真・恋姫†無双 〜我天道征〜 第5話
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注意 本作の一刀君は能力が上方修正されています。

 

   そういったチートが嫌い、そんなの一刀じゃないという方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

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村に着き目の前に広がる光景をみた時、俺ははじめ訳が分からなかった。

いや、頭では理解していたのだろう。感情がその状況を拒んでいたのだ。

 

村のあちこちから火の手があがり、黒煙が空を覆う。

村の人達はあちこちで倒れ、血の海に沈んでいる。

それらを行ったであろう賊達が、楽しそうに大笑いしている。

もし地獄があるのなら、こんな光景なのではないかと錯覚してしまう。

 

賊「ちっ、しけた村だな。こんなんじゃ、頭に怒られちまう。」「じじいやばばあばっかで、若い女の一人もいやしねえ。」「くそー、最近ご無沙汰だってのによ。」「そういえば、別の村で女を一人捕まえたって聞いたぞ。」「ばーか、ありゃ先に頭が味見するに決まってんだろ。」「まあ、頭が飽きたらそのおこぼれに与れるかもしれねえがな。」

 

賊達が、そんな聞いているだけで不快になるような会話をしている。

 

 

それでも俺は、まだこの状況を理解できず、ゆっくりと辺りを見回していた。

 

( お婆さん「気をつけて行っておいで。」 )

 

隣のお婆ちゃんが倒れている。的にでもされたのか、無数の矢が身体に刺さった状態で。

 

( おじさん「お、なんだい。また新しい子でも捕まえにいくのか。」 おばさん「女遊びも程々にしときなよ。」 )

 

おじさんとおばさん達も倒れている。折り重なるようにして、槍で貫かれて。

 

少しずつ状況が解ってくると、胸の奥から暗いものが湧きあがってくる。

 

 

賊「ん?あんな所に、まだ人が残ってるじゃねえか。」

 

そんな俺に気付いた賊の一人が近づいてきて、刀を突き付ける。

 

賊「兄ちゃん、いいもんもってんじゃねえか。渡して殺されるのと、殺されて奪われるの、どっちがいい?」「なんだそりゃ、どっちも一緒じゃねえかよ。」「ちげえねえ。ぎゃははは・・・」

 

そんな会話をしながら、下卑た笑い声をあげる。

 

 

しかし、そんな会話や突き付けられた刀よりも、俺の意識は男が手に持つボールの様なものに向いていた。

俺の心が警鐘をならす。それを見てはいけない、理解してはいけないと。

 

賊「はやく答えろよ。こういう風になっちまうぜ。」

 

賊が手に持っていたものを俺に見せつける。そして俺は、それが何なのかを理解してしまう。

 

(子供「やった♪はやく帰ってきてね。」 )

 

それが、限界だった。

 

 

 

 

 

 

 

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【語り視点】

 

賊「なんだ、びびって声も」

 

ドサドサッ

 

男がそれ以上しゃべることはなかった。

首と胴を斬られ、3等分にされたからだ。

それを見ていた賊達は驚く。何せ一瞬にして、仲間が斬られていたのだから。

 

 

一刀「うおおおぉぉぉーーーーー!!!」

 

そこに一刀の叫びが木霊する。

そして次の瞬間には、その近くにいた賊3人が斬り伏せられていた。

そこでようやく賊達は、一刀がそれらをやった敵であることを認識し、一刀へと向かっていく。

 

 

賊達の無数の凶刃が、一刀に襲いかかる。

しかし一刀はそれらを全て避け、逆に賊達を斬り殺していく。

ある者は首を切断され、ある者は腹を割かれ、またある者は体を突かれる。

その全てが急所であり、一刀の一振りでその命を刈り取られていく。

 

ヒュッ!

ガキン!

