IS・B 〜インフィニット・ストラトス・ブレイヴ〜 第七章 前編 現れし二つの闇
[全1ページ]

織斑先生の指示に従い、俺達専用機持ちは大広間にやってきた

「なんじゃこりゃ・・・」

そして入った途端唖然とする

そこには大型のディスプレイを始め、いくつものディスプレイが並んでいて教員達が必死にキーボードを叩いていたのだ

「全員揃ったな。 では、状況を説明する」

織斑先生の声に我に帰り、耳を傾ける

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音』が制御下を離れて暴走。 監視空域より離脱したとの連絡があった」

銀の福音?また大層な名前だな

その後、話を聞いて判ったことはその銀の福音ってやつは高い機動性と攻撃性能を持っていて広域殲滅を目的とした特殊射撃型ということ

おまけに時速2450キロっつー馬鹿げた速さで移動してるという

その為対策を話し合っていると突然天井が開き見覚えのあるウサギ耳が垂れてきた

「イヤッホー! ここは私の出番だねっ!」

「つまみ出せ」

案の定、その正体は束さんで織斑先生は確認する間もなく切り捨てた

「そう硬いこと言わないで話だけでも聞いてよ」

「・・・言ってみろ」

宙吊りの状態で会話していた束さんは織斑先生の許可を得ると一回転して着地すると説明を始めた

内容はこの作戦には紅椿が最適だということでよくわからんが、第四世代型ISの『展開装甲』っつーのが銀の福音並の高速移動を実現できるとのこと

箒の紅椿の高速移動と一夏の白式の零落白夜で敵を倒す、という作戦で今回は一夏と箒のペアで行われるということで話しが纏ったと思ったら

「風間、お前も今回の作戦に加われ」

「・・・はい?」

なぜか俺が作戦に加えられた

「織斑と貴様は何度もコンビを組んでいる、コンビネーションで言えば貴様が適任だ。 それに、貴様の防御力は銀の福音にも有効なはずだ」

・・・まさか織斑先生にここまで評価されるとはな

ここまで言われたんじゃしょうがねぇな

「・・・判りました、俺やります!」

「よし、では本作戦は風間の支援の下、織斑、篠ノ之の両名による撃墜を目的とする。 三人は準備を整えておけ」

「頼むぜ、月光」

「あぁ、こうなったら防御は全部俺に任せな。 お前等は攻撃にだけ集中しろ」

「・・・・・」

織斑先生に告げられ一夏と話していると箒が俯いてなにかブツブツ言っていた

「箒?」

「どうかしたのか?」

「えっ? あぁいや、なんでもない・・・」

一度は顔を上げそう言った箒だがまた俯いてしまう

俺と一夏は顔を合わせて首をかしげた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

只今の時刻、十一時半

俺達は作戦開始の為、砂浜でISを展開していた

「来い、白式!」

「行くぞ、紅椿!」

「貫け、闇夜に光る月の牙! 月光龍ストライク・ジークヴルム! そしてブレイヴ!砲凰竜フェニック・キャノン!」

それぞれのISを展開し終わると織斑先生から通信が入った

『貴様等、準備はいいな』

織斑先生その言葉に俺達は頷く

『では、作戦開始!』

「おう!」

「はい!」

「了解!」

そして力強く返事をし、一斉に砂浜から飛び立った

数分後、目標の銀の福音の元に辿り着く

そいつはその名の通り、銀色のISで本体と同じく銀色に輝く翼が特徴的だった

「先制攻撃だ!」

俺はキャノン砲で後ろから攻撃を仕掛ける、だが銀の福音は加速しながら反転してこちらに振り向いた

『敵機確認 迎撃モードへ移行 「銀の鐘」 稼働開始』

聞こえてきたのは機械音声

それが聞こえた途端、銀の福音は急加速して俺の攻撃をかわした

「なっ!?」

「は、速い!」

その速さに驚愕する俺達

さらに驚いていると銀の福音は翼を広げる、そこから現れたのは・・・

「っ! お前等!俺の後ろに!!」

それに気が付いた俺は一夏と箒を俺の後ろに下げる

銀の福音の翼から現れたのは砲口だった

そして翼を羽ばたかせるようにその砲口からいくつもの光弾が放たれた

