着いたみたいだな」

セ 「・・・不気味ですわね」

 

次のお客は虚と鈴を楯無or『くー』に預けてきた一夏とセシリア。

 

お化け 「がぁあ!」

 

お化けも先の事を引きずらず、二人の前に姿を現す。

 

セ 「きゃあっ!」

一 「おっと・・・」

 

驚いたセシリアを一夏が支える。

 

お化け 「・・・」

 

だが、お化けは気づいていた。

セシリアのワザとらしい驚き方に。

そして、この一夏(ニブチン)がその事実にまったく気づいてない事も。

 

セ (い、いい一夏さんが、こんな近くに・・・)

 

自分から近づいたくせに、セシリアは耳まで顔を赤くする。

 

一 「ん? セシリア、顔が赤いけど、具合でも悪いのか?」

セ 「そ、そんな事ありませんわっ! それより、早く行きませんと獅苑さんとの距離が広がってしまいますわ」

一 「ああ、そうだな」

お化け (・・・リア充なんて・・・)

 

彼氏いない暦=歳のお化けが、悪意を込めた視線で2人を見るものの、次のお客に備えて身を隠す。

そして、エレベーターから降りてきた箒と簪がお化けの前を通過し、今回も普通に2人の前に飛び出すお化け。

 

箒 「きゅ、急に出てくるなぁ!」

お化け 「グフッ!?」

 

だが、飛び出した瞬間、箒に蹴り飛ばされ、人工の茂みに埋まる。

 

箒 「はぁ、はぁ・・・」

簪(箒 「・・・もしかして、こういうの、苦手? あ、だから、一夏君と一緒に入りたがって「ち、違うっ! 断じて違うからなっ!」・・・ぷっ」

 

ズカズカと早歩きで階段に向かう箒の後ろを笑いを堪えながらついていく簪。

 

お化け (・・・私、この仕事やめようかな・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

【時間を飛ばして、休憩タイム・・・】

 

獅 「ふぅ・・・何か、飲む物買ってくるか?」

本 「あ、うん。ありがとう・・・」

獅 「・・・?」

 

さっきまでハイテンションだった本音が何故か元気がない。

獅苑は疑問に思いながらも、飲み物を買いに行った。

 

男1 「ねぇねぇ、俺達と一緒に回らない?」

女1 「え〜、どうする〜?」

女2 「いいんじゃない? 暇してたし〜」

 

女尊男卑の世中でも、ナンパしてくるバカな男はいる。もちろん、それに引っかかる女も。

 

本 「はぁ・・・(私って、女の魅力ないのかなぁ)」

 

フードの耳がシュンと垂れ、服を摘みながら、自分を確認する本音。

昔から、ナンパなどのたぐいは全部、楯無や虚に持っていかれていて、簪も誘いを受けたことがあるそうだ。

 

本 (・・・って、獅苑くんは私のどこを好きになったんだろう?)

獅 「ほい、買ってきた」

 

気配もなく本音の元に帰ってきた獅苑は、買ってきた缶ジュースを本音の頬に押し当てる。

 

本 「ひゃあっ!?」

獅 「何、難しい顔してるんだ? はい、オレンジジュース」

本 「あ、ありがとう・・・」

 

缶を受け取った本音はプルトップに指をかけようとするが、ツルツルとすべって指がかからない。

 

獅 「・・・」

 

その様子を見て、獅苑は自分が開けた缶を渡そうとするが・・・

 

本 「だ、大丈夫だよぉ・・・もう、子供じゃ、ないからぁ」

獅 「・・・」

 

カリカリカリカリと、指を滑らせても本音は諦めずに10分・・・

 

本 「う、うぅぅ・・・」

 

案の定、泣き出した・・・

 

 

 

 

 

 

 

【気分転換に土産コーナーへ・・・】

 

本 「グスッ・・・どうせぇ、私は子供、ですよ〜・・・」

獅 「・・・これ、食べる?」

 