 

一刀は向かってきた矢を切り落とす。

 

賊「射て、射ちまくれ。あいつを近づかせるな。」

 

10mほど離れた所に、弓を構えた賊達が8人ほどいる。

それらが一斉に、矢を射る。

 

しかし一刀はあせることなく、つまらないものを見る様な顔でそちらを向く。

自分にあたる最低限の矢だけをおとし、後は動かない。

その姿に賊が怯むと、懐に忍ばせていた小刀を取り出し、投げる。

それらは次々と賊の眉間、頚、心臓へと当たり、弓を持っていた賊は全員動かなくなった。

 

 

賊「ひぃ、ば、化け物だ!」「逃げろ!殺されちまう!」

 

ここまできてようやく賊達は、自分達と相手との絶対的な力の差に気付く。

残された者たちは、我先へと逃げだそうとする。

 

しかし白銀の刃を持ち佇む男は、それを許さなかった。

逃げまどう賊達を追いかけ、一人また一人と殺していく。

そうして50人ほどいた賊は、最後の一人となった。

 

 

賊「あ、あぁぁ・・・」

 

その賊は目の前にいる男に恐怖し、もはや逃げることもできなかった。

一刀は氷のように冷たい視線と殺気でもって、その賊を射抜く。

 

一刀「お前達の隠れ家はどこだ?」

賊「へ?」

一刀「隠れ家はどこだと聞いてる。」

賊「そ、それは・・・」

 

賊が質問の意味を理解し言い淀んでいると、

 

ザシュ

 

賊「ぎゃーーー!!」

 

その男の足に、深々と刀が突き刺さる。

 

一刀「次は、反対の足がいいか?」

 

一刀は冷徹にそんなことを言う。

 

賊「や、やめてくれ!言う、言うから、勘弁してくれ!」

 

賊も一刀が本気でそれを実行すると悟り、すぐに口を割った。

 

賊「あそこに見える山の反対側の中腹にある洞窟が、俺らの隠れ家だ。」

 

一刀は、聞き出した山を確認する。

 

賊「隠れ家は教えたんだ。頼む、命だけは助けてくれ!」

一刀「この村の人達も、助けてくれと言わなかったか?」

賊「そ、それは・・・」

 

一刀は向き直り、刀を構える。

 

賊「ひぃ!た、たす」

 

ザシュ

 

 

 

 

 

 

 

 

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一刀は、賊から聞き出したアジトの前まで来ていた。

辺りはすでに夜の帳が落ち、闇に包まれていた。

しかしその洞窟の前だけは、見張りのもつ松明の明かりで照らされていた。

 

 

(賊「昼間に女を一人捕まえてたよな。」)

 

一刀は賊の言っていたことを思い出し、あまり派手に動かない方が良いと考える。

 

一刀「ふぅ〜。北郷流移動術 『朝顔』 」

 

一刀が気を落ちつけると、その存在感がどんどんと希薄になっていく。

仕舞いには、一刀と夜の闇との境界が不明瞭になった。

そして、一刀は動き出す。

 

 

賊「んっ。」

 

突然、見張りの賊は口を押さえられる。

 

賊「ひゅー。」

 

そして、それが何かを理解する前に気道ごと頸動脈を斬られ、叫び声一つ上げれず倒れる。

もう一人の見張りがそんな音に疑問を持ち、松明でそちらを照らす。

すると地面に、先ほどまで一緒に見張りをしていた者が倒れている。

「どうしたんだ?」と叫ぼうとする瞬間、その男の胸を刃が貫通し、静かに絶命させる。

その賊が手放した松明の明かりにより、その背後で刀を持つ一刀の姿が浮かび上がる。

 

 

一刀は誰にも気づかれていないことを確認し、物音ひとつ立てず中へと侵入する。

洞窟内は複雑で、天然の迷路のような造りになっており、一刀はその中を慎重に進んでいく。

途中部屋のようなものがあり、一刀は中の様子を窺う。

 

一刀(1、2、3・・・4人か。)

 

そこはちょっとした休憩室のような所で、中では賊4人ほどが談笑していた。

 

 

カツンッ

 

部屋の外からそんな音が聞こえ、賊達もそれに気づく。

 

賊「ん?なにか聞こえたよな。」「ああ、外の方からだったな。」

 

そんなことを言いながら、賊の一人が部屋の外へと確認しにいく。

しかし、しばらく待ってもその者は帰ってこない。

 

賊「遅せえなあ。何かあったのか?」「ちょっとお前、見てこいよ。」「へい。」

 

そのことに不安を覚えた賊は、また別の者を探りに行かせる。

またそいつも、しばらく待っても帰ってこない。

残った2人が不安を覚え、仲間を呼びにいこうと考えた時、2人目の賊が帰ってきた。

 

賊「驚かせやがって、何して」

 

