病みつきなのは〜裏話〜
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彼が風邪で倒れた。

わたしがそれを聞いたのは朝の訓練の時にティアナからだった。

……今日の朝は彼に会えないんだ

流石に風邪で倒れている彼に訓練をさせるわけにはいかない。

私は彼を抜いたFW陣で朝の訓練を開始した。

――――なんでティアナは彼が風邪で倒れていることを知ってるんだろう

そんな疑問を胸に抱きながら。

 

―――――

朝の訓練が終わってFW陣が解散する前にわたしはティアナを呼んだ。

「どうしたんですか、なのはさん」

顔には出てないが明らかに嫌そうにティアナは言う。

「彼が風邪で倒れたのを何でティアナが知ってたのか気になってね」

普通なら隊長であるわたしに言うのが先のはずなのに……

何でわたしじゃなくてティアナに連絡したんだろう。

「私が彼に用があって部屋に訪ねたんです

「その時の彼が見てわかるぐらい体調が悪そうだったんで調べたら熱がありました」

……そっか。

そうだよね、彼がティアナに直接教えるはずが無いよね。

だって、わたしは隊長だもん。

教えるなら先ずはわたしからだよ。

「……なのはさん」

ティアナは首を傾げながら言う。

「何でなのはさんが彼を気にするんですか?」

そんなの――――

「同じ部隊の仲間だからだよ」

あたりまえだ。

彼はわたし達と同じ部隊の仲間なんだから。

そんな彼を心配するのは当然だ。

「……そうですか」

ティアナは冷たく言う。

「今から私は彼の看病に行くんで失礼します

「なのはさんは来なくても大丈夫ですよ

「彼を看病するのは私だけで充分ですから」

ティアナはそれだけ言うと歩きだした。

「でも――」

ティアナはわたしが言い終わる前に被せて言う。

「必要ありません

「彼にはあたし以外――」

……心配だよ

でも、ティアナが看病するなら大丈夫――――かな?

仕事が終わったらティアナと一緒に看病に行こう!!

わたしはそんなことを考えながら歩きだした。

―――――

仕事が終わり、ティアナと共に彼の看病をするため彼の部屋に向かっていた。

そんな時、偶然にもティアナを見つけたため声を掛けた。

「ティアナ」

ティアナがわたしの方を向く。

ティアナは小さめの鍋を持っていた。

彼に何か作ったのかな?

――――料理だったらわたしの方が上手いのに

彼にわたしの手料理食べてほしかったなー

ちょっと残念だ。

「どうしたんですか、なのはさん」

ティアナは何時もより早口で言う。

「彼は大丈夫?」

ティアナだって疲れてるんだから、早く休んでほしいし――――

やっぱり、彼の看病はわたしがしたほうがいいよね。

……彼だってそのほうが喜んでくれるだろうし。

「大丈夫ですよ

「あたしが彼を看病してるんで」

――――それでも

「でも、やっぱり心配だよ

「わたし彼の様子見てくるね」

「待ってください!!」

部屋に向かおうとしたわたしをティアナが止めた。

「なのはさんに風邪が移ったら大変ですし、行かないほうがいいですよ

「彼のことはあたしに任せてなのはさんは自室に戻ったらどうですか?」

「でも……」

今日1日彼に会ってないし――――

それに、彼の看病もしてあげたい。

「ティアナは今から彼の看病に行くんでしょ?

「彼も看病してもらう人が1人より2人の方がいいと思うんだ

「だから、わたしもティアナと一緒に――」

「いりませんよ

「彼だって、なのはさんが居てほしくないと思いますよ」

わたしはそれを聞いて目線を床に移す。

そんなこと……

でも、もしそうだったら……

「……そうかな」

――――それでも

「でも!!」

目線をティアナに移してわたしは言う。

「ティアナだって訓練終わりで疲れてるでしょ?

「だから、わたしもティアナの手伝いしちゃ駄目かな?

「わたしもかれのために何かしたいの!!」

風邪で寝込んでいる彼のためになりたい。

訓練終わりで疲れてるティアナのためになりたい。

でも、そんなわたしにティアナは叩きつけるように叫ぶ。

「いりませんよ!!