未だに心に傷を負っている本音に常備している飴玉を差し出す獅苑。

本音はそれを黙って受け取り、飴玉を口に放る。

それから、1分・・・

 

本 「もう一個ぉ!」

獅 「・・・ほい」

 

スッカリ、機嫌が直った・・・

 

獅 (それにしても、さすがは夢の国・・・値段が半端じゃない)

 

シャーペン[一本700円]を指で弄びながら、違う場所に目を移す獅苑。

 

獅 「ぁ・・・」

 

可愛らしいぬいぐるみ達が並ぶカウンターに目が行き、獅苑は導かれるようにそのカウンターに近づく。

 

獅 「・・・」

本 「・・・ほしいの?」

獅 [・・・コクッ]

 

"はははっ・・・"と、苦笑いした本音。

とりあえず、手の平サイズの虎のぬいぐるみを1つお買い上げ。

(ちなみに、金銭的な問題でぬいぐるみ1つしか買えなかった)

 

獅 「♪〜・・・」

本 (こういうのって普通、女子がする反応の気が・・・まぁ、獅苑くんだしねぇ)

獅 「・・・あ」

本 「ん? どうしたのぉ?」

 

トラのぬいぐるみを抱きしめていた獅苑が装飾品売り場で立ち止まった。

そして、白と黒のペアのブレスレットに手を伸ばす。

 

獅 「・・・これさ、買ってみないか?」

本 「え? 別にいいと思うけどぉ・・・どしてぇ?」

獅 「いや、深い意味は、ない・・・///」

本 「???」

 

 

 

 

 

楯 「ふ〜ん、あういうのに興味があったなんてね・・・脅しネタが増えた」

く 「ネタ、ですか・・・あと、"あういうの"とは?」

 

いつの間にか、仲良くなっている2人。

 

楯 「ペアルックみたいなものよ・・・って、分からないかな?」

く 「すみません」

楯 「謝らなくていいわよ。それより、お腹すいてない?」

く 「すいてますけど、お昼は持ってきてます」

 

くーちゃんは白い包みを取り出し、楯無に見せる。

それは、獅苑が得意でもないのに作った、普通の弁当だった。

 

楯 「・・・少し、食べてもいい?」

く 「? いいですけど・・・」

 

包みを開いて、弁当の中身を摘む楯無。

 

楯 「・・・普通においしい・・・」

く 「・・・それだけ、ですか?」

楯 「うん。それだけ・・・」

 

気まずい空気が流れながらも、黙々と弁当を食べる2人だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

【収拾がつかないので、夜までスキップ・・・】

 

 

獅 「大分、時間が経ったな・・・帰るか?」

本 「その前にアレ乗ろうよぉ、アレっ!」

獅 「・・・観覧車?」

 

本音が指を指す方向には、綺麗なライトで彩られた観覧車。

 

獅 (あの行列に並ぶのか・・・)

本 「ほらほらぁ、早く行こうよぉ!!」

獅 「あぁ、分かった・・・元気だなぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

一 「・・・で、後どれぐらいつける気なんですか?」

楯 「う〜ん・・・もういいかな。これ以上、面白いハプニングは期待できないし」

箒 「逆に、"ハプニング"はこっちにあった気が・・・」

虚・鈴 「・・・」

楯 「う、虚ちゃん? な、何で、怖い顔してるのかな?」

一 「ま、待て、鈴! 明らかに俺を責めるのは間違ってるだろっ!」

虚 「あなたが忘れていたばかりに・・・私は・・・」

鈴 「・・・何となく、一夏を殴りたい」

一 「え!? そんな理由っ!?」

虚 「そんな理由、ですか・・・ふふ、ふふふ」

一(鈴 「いや、今のは虚先輩に言ったんじゃなくて、鈴に「あたしが何だっていうのよぉっ!!」

 

・・・・・・

 