そう言いかけた時、帰ってきた賊の体がゆっくりと倒れて行く。

それと同時に、その者の背後から小刀が飛んでくる。

それは残っていた2人の賊の眉間に深々と刺さり、机に伏せるように絶命する。

それらを行った一刀は、また静かに探索へと戻る。

 

 

その後も、一刀は探索を続けながら、賊達を発見しては気付かれないように倒していった。

そんなことを1時間ほど続けていくと、突き当たりの部屋の前へと辿り着く。

中には人の気配があり、なにやら言い争いをしている声が聞こえる。

 

一刀がそっと中の様子を窺うと、そこはいくつかの牢屋を設置した部屋だった。

その牢屋の中の一つ、大男が一人の少女に今まさに襲いかかろうとする瞬間だった。

その状況からあの大男が賊の頭で、襲われそうになっているのが捕まった子だと予想する。

そして一刀は、それを阻止するため部屋の中へと突入する。

 

 

賊の頭「あぁ、なんだてめぇ?ここには、誰も近づくなって言っといたろ!」

 

頭と思わしき大男は一刀の存在に気付くと、邪魔された苛立ちからそう怒鳴る。

しかし、一刀はそんなことなど気にせず、黙って牢屋へと近づく。

 

賊の頭「てめぇ。ぶっ殺してやる!!」

 

頭はそういうと、壁に立てかけていた斧を持ち、一刀の前で仁王立ちになる。

一刀はそれすら気にとめず、牢屋の中の子を見る。

服は引き裂かれ、普段なら隠れてたであろう左肩から腕が露出していた。

またその子の左頬は、叩かれたのだろう、赤く染まっていた。

そこまでを確認し、一刀は冷たい視線で頭を睨む。

 

 

賊の頭「死ねっ!!」  ビュオッ

 

頭は手に持った斧を、一刀の脳天目掛けて力任せに振り下ろし、その周りに血が飛び散る。

 

賊の頭「ぎゃーーー!!」

 

しかし、その血は一刀のものではなく、頭のものだった。

頭の斧を持っていた方の手の肘から先がなくなり、そこから噴き出した血だったのだ。

頭は斬られた腕を抑え、地面へと蹲る。

そして、目の前に近づく影に視線を上げた瞬間、その首は宙を舞い地面へと落ちる。

 

 

 

賊の頭を倒した一刀は、牢屋の中の子へと近づく。

その子は、腰下まである様な長い金髪で、水色を基調とした服を着ている。

近くにはその子の持ち物であろうか、変わった形の人形が落ちている。

 

一刀「君が捕まっていた子かい?」

??「お、お兄さんは、一体誰なんですか?」

 

その子は、襲われそうになった恐怖が残っているのか、身体を震わせながら警戒している。

一刀は、そんな彼女を少しでも安心させようと、いつも通り笑顔をつくり、

 

一刀「大丈夫。俺は、君を助けに来たんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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時は少しさかのぼる。

 

【side 程立】

 

程立「これは、非常にまずいのです。」

 

今、風は牢屋の中に閉じ込められているのです。

何故、こんなことになったのかと昨日のことを思いだす。

 

 

旅の途中、風達がたまたま通りかかった村が、賊に襲われていました。

賊は星ちゃんのおかげで追い返すことができ、村にもほとんど被害は出ませんでした。

しかし退却する賊の一人が、逃げ遅れた子を攫おうとしたので、その子を助けようと思ったのですが。

まさか、代わりに風が攫われてしまうとは。

稟ちゃんあたりが場所を予測して、助けにきてくれるとは思いますが。

 

 

風がそんなことを考えていると、この賊の頭らしき男がやってきました。

男はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、牢屋へと近づいてきます。

 

賊の頭「へへへ、どうだいお譲ちゃん。ここの居心地は?」

程立「最悪ですね。だから、早くここから出してほしいのですが。」

賊の頭「ははは、気の強え嬢ちゃんだな。」

 

男はそういうと、牢屋の鍵を開け、その中に入ってきました。

なぜ入ってきたか解っているのですが、恐がれば喜ぶと思い強がることにした。

 

程立「逃がしてくれるんですか?」

賊の頭「ああ、俺を楽しませてくれたらな。」

 

 

そういうと男は、風の腕を掴んできたのです。

 

程立「離すのですっ!」

 

風はその手を振り払い、男を睨みます。

 

ビリッ

 

