真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の娘だもん〜[第16話]
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真・恋姫?無双〜だけど涙が出ちゃう男の((娘|こ))だもん〜

 

[第16話]

 

 

「……本当に、これを着るの?」

 

ボクは目の前に置いてある全身鎧を指さしながら魏延に言いました。

そんなボクの言葉に魏延は、腕を組んでの仁王立ちをしてドヤ顔で答えます。

 

「はいっ!」

「……冗談とかでは無くて?」

「もちろんです!」

「……」

 

本当に冗談では無かったようです。

ボクは魏延の言葉を聞いて頭が痛くなってきました。

理由は目の前にある全身鎧。

材質は鋼鉄らしいのですが、見かけは“金ピカッに光る黄金の鎧”なんです。

どうも魏延が鍛冶職人に無理を言って、((金箔|きんぱく))をあしらって貰ったようなのです。

 

(これを身から出た((錆|さび))と、言うのでしょうかね……)

 

今の自分の置かれた状況を省みて、ボクはそう思いました。

 

領内を富ます為に、ボクは色々な技術を確立して伝えて行きました。

その技術を職人が切磋琢磨しての更なる技術力の向上。

鎧に金箔をあしらうような発想が出て来る思考の柔軟性。

どれもボクの予想を超えて発達してくれたのは嬉しい事です。

でも、

 

(こんな形で実感する必要は無いんじゃない?)

 

と、ボクは心の中でツッコミを入れずにはいられませんでした。

 

 

 

 

過日に賊徒討伐の((命|めい))を受けたボクは、その事を皆に諮って華陽国(旧漢中郡)に急使と伝書鳩を放ちました。

完全装備の3軍(1軍:1万3千人+補給隊別)の総勢3万9千人(呼称:6万)と、華陽国に残留していた親衛隊2500騎を洛陽に呼び寄せるためです。

 

本当はもっと呼びたかったのですが、新規の装備に変更完了しているのが3軍だけだったのです。

また、陛下の好意に答える為にも、迅速に功績をたてる必要がありました。

でないとボクの王位就任が、周りの((讒言|ざんげん))によって『陛下のお戯れ』にされてしまう可能性があるからです。

 

軍の到着を待つ間、ボク達は情報収集に励みました。

それによると、賊徒の発生は大陸全土に渡って起きているようでした。

いかに民が、漢王朝の統治の仕方に不満を持っているかと言う証拠でしょう。

え?

その時の益州は、どうなのかって?

もちろん、益州では起こって無いです。(えっへん)

 

最大勢力の冀州は一先ず置いといて、近場の賊勢力から当たる事にしました。

司隷の隣の豫州では、官軍が黄巾軍に苦戦しているそうだからです。

王の印璽を拝領しに宮廷に参内したり情報を集めて解析している間に、華陽軍本隊が洛陽に到着して休息を取らせる事が出来ました。

軍を率いて来たのは黄忠・魏延・呂蒙・((?統|ほうとう))。

『華陽国の統治は、どうしたの?』と黄忠に問いましたところ、『張任を筆頭に、下が育って来たので任せて来ましたわ』と言われました。

軍の((兵站|へいたん))と治安良好な華陽の統治なら問題ないだろうと、ボクは了承します。

益州の他郡は後で査察を敢行するとして、現状はそのまま任せるしかないと思いました。

準備が完了したので『さあ、全軍出発だ!』と豫州へ行こうとしたら、魏延がボクに渡す物があると言い出します。

なんだろう? と思って華陽軍陣営の天幕へ付いて行くと、金ピカッに光る黄金の鎧を渡されたのでした。

 

 

 

 

「ささ、どうぞ御着け下さい」

「……」

 

魏延がボクに向かって、ズッズイッっと金ピカッの黄金鎧を押し込んできます。

その笑顔は、ボクが断るなんて御塵も疑っていないようでした。

 

(なるように成ったという事なのでしょかね?)

 

遅かれ早かれ、こういう結末になっていたのでは無いか? と、ボクは思う事にしました。

どのみち((武力|チカラ))の無いボクには身を守る鎧は必須なのですから。

 

「……じゃあ、着付けを手伝ってくれる?」

「はいっ!」

 

なんでしょうね?

魏延の後ろに尻尾があって、左右に勢い良く振れているのが見えるようです。

 

 

 

「若! もうすぐ、出発します…ぞ……」

 

天幕内でボクが鎧を着け終わる頃に、厳顔が怒鳴り込んで来ました。

しかし、すぐにボクの格好に気が付いて驚いたようです。

一瞬驚いた厳顔は、何やら面白いモノを見つけたとばかりにニヤつき出しました。

こんな顔する時は、いつも((碌|ろく))な事を考えていない時と決まっています。

今度は何を企んでいるのでしょうか?

