真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の娘だもん〜[第23話]
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真・恋姫?無双〜だけど涙が出ちゃう男の((娘|こ))だもん〜

 

[第23話]

 

 

「……焔耶。いいかげんに、機嫌を直さないか?」

「……」

 

ボクは並んで馬に騎乗している魏延に声をかけました。

しかし彼女は((頬|ほお))を((膨|ふく))らませて、ボクの言うことに耳を貸しません。

そんな彼女の態度に、ボクは何度目かの溜め息をつくしかありませんでした。

 

「そうだぞ、焔耶。なに膨れ面をしておる? 可愛い顔が台無しではないか」

 

ボクの後ろから趙雲が、魏延に向けて疑問を問いかけます。

魏延は、そんな彼女の言葉に更に大きく頬を膨らませました。

そうです。

魏延の機嫌が悪い原因は、ボクと共に愛馬・調和へ騎乗している趙雲でした。

 

ボクたちが?州東部へ向かっている間、つねに趙雲はボクと一緒に調和に((跨|またが))っていました。

徒歩で?州へ来ていた趙雲たちには馬がありませんでしたし、他の馬で二人乗りをすれば馬が耐えられません。

また、馬を趙雲に貸して自分がボクと一緒に騎乗すると言う魏延の提案を、ボクは((退|しりぞ))けました。

何故なら彼女は一軍の将であり、事が起これば指揮を取って貰わなければいけないからです。

魏延はボクの言葉を頭では理解していても、心で納得が出来ないでいるみたいでした。

それ以来、彼女は膨れ面をしっぱなし。

更に趙雲は、そんな魏延を面白がり((揶揄|からか))っていました。

せっかく出会えた仲間なのですから、もうちょっと仲良しさんに成れないものでしょうかね?

ボクは彼女たちを見て、そう思わずにはいられませんでした。

 

 

 

 

新しい仲間と出会って皆と真名を交換した次の日の早朝に、暫しの別れを告げるボクたちでした。

ボクと魏延・諸葛亮に加え趙雲は?州東部へ軍を率いて行きます。

郭嘉・程c・北郷は護衛をつけて橋頭堡に行かせました。

遠征組よりも残留組の方が人手が((入用|いりよう))です。

また、郭嘉と程cの二人には軍師として華陽軍の中核を担ってもらいたい。

その為に橋頭堡にいる黄忠・?統に指導を頼んだ次第でした。

初めて趙雲たちと出会った日、趙雲と魏延がボクの天幕で一緒に寝ると言い張ります。

ボクはそんな彼女たちに、『そんなに仲良くしたいなら、焔耶の天幕で一緒に寝れば良いだろ?』と言って追い払いました。

ボクは北郷と話すことがありましたし、諸葛亮に先任として郭嘉と程cに大まかな事を伝えて貰う必要があったからです。

 

ボクの天幕で北郷に話した内容は2点。

一つは、彼が『天の御遣い』を名乗ることの危険性の再確認。

もう一つは、彼の持つ未来知識の発言をひかえて貰うことでした。

 

先のことが分かるという事は便利な反面、その知識に囚われる危険性があります。

それは突発的な出来事に柔軟な対応が出来なくなるという事。

知識に((拘|こだわ))るあまりに適切な対応が出来ないと、この世界では命取りに成り兼ねないことを理解して貰いました。

ただ、北郷としても疑問があれば問いたくなるのが人情です。

問いたい事があるのなら、ボクにだけ話すようにして貰いました。

 

意に沿わぬことをして貰うのですからボクも誠意を示します。

だから、ボクは自身にも未来の知識がある事を彼に告げました。

誰にも話したことが無い旨を強調して、彼に口止めをすることを忘れません。

北郷は驚き、ボクに色々確認や質問をしてきます。

でも、その全てに答えるには時が足りませんでした。

ボクが今どういう状況で、これからどうするのかを彼に話して、落ち着いたら色々答えることを約束します。

彼は((逸|はや))る気持ちを抑えてボクの言葉を了承してくれました。

ボクは彼に感謝を告げ、その日は就寝。

そして次の日の早朝に北郷は橋頭堡へ、ボクは李典の村へと向かう為に分かれたのでした。

 

 

 

 

(あれから日数が随分経っているのに機嫌が直らないと云うのも、ある意味凄いことなのでしょうね)

 