賊の頭「いい気になってんじゃねえぞ、コラ!」

 

しかし男はそれに逆上し、風の服を引き千切ったのです。

そしてそのまま、風の両手を掴んできました。

 

程立「嫌、嫌なのです。」

 

このままではどうなるか予想できた風は、必死に抵抗します。

 

パンッ

 

賊の頭「あー、うるせえな。黙って犯られろ!」

 

そのことに男が業を煮やし、風の頬に平手を打ってきました。

そのことに驚き風が固まると、男はやっと思い通りにできると胸元に手を伸ばしてきました。

 

 

程立(せめて、初めては好きな人が良かったのです…)

 

そんなことを考える。

こんな時代で、いつそのような目にあってもしょうがないと覚悟はしていた。

しかし、いざその時になってみるとやはり嫌だ。

しかし元々腕力のない自分では、これ以上抵抗できない。

そう思い諦めようとした時、入口の方から足音が聞こえる。

 

 

そちらを見ると、そこには外套を羽織ったお兄さんがいたのです。

 

賊の頭「あぁ、なんだてめぇ?ここには、誰も近づくなって言っといたろ!」

 

男がそう叫びますが、そのお兄さんはまったく気にせず近づいてきます。

 

賊の頭「てめぇ。ぶっ殺してやる!!」

 

男はそのことに苛立ち、風を掴んでいた手を離します。

そして、そばに置いておいた斧に手をかけ、牢屋を出て行きます。

すぐ近くには先ほどのお兄さんがおり、風のことをじっと見ています。

そして目線を移し、さっきの男を睨みつけます。

 

賊の頭「死ねっ!!」

 

賊の男が、その手に持った斧を振り下ろします。

やられたと思い風は目線を逸らしますが、そこに聞こえてきたのは、

 

賊の頭「ぎゃーーー!!」

 

賊の男の叫びであり、それに驚き目線を戻すと、蹲った男の姿が目に入ったのです。

その前にはお兄さんがおり、また次の瞬間には、賊の首から上が無くなっていました。

 

 

風が状況を理解できず戸惑っていると、そのお兄さんが牢屋の中へと入ってきました。

そして目の前まできてしゃがみ込むと、

 

一刀「君が捕まっていた子かい?」

 

そんなことを聞いてくる。

風が捕まったことはあの村の人なら知ってるかもしれませんが、こんなお兄さんはいなかったのです。

また稟ちゃん達に頼まれたのだとしたら、その名前を出さないのは不自然です。

 

程立「お、お兄さんは、一体誰なんですか?」

 

そう思い、逆にこちらから質問をすることにした。

まださっきの衝撃が残っていたのか、若干声がうわずってしまいましたが。

 

一刀「大丈夫。俺は、君を助けに来たんだ。」

 

そう言って、お兄さんは微笑みます。

 

 

 

 

 

でも、お兄さんの目は笑ってはいませんでした。

笑顔をつくっているのですが、その目にはとても深い悲しみの色が見えたのです。

 

程立「お兄さんは、何か悲しいことでもあったのですか?」

 

ビクッ

 

風がそう質問すると、お兄さんの体が大きくはねました。

その顔には動揺の色がありありと浮かんでおり、その予想が間違ってないことを裏付けます。

その時、最近よく見るあの夢を思い出し、このお兄さんを放っておけなくなりました。

 

 

程立「お兄さん、何かあったのなら風に話してほしいのです。助けてもらった恩もありますし。」

一刀「・・・・・・」

 

お兄さんは黙っており、何も話してくれません。しかしその体は震え、顔も伏せてしまいました。

 

程立「悲しいことがあったのなら、泣いてもいいのですよ。その方が、きっと楽になるのです。」

 

風はそう諭す様に、お兄さんを説得する。

 

程立「今なら、風以外誰も見てないのです。」

一刀「う、うわああぁぁぁぁ〜〜〜・・・」

 

それが限界だったのでしょう、

お兄さんは風のお腹に顔うめ、声をだして泣きました。

泣いている間、お兄さんはずっと「守れなかった」「助けたかった」と叫んでいました。

 

 

 

 

 

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一刀「ごめん。 もう、大丈夫だから。」

 

しばらくそうしているとやっと落ち着いたのか、お兄さんは風のお腹から顔を上げました。

さっきまでの状況を思い出したのか、照れて顔が少し赤くなっていましたが。

 

程立「少しは、楽になりましたか?」

一刀「ああ、ありがとう。おかげで助かったよ。」

程立「いえいえ、お役に立てて良かったのです。」

 

そんな会話をし、後はここから出るだけだと思った時、いきなりお兄さんが風のことを押し倒したのです。

いきなりの展開に風は驚きます。

確かにこのお兄さんは優しくかっこいいですし、助けてもらった恩もあります。

しかしまだお互いの名前も知らず、しかもこんな所でなんて。

などと考えていると、

 

ガキィィィーーーン!!