「ぐっ、うおぉぉぉぉおお!!」

その光弾を何発か喰らってしまったがなんとか弾く

「大丈夫か、月光!」

「あぁ、なんとかな。 だがあんま悠長にはやってられねぇ、箒!」

「なんだ?」

「俺とお前であいつの動きを止めるぞ! んで一夏は隙を見て零落白夜であいつをぶった切ってやれ!」

「「判った!」」

「いくぞ!」

作戦を伝えると俺と箒は銀の福音に向かっていく

何度か攻撃を繰り出しているがほとんどかわされてしまう

だが俺達の役目はあくまであいつに隙を作ること・・・

「・・・今だ!」

箒の攻撃を避けたその先に向かってキャノン砲を放つ

さすがにかわしきれないと判断したのか銀の福音は動きを止め、翼の砲口が全て開いた

「La・・・・・・・・・♪」

そして聞こえたのは甲高いマシンボイス

その刹那全ての砲口から光弾が放たれた

「くっ、マジック!ブリザードウォール!」

それに対して俺はブリザードウォールは使う

ブリザードウォールはデルタバリアと違い、攻撃を完全に防ぐことはできないものの威力を軽減させることができ

なおかつ範囲は広いからこういう全方位攻撃にはこっちが向いている

「はぁぁあ!!」

威力が弱まった光弾をいくつか受けつつダメージが少ないのを知った箒は銀の福音に向かって斬りかかる

それにより、隙ができた

「今だ!」

この隙に一夏が零落白夜を発動させ、とどめを刺しに行く

・・・しかし一夏は何かを見つけ、それに向かって加速していった

「あいつ、何を・・・っ!あれは!」

一夏が向かう先には船があった

先生の話じゃここら辺一帯は立ち入り禁止のはずだぞ

光弾はその船に向かって真っ直ぐ飛んでいる

くそっ!

「一夏、戻れ! マジック!アブソリュートストライク!」

俺はアブソリュートストライクを使い、光弾の軌道を自分に向けさせる

「ぐっ、ぐあ!」

流石にあの量を捌き切るのは無理でほとんどの光弾を受けてしまった

それを見て一夏が駆け寄ってくる

「月光!」

「ぐっ、ったく、防御は俺に任せろって言っただろ」

「わ、悪い・・・」

「・・・まっ、あぁいうやつらも放っとけねぇってのはお前の良さだけどな」

「・・・・・・・」

俺と一夏がそんな会話をしていると箒は黙り込んで俯いていた

「さぁて、一夏、零落白夜あと何回使えそうだ?」

「多分、あと一回が限界だ」

「一回ありゃ十分だ、いくぜ!」

気を取り直してもう一度銀の福音に向かっていこうとすると突如空が黒く染まり、そこから黒い閃光が放たれた

「っ! 箒!!」

「・・・・・え?」

それに気が付いた一夏は箒を突き飛ばす、その結果・・・

「ぐあぁぁぁぁぁああ!!」

「「一夏!!」」

一夏にその閃光が直撃してしまい、シールドエネルギーが少なかった一夏はISを解除され、墜落していった

「一夏ぁぁぁあ!!」

墜落していく一夏に向かって箒は加速して受け止める

それを確認した俺は黒い閃光が放たれた場所を見る、そこには・・・

「な・・・うそ・・・だろ・・・?」

そこには怪しく輝く翼を生やした漆黒の龍、「滅神星龍ダークヴルム・ノヴァ」

そいつを連想させるISを身に纏った女性がいた

そしてその女性を、俺は知っている・・・

「・・・紫乃宮、まゐ」

紫乃宮まゐ、異界と未来でダンと共に戦った仲間で・・・

ダンにとって・・・もっともかけがえのない人物だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館の大広間、そこで俺達は月光達が戻ってくるのを待っていた

「・・・っ!」

その時、俺は何かを感じ取り、思わず立ち上がる

「どうした、馬神」

「・・・いや、なんでもないです」

なんだ今の感じは・・・

嫌な予感がする、月光、一夏、箒・・・無事でいてくれ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・紫乃宮、まゐ」

「・・・・・・・・・・」

なんで、なんでこんなところに紫乃宮まゐがいるんだ

「一夏!一夏ぁ!!」

箒の叫び声で思い出す、そうだ、一夏!