セ 「まぁ、あそこの4人は置いときましょう」

箒 「だな・・・」

簪 「それで、どうするの? 学園に、帰る?」

虚 「せっかくですから、私達も観覧車に乗りませんか?」

 

制裁し終えた虚が会話の輪に入ってくる。

 

楯 「・・・」

簪 「え、えと・・・」

虚 「大丈夫ですよ。簪お嬢様は・・・[ゴニョゴニョ]」

簪 「は、はい・・そう言えばいいんですね」

 

助言を貰った簪は生気の抜けた楯無に話しかける。

 

簪 「一緒に、観覧車、乗ろう・・・お、お姉ちゃん」

楯 「[ピクッ!]・・・うん♪ 乗ろう乗ろうっ!」

簪 「うわっ、そんな急がなくても・・・」

 

ハイテンションの楯無が簪の手を引いて、観覧車の列の方まで走っていく。

 

鈴 「ホラ! 一夏も行くわよっ!」

一 「・・・」

箒 「お、おい! 勝手に行くんじゃないっ!」

 

拒否できない一夏を引っ張っていく後ろを箒がついていく。

 

虚 「・・・あなたは行かないんですか?」

セ 「ええ、まぁ・・・わたくしより、馴染みのあるお2方の方がいいかと」

虚 「そうですか・・・くーさんは?」

く 「私はここにいます」

 

くーちゃんは近くのベンチにちょこんと座る。

それを見た2人は、くーちゃんを残していくわけがなく、同じベンチに座り観覧車を眺めた。

 

 

 

 

 

簪 「お姉ちゃん」

楯 「うん? 何〜?」

 

ベッタリと簪に抱きついている楯無。

 

簪 「痛い・・・」

楯 「じゃあ、もう少し、緩くするから」

簪 「そういう事じゃ・・・はぁ、もういいよ」

楯 「・・・?」

簪 「それで、獅苑さんとはどうなの?」

楯 「えっ! ど、どうして、いきなりそんな質問?」

簪 「い、痛いって」

楯 「あ、ごめん・・・」

 

驚いた腕に力が入ってしまったようで、楯無は簪から距離を取り、手をモジモジさせる。

 

楯 「そ、その、"どうなの"って?」

簪 「だって、最近の獅苑さん、本音との特訓や、一人でいる事が多いから、お姉ちゃんとはどうなのかなって・・・」

楯 「・・・特に何にもない」

簪 「何も?」

楯 「獅苑君は本音ちゃんに惚れているのは最初から知ってたから、私も出来るだけ2人っきりの時間を作ってあげたいって思ってるの。でも・・・」

簪 「我慢できなくて、今日みたいに尾行したんでしょ?」

楯 「[コクッ]・・・簪ちゃんはどっちを応援してるの? 私? 本音ちゃん?」

簪 「何か、難しい質問・・・う〜ん」

 

かけていた眼鏡を仕舞って、腕を組む簪。

 

簪 「応援は・・・してないかな、正直言って」

楯 「ぇ? どうして・・・?」

簪 「だって、お姉ちゃんも本音も本当に欲しいものは、力ずくって言ったら失礼だけど、自分で取りに行こうとするでしょ。だから、獅苑さんがどっちを選ぶとかはそこまで気にしてないの・・・あ、でも、2人には幸せになってほしいって思ってるよ!・・・ふぅ」

 

喋りすぎて疲れたのか、深呼吸する簪。

 

楯 (私って、そう思われてたんだ・・・)

簪 「でも、私から見た限り、獅苑さんはもしかして、お姉ちゃんに気を遣ってる気がする」

楯 「・・・やっぱ、そうなのかな・・・はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

本 「それって、逆にヒドイ仕打ちじゃない?」

獅 「・・・やっぱ、そうなのか・・・はぁ」

 

向かい合わせに座っている2人。

獅苑はショボンと、うな垂れて、トラの足2本を弄る。

その左手首には、黒いブレスレット、本音の右手首には白のブレスレットがはめられている。

 

