頑張れP坊主!「第五章:一匹狼」
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<前回までのあらすじ>

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雌火竜『リオレイア』に攫われたP坊主を救うことに成功したバケツとメリィ。

街に辿り着き、ギルドに戻った3人の前に黒い装備で統一された

謎のハンターが現れた。

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第五章「一匹狼」

 

謎のハンターは、P坊主達を鋭い目つきで睨み付けると、鼻で笑いエミルに話しかける。

 

「エミル…こんな奴等の面倒を見るなんて…本当に君らしいよ」

「さっきの戦闘を見て分かった。こいつ等は成長しそうにないクズだ」

 

謎のハンターがそう言うと

 

「そ、そんなことないわよ!」

「彼らは…」

 

エミルの視線はP坊主達に向けられる。

助けを求めている視線に気づいたバケツは、謎のハンターに近づき

 

「ハハハ。少年。私達はさっき雌火竜リオレイアの巣に忍び込み、仲間の救出に成功しました」

「クズにはとうてい成しえることは出来ないと思いますが?」

 

バケツがそう言うと

 

「子供のアプトノス1体に2人係で…」

 

ドキ!

 

「ロープ等の道具も用意せずに…しかも高所恐怖症」

 

ドキドキ!

 

「まぁ〜…モドリ玉で逃げるのは…良いか…」

 

ニヤニヤしながらバケツに顔を近づける謎のハンターに、バケツは力の無い声で

 

「………なるほど…あのロープは貴方が…」

 

そう言うと、バケツは謎のハンターの肩を掴むと

 

「助かった!」

 

っと、告げる。

 

「いやぁ〜困った時は助け合うのはハンターとしての常識!」

「少年!君のおかげでP坊主君を助け出すことが出来た!」

「これからは4人で頑張っていこう!」

 

バケツは、P坊主とメリィを手の平に乗せ謎のハンターに迫る。

 

「……断る」

 

謎のハンターがキッパリと誘いを断ると

 

「こんな馬鹿共と話していたら頭が痛くなる…エミル…僕はお風呂に入ってくるよ」

 

エミルにそう告げると、謎のハンターは温泉のある場所へと立ち去っていった。

 

勧誘に失敗した3人は、何がいけなかったのかを相談し合っていると、

エミルが近寄り

 

「ごめんなさいね。あの子…ちょっと気難しい子なのよ」

 

エミルがそう言ってP坊主達の前のカウンターに立ち、バケツにビールを注ぎ

メリィとP坊主専用の小さなお肉を差し出す。

 

「あの子はね…私の幼馴染でもあるの」

 

エミルは困った顔でため息をつくと、バケツはエミルを心配したのかジョッキを置き

 

「どうかされたのですか?」

 

普段元気な顔を見せるエミルが珍しく困った表情を見せ、戸惑う3人。

どうやらエミルは、あの謎のハンターのことを心配しているようだ。

 

「あの子はね…ハンターとしての腕は確かなの。他のハンターからの誘いも少なくないのよ」

「でも、いつも断ってばかり…いつも…いつも1人で狩りに行くあの子が私は心配なの」

 

幼馴染だからなのかエミルの性格なのかは分からないが、深刻に受け止める3人。

 

「あの一匹狼の少年を、我々のパーティーに入ってもらおうイヤ入れよう!」

 

バケツがそう言うと

 

「え…あ、ってかあの子」

 

エミルが何かを伝えようとした時

 

「ふぅ〜…良い湯だった」

 

謎のハンターが温泉から帰ってきた。

 

「あら、おかえりなさい。疲れは取れた?」

 

エミルと謎のハンターの話のやり取りを見ている3人の中で、バケツが驚いた表情で一言

 

「少年…君ってやつぁ〜…」

 

エミルと謎のハンターはバケツの発言に困惑する。

バケツは謎のハンターが手にしている物に指を向ける。

謎のハンターが手にしているのはピンク色のバスタオルで、女湯専用の物だ。

 

「それは女湯にしかないバスタオル!っと、いうことは…」

「やるね〜」

「可愛い顔に似合わず…出来る…」

 

3人が感心していると

 

「あ、この子は」

 

エミルが何か言いたそうにしていると

 

「お前達は何を言ってるんだ?」

 

謎のハンターは3人の前に立つと、バケツは

 

「いや〜…男なのに自然と女湯に入る勇気!決意!根性!素晴らしい…」

 