 

風の耳に、そんな金属同士のぶつかり合う音が聞こえてきたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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【side 一刀】

 

程立「少しは、楽になりましたか?」

一刀「ああ、ありがとう。おかげで助かったよ。」

程立「いえいえ、お役に立てて良かったのです。」

 

俺は、さっきまで心の奥に閉じ込めていた悲しみを吐き出したことで、少し気が楽になっていた。

先ほどまでは、暗い感情に自分を見失っていた。あのままでは、その闇に捉われ続けていたかもしれない。

 

一刀(まさか助けにいって、逆に助けられるとは思わなかったな。

   しかも、随分と恥ずかしい姿を見られた。あんな泣くなんて、小学校以来だよ・・・)

 

そんなことを思い、顔が赤くなる。

 

 

後はこの子を連れて脱出すれば良いと思っていた矢先、横からものすごい殺気を感じた。

 

ガキィィィーーーン!!   一刀「くっ!」

 

俺はその子を押し倒し、手にした刀で迫りくる槍の穂先を受け流す。

その槍の手元には、蝶をイメージした様な白い服を着ている、青髪の女性がいた。

俺ははじめ、賊の残りがまだいたのかと思ったが、その女性の言葉で違うと気付く。

 

??「この下郎が!風から離れろ!!」

 

それと同時に無数の突きが繰り出される。

 

ギンッ ギンッ ギギンッ ガキッ ギンッ

 

俺はその攻撃を避け、刀で受け流していく。

 

一刀(今、この人『風』っていったよな。たしかこの子も、自分のことを『風』っていってたような。)

 

そのことから、襲ってきてる人はこの子の知り合いであり、どうやら俺を賊と勘違いしていると思い至る。

そのため俺は、こちらからは攻撃せず、なんとかして誤解を解こうとする。

 

 

一刀「まて、誤解だ。俺は賊じゃない!」

??「問答無用!」

 

しかし相手は話を聞いてくれず、一方的に攻撃を仕掛けてくる。

そのうちに、相手もこちらの強さに気付き、本気の構えを示す。

 

??「むっ、賊のくせになかなかやるな。ならば、こちらも本気で。」

一刀「くそっ。」

 

相手が本気なのを感じ、俺はこのままじゃ説得も難しいと考える。

そして、相手が攻撃を仕掛けようとした瞬間、

 

程立「星ちゃん、待つのです!」

??「風?」

 

そんな声が響き渡り、相手はようやくその動きを止め、話を聞いてくれる態勢をとってくれた。

 

 

 

それから彼女の説得と俺の説明により、襲いかかってきた子もようやく誤解だとわかってくれた。

 

??「まさか、風を助けてくれた御仁とは知らず、誠に申し訳ない。」

程立「星ちゃん、そそっかしいですねー。」

??「何を言うか。賊にさらわれ、その牢の中で服を破られ、さらにその前にいる男。

   ここまで条件がそろえば、誰とてその男を疑うであろう。」

一刀(確かに、そんな光景見たら、それ以外の可能性の方が少ないよな。 ・・・あっ!)

 

そんなことを思っていると、今になって助けた子の格好がひどいことになってることに気付く。

 

一刀「ごめん、気付かなかった。せめて、これでも羽織ってて。」

程立「お兄さん。ありがとなのですよ。」

 

俺はそういって着ていた外套を脱ぎ、その子にかけてあげる。

 

??「ほう、お優しいのですね。」

一刀「いや、これくらい普通だと思うけど。」

??「それに風のことも、貴殿には無関係であろう?」

一刀「それこそ、女の子が一人で捕まってるなんて聞いたら、普通助けにいくだろ。」

??「ははは、本当に面白い御仁だ。」

一刀「???」

 

そんなことを話しながら、洞窟の出口へと向かう。

 

