デジモンクロスウォーズ 絆の将と魔道の戦士
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工藤タイキと八神はやてが会見した次の日、機動六課隊舎の部隊長室には二人の女性がいた。一人は八神はやて本人であり、もう一人は人形のようなサイズの銀髪の女性である。

「ようやくこの部屋も部隊長室らしくなったな。リィンにもぴったりな机が見つかってよかったね。」

はやては、初めての机を堪能する銀髪の女性に言った。彼女の本名は「リィンフォースU」八神はやてを補佐する存在である。

「リィンにぴったりサイズですぅ。」

玩具なのか、それとも何かの部品の余りなのかは分からないが、リィン本人はこれで満足しているようだ。

すると、部隊長室の扉が開いて、女性が二人入ってきた。一人は、割と長い栗色の髪をサイドポニーで纏めた活発そうな女性。もう一人は、腰まで届く長い金髪をストレートに下ろした大人しそうな女性である。

「あ、なのはちゃん、フェイトちゃん。」

「二人ともよく似合ってるです。」

入ってきた二人の女性を、はやてとリィンは快く受け入れた。そして二人が自分と同じ、茶色を基調とした制服を着ているのを見て、昔を思い出しながら言った。

「にしても、三人で同じ制服なんて中学校以来やな。なんや懐かしいわ。」

それでも何か思い出したのか、

「でもなのはちゃんの場合、飛んだり跳ねたりできる教導隊の制服でいることのほうが多いだろうけど。」

と付け足した、

「うん、でも公式の場の時はこっちって事で。」

栗色の髪の女性ははやてにこう言うと、隣に立っている金髪の女性と共にはやてに敬礼すると、

「本日をもって、高町なのは一等空尉と。」

まず栗色の髪の女性が始め、

「同じく、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官。」

次に金髪の女性が続き、

「両名共に、機動六課へ出向となります。」

最後に二人でしめた。

「はい、よろしくお願いします。」

はやても、二人の挨拶に笑顔で答えた。

「そういえば、昨日はやてちゃんが会ったっていう民間協力者の子って?」

突然、思いついたかのようになのはが言うと、

「あ、そうやった、まずは二人に紹介しとくね。」

思い出したかのようにはやてが言うと、

「入ってきてええよ。」

と、扉の向こうへと声をかけた。すると扉が開いて、頭に青いレンズのはまったゴーグルをつけた少年が入ってきた。

「紹介するね、民間協力者の工藤タイキ君。」

「工藤タイキです。」

はやての紹介にあわせて、タイキも名乗った。

「初めまして、私は高町なのは。」

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。」

二人も一緒に名乗った。その後、

「で、私はリィンフォースUですよ。」

今まではやてと一緒にいたリィンフォースUが前へ出てきた。彼女が名乗ると同時に、

「何!!これは妖精か?!!珍しい早速解剖を!!!!」

全身をローブとフードで隠した謎の存在が、大量の金属器を持ってタイキの背後から現れた。謎の存在の正体は「ワイズモン」であり、特に謎ではないが。

「ひぇええーですぅ!!!」

突然の事態に驚いたのか、リィンフォースUは全速力で逃げるエリマキトカゲの如きスピードではやての後ろに隠れた。ちなみに、本気で走るエリマキトカゲは水の上でも走れるのだ。

はやて、なのは、フェイトの三人もこの事態には驚いたが、次の出来事には更に驚いた。

「テメェはなんでもかんでも解剖しようとすな!!」

前に出て来たワイズモン同様にタイキの背後より飛び出したV字型の角を持つ赤いトカゲが、ワイズモンを殴り倒したのだ。殴った瞬間かなりいい音がしたので割とダメージは多いはずだが、ワイズモン本人はピンピンしており、

「すまない、珍しい物が多すぎてつい好奇心が抑えられなくなってしまっていたようだ。」

と言うと、そのままクロスローダーの中に戻っていった。

「あの、ところでこちらは?」

フェイトが今までの出来事に呆然としながら、現れたトカゲについてタイキにたずねた。

「俺はシャウトモン、いずれキングになる男だぜ!!」

フェイトの問には、タイキではなくシャウトモンが答えた。言わなくてもいい事も言っていたが、

「タイキ君はこういう生き物をたくさん連れいるんや。」

はやてはこれからの事も考え、とりあえずなのはとフェイトの二人に説明しておいた。タイキ本人が言うには、自分の連れているデジモン達だけで既に一つの軍団を結成しているとの事である。