「彼の傍にはあたしが居ますから、大丈夫です!!」

っ!!

わたしはそれを聞いて俯く。

「それでは、失礼します」

黙っているわたしを置いていくようにティアナは歩きだす。

……こんなことしちゃ駄目だと思うけど

わたしはティアナにある魔法を使う。

ティアナがそれに気付かずに歩いているのを確認したら、わたしも自室に向かった。

―――――

「――好きだ」

彼の声が聞こえる。

ティアナに使った魔法はいわゆる盗聴魔法だ。

ティアナが聞こえた音を聞こえるようにしたんだけど――――

わからない。

意味がわからない。

何で彼がティアナに告白してるの?

何で彼が?

そんなのまるで彼がティアナのことを――――

―――ない

―り―な―

ありえない

ありえない!!

何で!何で彼が!!?

ティアナに――――

ティアナに告白してるの!!?

何で――――

「お粥の材料切ってるときに怪我しちゃったの

「少し深く切っちゃってね」

1人困惑しているわたしを置いてティアナは進める。

「六課解散までにお互いに本気で好きな人ができたら別れる」

――――えっ?

別れる?

彼とティアナが?

……別れる

わたしは彼がティアナの傷口を舐める音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。

――――今後、どうすればいいかを考えるために

――――何でわたしはこんなにも嫌悪感を感じてるのかを考えるために

何でわたしは――――

―――――

「少しいいかな」

彼とティアナが付き合いだしてから直ぐのこと、わたしは彼を自室に誘った。

――――自分の気持ちを理解したいから

わたしは彼のことを好きなのかもしれない。

……わからない。

わたしは異性を好きになったことが無いから、この気持ちが何なのかがわからない。

――――だから、この気持ちを理解するために

「すいません、先に約束した人がいて」

頭を下げながら彼は言う。

下げる必要なんかないのに。

「君は悪くないよ!!

「悪いのは――」

――――悪いのは彼じゃない

「今日は諦めるよ

「それじゃ、おやすみなさい」

――――悪いのは全部ティアナだもん

わたしは彼に背を向けて歩きだす。

彼も今から約束してた人に会いに行くんだろう。

少ししたあと、わたしは彼の後を付けることにした。

―――――

彼が約束してた人はやっぱりティアナだった。

彼とティアナは2人仲良く笑みを浮かべながら何か話している。

……彼が嬉しそうに笑っているのを見ると胸が締め付けられるように痛くなる。

それと同時にティアナが憎くなってくる。

……ティアナがいなければ今ごろ2人で話していたのかもしれない。

そう考えるだけでティアナが憎くなる。

――――そして

ティアナの部屋の前に付くと、2人は――――

――――キスをした

わたし以外の人とキスをしている彼を見る。

――――嫌だ

こんなの嫌だ!!