「箒!落ち着け!」

「私の・・・私のせいで一夏が・・・一夏がっ・・・」

くそっ、一夏がやられて混乱してやがる

そうこうしている間に銀の福音は体勢を立て直し、まゐさんの隣に並ぶ

「くっ、箒!一夏を連れて今すぐここから逃げろ!!」

「・・・え?」

俺の叫びで少しは我に帰ったようで箒は俺に顔を向ける

「このままじゃ全滅だ、お前だけでも一夏を連れて逃げろ!」

「でも、それじゃあお前は・・・」

「いいから行け!! 今のお前がいても足手まといなんだよ!!」

「っ!」

箒はショックを受けて目を見開く

そうこうしている間に銀の福音は翼を広げ始めていた

「行けぇ!箒ーー!!」

「くっ!」

箒は歯を食い縛り、その場から離脱する

だがその箒目掛けて銀の福音とまゐさんは攻撃を撃つ

「マジック!デルタバリア!」

それをデルタバリアで防ぎ、こいつ等の前に立ちはだかる

「お前等の相手は俺だ」

「・・・・・・・・・・」

俺の行動に表情一つ変えずにまゐさんは向かってくる

「おい!あんたなんでこんなとこにいるんだ!?」

「・・・・・・・・・・」

「くっ、やっぱり。 意識が無いのか!?」

その動きはどこか機械的で、目は虚ろになり、それだけでまゐさんに意識がないのが判る

ダークヴルム・ノヴァに乗っ取られてんのか?

「La・・・・・・・・・♪」

「っ!」

危ねぇ、あいつもいるんだったな

とにかく今は、箒が逃げる時間を稼ぐ!

「ちと厳しいが、いくぜ!ストライク・ジーク!フェニック・キャノン!」

『ふ、俺の防御力をなめてもらっては困る』

『そういうことだ!任せろ!』

「うおぉぉぉぉぉおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そうか」

箒は旅館に戻り、一夏を教員に受け渡した後、千冬先生にこれまでの経緯を話していた

「作戦は失敗だ、これより次の作戦を練る。 貴様等は各自現状待機しろ」

全てを聞いた後、千冬先生はそれだけ言い、その場を立ち去ろうとした

それをシャルロットが止める

「待ってください!まだ月光があの場で戦っているはずです!早く助けないと・・・」

「シャルロットの言う通りだ、今すぐにでも応援を呼んで・・・」

シャルロットの意見に乗っかり、俺も千冬先生に意見する

「・・・それなら問題ない」

千冬先生は窓の外を見ながら軽く溜め息をつきながらそう言った

気になり俺達も窓から外を見る、するとそこには・・・

「っ!月光!!」

真っ先にISを展開して飛び出したのはシャルロットだった

機体のあちこちが損傷していて今にも墜落しそうな月光がこちらに向かって飛んでいた

「俺達もいくぞ!」

衝撃を受けていたセシリア達を促し、俺もアポロドラゴンを展開して月光の元に向かった

「月光!しっかりして月光!」

「月光!大丈夫か!」

シャルロットに続いて月光を支える

見ると月光はもうほとんど意識が無い状態だった

「シャル・・・ダン・・・」

「ダン!急いで運ぼう!」

「あぁ、判っている!」

俺とシャルロットは月光を担ぎ、旅館へと飛ぶ

「・・・ダン・・・聞いてくれ・・・」

飛んでいる最中、月光は俺に何かを言おうとしていた

「無理するな、戻ってから・・・」

「まゐさんが・・・何かに操られて・・・」

・・・え?

「まゐが、まゐがどうかしたのか!?」

陸地に辿り着いてから、月光に問いかける

「ダン!?落ち着いて!」

「頼む!教えてくれ!」

シャルロットの静止を聞かず、俺は無我夢中で問う

「・・・まゐさんが・・・ダークヴルム・ノヴァのISを装着して・・・攻撃してきた」

「なっ・・・」

嘘だろ?まゐが・・・

それにダークヴルム・ノヴァだって?

