ロウきゅーぶ! Another Wing エピソード1 第二話 消えないモヤモヤ
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女バスの娘達との出会いから二日後、俺は再び慧心学園体育館へと赴いた

今日は前回のようなお出迎えはなくスムーズに練習が開始された

まず前回できなかった二対三の模擬戦を始めさせ、昴さんはそれを観察し始めた

「・・どうっすか、昴さん」

「どう、というと?」

「いや、昴さんから見てあいつ等はどうっすかと」

「あぁ、そういうことか、まず智花に関してはまだ保留かな、経験者とは聞いていたけど模擬戦を見ただけじゃまだ判断できない」

流石経験豊富な人の言うことは違うな、俺なんか普通に上手いなで終わっちまう

「で、他は・・・まぁ言うまでもないかな」

「・・・そっすね」

そう、智花以外は誰が見ても初心者としか言えない実力だった

「でも真帆は動きに無駄が多いけど身体能力は評価できるな、沙希も動きは悪くないし状況判断の良さは光るものがある」

たしかにあの二人は初心者といえど結構いい動きをしている、伸びの速さで言えばこの二人はいい感じだ

「愛莉とひなたは・・・ちょっと時間がかかりそうだな、愛莉はメンタル面にいろいろ問題がありそうだし、ひなたは運動そのものが慣れてない感じだ」

確かに、でもその辺は一週間でなんとかなることじゃないしな・・・

「まぁこんな感じかな」

「はい、ありがとうございました」

「---よし、それじゃあ次の一本でラスト、その後十分間休憩!」

とりあえず俺ができるのは練習のサポートぐらいになりそうだな

まぁしょうがねぇといったらしょうがねぇか

 

 

 

 

休憩中、他は座って談笑したりしてる最中、智花だけは熱心にシュート練習をしていた

それを邪魔しちゃ悪いとは思いつつも智花に近づき話しかける

「智花、ちょっといいか? 普段どんな練習してきたか知りたいんだが」

「あ、はいっ。 ちょっとだけ待っていて下さい!」

そう言って智花は更衣室へ走っていった

「どうかしたのか?」

そこに昴さんが話しかけてきた

「いや、これまでの練習について聞いておこうかと思って」

「そうなの?よかった、ちょうど俺も聞いておこうと思ってたんだ」

「お待たせしました」

話していると智花がメモ帳のらしきものを持ってきた

「一応、自分なりに考えてみたメニューはこんな感じなんですけど・・・」

俺と昴さんは智花に肩を寄せてメモ帳を見る、すると柑橘系の香りが漂ってきた、制汗剤のにおいか?

「おっ、なにしてんの?」

「わ!」

等と考えていると真帆が昴さんの背中にしがみついていた

「れ、練習メニューを見せてもらってたんだ」

昴さんは身体を硬直させながらそう言った、昴さん女の子とか苦手なのか?

それはさて置き改めて練習メニューを見る、うむ、基礎練とかもちゃんとやってるし問題ないと思う

でもレイアップとかはまだ早いんじゃないか?

「・・・おぉー、そういえばこんなんだったなぁ、なつかしー」

・・・ん?なつかしい?

