真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の娘だもん〜[第14話]
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真・恋姫?無双〜だけど涙が出ちゃう男の((娘|こ))だもん〜

 

[第14話]

 

 

劉焉((薨御|こうぎょ))の知らせを聞いたボクは、すぐさま城に取って返して詳細を確認しました。

父の死因は暗殺の((類|たぐい))では無く、心の臓が弱っての自然死だったそうです。

すぐさま厳顔にボクの名代として益州の州都・成都に向かわせ、葬儀の準備を執り行わせました。

その浮かした時間を使って、ボクは益州牧に就任すべく首都・洛陽に居る実力者たちに使者を走らせましました。

いかなる事があろうと対処出来るように、((予|あらかじ))め各方面に“誠意”を贈ってあるので問題は無いと思ってはいました。

ですが決定した訳では無いので、念を押す事にしたのです。

各方面からの色好い返事を貰えたボクは、成都での葬儀終了後に留守を黄忠に任せて首都・洛陽へ出発する事にしました。

 

行程は漢中から北進して長安に入り、それから東進して洛陽に向かう予定でした。

ボクの随行人は、厳顔・諸葛亮・周泰です。

随行部隊には親衛隊から500騎を選び、厳顔に指揮を任せました。

他州では治安が悪化していて、少人数での旅は危険だと判断した為です。

案の定、少数でしたが賊が度々出現しました。

しかし((此方|こちら))の軍容を見てか、仕掛けて来る事はありませんでした。

 

 

 

「益州とは随分違うものだねぇ」

 

ボクは((司隷|しれい))に入ってから感じていた、益州との違いを思いながら言いました。

これまでの旅路で周りを見て来たところ、市場には活気が無くて土地も荒れ放題なのです。

何故にこうも統治が行き届いていなのか、ボクは不思議に思っていたのでした。

そんなボクに厳顔が話しかけてきます。

 

「そうではありませぬぞ、若」

「そうなの?」

 

厳顔の話しでは、少し前まで益州も司隷と同じようなものだったそうです。

でも、ボクが漢中太守になってからの政策が功を奏して、少しずつ民に生気や活気を取り戻していったそうでした。

それが更に州全体に少しずつ広がって、今の益州になったと厳顔は言います。

厳顔の言葉を聞いて、ボクは少し嬉しくなりました。

 

 

 

 

ボクたちは更に数週間をかけて、皇帝のおわす首都・洛陽に到着しました。

しかし洛陽の街は大きくて立派でしたが、市場に活気が在るようには感じられませんでした。

 

「活気が無いみたいだねぇ」

「そうですな。どことなく民に生気がありませぬ」

 

ボクは街の様子を見まわしながら厳顔と会話しました。

厳顔も同じ感想を抱いていたようで、同意をしてくれます。

ボクたち一向は市場を通りぬけ、ほどなく((下賜|かし))されている館に腰を((据|す))える事が出来ました。

 

「明命は、洛陽の詳細情報を諜報機関などから集めて来てね?

 朱里は、集めた情報を解析してボクに教えて欲しい。

 桔梗は、宮廷への使者派遣と部隊の統括をお願いするよ」

 

ボクは一息ついた後、周泰・諸葛亮・厳顔に、それぞれして貰いたい事を告げました。

 

(さて、これからが本番です。どうなるのでしょうかね?)

 

ボクは不安を感じつつ、どこかそれを楽しんでいる自分を感じていました。

 

 

 

 

何日間か諸葛亮から解析された情報などを聴いていると、宮廷からの使者が館に来訪して参内を許されました。

その次の日、ボクは身支度を整えて宮廷に参内する事にします。

使者の先導の下に謁見の間へ通され、ボクは皇帝が訪れるのを待っていました。

暫く待っていると、皇帝の訪れを告げる声と重低音を奏でる((銅鑼|どら))の音が室内に響き渡ります。

ボクは膝を折り拝謁して、皇帝が席に着くのを待っていました。

 

「季玉か。((一瞥|いちべつ))以来だが健勝であったか?」

 

皇帝である劉宏が席に着き、ボクに話しかけてきました。

 

「はい。お陰様を持ちまして」

「そうか……」

 

ボクの返答に劉宏が((相槌|あいずち))を打ちました。

しかし高齢の為か覇気が無く、どこか投げやりな感じを受けます。

 