本 (これじゃあ、納得できないよぉ。こんなんで会長さんに勝っても罪悪感しか残らないし・・・)

獅 「・・・答えは出す。必ず・・・」

本 「・・・なら、私も何も心配しな〜い!」

 

ぼすっと、獅苑の胸に埋まる本音。

ちなみに、トラのぬいぐるみは挟まれる事無く、獅苑の片手に収まっていた。

 

獅 「そういえばさ、本音って明後日の行事に出るのか?」

本 「ううん、出ないよ〜。でも、警備で会場には行くけどぉ・・・獅苑くんも行くんでしょ〜?」

獅 「俺は・・・行かない」

 

"『くー』をまた1人にするのは"と思った獅苑は、。

 

本 「えぇ〜、どうして〜!? すっごい盛り上がるんだよぉ!」

獅 「ちょっと、事情があってな・・・」

本 「むぅ〜・・・でも、くれぐれも私の知らないところで怪我とかしないでね」

獅 「・・・ああ」

 

返事を受け取った本音は満足そうに笑い、窓から見える夜景を眺める。

獅苑も習い外に目を向け、観覧車が一周するまで2人は口を開かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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投稿者SIDE

 

 

兵1 「侵入者発見! 6-Dエリアに至急援軍を頼む! 繰り返す、6-Dエリアに至急援軍を頼む!」

 

北アメリカ大陸北西部、第十六国防戦略拠点。

本来ならば、軍事関係者でも知られない場所なのであるが、今はそこに銃声が響いていた。

 

マ 「・・・展開」

 

その侵入者であるマドカが『サイレント・ゼフィルス』を装着して、兵士に向けて『スターブレイカー』の実弾射撃。

だが、兵士達を殺さずに、ギリギリ致命傷を外していた。

 

マ (面倒だな・・・殺さないというのは)

 

"ISで人殺しをしてはいけない"というスコールの命令。

もちろん、『R』にも、その命令は下っていたが、状況的には止む終えなかったため、ISによる基地内部からの強襲を決行したのだ。

 

兵2 「そのISを使っているということは、報告書にあった組織の者だな!? 米国にここまでしといて、目的は一体何なんだ!?」

マ 「・・・この基地に封印されているIS、『銀の福音』(シルバリオ・ゴスペル)をいただきに来た」

兵2 「な、何っ!?」

 

驚いているところをまた急所を外して、兵士の体を撃ち抜く。

 

マ 「・・・」

 

マドカは倒れた兵士達を見下すように見て、基地内の地図をウィンドウに出し、通路を曲がり、下り、進んでいった。

 

マ 「・・・ここは?」

 

強奪目標へ向かう途中、一回り広い通路に出る。

マドカが周りを見渡していると、ステルスで姿を隠していた"誰か"が放った光の羽がゼフィルスの装甲に突き刺さり、爆発した。

 

マ 「っ!」

 

爆発した衝撃で吹き飛ばされたマドカは、壁にぶつかる直前に体を回転させ、スラスターを逆噴射。

だが、その0.5秒の静止を相手は見逃すはずがない。

 

ナ 「"あの子"は渡さないっ・・・」

 

『銀の鐘』(シルバーベル)試作壱号機・腕部装備砲(ハンドカノン)バージョン。

本機の装備されているものよりも出力だけが上回るシルバーで塗装されたそれを、姿を現したナターシャは両腕に抱え、生身の体で撃ち続けている。

そして、エネルギーショットをを撃つたび、ナターシャの艶やかな金髪が反動によって激しくも美しく舞い踊る。

 

マ 「お前は・・・」

ナ 「ナターシャ・ファイルス。国籍は米国、ISのテストパイロット。そして『銀の福音』の登録操縦者」

 

