真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の娘だもん〜[第24話]
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真・恋姫?無双〜だけど涙が出ちゃう男の((娘|こ))だもん〜

 

[第24話]

 

 

いまボクたちは、李典の村へ強行していました。

周泰の報告を受けてボクが決断し、親衛隊3000騎と周泰・諸葛亮・趙雲らを率いて先行することにしたのです。

受け取った報告の内容は、『李典の村が賊に襲われた』という事でした。

((幸|さいわ))いにも厳顔たちが間に合っていて、賊を撃退して村を救ったそうです。

村までの距離は報告を受けた場所から((然程|さほど))遠くもない。

残りの軍勢は魏延に指揮を任せ、偵察隊員を道案内に後から来るように((命|めい))じました。

 

ボクたちが先行する理由は厳顔たちの安否が気になったからでした。

だから決して、趙雲に手玉に取られて更に機嫌が悪くなった魏延を敬遠して離れたかったからという訳ではないのです。

本当ですよ?

信じて下さいね?

 

親衛隊への処罰は一時保留です。

冷静になってみると魏延を手玉に取る趙雲に親衛隊員では((敵|かな))う訳がない。

彼らが尻込みしてしまう心情も理解出来ました。

もっとも、今回の賊徒征伐で何の功績も立てる事がなければ『魏延式スペシャル特訓メニュー』を決行するつもりです。

それは彼らの訓練不足が原因なのだから仕方が無いことですよね?

ボクの私情では無いと思います。

 

 

 

 

「あ! 刹那様、あれが真桜さんの村です!」

 

数日の強行を経たのち、目的地が見えたことを周泰がボクに教えてくれました。

李典の村は周りを木の柵で((覆|おお))っている防備があるだけの一般的な村。

どうやら新規開拓されている最中のようでした。

 

厳顔たちの陣営は村より随分離れた場所にあり、ボクたちはそこに向かいます。

陣営の脇には兵に囲まれている賊たちが見て取れました。

彼らは後ろに手を組まされ、その手を縄で縛られています

賊の捕虜の数は、ざっと見積もって1000人位でしょうか?

今迄の襲撃では精々200〜300人程度と李典からの報告にありました。

今回の襲撃人数が多いのは村の攻略に((業|ごう))を煮やしたのかもしれません。

ボクは、そのように感想を抱きつつ将軍たちと供に厳顔の天幕に入って行きます。

親衛隊は外で待機させて野営の準備をさせる事にしました。

 

「おお、若! お早い御着きですな」

 

ボクたちが天幕に入ったのを確認して、厳顔は呂蒙や李典と話すのを止めてからボクに言葉をかけてきました。

 

「うん? お((主|ぬし))は知らぬ顔じゃな……」

 

ボクの後ろから続いて入って来た趙雲を((見咎|みとが))め、厳顔は((怪訝|けげん))そうに言いました。

厳顔にボクは趙雲を紹介していきます。

 

「彼女は趙子龍と言って、行軍中に出会ってボクの配下になってくれたんだよ」

「……使えるので御座いますかな?」

「退屈しのぎに焔耶を手玉に取るくらいにはね」

「ほほおう。それは中々に出来るようで御座いますな」

 

魏延との一悶着の件を上げてボクは厳顔に趙雲の実力を量らせました。

また。ボクたちはこの場に先行して来ていて、残りの軍勢は魏延に指揮を任せてきたことも告げます。

厳顔は趙雲を見て笑顔で話しかけます。

 

「わしの真名は『桔梗』じゃ。これから、((宜|よ))しなに頼む」

「はっ。私の真名は『星』でござる。こちらこそ宜しなに」

 

趙雲は厳顔と真名を交換し、その後に呂蒙・李典たちとも真名を交換しあっていきました。

一通り自己紹介し終わったのを確認してから、ボクは話しを切り出します。

 

「なんで陣営が、こんなに村と離れているのかな? 近くにあれば賊は襲ってこなかっただろうに」

 

ボクは賊への威圧を何故しなかったのかを呂蒙に問いかけました

彼女はちょっと困った顔をして皆に詳細を話していきます。

 