「そちの要望であった益州牧への就任は、昨日の朝議により問題なしという事となった」

「ははっ。ありがたき幸せに存じます」

 

どうやら益州牧に就任出来そうで良かったです。

ボクが、そう安堵していると劉宏が続けて話してきました。

 

「しかしな、季玉。((余|よ))には少し疑問があるのじゃ」

「疑問……で御座いますか?」

「そうじゃ。そちの太守就任から先頃までは、良い噂を聞く事は無かった。じゃが、最近は良い噂しか耳に届かぬ。

 疑問に思って当然じゃろぅ?」

 

劉宏は底意地の悪い顔をしながら、ボクの返答を待っていました。

仕方がないので、ボクは在りのままを言うことにします。

 

「((臣|しん))は、ただ誠意を尽くしただけで御座います」

「誠意じゃと?」

「はい」

 

ボクの答えに劉宏は、意表を突かれたようでした。

 

「しかしな。宮廷に居る者たちに、そちの誠意なぞ通じるとは思えぬのじゃが?」

 

重ねて劉宏が尋ねて来たので、ボクはその問いに答えました。

 

「人には、それぞれ価値観・見解が御座います。臣が“白”だと思っている物を“白”だと言う者も居れば、“黒では無い”と言う者も居ります。

 ゆえに、臣はそれぞれの価値観での誠意を表しただけで御座います」

 

劉宏はボクの言っている事が始めは理解出来ない様で、思案顔をしていました。

しかし、ほどなく((腑|ふ))に落ちて納得したみたいです。

 

「……まあ良い。州牧なぞ、誰が就こうと変わらぬ。そちは益州牧として、これから((励|はげ))むことじゃなぁ……」

 

これで話しは終わりと、劉宏はボクに((労|ねぎ))らいの言葉をかけて来ました。

その姿は、どこか投げ遣りで((寂寥|せきりょう))感が((漂|ただよ))う感じを受けます。

皇帝の近従が州牧の((印璽|いんじ))を持って来たので、ボクは謹んで受け取りました。

ボクは印璽を受け取った事に礼を述べ、続けて発言します。

 

「((就|つ))きましては、陛下に献言したき議が御座います。無礼の言、お許し下さいますよう御願い申し上げます」

 

ボクは何故だか分からないけれど、体の内側から想いが((溢|あふ))れて来て、言わずにはいられなくなりました。

だから想うまま、感じるままに言う事にしました。

 

「余に献言じゃと?」

「いえ。皇帝陛下に対し((奉|たてまつ))るのではありませぬ。陛下御自身に対してで御座います」

「ふむ……?」

 

劉宏はボクの言葉に困惑したようです。

ですが、興味を覚えたのか発言する事を許してくれました。

ボクは姿勢を正して拱手し、自身の思いを言葉に代えていきます。

 

「陛下におかれましては、皇帝の((御位|みくらい))に御就きになり、御心を((砕|くだ))かれて来られた事。先ず、お礼申し上げます」

 

劉宏は黙って、ボクの言葉を聞いてくれていました。

 

「御位に御就きという事は、並び立つ者が居ないという事で御座います。その孤独を耐え忍び、一個人よりも皇帝としての役目を優先させ、長く在位あそばしている事に感謝申し上げます」

 

劉宏はボクの言葉に一旦は驚き、瞳を大きく開きます。

ですが直ぐさま瞳を閉じて、何やら感慨深く((悶|もだ))えているようでした。

謁見の間では誰独り声を発することは無く、いつしか静寂が訪れていました。

 

 

 

「そうか……。そちは“我”を((労|ねぎ))ろぅてくれるのか……」

 

暫く経った後、劉宏は言葉を体の中から((絞|しぼ))り出すかのように((呟|つぶや))きました。

そのまま顔を下に向けて拳を握りしめ、震えながら言葉を((紡|つむ))いでいきます。

 

「周りは“我”の事を皇帝としか見んかった。

 何かをしても、皇帝なのだから当然だと思われた。

 馬鹿な事をしても、皇帝なのだから仕方がないと((諦|あきら))めおった。

 誰も彼もが“我”を認めず、((咎|とが))めず、“我”を見てはくれなんだ!」

 