自分でもりよくわからない、でも嫌だ。

わたしは――――

―――――

その日、どうやって部屋に帰ってきたかもわからないわたしは、彼のことを思い出す。

初めて会ったときから、今日のティアナとキスしてるところまで、全て昨日の事のように思い出せる。

――――それぐらい

――――それぐらいわたしは彼のことが好き

……好きなんだ。

ユーノ君やクロノ君とは違う、全然違う。

比べものにならないぐらい彼のことが好き。

――――だから

ティアナから、彼を取り戻す。

きっと彼が言った告白もティアナに無理矢理言わされたんだ。

そうに違いない。

――――それ以外ありえない

ありえない。

―――――

あれから2日後。

彼とティアナは毎日訓練後に会ってはキスをしていた。

「ねぇ、ティアナ」

その日の昼に私はティアナを呼び出した。

「どうしたんですか、なのはさん」

ティアナは一瞬嫌そうな顔をする。

「今日ね、ティアナに見せたいものがあるんだ」

今日のための準備は万端だ。

「見せたいもの……ですか?」

ティアナは首を傾げながら言う。

「うん、訓練が終わったらまた呼ぶね」

私はそれだけ言うとティアナと別れて自分の部屋に向かった。

―――――

……先ずは

部屋に着いてすぐ私は救急箱を台所に移した。

――――彼はティアナの血を飲んだ。

彼はティアナの血を飲んで汚れてしまったんだ。

――――だから

私の血を彼に飲ませて綺麗にしないと。

本当なら彼の汚れた箇所を切り抜きたいけど――――

そんなことをしたら彼は死んじゃうから駄目だ。

……ティアナのせいで汚れてしまった彼を少しでも綺麗にしてあげよう。

――――私は

――――私だけが

彼を本当に愛してるんだ。

だから、彼を綺麗にいてあげる。

愛しの彼を。

―――――

訓練が終わるより少し前にティアナを空き部屋に呼び出した。

「見せたいものって何なんですか?」

私はティアナをバインドで拘束する。

「ッ! なのはさん!?」

驚いているティアナの前にモニターを出す。

「これは……」

「私の部屋だよ

「ティアナに見せたいものはもう少しだけ時間が掛かるの

「だから、もう少しだけここで待っててね」

私は何か叫んでいるティアナを置いて部屋から出ていった。

―――――

 

「……どうしたんですか、なのはさん」

 

ティアナと別れてすぐに彼に話しかけた。

 

「少し用事があるんだけど……すぐ終わるから私の部屋まで来てくれないかな?」

 

今日は何があっても彼を連れていかないと――――

 

 

「すいません、今日はもう疲れてて……また今度じゃ駄目ですか?」

 

……そんなにもティアナに早く会いたいの?

 

私よりもティアナの傍にいたいの!?

 

「ごめんね、明日じゃなくて今日話したいことがあるの……とても大事な話だから」

 

私が念を押すと彼はあきらめたように言う。

 

「わかりました、行きましょうなのはさん」

 

……彼はやっぱり私の言うことを聞いてくれる。

 

私も君の言うことなら何でも聞くよ。

 

「じゃあ、早く行こ」

 

私は彼の手を取る。

 

「ちょっと待ってください!!」

 

「?……忘れ物でもしたの?」

 

「い……いや、そうじゃなくて、何で手を握るをですか!!?」

 

「……手を握っちゃ駄目なの?」

 

「いや…駄目って訳じゃ無いですけど……でも、その……恥ずかしいですし」

 

「私は恥ずかしくないよ?」

 

彼は顔を赤くしながら言う。

 

可愛いな。

どんな彼でも好きだけど、恥ずかしそうに顔を赤くする彼はまた一段と好きになりそう。

 

そんな彼の横顔を見つめながら私たちは私の自室へと向かった。

 

 

 

 

―――――

 

「それで、大事な話って何ですか?」

 

部屋について彼は私に言う。

 

「せっかく部屋まで来たんだからそんなに急がないで、少しは休もうよ」

 

……そうしないと彼を綺麗にできない。

 

私は部屋の前に立っている彼をソファーに座らせた。

 

「紅茶がいい?それともコーヒーがいい?」

 

私は彼に聞く。

 

「……なのはさんと同じでいいです」

 

「なら、紅茶でいいね」

 

私は彼を置いて台所にむかった。

 

 

 

 

―――――

私は台所に行くと紅茶の用意をする。

2人分のカップを置くと、1つの上に右手の人差し指を置く。

左手に包丁を持つと、右手の人差し指を軽く切る。

……ティアナの血で汚れた彼を綺麗にするために。

「っ!!」

私はふと彼とティアナがキスをしたことを思い出した。

「あ……」

私の予想よりも深く切ってしまった。

彼のカップに私の血が溜まっていく。

……これだけあれば綺麗になるかな?

私はそんなことを思いながら傷跡に包帯を巻いた。

――――もう少しだよ

――――もう少しで

君を綺麗にできるよ。

――――綺麗にしてあげれるよ。

 

 

 

 

―――――

 

「紅茶入れてきたよ」

 

彼の前に私の血が入った紅茶をおいた。

 

「そういえばなのはさん、フェイトさんはどうしたんですか?」

 

ッ!!