それによると、賊の拠点や総数が分からずに探る方法を思案していたところ、厳顔が『賊を誘い出せば良い』と言ったそうでした。

策敵網を広げて賊の物見を捕らえることで、こちらの動向を知られることを防ぐ一方、村が無防備であるように偽って賊を((誘|おび))き寄せる。

のこのこと賊が村を襲う為に現れたところを左背面から突撃をかまして強襲。

賊は物見が戻ってこないことを不審に思っていたそうですが、何回かの襲撃失敗で立場が危うくなった部隊長が強引に襲撃続行を推し進めたそうです。

捕虜を尋問して聞き出したことも含めると、そういう経緯だったそうでした。

 

「……もっともらしい理由があるけどさ。それって結局のところ、桔梗が賊と一戦したかっただけって事じゃないの?」

 

ボクは呂蒙の説明を聞き終えた後に呆れながら自身の感想を述べました。

いくら一戦しても構わないとボクが言っていたとしても、賊の総数が不明のまま((自|みずか))ら好んで賊を引き寄せる必要があるのでしょうか?

あまり無茶なことをして心配をかけないで欲しいものです。

ボクの発言に厳顔は、ソッポを向いて((韜晦|とうかい))していました。

図星を指されると彼女が良くする((仕種|しぐさ))を見て、ボクは自身の発言が的を射ていたことを悟ります。

 

「ボクが“仙女”と言われている報告を知らせなかったことも含めて、桔梗には言いたいことが沢山あるよ?」

「はて? なんの事でしょうなぁ。年を取ると耳が遠くなっていけませぬ。若が何を言っておるのか、とんと分かりませんぞ」

「……」

 

いつもは年寄り扱いすると怒るくせに、都合次第で言葉を((他変|たが))える厳顔にボクは白い目を向けます。

彼女はボクの態度に、どこ吹く風で知らん顔をしていました。

ボクはこれ以上言っても無駄だと悟って溜め息をつき、クギを刺したことで良しとします。

 

「……もう良いです。それで? 賊の拠点は分かったのかな?」

 

気を取り直してボクは呂蒙に話していきました。

 

「あっ、はい。ここから北東へ行った所にある、((山間|やまあい))辺りに居るらしいです。今、正確な所在地を偵察隊に調べて貰っています」

「賊の総数は?」

「捕虜から聞き出した情報によれば2万ほどだそうです。真桜さんの村も含めて、分散して周りの街とかで食糧などを奪っているみたいです。」

「ふむ……」

 

ボクの親衛隊を合わせても、現在の味方総数は1万強でした。

騎馬隊の戦闘力は歩兵に((勝|まさ))っているとはいえ、平野でならまだしも山間では馬の機動力が活かしきれません。

やりようによっては勝てないことは無いけれど味方の損害も馬鹿にならなくなる。

それに賊が分散しているとなると、取り逃す部隊が出る恐れがあります。

それは終わりが無くなってしまうという事を意味する。

出来れば一回の戦闘で賊を一網打尽にしたいとボクは思いました。

なので、ボクは『困ったときの神頼み』ならぬ軍師頼みをする事にします。

 

「朱里。どうすれば良いかな?」

「そうですね……。今のところは防衛に徹するしかないと思います。焔耶さん達が到着してからじゃないと、損害が大きくなるばかりかと」

「やっぱり、そう思う?」

「はい」

 

『我が子房』こと諸葛亮は、やはり堅実でした。

ここは一つ、定石に((則|のっと))っていこうと思います。

 

「となると、後はどうやって賊を山間から誘き出すかってことか……」

 

ボクは誰に言う訳でもなく呟きました。

皆は一様に自身で何か策を考え出そうと思案しています。

 

「そのようなこと、簡単では御座らぬか」

 

あれこれとボク達が思案していると、趙雲が発言して来ました。

何か良案でも思いついたのでしょうか?