「とりあえず、そろそろ行かへん?もうみんな集まった頃やし。」

はやてにこう言われ、部隊長室にいる五人と一体は、とりあえずこれから始める部隊のメンバーが集まるロビーへ向かっていった。

 

 

ちなみに、何故タイキが機動六課に協力することになったのかというと、昨日まで遡る。

「うちで働かない?」

はやてにこう言われたタイキは、

「俺個人としてはいいんだけど、みんなはどう思う。」

と仲間のデジモン達に伺いをたてた。

「俺は勿論ジェネラルを信じるぜ!」

と、シャウトモン。

「タイキガイイナライイ。」

と、バリスタモン。

「考えてもみろ、お前の判断が間違ったことがあったか?」

と、ドルルモン。

このような調子で他のデジモンも次々と賛成意見を表明し、晴れて工藤タイキは機動六課入りになった。

「それじゃあ、制服用意するから身体のサイズ計らんとね。」

と言って巻尺を用意したはやてに色々されたのも、ある意味いい思い出である。

 

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「……とまあ、長い挨拶は嫌われるので以上で終わります。」

ロビーに集まる隊員達の前に設えられた舞台の上で簡単な挨拶をした部隊長八神はやてを、隊員達は拍手で送った。

工藤タイキは他の隊員と混じってはやての挨拶を聞いていたが、挨拶終了後はやてに話しかけられた、

「タイキ君の実力を正確に測りたいから。地図に書いてある場所まで来てくれへん。」

簡単な内容の指示と一緒に、六課隊舎の地図が渡された。その一箇所に丸が付けれていたので、タイキはその場所へ向かった。

 

 

 

一方のなのはは、これからこの部隊のフォワード部隊に入る事になる四人の新人達を先導していた。

「そういえば、お互いの自己紹介は済んだ?」

「はい、お互いの名前と出身と経歴と……」

なのはの問いに、なのはから見て一番右にいたツインテールの髪型の少女が答えた。

「そう、それじゃあ改めて機動六課の隊舎の案内をするから付いてきて。」

なのはは四人にこう言って、隊舎を隅々まで案内し、最後に自分が一番よく居ることになるだろう場所、演習場へ向かっていった。

 

 

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「んがー!暇だぁ!!」

シャウトモンが叫んでいる。目の前には透き通るほどに青い海、天気は快晴だが、やる事が無い為シャウトモンにとっては退屈極まりないのだろう。

「落チ着ケシャウトモン!」

「騒いだところでなんにもなんねえぞ。」

そのシャウトモンを、バリスタモンとドルルモンがいさめた。最初のうちは、キュートモンと共に銀色のおにぎり型生物「ピックモン」を積み上げて遊んでいたシャウトモンだったが、すぐに飽きてしまったのだ。一方のワイズモンは、なにやらパネルをいじっていた。