説明しながらも、攻撃の手を緩めないナターシャ。

だが、意識をさらに研ぎ澄ませたマドカには、生身であるナターシャの攻撃はそれ以上当てることが出来なかった。

 

ナ 「くっ・・・」

マ 「邪魔だ」

 

右腕でナターシャを薙ぎ払い、壁に叩きつけられたナターシャの頭を掴み上げるマドカ。

ブラーンと、骨が折れた両腕両脚が垂れ、絶体絶命のナターシャであったが、その瞳には衰えてはいない。

 

ナ 「ふ、ふふ・・・」

マ 「・・・何が可笑しい?」

ナ 「ふふふ・・・私の役目はここで終わり。けれど、目的は果たしたわ」

マ 「?」

 

ナターシャが呟いた瞬間、基地通路の床が轟音とともに崩れ、煙の中から出てくる虎模様の一機のIS。

 

マ 「っ!?」

 

そのISが装備されている投げナイフをゼフィルスに突き立て、ナタルを掻っ攫う。

 

イ 「ナタルは返してもらうぜ、亡国機業(ファントム・タスク)!」

マ 「ちっ、アメリカ第三世代型『ファング・クエイク』か・・・」

イ 「おう! そして、国家代表"イーリス・コーリングだぁ!」

 

ナターシャを抱えたまま、ファングの拳がマドカの顔面を狙い、咄嗟に盾にした『スターブレーカー』がグニャリと曲がった。

 

マ 「くっ・・・」

 

マドカは使用不能になった『スターブレイカー』を粒子にしてIS内に収納(クローズ)、すぐさま距離を取る。

すると、イーリスは格闘戦に邪魔なナタルを雑に床へ放り投げた。

 

ナ 「・・・イーリ? 私、怪我人なんだけど」

イ 「知ってる・・・待ってろって、今から倍返しでアレをボコるからよ」

ナ 「私が言いたいのは、そういう事じゃないんだけどね・・・」

イ 「???」

 

ため息交じりのナターシャをイーリすは不思議そうに眺める。

すると、マドカはピンク色のナイフを逆手に持って、突撃してきた。

 

イ 「おっと・・・」

 

イーリスも呼び出したサバイバルナイフで迎え撃ち、刃同士が金属を鳴らす。

 

イ 「おいおい、お前、映画とか見たことない奴かよ。ヒーローが口上述べてる時は出番待ちでポツンと、立っているもんだろうがよ」

マ 「・・・お前にヒーローは似合わないと思うが?」

イ 「あ、てめぇ! 私が気にしている事をっ!」

 

逆鱗に触れられたイーリスは、力任せにマドカを押し、距離が離れたところで右腰に装備されている『鎖鎌(シザーアンカー)』を左手で投げつける。

 

マ 「こんなもの・・・・・・っ!」

 

見え見えの攻撃を左に避けようとしたマドカだが、鎌の柄と刃の接合部分から小型スラスターが点火し、ゼフィルスの右腕に巻きついた。

 

イ 「これで、逃げられねぇだろ!」

 

左手で鎖を掴みマドカの動きを止め、右手に持っていたナイフを投擲。

 

マ 「くっ!」

 

マドカは左手に持っていた逆手ナイフで鎖を断ち切り、右手に呼び出した小型レーザーガトリングでナイフを撃ち落す。

 

ス 『エム、タイムリミットよ。下がりなさい』

マ 「・・・了解」

 

相手が国家代表だろうと、マドカなら無理をすれば倒せるだろうが、ここは敵基地の中。しかも、次の作戦に支障が出ると判断した結果、マドカはスコールの帰還命令に従い、通ってきた通路を戻っていく。

 

イ 「逃がすかっ!」

 

イーリスはもう片方の腰に装備されたシザーアンカーを投げつけるものの、後ろに体を向けたマドカの小型レーザーガトリングによって撃ち落されて、そのままマドカは前面にスラスターを全て向け、後退瞬時加速(バッグ・イグニッション・ブースト)を行う。

