真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の娘だもん〜[第25話]
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真・恋姫?無双〜だけど涙が出ちゃう男の((娘|こ))だもん〜

 

[第25話]

 

 

『悪い夢なら、早く目覚めて欲しい』

 

曹旗の軍勢から数騎が別れて((此方|こちら))へ向かって来るのを見て、ボクは心の底からそう思いました。

やって来る馬に騎乗している人物たちは、どう見ても曹操本人と夏侯姉妹。

しかし、心からの願いは無情にも((叶|かな))わず、その姿は大きさを増していきます。

更に彼女達の後ろには、2人ほど見知らぬ人物が見受けられていました。

曹操陣営の新しいお仲間なのでしょうか?

 

 

「なんや、((凪|なぎ))たちやないか。遅いお着きやなぁ」

(え?)

 

ボクは後ろの方で李典の声が聞こえて来たので、振り返って彼女を見ました。

そこには李典だけでなく、他の将軍たちも((勢揃|せいぞろ))いしています。

ボクが((呆|ほう))けている間に、いつの間にか皆が集まって居たみたいでした。

 

「なに? 真桜は、彼女たちの事を知っているの?」

 

さきほど李典が真名らしき名を語ったことを不思議に思い、ボクは彼女に問いました。

 

「ん? そやで大将。凪…楽文謙と于文則はウチの((友達|ダチ))や」

「……大将って、ボクのこと? いやいや。そんな事より、友達ってことは、彼女たちは真桜の村の住人なの?」

「せや」

 

もしかして、((敵|原因))は((本能寺|李典))にあり?

ボクは曹操と又遭ってしまった原因が、李典にあるのではないかと疑念を抱きます。

 

「え〜と、真桜さん? 村への救援要請って、もしかしてボクの所だけではなかったのかな?」

「そうやで。近場の街の太守ん所で別れてん。ウチは大将の所に。凪たちは豫州に居る軍勢に要請に行ったんや」

 

うわーん。

やっぱり ((李典|こいつ))が元凶なんだぁ(号泣)

しかも、なんですかぁ?

さも何でも無い事のように、サラッと言っちゃってくれましたよぉ。

 

「……そんな話し、ボクは初耳なんだけど?」

「そらそうやろ。言うてへんもん♪」

「……」

 

なんでしょうね?

『もん♪』って軽く言ってくれましたよ、この人。

最悪です。

 

ボクはこの時、自身が李典を見損なっていた事を悟らざるを得ませんでした。

彼女は見た目とは違い頭脳派のようです。

しかも卑怯系に傾いている。

ボクは改めて、そんな李典を注意深く見ます。

そうすると、彼女の後ろの方で細黒くて先が((鏃|やじり))のように((尖|とが))っている尻尾のようなモノが、左右に振れているのが見えてくるようでした。

 

(ああっ。人を見かけで判断したボクが、イケなかったという事でしょうか?)

 

ボクは思いました。

『後悔先に立たず』とは本当のことだと。

そして、女性という存在は本当に怖いって。

目的を果たすことにかけて容赦がありません。

 

善良で心優しい男性の皆さん。

どうか、気を付けて下さいね?

ズルイ女性に((騙|だま))されてからでは遅いですからぁ!(泣)

 

 

「あら? そこに居るのは、((麗|うるわ))しいと噂の仙女じゃないかしら」

 

ボクは二度と聞きたくなかった声を聞いて少しビクつき、((恐|おそ))る((恐|おそ))る振り向いて発言者を見ました。

そこには、やっぱり((曹操|ストレスの元))が居て、いつぞやの口をニヤつかせている恐い笑顔でボクを見ています。

李典に気を奪われているうちに、いつの間にか曹操一行が近くまで来ていたようでした。

しかも今回は、人のイヤがる事をピンポイントで((抉|えぐ))ってきます。

それはまるで、『どこぞの誘導ミサイル搭載ですかぁ〜?』と言わんばかりの命中精度にアップデートしていて、か弱いボクのハートを直撃しました。

 

ボクは心の内で決めました。

これから曹操のことを『イジワル大魔王』と呼ぶことにすると。

 