 

何で――――

 

「何で?」

 

「いや、少し気になって……」

 

意味がわからない。

 

「何で私の前でフェイトちゃんのことを聞くの?」

「私が毎日のように部屋に誘っても余り来てくれないのに・・・・何でやっと来てくれたと思ったらフェイトちゃんの話をしようとするのかな?」

 

そんなに私と二人でいるのはいやなの?

 

なんで?

私はこんなにも君の傍にいるために、君を邪魔な人達から守るためにがんばってるのに!!

 

「い……いえ、なのはさんとフェイトさんは同じ部屋だから帰って来ないのかと思いまして――」

 

 

「そんなにフェイトちゃんに帰ってきて欲しいの?

「私と2人で居るのはそんなに嫌なの?」

 

「そ、そんなこと無いですよ・・・・ただ、少しだけ気になっただけです、本当に少しだけ」

 

「……それだけ?」

 

「はい、それだけです」

 

「そう……フェイトちゃんは今日はヴィヴィオの部屋に入るよ、私が今日は君と大事な話があるからってお願いしたの」

 

はじめから君を部屋に呼ぶつもりだったんだもん。

 

フェイトちゃんには前もってお願いしといた。

 

彼は一息つくと紅茶を口にする。

 

飲んでくれた。

 

彼が私の血が入った紅茶を飲んだ。

飲んでくれた!!

 

「美味しい?」

 

彼がカップをテーブルに置いたのを確認するという。

 

「美味しいですよ、とても」

 

っ!!

彼が私の血が入った紅茶を美味しいって言ってくれた!!

 

「えへへ、嬉しいな喜んでくれて、私も君に美味しいって言って貰えるように頑張ったんだよ」

 

これで少しは綺麗になったかな。

 

えへへへ

君の役に立ったって考えただけで嬉しいな。

幸せな気分になるよ。

 

……やっぱり、君を幸せにできるのは私だけ。

 

私だけなんだ!!

 

「あれ?なのはさん」

「どうしたの?」

「右手の人差し指どうしたんですか?」

 

えっ!?

 

「え!?……ちょっと訓練の時に怪我しちゃって――」

「でも、さっき手を握った時には何も無かったと思ったんですが……」

「きっと左手で握ったんだよ!!、だってこれは訓練の時に怪我したんだもん!!!」

「はぁ、そうですか」

 

やっぱり君はわたしのことを見てくれてる。

 

私も君のことちゃんと見てるよ。

 

「それでなのはさん、そろそろ大事な話について教えてくれませんか?」

「……そうだね、そろそろ話そうか」

「大事な話ってそもそもどういう話何ですか?」

「君の人間関係について少しね」

 

ここからが本題だよ。

 

君に関すること。

 

これを見てるティアナに関すること。

 

「最近、ティアナと仲が好いよね」

「え?、そうでしょうか前と変わらないと思いますけど」

「前からティアナとキスしてたの?」

 

違うよね。

 

君がティアナとキスするぐらい仲がよくなったのは、きみが風邪で倒れてからだよね。

 

……あれから君が汚れちゃったんだよね。

 

「3日前にね、見ちゃったんだ、ティアナの部屋の前で2人がキスしてたの」

 

君のことをストーキングしたときにみた。

 

君の事を見てるとき見てしまった。

 

「始めはね、嘘だと思ったんだよ?、でも、次の日も見ちゃったんだ、流石に2日も続けて見ちゃったら信じるしかないでしょう?」

 

……嘘じゃない。

君がティアナのモノになった。

 

「そして昨日の休憩時間中にティアナに聞いたら2人が付き合ってるって言われちゃってね……

「あれはティアナの勘違いなのかな?

「それとも君が無理やりティアナの彼氏にされちゃったのかな?」

 

多少強引でも君を取り戻さないと。

 

私の君を――――

 

「いや、そんなこと無いですよ……」

「何でティアナを庇うの?