橋頭堡へ向かう北郷達と別れてから、だいぶ日にちが経っています。

しかし、それにも関わらず不機嫌さを継続させている魏延に、ボクは感心していました。

 

(まあ。それを((煽|あお))っている星にも、一因があるのだろうけどね)

 

ボクはそう思い、結論付けました。

後ろにいる趙雲が魏延を揶揄っていることが原因だと。

 

「星。そうやって焔耶を揶揄うのは、どうかと思うよ? それじゃあ、いつまで経っても焔耶の機嫌が直らないじゃないか」

 

ボクは後ろにいる趙雲に、((自重|じちょう))するように言います。

 

「おや? 主殿は焔耶が可愛いとは思われないと?」

「……そういう事を、言っているのでは無いだろう?」

「ふむ。仕方がありませんな。主殿の((命|めい))に服するとしましょうか」

 

趙雲はボクの言葉に素直に従ってくれます。

しかし、それで終わりとならない彼女でした。

今度はボクに狙いを定めたのか、にじり寄って来てボクと密着。

彼女の柔らかい胸が鎧越しに押し付けられているのが感じられます。

 

「うひゃあ?!」

 

ボクは思わず奇声を上げてしまいました。

何故って?

それは趙雲がボクの首元に顔をよせ、耳に甘い息を吹きかけてきたからです。

フ〜って。

 

「ちょっと、星! そういう悪ふざけは止めてって、言ったでしょ?!」

「ふふふっ。良いではありませぬか、主従の心の交流でござるよ」

「そんな事で、心の交流なんて……うふん?……((図|はか))れないよ!」

「いやいや。私は十二分に図れていると思いますぞ?」

「星だけそう思っても意味が……あん?。だから、耳は弱いんだから止めて!」

 

ボクが幾ら言っても趙雲はボクの耳に息を吹きかけるのを止めてくれません。

逃げようにも馬上では逃げ場はありませんし、彼女がボクを抱きしめて離しませんでした。

しかも彼女は、ボクの鎧の中に手を入れて身体を((直|じか))にまさぐっています。

ボクは趙雲の魔の手から逃れる手段が無く、されるままの状態でした。

 

なんでしょうか?

ボクは耳に息が吹きかけられている状態が、何やら気持ち良くなって来てしまいました。

何かイケない性癖に目覚めてしまいそうです。

 

「こら、星! 刹那様から離れろ!」

 

ボクが入ってはイケない領域に踏み込もうとした時、魏延が『鈍砕骨』を趙雲に振り落とします。

魏延の愛器である巨大な金棒は、新しい武具を作った時に彼女の希望でこしらえた物。

また他の将軍たちの武器も、それぞれの注文に合わせて作製してありました。

 

「おっと。危ないではないか、焔耶」

 

魏延の攻撃を趙雲は自分の槍を両手に持って受け止めたようです。

そのお陰でボクは((窮地|きゅうち))を脱することが出来ました。

 

危なかったです。

もう少しでボクは戻って来ることの出来ない場所へ往ってしまうところでした。

ボクは何とか踏み止まる事が出来たことに安堵します。

本当に良かった。良かったよ〜。(クスンッ)

 

「ワタシの前で刹那様とイチャイチャ! もう、許せん!」

「ふふふっ。何だ、焼き餅か?」

「な?!」

「主殿の肌はスベスベで、とても触り心地が良い。羨ましいであろう?」

「……」

 

魏延は((俯|うつむ))いて武器を片手に何やら震えだしました。

そして急に『ウガッー』と叫び声を上げ、武器を趙雲めがけて振り下ろしてきます。

その時おもむろに調和がヒョイッと前進。

魏延の攻撃は趙雲に当たることは無く、空振りに終わります。

そのまま彼女は、地面に轟音と共に大きな穴をあけて突っ込んで行きました。

すかさず趙雲は槍の柄で魏延の後頭部を打撃。

魏延は、そのままヒクついて動かなくなってしまいました。

 

「ふー。主、悪は滅びましたぞ」

「いやいや! 違うでしょ? 言葉の使い方、間違っているよね?!」

 

ボクは変なことを言ってくる趙雲に思わずツッコミを入れてしまいます。

だって、まるで自分が正義だと言わんばかりの物言いだから。

 

「なに。細かいことは、良いではありませぬか」

「良くないよ! そこは大事なとこだよ?!」

「ふふふっ。では、主。心の交流の続きといきましょうか?」

 

なんでしょうか?

