IS ラウラが夫!俺が嫁!? 〜第七話 ぼっちは、弱い。〜
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 朝のランニングに向かう途中、珍しいものを見た。

 一夏が渡り廊下の縁側に座り込んでいる姿だった。庭の一点を見つめてウンウン唸ってる青年というのは中々滑稽に見える。

 

 

「おはよー、どーした一夏」

「ああ、竜也おはよう。いや、これ」

 

 

 一夏が指差した先には、『引っ張ってください』と書かれた立て札、そして地面から生えた機械の兎耳。

 状況の説明には、言葉なしにもそれだけで十分だった。

 

 

「そういえば今日、7月7日だったな」

「一夏、放置放置」

 

 

 その耳については、読者的にも何も言う必要はないだろう。

 俺はあの人の相手をするのが大嫌いだ。早々にこの場から立ち去ろうと画策する。

 

 

「いや、でも……」

「抜いたら調子乗るでしょ。やめとけって」

「でもなあ……よっと」

「ちょっ、馬鹿ぁあああ!!」

 

 

 制止も虚しく一夏がそれを引き抜いた瞬間、爆風とともに辺りに砂煙が俟った。

 

 

「ごほっごほっ…。」

「……上だな」

 

 

 呟きと共に遥か上空が輝き、何かが真っ直ぐに俺たちに向かって落ちてきた。

 

 

「ほーら、余計なことするからこうなるんだよ! 柱に掴まれ!」

「うわぁああああ!?」

 

 

 ヘリが離陸する時のような砂煙が晴れると、見えてきたのは…メカメカしいにんじん。

 もちろん、その中から飛び出してきたのは予想通りのあの人物。

 

 

「やっほー、いっくん、りっくん☆元気してたー?」

「えーっと…久しぶりです、束さん」

 

 

 一夏が戸惑いながら応える。

 その人は、IS関係者の中でも頂点に立つであろう、篠ノ之束だった。

 正直俺はこの人と会話するだけで体力がゴリゴリ削れていく。逃げたい気持ちで一心だ。

 

 

「普通に元気っすよ、なんの問題もなく。」

「そっかー。…んーと、箒ちゃんはー?」

「ああ、えっと」

 

 

 なぜか、そこで一夏が慌て始めた。…ま、箒さんのことだ。どーせ今日の日付から予想して逃げ出したんだろ。

 それもさらに読んでるのが束さんなんだがな。

 

 

「まーいいよ。箒ちゃん捜索レーダーがあれば…」

「あ、ちょっと」

「とっつげきーーー!!」

 

 

 頭の兎耳を両手に持ち、そのまま高速で土煙を立てながら走り去る。

 なびいた前髪を軽く抑えながら、きょとんとした表情の一夏と顔を見合わせた。

 

 

「大丈夫か、あれ」

「…まぁ、大丈夫だろうな」

 

 

 

 

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ここで、束さんと俺の関係について話しておきたい。

そうしないと混乱しちゃう部分もあるだろうからね。

 

そもそも俺は、一時期束さんの元で世話になってた。束さんが世間から姿をくらましている辺りのことだ。

そのとき、俺は彼女に拉致られて身の回りの世話係にされた。

恐らく、俺の家事スキルに眼を付けられたんだと思う。自分で言ってたし。

俺は両親がいないから、好都合といえば好都合だったけど。

 

さて、こんなところかな?

そろそろ集中して、織斑先生のありがたい話を聞くとしますか。

 

 

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「それでは、これから模擬戦闘訓練を行う。組み合わせは我々で決めるから、私に呼ばれたものは前に出ろ」

 

 

 続いた話によると、今日の訓練は多対一戦闘らしい。

 まあ一夏あたりが一番に選ばれるんだろうな、と楽観視したのがフラグだったか。

千冬さんの指が始めに指したのは、俺だった。

 

 

「ではまずは、金沢。お前だ」

「うっへえ、俺からすか……。」

 

 

 俺のISは、基本的に多人数での協力戦闘向きだ。あまり、一対一での戦いは想定されていない。

 ジャミング等のスキルで敵を倒せるわけではないからな。

 

 

「それで、俺のお相手は?」

「そうだな…。ラウラ、セシリア、鳳。お前達だ」

「「「は!?」」」

 

 

 三人の声が揃う。確かに珍しい組み合わせだ。…けど、多人数戦のチーム分けとしてはかなり理想的ではある。

 

 

「…三体一か」

「問題あるか?」

「キャーンコワイヨータスケテイチカー」

 

 

 言って一夏に飛びついたが、無言の千冬さんに睨まれたので、仕方なくISを展開する。

 

 

「来い、『宵闇の黒鬼』!!」

 