 

洞窟の外に出ると、眼鏡をかけた知的なお姉さんって感じの人と、数人の男達が待っていた。

向こうがこちらに気付くと、その眼鏡の女性が近づいてきた。

 

??「風!良かった、無事だったのですね。」

程立「稟ちゃん、心配をかけたのですよ。」

??「いえ、いいのです。無事に戻ってきたのですから。」

 

その後の会話から、この子を助けるため、山に詳しい村人達と賊のアジトを探していたのだそうだ。

しかし、アジトと思わしき場所に着くと、すでに見張りが倒されている状態。

それを怪しんだため、武に自信のある青髪の女性が単身で中を探りに向かったそうだ。

そして後は、知ってのとおりである。

 

 

??「ところで、そちらの方は?」

 

眼鏡の女性がこちらに気付き、そんな質問をしている。

 

程立「ああ、このお兄さんが風のことを助けてくれたのですよ。名前はー」

 

そういいながら、こちらを見る。そういえば、自己紹介してなかったな。

 

一刀「俺は、姓は北郷、名は一刀っていうんだ。字はないよ。」

郭嘉「そうですか、それはありがとうございます。姓は郭、名は嘉、字を奉孝と言います。」

趙雲「そういえば、私も自己紹介をしていませんでしたな。私は姓は趙、名は雲、字は子龍と申します。」

 

そう言って、お互いに自己紹介しあう。

この2人も有名人だし、また女の子なのかと思ったが、さすがにもう慣れた。

むしろ、最後に紹介してくれた子に度肝を抜かれる。

 

 

程立「姓は程、名は立、字は仲徳。真名は風と言うのです。この真名お兄さんに預けますね。」

一刀「えっ!?」

郭嘉「ふ、風!?」

趙雲「ほう。」

 

俺と郭嘉さんは、それに驚き。趙雲さんは、面白そうな顔でその様子を窺う。

 

郭嘉「風!貴方、今日会ったばかりの人に真名を預けるなんて。」

程立「お兄さんは風の恩人なのですから、これくらい当然なのです。それに、お兄さんのことも気に入りました。」

一刀「で、でも・・・」

趙雲「北郷殿、風がこういってるのです。それに、預けられた真名を断るのは失礼ですぞ。」

一刀「う、わかった。風、君の真名預からせてもらうよ。」

風「いえいえ〜。」

一刀「だけど、俺には真名ってのがないんだ。だから、好きに呼んでくれ。」

風「ふふ、わかりました。それでは、お兄さんと呼ばせてもらいますね〜。」

 

それって前から呼んでたんじゃ?とも思ったが、風が満足そうなのでそれで良しとした。

 

 

 

 

 

 

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郭嘉「しかし、真名がないとは随分と変わっているのですね。」

一刀「あ、ああ、俺の住んでる所は、真名の風習がないんだよ。」

風「お兄さんの着ている服。とても珍しい生地でできてるのですね。」

一刀「う、えーと、俺の国の特産品なんだよ。」

 

など風と郭嘉さんの2人に、質問攻めにあい、

 

趙雲「北郷殿。先ほどの武、なかなかのものでしたな。ここは一つ、お手合わせ願えませんか?」

一刀「え!?いや、俺はそういうのは・・・」

 

趙雲さんからは勝負を挑まれる。

このままでは、色々まずいことになると思った俺は、当初の目的も果たしたため、早々に引き揚げることにした。

 

 

一刀「と、とにかく、風も無事に助かったみたいだし、俺はそろそろ行くよ。」

郭嘉「そうですか、残念ですがしかたありません。

最後に、もう一度だけ礼を言わせて下さい。私の友人を助けて頂き、本当にありがとうございます。」

一刀「いや、気にしないでよ。俺が助けたくて、助けたんだから。」

趙雲「北郷殿、また会えましたら、今度は酒でも酌み交わしましょうぞ。」

一刀「ああ、その時はよろしく。」

 

郭嘉さん、趙雲さんとそれぞれ別れの言葉を交わす。

 

風「お兄さん。」

一刀「風、あの時はありがとう。おかげで踏みとどまれたよ。」

風「いえ、風も助けてもらったのだから、おあいこなのですよ。」

一刀「ははは、そうだね。」

風「お兄さん、またどこかで逢いましょうね。」

一刀「ああ、その時を楽しみにしてるよ。じゃあね。」

 