 

「ははは……やだなぁ、華琳。ボクの事を忘れちゃったのかい? 豫州の長社で会ったばかりじゃないかぁ」

 

ボクは精一杯の笑顔をつくって、なんとか曹操に返答しました。

しかし、口端がヒクついてしまう((渇|かわ))いた笑顔にしかなりません。

そんなボクに、曹操は面白がるように話しかけてきます。

 

「さあ、どうなのかしらね? あの時には、もう仙術で姿を変えていたのかもしれないし。分からないわ」 

「いやいや。ボクは刹那本人だよ? 仙女じゃ無いから」

「ふふふっ。こんな所で((崑崙|こんろん))に居ると云う仙女に会えるなんて、光栄と言うべきなのかしらね?」

「……」

 

曹操はボクの言葉を意に((介|かい))さず、なおも茶番を続けてきました。

さすがに史実で『治世の能臣。乱世の奸雄』と云われて居ただけあって、底意地の悪さも天下一品です。

 

 

「なあ、秋蘭」

「ん? なんだ、姉者」

 

曹操にどう言おうかと悩んでいると、ボクの耳に夏侯惇・夏侯淵姉妹の会話が聞こえてきました。

 

「良く分からんのだが……」

「ああっ…?」

「あの者は……仙女なのか? わたしの目には、季玉本人にしか見えんのだが……」

「姉者……」

 

夏侯惇の生真面目な発言に夏侯淵は片手を自身の顔に当てて溜め息をつき、一同は言葉を失ってしまって辺りに((白|しら))けた静寂さを訪れさせました。

彼女にとっては真面目な問いかけなのでしょうが、その発言内容は周りの人達にとって天然ボケにしか聞こえなかったからです。

 

 

「あの、すみません。村の様子が気になるので、早く行きませんか?」

 

白けている場に、全身にキズ後のある李典の友達の一人が発言してきました。

ボクは、この機を((捉|とら))えます。

 

「そっ、そうだね。じゃあ、真桜。君に詳細説明を任せるから、華琳たちを村に案内してあげてよ。ね?」

 

ボクは李典に曹操たちを押し付け、少しの間でも離れようと((企|たくら))みました。

 

「あら、それなら結構よ? 私達は、刹那の陣営近くに陣を築くから」

 

ボクの精一杯の策は曹操の一言で水泡に帰します。

 

「……なんでよ?」

「だって貴方の事だもの、もう何かしているのでしょう? それなら、近くに居た方が迅速に動けるというものだわ。

そうじゃないかしら?」

「……」

「ふふふっ」

 

曹操の顔は、まるで『貴方の考えなんて、お見通しよ?』と言わんばかりでした。

どうあっても、彼女はボクから離れてくれないようです。

正論極まり無い曹操の言葉に為す((術|すべ))も無く、ボクは彼女の提案を受けざるを得ません。

ボクはもう、心の中でサメザメと泣くしか出来る事はありませんでした。(号泣)

 

 

 

李典の友達2人のうち村へ急ぎたい((旨|むね))を表した方が楽進(字:文謙)で、もう一人が于禁(字:文則)と云うそうです。

ボクは李典に詳細説明と、これからの事を話して貰う為に一緒に村へ行って貰いました。

賊征伐が終われば、李典は益州に行く為に彼女たちと別れなければいけません。

だから例え少しの時間であったとしても、一緒にいさせてあげたかったのです。

 

曹操の軍勢は、先の言葉通りに華陽軍の陣営近くに来てしまいました。

途中で考えを変えて村に行ってくれるのでは? という、((淡|あわ))い期待と((一縷|いちる))の望みも無残に断たれてしまいます。

ボクは最後の((足掻|あが))きと、『焔耶たちを迎えに行って来るよ』と言って陣営を離れようとしましたが、厳顔に首根っこを((掴|つか))まれて天幕内の椅子に座らされてしまいました。