「ところでワイズモン、なにやってんだ?」

タイキにたずねられたワイズモンは、

「ふむ、なるほど、これをこうすれば……」

ぶつぶつ呟きながらパネルをいじった、すると、突然目の前に広がる何も無いサッカー場のような場所が、あっという間に廃ビル街に変わった。

「すげぇー!!」

「ビルが生えたっキュ!!」

その突然の出来事にシャウトモンとキュートモンは大喜びである、

「ワイズモン、あれは一体。」

「あれはかなり精巧な立体映像だ。データさえ入力すれば、動くものであっても忠実に再現できるんだ。」

次のタイキの問いには、ワイズモンは即答した。

「それに、データを変えれば。」

ワイズモンは再びパネルをいじった、すると再び変化が起きた。これまで廃ビル街だった場所が、一瞬で森に変わったのだ。

「すげぇ!また変わった!!」

見ているシャウトモンは大喜びである、しかし、

「ちょっと!なにやってるんですか!!」

突然大きなトランクを持った、眼鏡をかけた少女に怒鳴られた。

「これは沢山電気を使うんですから!訓練する時以外は使わないで下さい!!」

今までパネルの前にいたワイズモンをどけると、パネルを操作して出てきていた森を消した。

タイキ達が、今の剣幕に驚いていると、

「あ、シャーリー!!」

どこかで聞いた声が聞こえてきた。新人達に隊舎の案内を終えたなのはが、新人達を連れてやってきたのだ。

「紹介するね、彼は民間協力者の工藤タイキ君。」

なのはが後ろの新人達にタイキの紹介をすると、

「あ、初めまして、スバル・ナカジマです。」

まず最初に、タイキから見て一番右にいる、ボーイッシュな青髪の少女が自己紹介し、

「ティアナ・ランスターです。」

次に、その隣にいるツインテールの髪型の少女、

「エリオ・モンディアルです。」

次に、その隣の少し背の低い少年、と続いていき。

「キャロ・ル・ルシエです。」

一番左にいた、大人しそうな少女が自己紹介を終えると、

「キュクルー。」

キャロの背後から、白い色の鳥のような生き物が現れた。

「この子はフリード・リヒ、私のドラゴンです。」

フリードについてキャロが紹介すると、

「デジモンではないドラゴンだと!!珍しい!!早速解剖を!!!!」

ワイズモンの悪い癖が発動した、何処に隠していたかは不明だが大量の金属器を携えて現れたのだ。

「キュクー!!!!」

フリードは電光石火と言えるほどのスピードで、キャロの背後に隠れた。新人フォワード四人が驚いていると、

「だからテメェは何でもかんでも解剖しようとすんな!」

ワイズモンは、タイキの近くにいたシャウトモンをはじめとするデジモン達に取り押さえれた。

「すまない、この世界は珍しい物が多すぎてつい。」

取り押えれたワイズモンは、面目なさそうに言った。

「あの、ところでそちらは?」

と、ティアナがたずねた。両隣が唖然としている中で、新人最年長の面目躍如である。

「俺はシャウトモン。」

「バリスタモン。」

「ドルルモンだ。」

「俺はスターモン、こいつらはピックモンズ。」

「イエーイ♪」

「キュートモンだっキュ。」

「ワイズモンだ。」

部隊長や分隊長と会った時とは違い、無駄の無い簡潔な自己紹介をした。

「皆集まったんやね。」

みなの自己紹介が終わった所で、何も無かったところにモニターが展開され、はやての顔が映し出された。

「突然やけどタイキ君。演習場でスタンバイしてくれる。」

はやてが言うには、今からタイキの実力テストをするのだと言う。

「よっしゃあ、ようやく出番か!!」

今までやる事が無く、暇だと叫んでいたシャウトモンが張り切り始めた。

 

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「それじゃあシャーリー、ターゲットはガジェット50体でいくで。」

はやてはモニター越しで、部隊のメカニックであるシャーリーに指示を出した。

「それじゃあタイキ君、課題は今から現れる敵の全滅や、それじゃあいくで。」

はやての合図と同時に、シャーリーはパネルのキーの一つを押した。これで50体のガジェットが登場しテストが始まるはずだったのだが、キーを押した瞬間シャーリーがある事に気がついた。

「しまった、プログラムミスで桁が一つ多くなっています!」

その上、

「ロックが掛かってしまって全部倒すまで止められません!!」

これには、はやては勿論、その場で見ていたなのはと新人達、そして一緒にいた部隊の副隊長も驚いた。500体といえば、たとえ自分達のように高威力の魔法攻撃をバンバン打てる魔道士であっても無傷ではすまない数である。

でも、現場のタイキ達はまったく動じなかった。彼らはこれまで、一騎当千と言っても過言ではない数多くの強豪デジモンと渡り合ってきたのだ。雑魚兵500ほどは、敵のうちにも入らないのだろう、

「シャウトモン、バリスタモン、ドルルモン、スターモンズ、デジクロス!!」

「シャウトモン×4!!」

クロスローダーを掲げたタイキの声が響いた瞬間、彼の横にいたデジモン達が光で包まれ、その光が一つになった途端、巨大な剣「スターソード」を携えた竜戦士型デジモン「シャウトモン×4」が現れた。

「うわ!合体しちゃった!!」

「しかも凄く大きくなってる。」

見ている新人達は驚きを隠せないようである、

「スリービクトライズ!!」

シャウトモン×4は、スターソードを構えると赤いV字型の光線を発射した。撃たれた光線は、ガジェットの群れに突っ込み、一気に百体以上のガジェットを吹き飛ばした。

「凄い、今の一発でガジェット百体以上撃破、威力はなのはさんのディバインバスター一発に相当します。」

シャウトモン×4の戦闘データーを記録していたシャーリーはなのはに報告した。なのは本人も予想より遥か上をいく彼らの実力に驚きを隠せないようで、無言で返した。

そんな中でも、シャウトモン×4の剣劇は止まらない。頭に搭載されたバルカン砲で狙撃し、太い足で踏み潰し、スターソードで真っ二つにする。これらを繰り返す事で、ターゲットであるガジェットはどんどん数を減らしていく。そんな様子を見て、精神が高ぶるのを止められなくなっている者が居た。なのはや新人フォワードと共に様子を見ていたシグナムである。生粋のバトルマニアである彼女は、シャウトモン×4が戦っている様子を見て、いてもたってもいられないのである。自分も戦ってみたいと、