 

イ 「器用な奴だぜ」

 

感心したように言うイーリスだが、マドカを逃がす理由にはならない。

イーリスも瞬時加速でマドカを追い、マドカは後退しながら正確にイーリスを狙う。

 

イ 「待ちやがれっ!」

 

マドカと同じスピードで追うイーリスだが、マドカの射撃を回避しなくてはいけないため、次第に距離が開いていく。

 

イ (まずい、ここで勝負をかけなきゃ逃がしちまう・・・)

 

出口が近づくにつれ、焦りが出てくるイーリスは意識を集中させる。

『ファング・クエイク』のスラスター4基による個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)。

成功率40%と心もとない数字ではあるが、今、使わなければ意味がない。

 

イ 「うらぁあああっ!」

マ 「っ!」

 

イーリスのアクションに気づいたマドカはビットを射出して、一斉射撃でイーリスの動きを止めようとするが、イーリスは弾を喰らうのをお構いなしに装甲が破損しようがSEが削られようが、機体の速度を上げて、マドカに手を伸ばす。

 

イ 「獲ったっ!」

 

確実に捕らえられる距離にまで詰めたイーリス。

だが、マドカは笑って・・・

 

マ 「・・・そうか?」

イ 「なぁ!?」

 

シールドビット『エネルギー・アンブレラ』にイーリスを阻み、ビットを自爆させた。

 

イ 「く、くそっ・・・」

 

阻んできたシールドビットによる失速、爆発による衝撃と急停止。

結局、そのせいでマドカから突き放され、外に出た時には遥か向こう側へ飛んでいくゼフィルスの姿を確認できた。

 

イ 「ああっ、ちくしょう!」

 

悔しさに拳を叩く。

ファングの武装でもあるその拳は、手の平にぶつかった瞬間、鈍い金属音を辺りに響きかせたのだった。

 

 

 

 

 

 

ス 『一度、こちらに戻ってきなさい。まだ時間はいっぱいあるし、怪我もしてるのでしょう?』

 

ナターシャが最初に放った光の羽がマドカのあばら骨を折っていた。

そのほかにも、各所に打撲に近い傷を負っている。

 

マ 「・・・了解」

ス 『大丈夫よ。ちゃんと、時間どうりに日本に送れるよう手配しているから』

マ 「・・・そこに『No.50』はいないのか?」

ス 『ええ。フラン博士の所に行ったわ・・・あと、これから彼の名『B』よ。亡国機業(ファントム・タスク)の一人として、ね』

マ 「・・・」

 

スコールの声が少し寂しい感じを感じ取ったマドカは、何も言わずにいると、スコールの方から話題を変える。

 

ス 『あと、私も少し出かけるから』

マ 「・・・」

 

スコールがどこに行こうが、マドカにとっては関係のない事。

マドカは無言で答えて通信を切り、傷を癒すためにスコールが指定した場所まで、さらに加速した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【フランス】

 

 

シ 「ふぅ・・・やっと、着いたよ」

レ 「ははは・・・」

 

道に迷って約2時間。

シャルロットの道案内のおかげで、お披露目時間ギリギリに会場に到着した。

 

レ 「じゃあ、私は会場に行ってるから」

シ 「あ、はい・・・」

 

手を振って表会場に向かうレーアに手を振リ返したシャルロットは会場の裏手に。

 

シ 「あ・・・」

タ 「・・・」

 

新型機に向かうシャルロットの前には、廊下の壁に背中を向けているターフィス。

だが、シャルロットはすぐに視線を外し、ターフィスの前を横切る。

 

タ 「今日は大勢の官僚達がご参加される。無礼のない様に」

シ 「・・・」

タ 「無視ですか・・・随分と偉くなったな!」

シ 「っ!?」

 

ターフィスに胸倉を掴まれるシャルロット。

シャルロットは咄嗟に身を翻し、ターフィスの手から逃れる。

 