「懐かしいって今は違うのか?」

「えっとね、はじめのウチはこれやってたんだけどさ、めんどっちくなってここんとこ試合しかやってないんだ、あはは」

「ごめんなさい、みんなが楽しいのが一番なのかなとも考えてしまって・・・」

なるほど、まぁ小学生にいきなりこれはつまんないよな

「しょうがねぇよ、こういうのはまず楽しいって思うことが大事なんだし」

「んー、じゃあ新しいメニューを考えたりはしなくていいのかな?」

「いえ、そんなことないです!考えて頂けるとすごくうれしいです!」

智花は昴さんの考えにものすごい勢いでかぶりを振った、ホント、バスケが好きなんだな・・・

「そーそー、考えておくれよー。 遠慮なくビシバシやりたまえ!」

「そか、了解。 それじゃあ智花の考えたメニューを元に新しいのを作ろうか、じゃあ後三分ぐらいしたら集合かけるからそれまで休んでていいよ」

「じゃあすばるん、ステキなのを頼むぜっ、一時間でレベルが3ぐらい上がっちゃうようなやつ!」

レベルって、ゲームじゃねぇんだから・・・

なんて考えていると真帆は含み笑いをしながらブツブツ言い始めた

「ねぇすばるん!レベル18ってどれくらい?18あれば地区大会優勝するぐらいはらくしょーだよねっ?」

「うーん、どんなに頑張っても一週間で地区大会優勝レベルにはならないだろうな。 一週間は無理でも頑張って続ければ・・・」

そこで昴さんは言葉を切る、なぜなら真帆が驚いたような顔になっていたからだ

「・・・無理、なの?」

「え?う、うん・・・」

「困るよ!」

「なっ、え?」

真帆の叫びに俺達だけでなく、休憩していた面子も驚いていた

「無理とか困る!作ってよ!お願いだから!!」

そして真帆はまくし立てるように昴さんに頼み込む

「・・・それは無理だよ、そんなに急激に上手くなれるもんじゃないし」

「じ、じゃあつばさっちは?つばさっちならできるでしょ!」

「いや、わりぃけど無理だ。 第一ゲームとかじゃねぇんだ、ゆっくり上達していくしかねぇ」

「でも、真帆なら運動神経いいみたいだし、一ヶ月くらいちゃんとしたメニューで練習すればきっと・・・」

「一ヶ月も待てないよ!」

真帆のあまりにも真剣な眼差しに俺と昴さんは黙り込んでしまった

その後、練習メニューについて話し合ったが空気が重苦しいままだったため、うまくまとまることはなく終了時間を迎えた

 

 

 

 

「じゃあ先に失礼するよ・・・」

「うっす、おつかれした」

昴さんは早急に着替え終わると荷物をまとめ、思い表情のまま更衣室から出て行った

まぁしょうがねぇよな、あんな顔されたら

「なんかあるのか?あいつらに」

そう考えるしかない、そうでもなければあそこまで意固地に上手くなることに執着しないはずだ

例えば、勝たなきゃいけない相手がいる、とか・・・

「・・・考えるだけ無駄か」

どの道、次回で終わりなんだ。 思ってたよりバスケはできなかったが、触れられただけ良かったと思おう

「俺もとっとと帰るか・・・ん?」

そう思い、ロッカーを開けると封書が落ちてきた

「なんだ?・・・脅迫状かなにかか、これ」

その紙には『今すぐ女バスのコーチを辞めろ! さもないと、不幸がお前に襲い掛かるだろう!』と書いてあった

不幸って、また小学生らしいな。 にしても・・・女バスのコーチを辞めろ、か

「・・・やっぱりなんかあるな、こりゃ」

とりあえずその脅迫状をポケットに押し込み、更衣室を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び一日飛んで金曜日、今日で最後となるとなんか感慨深いものがあるな

でもこれで最後だ、コーチも、バスケも・・・

そんなことを考えつつ俺は慧心学園へ自転車を走らす

「・・・お」

駐輪場に自転車を停め、体育館に向かっていると琴葉を見つける、前に助けた他のやつも一緒のようだ

琴葉は俺に気付きこっちに駆け寄って来た

「こんにちは、翼さん」

「おう」

「お!この間助けてくれた人だ」

琴葉が挨拶すると他のやつらも俺を思い出す

「うん、小鳥遊翼さんだよ」

「よろしく」

「ヨロシクゥ!あたし((杉本|すぎもと)) ((香奈|かな))!」

「私は((森|もり)) ((恵|めぐみ))です、先日はどうもありがとうございました」

やたらハイテンションな香奈に落ち着いた感じの恵か

「んで、翼さんはなんでここに?」

そこで香奈が聞いてきた

「あぁ、初等部の女バスのコーチを引き受けてな、てかそんときお前もいただろ」

「あー、そういえばそんな話してたね」

「たしか一週間だけのコーチでしたよね」

「おう、で今日がその最終日」

「そうなんですか」

こんな話し込んでる暇はないよな、早く行ってやらんと

「そ、んじゃそういうことで」

「はい、頑張ってください」

笑顔で手を振る琴葉に背を向けながら手を振った

・・・そういやここに来ることもなくなるからあいつ等とももう会わないだろうな、まっ、またいつか会えんだろ

そして再び体育館へと歩を進めると・・・

「・・・昴さん?」

遠目でよく見えないが背丈と制服でなんとなく判った

目を凝らして見るとどうやら腹を押さえている少年を助けているようだ

・・・!?だが突然草むらから数名の少年が飛び出し昴さんを捕らえ始めた

まさか昨日の脅迫状の正体か?