そっか!!、正直に言っちゃったらティアナに何されるか分からないもんね。

でも大丈夫だよ、私が君を守から」

 

私は何時でも、何処でも君の味方だよ。

 

君だけの味方なんだもん。

 

だから、ティアナのことを庇わなくてもいいんだよ。

 

「いや、そうじゃなくて……その、告白したのは俺から何です」

 

……違う。

 

「言ってる意味がわからないよ?だって君はティアナに脅されてるんでしょ?

そうじゃ無きゃこんな事あるはず無いよ」

 

君はティアナにそう言うように脅されてたんだよね。

 

「脅されて何ていません!!俺は、ティアナの事が好きだから告白したんです」

 

彼は顔を赤くしながら言う。

私はそんな可愛い彼をクスクスと笑いながら見つめる。

 

「……?どうしたんですか」

「ねぇ、何で君はティアナが好きなの?」

「それは……何時も気が利くし、何があっても前向きだし、優しいし――」

「そう……本当に君が告白したんだ」

 

やっぱり汚れちゃってる。

 

彼がティアナのせいで汚れちゃったよ。

 

大丈夫だよ――――

 

私が綺麗にしてあげるからね。

 

「私は君が望めば何だってするよ、管理局を辞めろって言われれば辞めるし君が自分のために一生働けって言えば一生働いてみせる」

「……何が言いたいんですか?」

「ティアナと別れて私と付き合って」

「ッ!?……そんなの嫌ですよ!!」

「何で?君から別れようって言いたくないならティアナに言わせるのもいいよ?」

「いや、そういう話じゃ無くて!、そもそも別れたく無いんですよ俺は!!」

 

ふーん

そんなにもティアナに毒されちゃったんだ。

 

「そんなこと無いよ、私はわかってるもん君の本当の気持ちも、君以上に知ってる」

「何でそんなこと言えるんですか?」

「私は君のことずっと見てるんだよ

「だからわかるの君はティアナとは別れて私と付き合いたいってことも」

 

そのほうが君のためだ。

私は他のみんなと違って自分の利益なんてかんがえない。

君の事しか考えない。

 

そんな私といたほうが君も幸せだよ。

 

「言いたいことはわかりましたでは、俺はこれで」

「君は私が出した紅茶を美味しいって言ってくれたよね」

 

立ち上がろうとした彼を私は止める。

 

「はい、言いましたけど・・・それが何か?」

「私、本当はねキッチンで指を怪我しちゃったの」

「紅茶を入れるのに指を怪我したんですか?」

「うん……でも、少し違うかな『しちゃった』んじゃなくて『するようにした』かな」

 

彼は首を傾げる。

 

彼はどんな顔をするのかな?

 

「何時もは包帯何てキッチンには置いてないんだけど今日は怪我することがわかってたから用意しといたの」

「わざと怪我したって言いたいんですか?何でまたそんなことを?」

 

どんな顔でもいいよ。

 

私はどんな君でも愛してるもん。

 

「君に美味しい紅茶を飲んで貰う為だよ」

 

「紅茶の中に……まさか――」

 

彼はまさか言いたげな顔をする。

 

「うん、入れたんだよ、『私の血を』」

 

それを聞くと彼は口を押さえて走りだす。

 

方向からしてトイレかな?

 

「ねぇ、ティアナ見てる?」

 

私は上を見て言う。

 

「……彼は返してもらうよ」

 

私は歩き出した。

彼のことを考えながら。

 

彼を奪い返す一歩手前までいったことに喜びを感じながら。

 

 

 

 

―――――

 

 

「嬉しかったんだよ、君に美味しいって言ってもらって、紅茶と一緒に私の血の味も褒めてもらってるって考えただけで幸せだったよ」

 

私はトイレの扉の前で中にいるであろう彼に言う。

 

悲しいな。

ティアナのときはこんなことしなかったのに。

 

……なんでかな

 

なんで君はティアナの時とは反応が違うの?