タ 「学園で何がお前を変えたかは知らないが、所詮お前は私の役に立たねば、何の意味のない存在だ。その事を忘れてしまっては困るんだよ」

シ 「くっ・・・」

タ 「ですがまぁ、それもすぐに気づく・・・ですよね、オータム様」

シ 「え・・・?」

 

後ろを振り向いたシャルロットの先には、三角錐形水晶のペンダントを片手で弄んでいるオータムがだるそうに立っていた。

 

オ 「ったくよぉ、待ちくたびれたぜ」

タ(オ 「すみません。この者の到着が予定より遅くなってしまい「うるせぇよ・・・」・・・は、はい?」

 

シャルロットを無視して横切ったオータムがターフィスを殴り飛ばす。

 

オ 「てめぇの声を聞いてるだけで、ムカつくんだよ。ここで殺してやろうか? ああぁん!?」

タ 「ひ、ひぃぃ!」

 

オータムの眼光に恐れ、ターフィスが尻餅をしきながら後ずさる。

 

シ 「・・・リヴァイブ」

 

そんな中、シャルロットは『ラファール・リヴァイブ・カスタムU』を展開。

 

オ 「お、やっぱ、生みの親が心配か?」

シ 「そんなんじゃないよ。僕はただ、自分の国で勝手な事はしてるあなた達を捕まえるだけ」

オ 「スッキリした返答じゃねぇか。いいぜぇ、『こいつ』のテスト運転も兼ねるするか・・・」

 

三角錐の水晶を握りしめて言ったオータムが光の粒子に包まれ、次の瞬間には青白い塗装の機体が現れた。

 

シ 「っ! その機体は・・・」

オ 「そうだぜ。お前が乗るはずだった『ラファール・リヴァイブ・零型』だ・・・どうだ、驚いたか?」

 

不敵な笑みを浮かべたオータムが"大口径対戦車ライフル『レヨン』"を発砲。

その弾丸を『ガーデン・ガーデン』のシールドで防いだシャルロットは、両手に重機関銃『デザート・フォックス』を展開する。

 

シ 「次はこっちの番だよ!」

オ 「来いよっ!」

 

機関銃から雨のように放たれる弾丸。

だが、オータムは手元に三角形に物体を3つ出現させ、目の前に放る。

すると、その3つの物体が網のようにお互いを結びつけ、飛んできた機関銃の弾に絡みつく。

 

シ 「なっ!?」

オ 「驚くのはまだ早ぇぞっ!」

 

オータムはさっきと同じ三角形の物体をシャルロットに投げつけ、エネルギー体の網がシャルロットを捕縛する。

 

オ 「どうだ? これが零型の特殊装備(オリジナル)、『ヘリオス』は?」

シ 「は、外れない・・・」

オ 「暴れれば暴れるほど、網が絡みつくぜ。それに、今のお前は無防備状態、便利な盾も出せないだろ」

 

『ヘリオス』は実弾、ビーム兵器を防ぐだけでなく、相手の動きを封じ、なおかつISネットワークなどの通信を遮断する能力を持っている。

そのため、シャルロットの『高速切替(ラピッド・スイッチ)』も使用できない。

 

タ 「お、オータム様! この場での戦闘は・・・」

オ 「ちっ・・・わぁったよ! 離れりゃいいんだろうが!」

 

叫んだオータムが『レヨン』で天井を壊し、シャルロットを捕らえた網を掴み、外に飛び出す。

 

官1 「な、何事だ!?」

官2 「警備の奴らはどうしたっ!? 何で、会場で戦闘が起きる!?」

 

会場の広場では、官僚達が突然の事に慌て始める。

 

オ 「けっ、ジジィ共が・・・まぁいい。さぁて、お前をどう料理しようか。てめぇの父親からは"女としては生かせ"と言われているが・・・アイツの命令を聞くのも癪だしな。ここで殺すか」