 

 左腕についた腕輪が黒く輝き、全身を覆う。

 ゴツゴツとした角の立った全身像。鋭利で、野生動物のような爪。

 まるで繊細な動きの出来なさそうなフォルムをしたISが展開した。

 その他三人も、続いてISを展開する。

 

 

「にしても、このメンバーか…」

「教官、何故我々を?」

 

 

 ラウラの当然の疑問に、千冬が答える。

 

 

「お前達も、多人数戦闘に慣れておいた方がいいだろう?」

「あー、納得した」

 

 

 この三人の接点が少ない分、ここで練習して置いた方があとが楽ってことか。

 時計を見て、千冬さんがこちらに言葉を投げる。

 

 

「さあ、時間も無い。開始!!」

 

 

 それと同時に、四機が天高く上がった。

 まず、この中で一番厄介なのは…遠距離射撃の得意なセシリアか。

 生憎、宵闇の黒鬼には対遠距離装備は一つも入っていない。早期決着狙いが一番理想だろう。

 一気にブルーティアーズの目の前に急速接近した。

 

 

「あら、私からですの?」

「勿論。行くぞ!!」

 

 

 爪を使った連続体術。焦ってはいけない、だが中々心の制御というのは難しいものだ。

 全て上手い具合にかわされてしまい、見る間に距離は離れていく。

 

 

「くっ…! 近接戦に慣れてないのが痛いか…少しは大人しく当たれ!!」

「ほほ、馬鹿なことは言わないで下さる?」

「くっそ…っどぁああ!?」

 

 

 突如、背後から強力な射撃が入った。削られるシールドエネルギー。

 この威力を持つ兵器は、ただ一つ。

 

 

「衝撃砲…リンか!!」

「そのとーり!!私がいること、忘れるんじゃないわよ!!」

 

 

 今度はリンが接近して、俺のエネルギーを削り取っていく。

 距離を開こうとすると、今度はブルーティアーズの正確な射撃。

 

 

「っのヤロ…!!」

「おっと!!」

 

 

 射撃にあわせてジャミングする暇もない。

 もはや悪あがきにしかならない引っ掻きを、すらりとかわされた。

 

 

「コンビネーションよすぎでしょ!?厳しいなぁ、もう!」

 

 

 だが、俺の言葉で怯んだのか、唐突にリンが何かに気付いたような表情を見せて後退した。

 

 

「ラウラー、セシリア、準備できた?」

『あぁ、問題ない』

「こちらも完璧ですわ」

「いっ!?」

「じゃ、あたしも本気出しちゃおうか…なっ!」

「うぇえ!?」

 

 

 リンが衝撃砲の砲身をこちらに向けてくる。

 そもそもジャミングは、追尾プログラムをかく乱するもの。こういうエネルギー系の弾丸には無意味…。

 人間の逃走本能というのか(違う)。それが、俺に『逃げろ』と命令してきた。

 

 

「うっそぉ、冗談きつい…うっ!?」

「…すまんな。訓練とはいえ本気でやるぞ」

「…マジで冗談きついって…!!(泣)」

 

 

 逃がしてはいただけないらしい。ラウラのISから伸びたワイヤーブレードに、足は固定されていた。

 上からブルーティアーズ、下からはレールカノン、前からは衝撃砲。

 

 

「「「食らえええっ!!!」」」

「だぁぁぁああああああああああああ―――――」

 

 

 撃墜。反転。暗転。

 

 

 

 

 

 

 

「げっほ…げぇっほ」

 

 

 海から、岩を伝って這い上がる。塩水が口からこぼれ出た。

 海に墜落した瞬間、ISは勝手に展開を解除してしまった。投げ出された俺は必死に岸まで泳いだわけだ。

 

 

「だ、大丈夫か、竜也。無事か?」

「…これが無事に見えるんだったら、お前の目は節穴だよ…うぉええええ」

 

 

 ラウラの手を借りて立ち上がり、インナースーツの露を払う。

 

 

「す、すまん…少し、やりすぎた」

「ちょっと熱くなってしまいまして…」

「て、手加減できなかったのよ!」

「お前ら…もう少しで俺は婆さんに身包み剥がれて川渡るところだったんだぞ」

「それってかなり淵だよね」

 

 

 いきなり肺に入ってきた海水に呼吸困難になりかけた。寧ろ渡っていたほうが楽だったのではと思うくらいだ。

 

 

「すげえ発見をしたぞ。知ってるか、三途の川って緑色なんだぜ…?」

 

 

 そう言ったとたん、数人が俺との間に一線を引いた。

 首を傾げていると、一夏がこちらに来て耳打ちする。

 

 