 

「何か思いついたのかい?」

 

ボクは趙雲に聞いてみました。

皆は彼女に目を向けて耳を傾けているようです。

 

「たいしたことでは御座いませぬよ。いま捕らえてある賊の身ぐるみを((剥|は))いで、裸にしてから根城へ放逐すれば良いのです。さすれば恥を掻かされた賊は、怒って山間から出て来るで御座いましょう」

 

「「「「「……」」」」」

 

「それに裸では((他所|よそ))に悪さは出来ますまい。賊の根城に戻るしか道は無いのですから、拠点も分かって一石二鳥でござる」

 

趙雲の余りに露骨過ぎる策を、ボクは『えげつない』と先ず思いました。

だって、裸って事はですよ?

すっぽんぽんって事です。

いくら賊とはいえ、それはあんまりじゃないかな? とボクは思いました。

 

「ほう。良い策ではないか、星。気に入ったぞ」

 

厳顔は趙雲の策を聞いてニヤつきながら同意を示しました。

李典は『そら、オモロいなあ』とか言って同じく乗り気。

呂蒙と諸葛亮は、すっぽんぽんの現場を想像したのか顔を真っ赤にしています。

 

「……星の策をどう思う?」

 

ボクは呂蒙と諸葛亮に趙雲の策が有効なのかを問いました。

 

「ええ?! あの、その……。どうでしょうか? 朱里さん」

「はうわ?! わっ、わたしに振らないで下しゃい!」

 

ボクの問いかけに顔を真っ赤にした呂蒙は、返答出来ずに諸葛亮に話題を振ります。

それを受けて諸葛亮は、同じく顔を真っ赤にして自身も判断出来ない旨を表しました。

だめです。

純情なこの2人では、えげつない趙雲の策は刺激が強すぎるようでした。

そのまま乗り気な趙雲・厳顔・李典に押し切られるように、策は3人主導のもとで翌日に実行されることに決定します。

ボクは反論を口に出すことを控えざるを得ませんでした。

何故なら、こういう時の女性達に逆らえば、こちらに火の粉が飛んで来るからです。

ボクは今迄の人生経験から、それを学んでいました。

自分が((矢面|やおもて))に立たされるのは御免こうむりたい。

だから同じ男として、ボクには賊の捕虜たちに同情するしか出来る事はありませんでした。

 

 

 

 

翌日、そこには((阿鼻叫喚|あびきょうかん))な地獄絵図が展開されていました。

兵2人が賊の身動きを抑えて動きを封じ、もう一人が身ぐるみを剥いでいくという具合に進行しています。

涙目の賊たちは少しでも脱がされる事を遅らせるべく、後ろへ必死に逃れようとモガいていました。

でも、そんな彼らに無慈悲な制裁が次々と加えられていきます。

 

ああっ、無情。

 

 

「ほれ、逃げるでない! 脱がし難くなるではないか。……うん? なんじゃ、期待はずれじゃのう。もうちっと精進せい!」

 

厳顔は楽しそうに賊の服を剥いでいましたが、脱がし終わると急に不機嫌になって次に移って行きました。

何を期待していたのでしょうね?

 

「ふむ。コレは、まあまあでござるな」

「そーいうもん? ウチは初めて見るさかい、良う分からんけど」

 

趙雲と李典が何かを批評していました。

何に向けての発言なのかは言えません。

だって、ボクは何も聞いていないからです。

ええ。

誰が何と言おうとも、聞いていないと言ったら聞いていないのです。

 

「「……」」

 

諸葛亮と呂蒙は、自分たちでは((遣|や))らずに部下に任せているようでした。

しかし顔を真っ赤にしている2人は、時々チラッ、チラッと、その様子を((窺|うかが))っているのが見て取れます。

やっぱり興味のあるお年頃ってやつなのでしょうかね?

恥ずかしがっているようで、その実ちゃっかり脱がされている現場を見ているというのは。

 

でも、なんて無情で無慈悲な光景なのでしょうか?

ボクは自分がされている訳でもないのに、何故だか小さな震えが止まりません。

彼女たちを止められなかった無力なボクを、どうか恨まないで下さいね?