俺はそういって、笑顔で3人と別れた。

 

 

 

 

 

【side 風】

 

一刀「ああ、その時を楽しみにしてるよ。じゃあね。」

 

そういって手を振るお兄さんの笑顔は、先ほどとはまったく違いました。

とても優しく、まるで陽だまりの様な温かさを感じるものでした。

それを見た時、風は確信したのです。

 

風「稟ちゃん、風が以前話した夢のことを覚えてますか?」

郭嘉「夢?ああ、たしか太陽を掲げる夢でしたっけ。」

風「実は、最近見るようになった夢は、それだけではないのですよ。」

郭嘉「どういうことですか?」

 

稟ちゃんは不思議そうに尋ねてきます。

確かに稟ちゃんに話したのはそこまでで、最近見る夢のことは話していなかったのですから、しかたないのです。

 

 

風「太陽が沈みそうになっていたのです。明るさも、温かさも消え、深く暗いところへと。」

 

風は話し始めます。夢での話を。

 

風「しかし風がそれに気が付き、太陽を掲げてあげると、また明るさと温かさが戻ってきたのです。」

 

その夢の太陽と誰かが、とても似通っていると感じる。

 

風「そして次第にその太陽を、風だけでなく多くの手が支えるのです。」

郭嘉「確かに、以前見た夢よりも色々と追加されているようですが、それが一体?」

風「ふふっ、それは秘密なのですよ♪」

 

風は稟ちゃんにそう言って、お兄さんの去って行った方向を見ます。

もし風の予想通りなら、きっとまたお兄さんに逢えるのです。

そしてその時は・・・

 

風(ふふっ、お兄さん。風も、その時を楽しみにしてるのですよ♪)

 

 

 

 

 

 

 

 

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あとがき

 

sei 「はい、第5話いかがだったでしょうか?

   今回は戦闘シーンということで、シリアスに挑戦してみました。

   一刀の怒りや悲しみを、少しでも表現できていれば良いのですが。

   

   しかし、戦闘シーンの表現って難しいですね。

   今回は雑魚戦が主だったので、結構あっさりだと思いますが、どこまで書いたらいいのか、判断つきませんよ。

 

 

   前回までのあとがきを読み、自分いじられすぎじゃねえ?と感じました。

   本来は恋姫ゲストをいじってなんぼだと思って書いていたのに、これじゃ逆です。

   そのため今回のゲストは、こっちからいじっていきたいと思います。

   それでは、そんな今回のゲストは誰ですか?」

 

 

風「こんにちは〜、今回のゲストの風なのです。」

 

sei 「 orz 」

 

風「ん、どうかしたんですか〜?」

 

sei 「・・・いえ、現実の厳しさを実感していただけなので、続けて下さい。」

 

風「は〜い。それではまず、今回お兄さんが使った技からですね。あれは何なのですか?」

 

sei 「ああ、あれは特別な技というわけではありません。

   ものすっごく気配を消しただけです。ただ、それに大層な名前をつけただけなのです。」

 

風「なんでそんなことしたのですか?」

 

sei 「いや、そっちのほうがカッコいいなあと思って。」

 

風「まあ、人の趣味は様々なので別に構わないのですよ。」

 

sei 「えー、良いと思うんだけどなぁー。」

 

風「続いての疑問は」

 

宝ャ「俺からだぜ。sei さんよ、なんで今回俺の出番がなかったんだい?」

 

sei 「う、それはすいません。

   なんとか出そうと考えたのですが、どうしても流れ的に無理でした。」

 

宝ャ「な!?じゃあ、俺っちのターンはずっとこないのか!」

 

sei 「風との再会の時に紹介しますよ。でもどっちにしろ、あなたのターンはきません!」

 

宝ャ「そ、そんな・・・・・・」

 

 

風「とまあ、sei さんの宝ャいじりが済んだ所で・・・」

 

sei 「やめて、なんか音の響きがいやー!」

 

風「何を嫌がってるかまったく分りませんが、続いてコメントについてですね。

  月ちゃん達が、なんで陳留なんかにいたのかってことですね。」

 

sei 「う、それは前回の話の鬼門です。」

 