バケツはそう言うとジョッキを手にしビールを飲んでいると

 

謎のハンターは下着に手を掛け一気に下ろし

 

「よく見ろ!僕は女だ!!!」

 

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自ら下着を下ろし、局部を3人に見せ付ける。

 

「あぁ…」

 

エミルは頭を抱え、困った表情でカウンターに倒れこむ。

自身のことを「僕」と言い、胸も無く鋭い目つきなのだから3人が勘違いするのも無理は無い。

 

「あ…言い忘れたけど、この子の名前は【アリス】って言うの」

 

申し訳なさそうにエミルは3人に告げると

 

「ぐすん…っえ…っひく…」

「そんな…そんな…」

 

P坊主とバケツはその場に座り込みなにやら泣いている様子だ。

 

「ど、どーしたの2人とも?」

 

エミルが問いかけると

 

「お・女の子の股間はお花畑だって聞いてたのにー!」

「私達だって心の準備ってものが!」

 

喜んでいると思いきや、彼らは彼らなりの想像があり、実際と異なったことによりショックを

受けているようだ。

 

「…ま、ま〜それはそれとして…」

「アリス、貴方もそろそろパーティーを組んでみない?」

「私、1人で狩りに出る貴方が心配で…」

 

エミルが心配そうにアリスに告げると

 

「ごめんなさい…」

「いくらエミルの頼みでも…僕は狩りの時は1人の方が落ち着くんだ…」

「でも大丈夫。僕は強いから死んだりなんかしないよ」

 

アリスは誰ともパーティーを組まない理由をエミルに告げると、ギルドを出て自宅へ帰っていった。

 

「はぁ〜…」

 

エミルが困った顔でため息をついていると、P坊主達が何やら机を囲んで話をしている。

 

「あのアリスと言うハンター…欲しい!」

 

バケツがそう言うと、P坊主とメリィも頷く。

3人がアリスをパーティーに欲するのには訳があった。

この世界では自身の実力を数値化され、区別されている。

【HR(ハンターランク)】と言うものがハンター達の実力を数値化しており、この数値が高ければ

高い程優秀なハンターとみなされる。

アリスはHR620(MAX999)であり、この街セシールで5本の指に入るハンターだ。

ちなみに、メリィはHR12、P坊主とバケツはHR1である。

 

「しかし厳しいですな〜」

「我々とは釣り合わぬほどの実力で、本人が他人との狩りを好まないとなると…」

 

バケツが悩んでいると

 

「私に良い考えが…」

 

メリィが2人の近くに近寄り、何やら小さい物を取り出す。

取り出した物は【カメラ】という物で、スイッチ1つでカメラで写した物を紙に印刷する

なぜかこの世に存在する不思議な代物。

 

「カメラなんて何に使うのです」

 

2人はメリィに問うと、メリィは小さな声で

 

「…これでアリスさんの恥ずかしい場面を撮ってしまえば…」

「後は…自ずと…」

 

あまりにも外道な発言に、2人は凍りつく。

 

「前から思っていたのですが、メリィさんは駄目な人なんじゃ?」

 

P坊主がバケツに話しかけると

 

「私も薄々…」

 

息絶えたハンターから装備を剥ぎ取る等色々と外道なメリィに、2人は恐怖を覚える。

 

「さ、行きましょう…彼女の…あられもない…」

 

不気味な笑みを浮かべながら、メリィがギルドを出て行く。

2人は、乗り気じゃないがメリィの後を付いていく――

 

3人はアリスの自宅に着くと、窓から部屋の中を窺う。

部屋にはアリスが裸の状態で着替えをしていた。

チャンスと言わんばかりにメリィがカメラのシャッターを押す。

 

「ふふ…これで…」

 

アリスの恥ずかしい写真を撮ったメリィにP坊主が

 

「あ〜…でも僕らの前で平気で下着を脱ぐ人が、こんな写真を撮られたからって

言う事を聞くと思えないんですが」

 

「確かに…」

 

メリィが渋い顔をすると、アリスがベッドに横たわった。

 

「あ、もう寝るんですがね?」

 

3人は窓の直ぐ近くで横になったアリスに目をやると

 

「…ん…ぅん…」

 

ベッドの上に横たわるアリスを見て、P坊主とバケツは凍りつく。

 

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「ん…エミル…あ…エミルぅ…」

 

エミルの名を何度も呼ぶアリスの手に持っているのは、エミルそっくりの人形だった。

しかも、エミルの下着らしき物を被って人形を見つめながら体をくねらす。

 