 

「なるほど、そういう事でしたか」

「……何が?」

「いやなに。すぐに分かりますのでな」

「?」

 

厳顔が何やら意味深な言葉を言っています。

なんなんでしょうか?

ボクは厳顔の言葉に首を傾げつつも、天幕から出て行きました。

そして愛馬・調和の所に行って見ると、ボクはその理由が分かって更にゲンナリしました。

何故なら、そこには金ピカッに光る黄金の鎧を着けた調和の姿があったからです。

 

(調和よ。お前もか……)

 

金ピカッに光る鎧姿に御満悦な調和に、ボクはツッコミを入れました。

ボクの周りの女性は、どうして光りモノが好きなのでしょうか?

その気持ちが、ボクには良く分かりませんでした。

 

「まあ。毒を食らわば皿まででしょうかね……」

 

これ以上事態が悪くなる事は無いだろうと、((半|なか))ば諦めの境地でボクは調和に((跨|またが))りました。

そして全軍を洛陽から出発させ、虎牢関を通り、水関をぬけて豫州に行き着いた頃には、自分が((如何|いか))に激甘だったかを思い知りました。

豫州に入って街の近くを軍が通る度に、軍容が物珍しいのか人々が見物しに来るのです。

 

『お母さん、あの金ピカッの鎧の人は何?』

『駄目ですよ、指をさしては。あの人はね……ボソボソ』

 

という小さな子供と母親の会話が聞こえて来た時には、さすがに居た堪れない気持ちになりました。

穴があったら入りたいです。

 

近くに居る魏延はドヤ顔で御満悦。

厳顔も近くに居ますが、ニヤついた顔でおもしろがっています。

他の人達は『お似合いですよ』とか慰めてくれるのですが、近くに居ません。

ああっ、なんでしょうね?

皆の愛情が心に痛いです。(泣)

 

 

 

「刹那様!」

 

心の中でボクが泣いていると、情報収集を任せていた周泰が戻って来ました。

 

ボクは華陽王や益州牧になった事を機に、今迄ボクが管理していた諜報機関や偵察部隊(隠密)などを周泰に任せました。

とはいえ、情報を解析するのは諸葛亮を始めとした軍師達の仕事です。

だから、情報収集・偵察・工作などが主な仕事になります。

また、魏延を一軍の将に抜擢した為に親衛隊長の座を解任。

開いたその座も周泰に兼務させました。

魏延を親衛隊長の座から下ろす時に一悶着ありましたが、諸葛亮が何やら魏延の耳に((囁|ささや))くと態度を急変させて事無きを得ます。

何を言ったのか気になるところですが、教えてくれませんでした。

残念です。

 

 

 

「何かあったのかい?」

 

ボクは周泰の様子から何かあった事を推察しました。

 

「はい。豫州潁川郡にて官軍の朱儁軍が黄巾軍の波才軍に敗退。

 朱儁軍は、皇甫嵩軍の居る長社まで撤退して供に籠城していますが、波才軍はこれを包囲している模様です」

 

周泰は、偵察隊が見聞して来た事の要点を簡潔に述べてくれました。

ボクは今後の方針を決めるべく皆を集め、協議する事にします。

その結果、波才軍を背後から強襲して官軍を救う事となりました。

波才軍が((此方|こちら))に軍を向ければ、背後から朱儁・皇甫嵩軍が襲う事になるからです。

 

 

 

 

夜の闇夜の中で周泰先導の下に軍を長社近郊まで進め、どうにか警戒網を抜けて波才軍の背後を取る事が出来ました。

そこで突撃の機会を((窺|うかが))っていると、他方に軍が現れたと周泰が報告してきました。

牙紋旗の文字は『曹』で、官軍の模様との事。

官軍ならば連携を強めるべく伝令を送る事を思案していると、籠城している官軍から火牛が飛び出して来たのを受けて波才軍が混乱しだします。

どうやら火牛の計を用いたようでした。

ボクは、この機を((捉|とら))えて命令を下します。

 

「桔梗、全軍の指揮を任せる。朱里は桔梗に付いて指揮の補佐をして」

 

ボクは厳顔に指揮権の委譲、諸葛亮に厳顔の補佐を任せました。

 

「承知」

「はい」

 

2人はボクの命令を受諾して全軍に突撃命令をかけました。

どうやら遠目に見える曹軍も、同じく突撃をかけたようです。

中々に状況判断が優れている将だなと、ボクは感想を抱きました。

 