風「ちなみに、何でなんですか?」

 

sei 「えー、一応彼女達はあっちの方面に視察にいき、その帰りに一刀のいた町へと立ち寄ったって設定でした。

   ちなみに兵士たちは、町の外で待機していました。」

 

風「わざわざ、あんな所にまで視察ですか?」

 

sei 「そうなんですよね。今思うと、結構無理矢理過ぎました。せめて洛陽だったら、もう少し言い訳できたのに。」

 

風「まあ、やってしまったものは、今更どうしようもないですね。」

 

sei 「はい。というわけで皆さん、色々突っ込みたい所はあるでしょうが、なんとかそれで納得して下さい。m(_ _)m 」

 

風「まったく、次回からは気をつけて下さいね。」

 

sei 「はい、気をつけます。」(あれ?なんで、風に誤ってるの?)

 

 

sei 「そんなこんなで、今回はこれで終わりになります。」

 

風「ちなみに、次回はどうなるんですか?」

 

sei 「えーと、[闇から立ち直った一刀。しかしその心の傷は、まだ完全に癒えたわけではなかった。

   そんな一刀の前に、ある人物が現れる。]って感じですね。」

 

風「ふぅ〜、毎回毎回違う女の人とお兄さんは会いますね。」

 

sei 「うっ、まだ√が確定していないので、それは許して下さい。」

 

風「しょうがないのです。そんなダメな所も含めてのsei さんですしね。」

 

sei 「はい、ありがとうございます。」

 

風「それでは、また次回も見てほしいのですよ〜。」

 

sei (やはり、今回もいじられて終わったー!!)

 

説明
町で管輅と出会い、衝撃的な事実を突き付けられる。
そして、迫られる二択により苦悩する一刀。
しかし時代は、じっくりと考える余裕も与えてくれない。
村への帰り道、その先に立ち上る煙が見える。村で一体何が起こったのか?

今回は、シリアスと戦闘シーンに挑戦してみました。
少しでも、それらが表現できてればと思います。
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コメント
風見海斗 様>間違いのご指摘ありがとうございます。 チート一刀は、あれこれ妄想しながら書けて楽しいですよね。(sei)
誤る→謝る チートの一刀は誰もが夢見る設定ですねww 僕もチート一刀は大好きなのでわくわくしながら拝見させていただいてます。(風見海斗)
クライシス 様>そんなに褒めらると照れくさいですね。でも、期待に応えられるよう頑張ります。(sei)
大変面白かったです!文章も上手くて戦闘描写も文句なしです!更新を楽しみにしています!(クライシス)
鬼神 様>初めての戦闘シーンだったので、そういってもらえて良かったです。(sei)
陸奥守 様>自分の作品の半分は、無理矢理でできています!(sei)
本郷 刃 様>次に会う人物も、一刀に色んな意味で頑張ってもらいたいと思ってます。(sei)
Satisfaction 様>オリジナリティですか、たぶん中二病的な妄想が炸裂しますねw(sei)
アルヤ 様>もうそろそろ√が確定しますので、その時にわかりますよ。(sei)
イマ 様>これからも無理矢理が多々あると思いますが、一刀の武勇伝(女性も含めた)を書いていきたいと思います!(sei)
おもしろかったッス! 続き楽しみにしてるッス〜。(鬼神)
こうゆう風に話が進んでいくと独自勢力築くしかなくなるんじゃないかな。まあ有り難いけど。(陸奥守)
風と稟と星の登場でしたか・・・次は一刀が誰と会うのか楽しみです♪(本郷 刃)
チート一刀の方が僕は書く人ののオリジナリティとかが出ていいと思います(個人の意見なので、聞き流しても構いませんがw)今回も楽しませていただきました。次回の更新待ってます!(ミドラ)
独自勢力を作り上げるっぽくなってきたな・・・・・・(アルヤ)
無理矢理でも良いんじゃないですかね?私は知識ゼロの人間なんで、とりあえず一刀が数多の戦場を駆け巡り、女性を落としていって子を成してもらえれば、それで満足なんで。(イマ)
act 様>能力がチートでも、それ以外で一刀らしさが出せればと思ってます。(sei)
atlas039 様>楽しんでもらえて良かったです。ブクマが無駄にならないよう、次話も頑張ります。(sei)
面白すぎーーーーーーーーーーーチートな一刀も有りだ。(act)
あっという間に読んでしまった…ブクマもしてしまった…(atlas039)
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