そして昴さんを台車に乗せやつらはどこかへと走り去っていった

「・・・とりあえず追うか」

気付かれぬようこっそり後を着いていくと倉庫のような場所にたどり着く

扉が閉められるのを確認すると扉に張り付き中の様子を伺う

「案外楽勝だったな」

「もう一人はどうする?」

もう一人って俺のことだよな

「もう一人も同じで大丈夫だろ、こいつといっしょでお人よしそうだし」

・・・まぁ否定はしない

「よし、んじゃ一人は見張りでここに残って後のやつで捕まえるぞ!」

「OK、それじゃあ行くぞ」

声と共に扉が開かれる、俺は扉の前に仁王立ちして待ち構える

「・・・よう、面白そうなことしてんじゃねぇか」

『うわあぁぁ!!』

案の定彼等は驚いて飛びのく

「まぁ心配すんな、お前等に危害を加えるつもりはねぇよ」

俺がそう言うと彼等は顔を合わせ一度頷いてから

「・・・入れ」

と促した、それに従い俺も中に入る

「・・・やあ翼」

「なにやってんすか昴さん・・・」

そこにいたのは非常に情けない姿の昴さんだった

そしてツンツン頭のやつがパイプ椅子の塔に飛び乗りこちらを見下ろす

「-----手紙で忠告はしたはずだぞ」

「忠告?あぁごめんな、俺あぁいうの見ると逆にわくわくしちゃってさ」

体育座りの状態でそいつを見上げながら申し訳無さそうにそう告げる昴さん、この状況で余裕だな

「小学生だからってバカにするなよ、後で謝っても手遅れだからな」

「ふん、いいねぇ、どう手遅れになるか楽しみだよ」

さらに余裕の表情で言い返す昴さん、それを聞いたツンツン頭は塔から飛び降り・・・

「-----おい、こいつにションベンぶっかけるぞ」

「ぎゃー!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

・・・いや、まぁ気持ちはわかるが・・・残念すぎです、昴さん

「お前等、んな陰湿な真似してねぇでとっとと本題に入れよ」

とりあえずんな光景見ていて良い気分じゃないから話を進めさせる

「ふん、本題なら手紙にも書いたはずだ。 女バスのコーチをすぐに辞め---」

「あぁそれなら今日までだぞ」

俺がそう言うと彼等は意外そうな顔をして顔を見合わせる

「・・・マジで?マジで今日で終わり?」

「あぁ」

「じゃあもうここには来ないのか? 試合の日まであいつらにはこれ以上関わらない?」

「試合?なんのことだ」

・・・いよいよ真相が掴めそうだ

「俺らとの、男バスとの対抗試合だよ。 あんたらその為に雇われた臨時コーチだろ」

その後、話を聞くと男バスが女バスと試合し、男バスが勝てば女バスは廃部ということとなっているらしい

男バスの言い分によると真面目にバスケをしていない女バスのメンバーに体育館を使わせるぐらいなら県大会まで行った男バスに使わせろ、ということらしい

確かに真帆の話を聞くと最近はミニゲームしかしていないみたいだしマジでやってるやつらからしたら迷惑だよな

・・・でも、廃部、か

そこまでする必要あるか?せめて週一にしてもらうとかいっそ合同で練習するとかいろいろ策はあると思うが・・・

とりあえず女バスとけじめを付けるということで昴さんは解放してもらい、俺達はそのけじめを付けに体育館へと向かった

 

 

 

 