「竜也、その目はヤバイ。一旦落ち着け」

「…ん、何、そんなやばかった?」

「光がなかった。」

「…よっと。はい、完全復活。今日もいい天気!!」

 

 

「きゃっははは、おっもしろいもの見たーー!!」

「っ!?」

 

 

 皆の後ろの崖の上。高笑いのした場所。

 そこから滑り降り、飛びついてきたのは…

 

 

「た、ばねさん…」

「きゃっほー☆かっわいそうなりっくーん」

「かわいそうは余け…い!?ちょっと待tおぶわあああああああ!!!」

 

 

 飛びつかれた衝撃でふらつき、足を踏み外した…後ろには、勿論。

 

 

「海ーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

 

 何度母なる海に帰れば気が済むんだ。

 

 

「束……今、金沢を突き飛ばしたろう」

「えー?だって束さん濡れるの嫌だもん☆」

「うがぁあぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 今度は宵闇の黒鬼を展開して浮上する。

 殺すには十分な理由! 許すまじ!

 

 

「お、落ち着け竜也!!!」

「コンニャロ、散々コケにしやがって…今日という今日は!!」

「はい、すとーっぷ」

 

 

 束が人差し指を当てると、猛スピードで彼女に向かっていた竜也は動きを止める。

 

 

「今日はりっくんと箒ちゃんにプレゼント持ってきたんだから、そんなぎゃーぎゃー騒がないこと。」

「プレゼント?」

「…………」

 

 

 見れば、箒さんはむすっとした顔で黙り込んでいる。って言うか、箒さんへのプレゼントは分かるがなぜ俺まで?

 

 

「何も驚くことはないよ?ただ私が気に入ってる子が嫁入りしたって聞いたからねえ?」

「「っ!!!」」

 

 

 反応した人数、四名。俺、ラウラ、千冬さん、一夏だ。

 

 

「じゃあ嫁入り道具も必要でしょう、ってことで作ってきちゃった☆」

「あんたって人は…。」

 

 

 気に入った人間のことはよく見てるし、気にもかける。悪い人じゃないんだけど…他人に対する反応が違いすぎるからなぁ。

 

 

「というわけでふむ、なるほど。君がりっくんの夫かな?」

「えっ、あっはい!!!」

 

 

 声をかけられたラウラは軍隊のごとく敬礼する。何だその礼儀は。

 

 

「ふーむ…。なるほど、覚えておくね。りっくんよかったねー」

「なにがですか…」

「色々?」

「何故疑問系。」

 

 

 そんなツッコミを入れているうちに、ぽんぽん話は進んでいく。

 紅椿のフィッティング等は即効で済み、今度は深淵の黒鬼のターン。

 

 

「今回黒鬼に追加するのは、遠距離用攻撃兵器だよ」

「遠距離?」

「うん。やっぱり近距離戦闘はこの子には向いてないみたいだし」

「それは俺に向けての発言ですか、それとも黒鬼ですか?」

「想像に任せるよ♪」

 

 

むっとしたが、装備を追加してもらえるのは非常にありがたいことだ。

 大人しく、束がカタカタキーボードを打つのを見る。

 

 

 が、そんなゆったりした空気も、遠くから走ってきた山田先生の声で叩き割られた。

 

 

「お、お、お、織斑先生!!!」

 

 

 やべえ、どう考えてもあのままだとこける。

 それほどまでに、普段よりも慌てているという事らしい。何かあったのか?

 話を聞こうと思い耳をすませたが、なんと手話。

 それじゃあ聞くことはできない。

 

 

「…何かあったのか?」

「さあ、どうだろうね。なんかあったのは確かだろうけど」

 

 

 数回頷いたあと、山田先生と別れた千冬さんはこっちを見て、人数を確認する。嫌な予感しかしない。

 

 

「専用機持ちは全員集合しろ!!それ以外の生徒は全員ISを片付けて旅館に戻れ!!」

「へ?」

 

 

 その場に居た全員(専用機持ち、束除く)がざわめき、俺の横にラウラが近づいてきた。

 

 

「一体、何が起こったんだ?」

「さあね。さっきも言ったが、何かが起こった。これは重要なファクターだ」

 

説明
第七話。
ラウラさんはピクミンとかやってると萌える。

メッセージありがとうございます。某サイトから続いてきてくださった方も居て嬉しい限りです。不定期ですが、頑張って生きたいと思います。

ちなみに、私の書く東方小説って需要あるんですかね。
リクエストされたのでとりあえず予定はしておきますが、出来れば皆さんの意見を伺いたいです。
ツイッターでもメッセージでもどうぞ、お願いします。
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ラウラ・ボーデヴィッヒ インフィニット・ストラトス IS 

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