((因果応報|いんがおうほう))なのですから。

 

下半身の服を剥いだ後、上半身の服を剣で切り裂いていきました。

後ろ手の状態で縛られている為に服を脱がすことが出来なかったからです。

そして1000人すべての衣服を脱がし、すっぽんぽんにしてから賊たちは放逐されました

縄で縛られ連なって行く裸の賊たちの((様|さま))は大きなムカデのようでした。

ちょっと気持ち悪いです。

 

勿論、偵察隊や監視の兵を放つことも忘れません。

賊たちの顔は羞恥心や怒りの感情で真っ赤になっています。

なかには『覚えていろよ!』と捨て((台詞|ぜりふ))を趙雲に吐く賊もいて、そんな賊を彼女は小憎らしい態度で受け流していました。

どうやら趙雲が、その賊の衣服を剥ぐ時に酷い侮辱を与えたようです。

その賊は、例の立場が弱くなって襲撃を強硬に主張した部隊長のようでした。

 

趙雲は火中の栗を拾うのが好きなようです。

周りに((累|るい))が及ばないように、わざわざ自分で恨みを買って出る必要もないでしょうに。

それとも、ただ楽しんでいるだけなのでしょうか?

本当のところは彼女にしか分からないことでした。

 

「まったく。小さい男で御座いましたな」

「……」

 

何が小さいのでしょうね?

器量でしょうか。

それとも……?

 

ボクは感想を言う趙雲に、言葉ではなく心の中で問いかけました。

だって、答えを聞くのが怖いですからね。

真実は知らない方が良いと思います。

 

 

 

 

賊を監視つきで放逐してからは、嵐の前の静けさのような一見平穏な日々が続いていきました。

すぐに報復攻撃が来ると思っていましたが、予想に反して襲撃はありませんでした。

偵察隊からの報告では、賊はボクたちに報復すべく仲間を集結させているようです。

こちらの思惑通りに一網打尽に出来る環境が進んでいるようでした。

魏延たちが来るまでは、こちらへと放たれて来る賊の物見はそのまま帰しています。

それとなく((此方|こちら))の人数を知らせておき、魏延たちの到着寸前で一斉に捕らえていけば、賊の油断を誘えるからと言う理由のようでした。

先日に魏延たちがもう直ぐ到着すると言う伝令が来たので、今頃は賊の物見たちが一斉に捕縛されているのでしょう。

これでやっと次の段階に進めると思って、ボクは少し安堵感を覚えていました。

 

「刹那様!」

 

ボクが自分の天幕内でこれからの事を考えていると、周泰が少し息を切らせて入って来ました。

 

「どうしたの、明命。何かあったのかい?」

 

ボクは不思議に思って周泰に問いました。

彼女はボクに要件を告げます。

 

「は?」

 

ボクは報告の内容を聞いて自身の耳を疑いました。

そのまま周泰を((伴|とも))なって天幕を出て行き、愛馬・調和に((跨|また))って報告の内容を確かめに現場へ行きます。

ボクが陣営を離れて行くのを見て、気付いた親衛隊員の数名が慌てて後を追って来ました。

 

 

 

「……」

 

現場に着いて報告内容が間違いで無いことを知り、ボクは呆然となってしまいます。

何故なら、そこには敵対勢力では無いけれど味方とも言い難い軍勢が、こちらに向かって来ていたからでした。

その軍勢の牙紋旗の文字は『曹』。

つまり、それは((曹操|ストレスの元))が((此|こ))の地にやって来たことを意味したからです。

 

「……なんでぇ〜?」

 

ボクは涙目になって、そう呟きました。

 

『なんで、彼女が((此処|ここ))に居るの?』

『なんで遭いたくないのに、また会わなければイケないの?』

『なんで……。なんで……』

 

ボクの頭の中に、そんな考えが((忙|せわ))しなく巡ります。

しかし、ボクの悲痛な問いかけに答えてくれる存在は誰もいませんでした。

 

 

 

 

ふえーん!

いーやぁーだぁーよぉー。(((慟哭|どうこく)))

 

もう、お((家|うち))に帰る!

説明
無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
*この作品は、BaseSon 真・恋姫†無双の二次創作です。
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