「長谷川さん、小鳥遊さん!よかった、今日はいらしてもらえないのかと・・・あの、実は私達お二人にお願いがあるんです・・・!」

扉を開けた途端、智花を始め女バスの娘達が表情を輝かせて駆け寄ってきた

それを見た昴さんはバツの悪そうな顔になる、まぁこれから言うことを考えれば無理ないが

「・・・さっき男バスの子と話をした、聞いたよ、試合のこと」

「あ・・・」

智花が何か言おうとする前に昴さんは話を始める

「-----ごめん、無理だ。 試合することが良いとか悪いとかじゃなく、俺には君達を勝たせてやれるような指導をしてやる事が出来ない」

それを聞いた彼女達は悲痛な表情になる

「た、小鳥遊さんは・・・」

「・・・悪い、お前等を勝たせてやりたいとは思う、けど俺にはその力は無い。 それに、俺は今日でバスケを辞めるつもりだ」

『っ!』

俺の言葉に彼女達だけでなく昴さんまで驚きの表情を見せる

「翼、それって・・・」

「コーチを引き受けるときから決めてたことです、これを、最後のバスケにしようって」

それを聞いた昴さんは黙り込む

結局大したことはしなかったがもう未練はない、後は

「だから、最後に俺が出来る精一杯のことを教えてやる。 それで勘弁してくれ」

「・・・はい」

俯きながら返事をする智花、他の娘も俯いたままだった

「昴さんも、お願いします。 けじめ、付けるんでしょ」

「・・・あぁ、それじゃあ、最後の練習。 始めようか」

『・・・はい』

こうして彼女達との最後の練習は始まった

もちろん空気は重苦しく、まるで葬式のようなものだったが

そして十八時半、俺にとって最後のバスケの終わりが告げられた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なぁ、翼。 最後のバスケって」

校門に向かう途中昴さんに聞かれる、そりゃ気になるよな、同じ境遇なら

「・・・昴さんももう、バスケ辞めるつもりなんでしょ」

俺の言葉に昴さんは目を見開く

「・・・知ってたのか」

「はい、なんとなく俺と同じ感じがしましたから。 だからお互い、このことは忘れましょう」

「・・・あぁ、判った」

そして駐輪場にたどり着く

「それじゃ、またいつか」

「うん、また、いつか」

俺達はそれだけ告げ、別れた

もう昴さんとも会うこともないだろうな、道端でばったり、とかはありそうだけど

ともかくこれでバスケとはおさらばだ・・・キッパリ諦めよう

だが家までの道則で何度も女バスの娘達の顔が浮かんで離れない

・・・今日は早く寝よう

そう思いペダルを一気に踏み込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、どうしたものか・・・

先日慧心学園女子バスケ部のコーチを御役御免したわけで、暇ができたから巧や優助と遊ぶかと思ったのだが家の都合でそれも叶わず、どうしようもなく家でゴロゴロしていたら今度は姉ちゃんに掃除の邪魔だからどっか行ってろと除け者にされ現在しかたなく駅前をぶらぶらしているわけだ

しかし、本当にやることねぇなぁ・・・

「・・・あ、翼さん!」

途方に暮れていると後ろから声を掛けられた、振り返ってみると

「おう、琴葉か」

「こんにちは、翼さんもお買い物ですか?」

琴葉は肩からバッグを提げ、身軽な格好をしていた

「いや、俺は暇だからぶらぶらとしてただけだが。 も、ってことはそっちは買い物か」

「はい、今日は練習もお休みなので。 香奈や恵も誘ったんですけど二人とも都合が悪かったので一人ですが、えへへ・・・」

「ふーん、なら暇だし付き合うぜ」

俺がそう言うと琴葉はパァっと明るい顔になった

「本当ですか!あ、でも女の子の買い物は翼さんには退屈じゃないですか?」

「気にすんなって、一人でぶらつくよりマシだ」

「そうですか、ならお願いします」

琴葉はペコリと頭を下げる

「あいよ、んじゃどこ行く?」

「あ、はい。 まずは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで一通り見たいところは見終わりました」

「結構回ったな」

琴葉に付き添って約一時間

腹ごしらえの為、駅に隣接するアミューズメント施設、オールグリーンへとやってきた

「ありがとうございました、やっぱり誰かと一緒にお買い物って楽しいです」

琴葉はいろいろ見て回ってかなりご機嫌のようだ、まぁ実際買い物っつっても回った店の三分の一程度の店でしか買ってないんだけどな

相変わらず女の買い物というのはよく判らん、姉といい、妹といい

だがそんなことを言ったらこいつの機嫌を損ねそうなので胸に留めておく

「そいつはなによりだ、じゃあこの後はどうする?」

「うーん、特にありませんからここで一緒に遊びませんか?」

「あいよ、どこから行く?」

ボーリング、卓球、カラオケ、ゲーセンといろいろ候補はあるわけだがその中で琴葉が選んだのは・・・

「それじゃあ屋上に行きましょう」

「・・・屋上、か」

ここ、オールグリーンの屋上にはバッティングセンターともう一つ・・・バスケのハーフコートがある

「駄目、でしょうか?」

不安そうに聞いてくる、まぁ見てるだけなら問題ないか

「・・・いや、構わねぇよ。 んじゃ屋上に行くとすっか」

「はい!」

琴葉はうれしそうに頷いた

 

 

 

 