自らの人生で溜った((鬱屈|うっくつ))を晴らすかのように、劉宏は激高して吠えました。

近従や護衛の者達は仕える君主の豹変に、あたふたと周りを見回しているだけです。

ボクはただ、静寂と共に劉宏を見詰めていました。

 

「そうか……。余は“我”を受け入れて欲しかったのじゃなぁ。皇帝としての余では無く、ただ“我”個人のことを……」

 

((鬱憤|うっぷん))を晴らして虚脱した劉宏は、椅子に((凭|もた))れ掛かって虚空を見詰めながら言いました。

その様子は、どこか清々しく感じられます。

暫くの間そうしていた劉宏は、ボクに言葉をかけて来ました。

 

「季玉」

「はっ」

「礼を言うぞ。これほど気持ちが安らいだのは、いつぶりであろうか……」

 

おもむろに劉宏は、ボクに視線を合わせて来ます。

劉宏の瞳は澄んでいましたが、どこか((悪戯|いたずら))を思い付いたような顔をしていました。

嫌な予感がします。

 

「そうじゃなぁ……。礼に、そちを“漢中王”にしてやろうか。さすれば太守として、そちが行なった一連の行為を誰も咎める事は出来まい?」

 

「は?」

 

劉宏は何やら途方も無い事をボクに言ってきました。

近従が『陛下、お((戯|たわむ))れが過ぎますぞ』とか言っています。

ですが劉宏は、それを無視してボクに再度問いかけてきました。

 

「どうじゃ? 季玉」

「それは……」

 

ボクが返答を渋っていると、劉宏が告げてきました。

 

「功績が足らぬと言うのであれば、近頃多発している“黄巾党”と呼ばれる賊徒どもを討伐((致|いた))せ」

「……」

 

劉宏の思惑が何であれ、『賊徒を討伐せよ』と言う“君命”には従わぬ訳にはいかなかった。

だからボクは2つ条件を出します。

 

「なんじゃ?」

「一つは征伐した賊徒の処遇を、臣に一任して頂きたいので御座います」

「ふむ……」

「いま一つは、漢中郡の名を変更して頂きたいので御座います」

「名を変える?」

「はい。“漢中王”は漢王朝の初代皇帝であらせられる、高祖が御就きになられた御位で御座います。これに臣が就きますのは、他の方々に要らぬ疑念を抱かせます。それは、臣の望むところでは御座いません」

 

ボクが条件を告げると、劉宏は思案していました。

暫くして考えが((纏|まと))まったのか、劉宏はボクに話してきます。

 

「名は何と致すのじゃ?」

「はっ。“華陽国”と致したく存じます」

 

 

 

劉宏はボクの出す条件を全て呑みました。

感謝の意を表明し、ボクは謁見の間から辞去します。

ボクはこれで、華陽王・益州牧として小さからぬ一歩を踏み出す事になりました。

 

これからどうなって行くのか、今のボクに分かる筈もありませんでした。

 

 

 

 

 

〜ある宮廷、ある謁見の間〜

 

 

 

「余が生まれた時には、そちたちが居るのが当たり前であった」

 

劉宏は、近従の宦官達に告げるように言いました。

 

「((宦官|かんがん))というのは、男であって男ではない。それを余は、これまで不思議とは思わなんだ」

 

傍に控える宦官を見て、劉宏は言葉を続けます。

 

「そちは幸せか?」

「はい、陛下。臣は幸せで御座います」

「……そうか」

 

劉宏は宦官との会話を打ち切り、告げます。

 

「……少し、独りで在りたい。皆は下がれ」

 

劉宏の言葉に従い、宦官や護衛の者達が謁見の間から出て行きました。

 

 

「……」

 

謁見の間の静寂さを暫く感じていた劉宏は、誰に言う訳でも無く小さく((呟|つぶや))きます。

 

「なるほど……。受け入れる準備が出来た者だけに、訪れるということか」

 

劉宏は、先ほどの宦官を思い出しながら感慨深く言いました。

 

「残酷なようで優しいものかも知れぬなぁ、“気付き”というものは……」

 

 

 

 

いつの間にか、謁見の間の静寂さに『フフフッ……』と劉宏の微笑だけが弾き立てられていました。

 

説明
無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
*この作品は、BaseSon 真・恋姫†無双の二次創作です。
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