天幕内には李典を除く将軍たちが居て、ボクが逃げるのを防止しています。

しかも厳顔は、真後ろに立って両手でボクの肩を押さえつけるという徹底ぶり。

ボクはもう、まな板の上の鯉のように曹操たちが来るのを待つしかありませんでした。

るーるーるー。(((諦|あきら))めの涙)

 

 

「あら、待たせてしまったかしら?」

 

天幕内で勢揃いしているボク達を見て、入室して来た曹操が謝罪するように言います。

『どうか来ませんように』というボクの願い((乏|とぼ))しく、曹操と夏侯惇・夏侯淵が来てしまいました。

 

「ううん。全然。まったく待ってなかったよ?」

「そう……?」

 

ボクの言いように曹操は少し((訝|いぶか))しみます。

しかし、直ぐに気に留め無くなり、用意してあった席に着きました。

 

「それじゃあ、聞かせて頂けるかしら?」

 

椅子に座って直ぐに、曹操は要件を切り出してきました。

彼女は拙速を((尊|たっと))ぶのでしょうか?

まあ、その方が早く会議も終わるので、ボクの都合が良いのも確かです。

なので、諸葛亮に計画を話して貰おうと思いました。

 

「朱里。華琳に説明してあげて」

「はい」

 

曹操たちに諸葛亮は、

賊の総数は2万人ほどである事。

拠点は、ここから北東方面にある((山間|やまあい))である事。

((誘|おび))き寄せる為に、捕らえてあった賊に恥をかかせて放逐した事。

賊は、報復する為に散らばっていた仲間を集めている事。

賊の物見に偽情報をつかませており、こちらの総数情報は渡っていない事。

華陽軍本隊は、近日中に到着する予定である事。

などを説明していきました。

 

「……そう。理解したわ。ありがとう」

 

瞳を閉じて説明を聞いていた曹操は、諸葛亮の話しを聞き終えた後に目を開けて礼を言いました。

 

「ところで。賊に恥をかかせて放逐したと言っていたけれど、具体的にはどういう事をしたのかしら?」

 

自身の理解を深めるべく、曹操は諸葛亮に補完情報を求めました。

 

「しょ、しょれは! あのっ」

 

曹操の求めに諸葛亮は、顔を真っ赤にして返答出来ません。

どうやら、彼女は意図的にその話題を避けて説明していたようです。

ですが、曹操に詳細説明を求められて((窮|きゅう))してしまったようでした。

急に赤面し出した諸葛亮を曹操は訝しげに見ています。

 

「あ〜、それはね。捕らえてあった1,000人ほどの賊の衣服を((剥|は))いで、素っ裸にしてから放逐したんだよ。それで怒った賊は、仲間を集めてボク達に報復しようとしているのさ」

 

諸葛亮の代りにボクが曹操たちに詳細を説明すると、彼女たちは呆気に取られて黙ってしまいました。

その後、夏侯淵は顔をほんのり桜色に染めていきます。

夏侯惇は『?』ってしていて、良く理解していないようでした。

曹操は片方の口端を上げてニヤつき、イジワル大魔王の黒い微笑を全開にしながら面白がっています。

 

「ふふふっ。そう、そんな事をね……。それは貴女の立てた策なのかしら?」

 

曹操は諸葛亮自身の立てた策なのかどうかを問いかけました。

 

「ちっ、違いましゅ!」

「そうなの……。では、誰の策なのかしらね」

 

諸葛亮の否定の返答を受けて、曹操はボクの後ろに控えている将軍たちに目を向けました。

 

「趙子龍の策だよ」

 

このままでは((埒|らち))が明かないので、ボクが曹操に説明しました。

曹操はボクを見て問いかけてきます。

 

「趙子龍?」

「そう。彼女だよ」

 

ボクは曹操の問いかけに、趙雲を指さして紹介しました。

曹操は趙雲を見てからボクに顔を向け、再度問いかけてきます。

 

「初めて見る顔ね?」

「そうだよ。ここに来る途中で出会ってね、その時に配下になってくれたんだ」

「そう……。まだ((掲|かか))げる旗を定めていなかったら、((曹軍|うち))に欲しいほどの人材のようね」

「……華琳が彼女のどこを見て、そう思うのかは置いとくとしても。そういう事は、本人に言って」

 