 

何でかな何でかな何でかな何でかな何でかな何でかな何でかな何でかななんでかななんでかななんでかななんでかななんでかななんでかななんでかななんでかななんでかななんでかななんでかななんでかな

 

私は彼の前にモニターを出す。

 

「ちゃんと私の手見えるかな?」

 

彼が私の思いに応えてくれないなら――――

 

「……何なんですか?」

「君がティアナと別れないんなら私このまま手首を切るよ?」

 

――――こんな世界で生きる意味なんかない。

 

「な、何でそんなこと!!?」

「だって君が私と一緒に居てくれないならもう私には生きてる意味が無いもん」

「そんなこと無いですよ!!それになのはさんが死んだら六課の皆だって悲しみますよ!!」

 

知らないよ。

君が傍にいてくれない世界なんか興味ない。

 

誰に悲しまれようと関係ない。

 

「ねぇ、見てよこの傷」

 

私は彼に見えるように包帯を取る。

 

「本当はもっと小さめの傷にする予定だったんだけど……君とティアナのこと考えたらこんなに深くなっちゃった」

「ッ!?……な、何でそんなこと――」

「ちゃんと言ったよ?君が好きだから」

「こんなこと好きな人にやる行動じゃない!!!」

「そうかも知れないね・・・でも、こうでもしないと君は私を見てくれないでしょ?」

「そんなこと……」

「訓練が終わったあとティアナの誘いには乗ったけど私の誘いには断ってたじゃん」

「そ、それは――」

「ほら、やっぱり君が私を見てくれるにはこうするしか無いじゃん」

 

私は今が幸せだよ。

君が私を――

私のことだけを見てくれている今が――

 

私は左手で魔力刃をつくる・

 

「どうする?君の答え次第では私は……」

 

死んでもいい。

君が死ねというのなら

死んでもいい。

 

「止めてください!!!ティアナとは別れますから!!」

 

彼は叩きつけるように叫ぶ。

 

「本当?」

「はい、本当です!!ですから自殺何て馬鹿なこと止めてください」

「わかったよ、君が言うなら」

 

君が死なないでと言うなら死なない。

 

私は君の言うことなら何でも聞くから。

 

私は魔力刃を消して少年の前に出していたモニターも消す。

彼はトイレから出てくる。

 

あぁ、やっと彼を取り戻せた。

 

これからは私が君の事を守るからね。

もう誰も君を汚させない。

君を手放さない。

 

――――永遠に

 

「じゃあ、ティアナとはどうやって別れる?」

「……俺が別れようって言います」

「そっか、わかったよ

「そろそろ遅いしもうそろそろ帰って寝たほうがいいよ?明日も早いんだし」

「……そうですね、わかりました」

 

俯いている彼は部屋からでるために歩き出した。

 

「待って!!」

 

部屋をでて直ぐに私は彼を呼び止める。

 

「……どうしたんですか?」

「これが最後だと思うけど……一応ね」

 

私は彼に顔を近づける。

 

彼は私と目を合わせてくれない。

 

でも、いいよ。

 

今はまだ――――

 

時間はまだまだあるもんね。

 

「もし私以外の人と君が付き合ったら……またこういう事になるかも」

 

「ッ!!?……覚えときます」

 

「うん、そうしといて」

 

驚いた顔をする彼から離れる。

 

「おやすみ」

 

そのまま私は部屋に戻った。

 

 

 

 

―――――

 

この話のその後の話をしようかな。

 

彼はティアナと別れてくれた。

 

――――彼は、私の言うことを聞いてくれる

 

嬉しいな。

 

幸せだな。

 

君の傍にいるのは私

私の傍にいるのは君

 

――――いつまでも

 

――――永遠に

 

――――幸せだよ

 

 

 

説明
病みつきシリーズ第10弾!! なのは目線の病みつきなのはです。 ――――彼はティアナのモノ? 認めない……認めたくない。 私は―――― 私だけが彼の傍にいるべきなんだ!! ※オリ主×なのはです ※病みつきなのはの目線変更です ※『病みつきティアナ』と『病みつきなのはシリーズ』の話もあります。
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愛が重い・・・・・・(仮面ライダー)
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ヤンデレ 病みつき 裏話 リリカルなのは 

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