そこからは縦横無尽に軍を戦場に駆け巡らして、皆は賊を撃破していきました。

賊の方が数倍多いのですが、火計によって混乱してか統率が取れていません。

また、兵の錬度や装備している武具・防具の違いも現れているようです。

賊が突撃してくるのを重装歩兵の盾隊が止め、盾と盾の隙間や上から長槍隊が打撃。

後方から弓隊が歩兵隊を援護しつつ賊を討ち、機をみて弓騎兵が騎射しながら賊を撹乱。

混乱している賊の弱点に重装騎兵の突撃で止めを刺す。

何と言いますか、『鬼のように強い』とでも言い表わすしか無い圧倒的な強さでした。

 

ボクは親衛隊3000騎と周泰に守られて、後方にて戦場を見詰めていました。

親衛隊はボクの旗揚げ当時からの古参兵で主に構成され、忠誠、技倆共に最高峰の((兵|つわもの))達でした。

 

(焔耶にあれだけ痛めつけられれば、そうならざるを得ないのだろうけどね)

 

ボクは魏延による阿鼻叫喚な教練現場を思い出して、そう結論付けました。

つらつらとそんな事を考えていると、いつの間にか戦場の勝敗が決まったようです。

賊が降伏し出したのが見て取れたからです。

 

「どうやら勝てたようだね?」

「そのようですね」

 

ボクが話しかけると、周泰が同意を示してくれました。

彼女の顔は、どこか嬉しそうです。

 

「明命。降伏する賊は生かすようにと、桔梗に伝令をだして」

「はい」

 

勝敗が決した以上、ボクはこれ以上の殺戮は不要だと思い周泰に厳顔への伝令を頼みました。

甘いのかもしれませんが、賊とはいえ元は民。

生かせるのなら、その方が良いとボクは思いました。

賊を完全降伏・武装解除をさせて一ケ所に集めた頃には、日が昇って朝になっていました。

 

 

 

 

当初、朱儁・皇甫嵩の両人は賊を捕虜にするというボクの方針に反対しました。

見せしめの為にも賊の首を刎ねろと言うのです。

自分達の失態を帳消しにしたい事と、功績を横取りされた恨みも含まれているようでした。

幾ら言葉を尽くしても聴き入れて貰えないので、ボクは『陛下のお墨付き』を出して2人を渋々ながらも納得させます。

 

 

「はあ〜……。疲れるよねぇ〜」

 

野営する為に用意させた天幕の中で椅子に((凭|もた))れ掛かり、ボクは誰に言う訳でも無く呟きました。

先ほど朱儁と皇甫嵩両人が、やっと帰ってくれたからです。

 

「どうぞ」

「ありがとう、亞莎」

 

呂蒙がボクを気遣って、器に入れた水を渡してくれました。

説得疲れで喉がカラッカラッです。

ボクは、ありがたく水を飲んで行きました。

 

「((宜|よろ))しかったのですか?」

 

ボクが水を飲み終わるのを待って、呂蒙が話しかけてきました。

その顔は何かを心配しているようです。

 

「何がだい?」

「その……賊を捕虜にする事がです」

「賊徒討伐の君命に、反しているかもしれないと?」

「……はい」

 

君命は“討伐”で、賊を討ち滅ぼす事を命じている。

けれどボクは、“征伐”した賊の処遇を陛下から一任して貰っている。

“征する”とは、相手を降伏させて従わせる事を意味している。

だからボクは、賊を捕虜にする事は君命に反していない事だと呂蒙に答えていきます。

ボクの話しを聞いて、呂蒙は納得して安心してくれたようでした。

 

 

「ご主人様。曹孟徳さんと云う方が、面会を希望していますわ」

 

呂蒙との会話が一段落した時、黄忠が天幕に入って来てボクに言いました。

どうやら朱儁・皇甫嵩両人との面会中な為、待たせていたようです。

 

(そうか……。曹旗の軍は、曹孟徳が率いる軍だったのか)

 

ボクは先の戦闘での出来事を思い返しながら、そう思いました。

これ以上待たせる訳にもゆかず、ボクは諸将を集めて曹操との面会に臨みました。

 

会談の準備が整ったので、曹操一行に天幕への入室を許可すると3人の人物が入って来ました。

2人の従者を引き連れて天幕に入ってきた人物が曹操なのでしょう。

 

(随分、小さい人ですねぇ。でも、覇気が身体から滲み出しているようです)

 

ボクは『さすがに青史に名を刻む人物は違うなぁ』と、用意した席に座る曹操を見ながら思いました。

 

 

(さて、何の用事なのですかね?)

 

ボクは曹操から何が話されるのか、不安と期待が入り混じった気分を感じていました。

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[補足説明]

 

史実で水関と虎牢関は同じモノですが、恋姫仕様で別モノにしました。

 

 

以上です。

 

説明
無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
*この作品は、BaseSon 真・恋姫†無双の二次創作です。
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