「こりゃまた実に盛況だな」

最初は休日だから、そう思ったが違かった、その理由は・・・

「『本日、毎月恒例イベントのフリースロー大会を開催中! シュートを十本打って豪華賞品をゲットしよう!』ですって」

「パーフェクト達成者には館内全施設で使える千円分のチケットか、そりゃこんだけ集まるわけだ」

現に今も誰かが挑戦中だった、よく見えんが高校生ぐらいかな

「おめでとうございます!見事クリアーです!」

その声に周りの客から拍手が起こる

「面白そうです、翼さん、やってみましょう!」

「いや、俺は・・・」

「ゴーゴー!」

俺の言葉を聴かず腕を引っ張る琴葉、こいつ意外と活発なんだな。 そういやあん時もバスケしてるときは活発だったな・・・琴葉はバスケが関わると活発になるようだ

「さぁさぁ!次の挑戦者は誰かな?」

「はい!私、やります!」

琴葉は右手を挙げ立候補する

「それでは、このお嬢さんのチャレンジです!」

係員の人にボールを受け取り、早速シュートする

「やっ!」

一本、二本、三本と順調に決めていく、だが

「・・・あっ」

「あぁ〜、残念、失敗です。 それでは残念賞です」

琴葉はとぼとぼと残念賞のストラップを持ってこちらに戻ってきた

「はぁ・・・失敗しちゃいました」

「いや、結構いいセンいってたと思うぜ」

「さぁて、次の挑戦者は誰だ〜?」

すると隣から視線を感じた

「じー・・・」

「・・・・・」

あえて受け流す

「じじじー・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・しゅん」

「だぁもう!はい、俺やります!」

くそ、あんなの耐えられるか!

「はい、ではこちらに」

そして係員の簡単な説明の後、七号球を渡される

ちとでかいが、まぁ大丈夫だろ

俺は二、三回ほどボールを突くと構える

「・・・ふっ!」

ボールは弧を描いてネットを揺らした

「・・・・・」

何か違和感を感じつつもう一度構え、放つ

二本目も入るが違和感は抜けない

試しにシュート法を変えてジャンプシュートで打つ

・・・ちょっと抜けてきた、このままジャンプで打ってみよう

だいぶいい感じだ、だがまだ違和感は感じる

なんだ?高さか?

試しに膝を曲げ、高く跳んでシュートを打つ

「五本目!あと半分ですよ!」

見えてきた!後は調整して・・・

「六本目!良い調子です!」

違うな、もっと高くか?それとも別の何かが?

「七本目!すごい、あと三本!」

ボールの軌道か?

「八本目!あと二本です!」

くそっわからねぇ

「九本目!ラスト一本です!」

落ち着け、思い浮かべろ、違和感の正体を

俺は目を瞑り集中する、そして見えてきたヴィジョンをイメージして、放った

「っ!」

今のって・・・

ハッキリ見えたその姿に俺は愕然とする、そして突然聞こえた歓声に我に帰る

「すごいです!パーフェクト達成ですよ翼さん!」

琴葉が駆け寄ってきて目を輝かせながらそう言ってきた

パーフェクト?そうか、俺フリースロー大会に挑戦してたんだっけ

「それでは、賞品の千円分チケットです」

司会者にチケットを渡される、だがそんなことどうでもよくなっていた

「・・・琴葉、こいつはやるよ。 ちと急用できたから帰るわ」

「え?あ、はい。 ありがとうございました」

琴葉は不思議そうな顔で俺を見送る

最後のシュート。 あの時見えた姿って、どう考えても・・・

「・・・智花、だったよな・・・」

俺は更なるモヤモヤを抱えながら家へと歩いていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜春野琴葉 日記帳〜

・4月22日

今日駅前にお買い物に行ったら偶然翼さんに会いました

それで一緒にお買い物したり、ご飯食べたりしました

私にいろいろ気を使ってくれて、翼さんは本当にいい人だなぁ

そのあと、オールグリーンの屋上でやってたフリースロー大会に挑戦しました

私は四本目で外しちゃったけど翼さんはなんと!十本パーフェクト達成しちゃいました!

やっぱりすごいなぁ、私も翼さんみたいに上手くなりたいです

ようし、明日の練習も頑張ろう!

でも翼さん、終わった後なんか変な顔していました

なんというか・・・モヤモヤした顔?

そして私に賞品の千円分チケットを渡して翼さんは帰っちゃいました

どうしたんだろう?気になります

今度会ったら聞いてみよっと

それじゃ、そろそろおやすみなさい

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エピソード1 第二話
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