「エミルぅ〜…はぁ〜…大好き…だいしゅきぃ〜…」

 

バケツは小声で

 

「アカン…これは…アカンって…」

 

バケツは、あまりにも恐ろしい光景に足元から崩れ落ちる。

 

「エミルさんの下着を盗んでいたのは…アリスさんだったんだ…」

「下着が無くなる度に、僕はエミルさんに殴られていたのに…」

 

P坊主は、今起こっている光景とは別にショックを受けているみたいだ。

そして、メリィは

 

「はぁ〜…はぁ〜…すっごい…これが…う…噂の…」

 

かなり興奮しているようだ。

どうやらアリスは同姓であるエミルに恋心を抱いているみたいだ。

 

「はぁ〜…はぁ〜…エミルが…僕の…」

 

アリスがエミル人形を下着の中に入れようとした瞬間

 

「ハイ!帰りましょうねー!」

 

バケツは、P坊主とメリィを掴むとそそくさとその場を後にする――

 

翌朝3人はギルドを訪れると、エミルが立っているカウンターの前にアリスが座っていた。

 

「あら。おはよう」

 

何も知らないエミルの笑顔が痛々しく3人は目を合わせれなかった。

それに比べ

 

「やぁ。君達みたいなゴミパーティーに入ってくれる人は見つかったかい?」

 

昨日の夜とはまったく違う一面のアリスは、3人に冷たい言葉を掛けると笑いながら

ジョッキを持ち中に入っている液体を喉に流し込む。

アリスはまだ15歳なので中身はハチミツ等で作られたジュースだ。

 

「ええ…これから新たな仲間に説得を試みようと思いまして」

 

そう言うと、メリィはアリスに数枚の写真を渡す。

自身の裸を写された写真を見たアリスは大声で笑い

 

「ハハハ!こんなので僕を脅せるとでも?」

 

P坊主が思っていた通り、アリスは裸を見られることに関しては抵抗が無いみたいだ。

 

「なんだい?もう説得は終わりかい?」

 

余裕な表情で3人を見つめるアリスの足元に1枚の写真が落ちた。

 

「ん?……」

 

アリスの表情が一気に曇った。

そして早足で3人に詰め寄り小声で

 

「……み・見たな?」

 

と、問うと

 

「……はい…」

 

3人も小さな声で申し訳なさそうに答える。

 

「え?何?何よ?私にも見せてよ」

 

エミルが近寄ると

 

「駄目ーーー!!!」

 

アリスが大きな声で叫ぶ。

エミルが驚いた表情で立ち尽くすと

 

「っは!ち、違うの…その…これはエミルが見ちゃいけない物なの!」

 

アリスが写真を粉々に破ると、メリィがアリスの肩の上に登り、小声で

 

「何枚でも刷ったんでぇ〜…」

 

と、耳元でささやく。

 

「っく…」

 

アリスは、今にも3人を弓で打ってしまいそうな気持ちを抑え

 

「な、何が望みだ…」

 

と、3人に問うと

 

「僕たちのパーティーに入ってくれませんか?」

 

P坊主がアリスを見上げ話しかける。

 

「僕が?君達の?」

嫌がる顔をするアリスにエミルが近寄り

 

「良いじゃない。仲間というよりも子分って感じで」

「私からもお願い。この子達に色々と教えてあげて」

 

エミルがお願いすると、アリスは頬を赤く染め

 

「エ、エミルが言うなら…」

 

案外あっさりと承知した。

これでP坊主・バケツ・メリィ・アリスの4人でパーティーが完成した。

 

「やるからには全力でいくよ」

「とりあえず…君達の武器を見せてよ」

 

アリスがそう言うと、3人は自信満々に自身の武器を見せる。

P坊主は針のような小さなランス。

バケツはトンカチのようなハンマー。

メリィは、食器のナイフのような大剣。

3人の武器を見たアリスはエミルを見つめ苦笑いで

 

「……エ、エミルの為だもん…」

 

心配そうなアリスを見かねて

 

「大丈夫!我々がついていますぞ!」

 

と、バケツがアリスの方を叩いてギルドの外に出る。

P坊主とメリィも早くおいでと言わんばかりにギルドの外で飛び跳ねる。

アリスはこの時思った

 

「クエスト受注しろよ!」

 

っと――

 

第六章『鬼教官』に続く――

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