賊を裸にして放逐した趙雲の策の、どこに見る所があるのか分かりませんでしたが、曹操は趙雲を自身の旗下に欲しがってきました。

 

「ふふふっ。良いのかしら? そんなこと言って」

「さあ? それは彼女が決める事だよ。ボクはただ、常に自分の仲間を信じるだけさ」

 

聞きようによっては引き抜きを容認するかにも聞こえるボクの返答に、曹操は面白がるように話してきました。

曹操は人格や性質よりも、先ず能力を優先して見る事にしているようです。

自身の予想を超える策を考えた事に興味を((惹|ひ))かれたのかも知れませんね。

 

ボクはそんな事を考えながら、イジワル大魔王こと曹操に新たな名をつけようと思いました。

 

『人材収集マニア』

 

これこそ、彼女に((相応|ふさわ))しい二つ名ではないでしょうか?

 

 

「貴女のこと、気に入ったわ。私のモノにならないかしら?」

 

ボクが現実逃避している間に曹操は趙雲を勧誘し始めました。

そんな曹操に趙雲は、悪戯を思い付いたような顔で答えていきます。

 

「申し訳ござらぬ。私の身も心も((主|あるじ))に奪われて、もはや片時も離れられぬ身にされてしまいました。それゆえ、その議はどうかご容赦を」

 

いきなり趙雲が爆弾発言をかましてくれました。

ボクは驚いて後ろを向いて彼女を見ます。

 

「ちょっと、星! 人聞きの悪いことを、サラッと言わないでくれる?!」

「おや、そうで御座いますかな? 我が忠誠をお試しになる主より、余程マシと云うものでは御座らぬか」

「……分かった。ボクが悪かったよ。謝るから、許してくれないか?」

「ふふふっ。分かって頂けたのであれば、((宜|よろ))しいのですよ」

 

本当、趙雲には((敵|かな))いません。

ボクは気を取り直して曹操に向き合います。

 

「そういう訳で、華琳。申し訳ないけど勧誘は諦めて」

「ふふふっ。そうね、残念だわ」

 

曹操は((然程|さほど))期待していなかったのか、断られた事を気にしていないようでした。

まあ。ほいほい((鞍替|くらが))えするような人物を、登用する筈も無いと思います。

それから取り留めも無いことを話した後、曹操たちは自身の陣営に帰って行きました。

 

 

「ふ〜……」

 

ボクは椅子に((凭|もた))れ掛かり、とても深い溜め息をつきました。

曹操一行が居ないだけで、こんなにも解放感を感じられるとは驚きです。

 

「それでは、主。今宵は((臥所|ふしど))を供にして、我が忠誠を表しましょうかな?」

「……本当に悪かったよ。頼むから許して? ね?」

「ふふふっ」

 

駄目押しにと、趙雲はボクを((揶揄|からか))ってきました。

本当、勘弁して欲しいです。

 

 

「うん?」

 

ボクが何とか趙雲の機嫌を取った後、天幕の外で何やら言い争う言葉が聞こえてきました。

 

『待てって、凪。アカンって!』

『そーだよ、凪ちゃん。相手は王さまなのー』

 

という具合の喧騒が聞こえてくるのです。

 

(なんでしょうね? 王さまって事は、ボクに用事なのでしょうか?)

 

ボクが不思議がっていると、楽進が李典と于禁の引き留める手を振り切って天幕内に入って来ます。

彼女の様子は、何やら鬼気((迫|せま))る雰囲気でした。

その態度を不審に思ってか、周泰がボクの前に陣取って護衛してくれます。

 

「お話しがあります」

 

楽進はボクの前に来ると、挑戦的な態度で話しかけてきました。

これは、どう見ても友好を温めに来たとは思えません。

 

(『一難去って、また一難』という事なのでしょうかね?)

 

ボクは心の中でそう思い、溜め息をつかずにはいられませんでした。

 

 

 

 

もうやだ、こんな生活。(泣)

 

 

説明
無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
*この作品は、BaseSon 真・恋姫†無双の二次創作です。
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