趙雲の目がすわっていて明らかに正気を失っています。

ボクは調和の首を両手で抱きしめて、少しでも彼女から離れようと必死でした。

 

「ちょっと親衛隊の皆! 主君の危機だよ?! 見てないで誰か助けてよ!」

 

ボクは周りにいる親衛隊の隊員たちに助けを求めます。

隊員たちは同僚同士で顔を見合わせてからボクを見て、一様に右手を自身の顔辺りで左右に2度ほど振って言いました。

 

『((無理|むり))、((無理|むり))』と。

 

 

うわーん!

こいつら役に立たねぇー?!(号泣)

 

ボクは不甲斐ない親衛隊の((面子|めんつ))に絶望します。

 

「ささっ、主。覚悟を決め為されよ。なに。細かいことなど、すぐにどうでも良くなりますぞ?」

 

(イヤァアアー?!)

 

ボクの方に、にじり寄って来る趙雲。

しかも口端を上げてニタリッと笑っています。

絶体絶命のピンチにボクは、恐慌をきたして心の中で叫び声を上げました。

 

 

「星さん! おふざけは、そこまでですよ!」

 

ボクが趙雲の魔の手に落ちてしまうと云うその時、救いの女神が降臨。

この場に居なかった諸葛亮が静止の声をかけ、ボクを救ってくれました。

 

「まったく、もう! 後衛部隊がついてこないと報告があって来てみれば、何をやっているのですか?!」

 

諸葛亮は両手を腰に当てて胸を反らせて怒っていました。

でも、その姿は何故か微笑ましくて可愛いです。

彼女は馬から地面に降りており、その後ろに馬が2頭いるのが見て取れる。

どうやら趙雲へ渡す馬を持って来てくれたようです。

何故、先ほどまで彼女がこの場に居なかったかと云うと、魏延の機嫌が悪いので道案内も兼ねて前衛の第1軍を率いて貰っていたのです。

ボクたち親衛隊が中核で、第3軍が後衛。

これで地獄の日々から解放されると思うと、ボクは心の中で安堵の涙を流さずにはいられませんでした。

 

「星さん。いくら退屈だといっても、これはやり過ぎです。おふざけが過ぎると、夕食にメンマをつけてあげませんよ?」

「むむ? それは無体な」

「そんなことはありません! それと。明命さんが代え馬を連れて来てくれたので、その馬に乗って下さい」

「むう。そういう事ならば、致仕方ありませんな」

 

趙雲は渋々といった態度で調和から降りていきました。

どうやら周泰が合流して来たようです。

ボクは危機を脱したことに安堵しながら諸葛亮の話しを聞いて、そう思いました。

でも代え馬を連れてくるほど急ぐ必要があったという事は、何かあったのでしょうか?

 

(まあ。何かあったとしても、緊急事態という訳ではないのなら問題ないでしょうね)

 

本当に何かあったのなら、((血相|けっそう))を変えて報告してくるはずです。

それが無いという事は大丈夫だという証拠。

ボクは疑問に思いながらも、どこか安心していました。

 

 

 

(それにしても、どうしてあげましょうかね?)

 

危機を諸葛亮によって脱した後に、親衛隊の面々は『良かったですな、大将』とか言ってボクの機嫌を取って来ました。

ボクは先ほど主君の危機を放置した彼らに、どう仕返ししてあげようか考えます。

そして、ボクは良い考えが思いつきました。

 

『魏延式スペシャル特訓メニューを執行させてやる』と。

 

魏延の憂さ晴らしにもなって一石二鳥。

最高権力者の意向に盾突いたことを後悔すれば良いのです。

ちょっと((暗黒面|ダークサイド))の考えに傾いているボク。

八つ当たりと分かっていても、怒りの矛先を彼らに向けずにはいられません。

 

だって。

 

 

本当に怖かったんだもん!(グスンッ)

説明
無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
*この作品は、BaseSon 真・恋姫†無双の二次創作です。
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コメント
Lumiere404さん、コメントありがとう。これからも基本は、ほのぼの系だと思います。たぶん……。(愛感謝)
内政人材チート気味ですが種馬ハーレム進行ではなく、ほのぼのしてて良いですね。(Lumiere404)
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