「まゐさんには、意識は無かった・・・お前が・・・救って、や・・れ・・・」

「月光!」

「ダン!早く先生に!」

シャルロットの言葉に頷いて気を失った月光を駆けつけたセシリア達にも手伝ってもらい、旅館へと運んだ

まゐのことも気になるが、今は月光が先だ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私のせいだ・・・

一夏だけでなく、月光まで傷付けてしまった

『箒、君は織斑一夏をどう守りたいんだ?』

ストライク・ジークヴルムの言葉を思い出す

『詳しくは言わない、ただ君が守りたいのは彼の何なのか。 それを考えてみてくれ』

私は・・・バカだ・・・

力を持ったことに浮かれて、守るべきものを見失って・・・

「私は・・・もう、ISには・・・っ!」

そう呟くと突然目の前が光に包まれ私は知らない空間にいた

「ここは・・・?」

『・・・貴方には・・・守りたいものがありますか?』

キョロキョロと辺りを見回していると声がした、その方向に振り返ると緑色の髪で優しい瞳をした女性がいた

その人を例えるなら・・・まるで蝶のようだった

「あなたは・・・?」

『・・・貴方には・・・守りたいものがありますか?』

その女性は、微笑んでその言葉を繰り返した

守りたいもの?そんなもの・・・

「・・・あります。 けど、私には守れなかった。 いや、むしろ傷付けてしまった」

私が未熟だから、馬鹿だから一夏を傷付けてしまった

『・・・その人の、何を守りたいですか?』

「え?」

何を?そういえばストライク・ジークヴルムもそんなことを・・・

『その人の身体、ですか? それとも・・・何か別のものですか・・・?』

何か、別のもの・・・?

私が守りたいもの、それは・・・

「私は・・・私は!・・・っ!?」

答えようとしたらまた目の前が光に包まれ、元いた浜辺に戻っていた

「ここは・・・さっきの場所・・・?」

「まったく、こんなとこにいた」

また辺りを見回していると鈴がやってきた

「あのさぁ、一夏と月光があぁなったのってあんたのせいなんでしょ?」

「・・・あぁ、そうだ」

「で、落ち込んでますってポーズ? ---っざけんじゃ・・・」

「だからこそ、私は戦う」

鈴が言い終わる前に私は言い放つ

鈴は呆気を取られたように驚いていた

「さっきまでの私だったら何も言わずに頷いていたかもしれない、でも今は違う。 私は・・・」

さっきあの人に言えなかったこと・・・

「私は、一夏の全てを守りたい! 一夏自身も、一夏が守りたいものも全て! だから・・・私はもう迷わない!」

「・・・・・・・」

私がそう言うと目を見開いていた鈴は溜め息をついた

「はぁ・・・なぁんだ、とっくに立ち直ってんじゃないの」

「え?」

ふと見ると鈴の後ろにセシリア、シャルロット、ラウラが立っていた

「どうやら、余計なお世話だったようだな」

ラウラは腕を組みながら

「私達だって、気持ちは同じですわ」

セシリアは髪を払いながら

「月光と一夏の仇、討たないとね」

シャルロットはウィンクしながらそう言った

「みんな・・・」

私には・・・こんなにも心強い仲間がいたのだな・・・

「決まりね、それじゃあ・・・」

そして鈴が拳を握り意気揚々と言おうとすると

「それじゃあ・・・なんだ?」

「「「「「え?」」」」」

突然聞こえてきた声に一斉に振り返る

「お、織斑先生・・・」

「あ、いや、これはその・・・」

「・・・はぁ・・・馬鹿者どもめ」

織斑先生は私達を一人ずつ見てから盛大な溜め息をつき、真面目な顔になって言い始めた

「たった今、馬神が命令を無視して一人で向かっていった」

「馬神弾が・・・?」

「そういえば、月光から何か話を聞いたときすごく取り乱してたけど・・・」

月光が何か?・・・もしかして

「シャルロット、月光はなんて言ってたんだ?」

「えっと・・・たしかまゐって人がどうとか・・・」

まゐって確か・・・

なるほど、そういうことか

「ダンも、守りたいもののために戦っているみたいだな」

「何?何か知ってるみたいね」

「後でじっくり聞かせて欲しいものですわ」

そう呟くと鈴とセシリアが食いついてきた

これは話していいのだろうか・・・?

「貴様等、話の途中だぞ。 そこで馬神を連れ戻す為に数名向かわせたい」

ん?それって・・・

「その役を篠ノ之、オルコット、鳳、デュノア、ボーデヴィッヒに任せる」

「「「「「え・・・?」」」」」

「多少時間が掛かっても構わん、必ず連れて帰って来い。 以上」

それだけ言うと織斑先生はその場から立ち去って行った

「・・・ありがとうございます!」

私が頭を下げるとみんなも頭を下げる

「それじゃあ立派な口実もできたことだし・・・」

「あぁ」

周りを見るとみんな頷いた

「行こう!」

「はい!」

「がってん!」

「うん!」

「いくぞ!」

全員ISを展開し、一斉に飛び立った

説明
第七章 前編
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
3218 3184 1
タグ
バトルスピリッツ IS インフィニット・ストラトス バトルスピリッツブレイヴ 

激突皇さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com