「ビクトライズブーメラン!!」

シャウトモン×4が赤いブーメランを投げつける、この一発がガジェットたちのとどめの一撃になったようで、ブーメランが戻る頃には、ガジェットは一体も居なくなっていた。

「よし、これで全滅……」

帰ってきたブーメランをキャッチしたシャウトモン×4が剣をおろそうとした時だった。突如何かが迫ってくる感覚を感じ、剣を構えなおした。そしてそのまま振り下ろされた剣をスターソードで受け止めた。

「まだだ、まだ私という敵が残っているぞ!!」

剣を振り下ろしたのは、バリアジャケットを身に付け愛用の剣「レヴァンティン」を携えたシグナムだった。

「いけるか?シャウトモン×4。」

恐らく簡単には退いてくれない、と判断したタイキはシャウトモン×4にたずねた。

「ああ、まだいけるぜ!!」

シャウトモン×4VSシグナム、第二ラウンドが開始された。

 

 

 

「なあはやて、大丈夫なのか?」

新人達と共にテストの様子を眺めていた小柄な少女「ヴィータ」は、はやてに訊いた。

「いいんや、なんか面白そうやし。」

はやては即答した。いい加減な部隊長の判断に若干呆れながらも、演習場で行われている戦いに目を向けた。

シャウトモン×4が剣を振る、シグナムはそれを躱すか上手くそらすことで彼の剣を掻い潜り、ここぞという所で渾身の一撃を叩き込む。シャウトモン×4も負けじと防御し、シグナムを遠くへふっ飛ばす。シグナム自身も、自分より体格差のある相手との戦いの経験が無いわけではない。しかし、巨大で力が強いだけの獣ならともかく、一流の武人同様の動きをする獣と戦う経験はそんなに無い。なので、大技で一気にケリを付けようとシャウトモン×4から距離を取り、カートリッジをロードした。シャウトモン×4も大技が来る事を悟り、剣に自身の力を注ぎ込んだ。そして、

「紫電一閃!!!!」

「バーニングスタークラッシャー!!!!」

二人の渾身の斬撃がぶつかり合った、その反動は凄まじく、遠くで見ていたなのは達のところまで衝撃が飛んできた。

そして衝撃と共に発生した砂煙が晴れ、そこに立っていたのは、シャウトモン×4だった。しかし、無傷とまではいかず、体中に傷を負っている。一方のシグナムは、身につけているバリアジャケットは衝撃でボロボロとなり、方膝を付いて肩で息をしていた。

「フフ、私の負けだな。」

シグナムが負けを認めた事で、シャウトモン×4は見事課題をクリアした。

「本当に凄いです、最後の一撃の威力はオーバーSランクをマークしています。」

シャーリーは、目の前で演じられた勝負と、そこから導き出された結果を見て唖然としていた。

 

 

その後、部隊長室にてシャーリーとなのはの作った報告書を見たはやてはこう思った。

「凄い、これならあの予言も覆せるかも。」

 

 

 

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カットマン

「カットマンと。」

 

モニタモン

「モニタモンの。」

 

二人

「デジモン紹介のコーナー!!」

 

カットマン

「さて記念すべき第二話。今回紹介するのはバリスタモン。」

 

モニタモン

「バリスタモンはマシーン型デジモン。得意技は太い腕で殴りつけるアームバンカー、硬い角でつつくホーンブレイカー、腹部のスピーカーから放つ衝撃波で相手を吹き飛ばすヘビースピーカーですな。」

 

カットマン

「硬い装甲と凄まじいパワーを持つデジモンだが、基本的には心優しいのでむやみにその力を振るう事は無い。」

 

モニタモン

「ところで、バリスタモンは実はダークボリューモンというデジモンだったという設定がアニメで登場しましたが、この小説では登場するんですか?」

 

カットマン

「それはまたのお楽しみという事で。」

 

二人

「それじゃあまたねー!」

 

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次回予告

機動六課が活動を開始して数日後、新人フォワード四人にデヴァイスが渡される日がやってきた。四人がデヴァイスを受け取った瞬間、突如緊急出動がかかる。

 

次回「機動六課初出動」

 

説明
第二話 機動六課始動 お前の力を見せてみろ
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