 

オータムは『レヨン』の銃口をシャルロットの眉間につける。

例え、絶対防御が発動しようとも、ゼロ距離射撃なら弾丸が貫通することなかれ、大脳に多大なダメージを負うだろう。

 

オ 「恨むなよ。このままいけば、てめぇは一生奴隷扱いだ。"ISで人殺しはするな"って言われてるが、せめての恩情だ」

シ 「くっ・・・」

 

指を引き金にかけたオータムは、笑う事無く、まさに"恩情"の気持ちで引き金を引こうと・・・

 

フォ 「ウチの後輩に何してるんッスか?」

オ 「っ!?」

 

オータムが気づいた時には大鎌が『レヨン』の斬り、同時にオータムは柄の部分で叩きつけられる。

 

シ 「せ、先輩、どうしてここに・・・?」

フォ 「暇つぶしで来ただけなんッスけどね・・・」

 

"自分は面倒事に関わりたくなかった"と呟きながら、大鎌『スィンズ』で『ヘリオス』の網を切って、シャルロットを解放する。

 

シ 「ありがとう、ございます・・・」

オ 「ちっ・・・」

 

舌打ちをついたオータムは体制を立て直し、破壊された『レヨン』を収納。

 

フォ 「2対1ッスけど、どうするんッスか?」

オ 「2対1? こっちが私1人だと思ってるのか?」

シ 「・・・もしかして、この熱源は」

 

上空から、こちらに向かってくるジェット機。

丁度、シャルロット達の上空を通過すると、その通過地点で飛び出した人影が1つ。

 

R 「行くよ、ラビィーネ!」

 

漆黒の装甲に覆われた『シュヴァルツェア・ラビィーネ』が前腕のグレネードを急降下しながら、オータム以外の2人に向かって発射。

 

シ 「下がってっ!」

 

2人の目前で爆発したグレネードの爆風と破片をファルテの前に立って防ぐシャルロット。

 

R 「何? またやられてんの、アンタ?」

オ 「うるせぇ!」

 

口喧嘩を始めた2人を遠目から見るシャルロットとフォルテ。

 

シ 「あの人・・・」

フォ 「知ってるんッスか? あの赤髪」

シ 「はい。でも、何でラウラの部隊の隊員が・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【場所は変わって・・・】

 

B 「ふぁああああん・・・ねみぃ」

 

『No.50』こと『B』が大あくびをかき、ソファーから起き上がる。

 

フ 「よーく、寝てまーしたねー! きーぶんはどーうですかぁ!?」

B 「うるせぇよ。その無駄なテンションはどうにかならないのか?」

フ 「これが私の、デフォなんですよー!」

 

さらに、甲高い声が秘密基地に響く中、フランが打っているキーボードの手を休めない。

 

B 「・・・そういえば、あの2人はどうした?」

フ 「それなら、あそこですよー」

 

一時、片手をキーボードから離し、その2人の方を指差す。

 

ユ 「あっはっはぁ! また勝った!」

山(ユ 「はぁ・・・もう満足したでしょ? そろそろ仕事を「何言っての? まだまだこれからでしょう!」・・・勘弁してくださいよぉ・・・」

B 「・・・」

 

可愛そうな山田に『B』が合掌。

 

フ 「ほ〜ら! 出来ましたよー!」

B 「っ・・・そうか、出来たか」

 

ソファーから立ち上がり、笑みを浮かべてガラス越しに置かれているISを見る。

 

フ 「私が持てる限りの技術を注ぎ込んだ第3号!」

B 「『雷神(ライコウ)』・・・俺の専用機か・・・」

フ 「そーですよっ! そして、それを手に入れたあなたは何をしますかー!?」

B 「・・・そんなの決まってるだろ」

 

微笑んだ『B』は室内に入り、『雷神』に触れ・・・

 

B 「死合(あそび)に行くんだよ・・・」

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