IS~音撃の織斑 十九の巻:近付く夏
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Side 三人称

翌朝、学園の生徒達が花月荘から引き上げてバスの中に乗り込み始めた。一夏もその列に並んでいたが、バスに乗る直前に引き止められた。相手は金髪の二十代の綺麗な女性だった。

 

「福音のパイロット・・・・・でしたっけ。」

 

「ええ。ありがとう。貴方のお陰で助かったわ。 白馬のナイトさん。」

 

彼女は手を差し出し、一夏もそれを握り返した。

 

「織斑一夏君、だっけ?私はナターシャ・ファイルス、お察しの通りシルバリオ・ゴスペルのパイロットよ。よろしく。」

 

「こちらこそ。福音は結局どうなるんですか?永久凍結か、解体でもされるとか・・・?」

 

「凍結が決まったわ。ワクチンの作成にも時間が掛かり過ぎるし、政府が一ISの為にそこまで時間を割くとも思えない。だから、私はあの子から空を奪った奴らを許さない。」

 

ナターシャの目は鋭くなった。

 

「奴ら・・・?」

 

「亡国企業、ファントムタスク。ISを強奪している謎のテロリスト集団よ。貴方も気を付けなさい。」

 

「忠告どうも。」

 

一夏はそれだけ言うとバスの中に乗り込んだ。話している間に殆どの席が埋まってしまっており、一夏は結局簪の隣に座る事になった。心の蟠りをシャットアウトする為に、一夏は音楽を聴いていた。

 

(マズいな・・・・コイツに恐らく変身した所を見られている。鬼としての活動も一層難しくなるな。)

 

背もたれに深く背中を預けるが、横からチラチラと視線を感じる。簪の物だ。しばらく無視を決め込んでいたが、一向に止まる様子が無いのでイヤホンを外した。

 

「何か言いたいなら早く言え。そうやってチラチラと見られていたら落ち着かないし、曲に集中出来ない。」

 

「あの、ね・・・・一夏の師匠って人と一緒にいたけど・・・あれ、何なの・・・?」

 

「何の話だ?」

 

「とぼけないで。変な鳴き声が聞こえたら二人で海岸に向かって行ったでしょ?」

 

(やはり見られていたか・・・・糞・・・・ここは何とか誤摩化すしかないな。)

 

「ああ、何なのか気になったから見に行っただけだ。結局なんなのかは分からずじまいだったがな。何故そんな事を聞く?」

 

「それは、その・・・・」

 

簪は言い淀んで遂には俯いて黙ってしまう。

 

「まあ、良いさ。誰にも言うなよ。」

 

簪の髪を優しく梳いてやると、再びイヤホンを耳に入れ直して目を閉じてリラックスし始めた。

 

簪は突然髪を梳かれたので顔が赤くなってしまい、それを他の生徒に見られない様に窓の方を向いた。

 

(これってまさか・・・・恋・・・?)

 

そんな事は露知らず、一夏はそろそろ近付いて来る『時期』にどうするかを考えていた。その『時期』の名は夏だ。夏の魔化魍は太鼓でなければ倒す事は出来ず、試みようとすれば分裂して数を増やしてしまう厄介な種類だからだ。

 

(ヒビキさんは紅に変身出来るから問題無いし、師匠も・・・・使えるけど使わなくても当然大丈夫だろうし・・・・俺はどうしたものかな・・・?毎日やってる修行は夏の間いつもの倍をやらなきゃ行けない・・・・二段変身の((極意|ヌリ))はヒビキさんに聞いた方が良いか・・・・ラウラにも挨拶に行かせなきゃ行けないし・・・・アー忙しくなる。)

 

携帯を引っ張り出すと、ヒビキに電話をかけた。最近はようやく携帯を使える様になったので一安心なのだ。

 

『はいはーい。ヒビキです。』

 

「イバラキです。おはようございます。」

 

周りに聞こえない様に声のトーンを落として話した。

 

『おお、イバラキ、元気か?聞いたぞ、そっち化け鯨出たんだって?』

 

「はい、師匠と倒しました。突然どこからかトウキさんも出てきましたけど。」

 

『ヘーー、珍しい事もあるもんだな。アイツの鍛え方は色々と怖いしね。』

 

「はい。ところで、ちょっと頼みたい事が。」

 

『んー?何何?何でも言ってよ。』

 

「二段変身の事でヒビキさんと直接話がしたいんです。夏も近いですから、それに備えておかなければな、と。」

 

『あー、成る程ねー。夏の奴らはホント迷惑だしねー。良いよ、休みが出来たらたちばなで待ってるから。イブキもトドロキも俺が鍛えなきゃ行けないからな。』

 

「イブキさん宗家の人なのに何で管を中心にするんですかね?」

 

『まあ、アイツらしいと言えばらしいだろうが。』

 

「確かに。あの人速いですし。じゃあ、俺はこれで。」

 

『はいはーい。頑張れよー、少年。』

 

(俺はもう少年じゃないってのに・・・・)

 

 

 

 

 

 

バスから降りた後、一夏はラウラと一緒に外出届を出しに行った。

 

「どこに行くつもりだ?」

 

「ちょっとした野暮用ですよ、織斑先生。そんなに時間はかからない筈です。」

 

学園を出てモノレールにいる間、一夏は腕組みをしてその場から一歩も動かずに厳しい表情を崩さなかった。

 

「兄様、これからどこへ行くのですか?」

 

「付いてくれば分かる。」

 

手短にそう言うと、赤い暖簾がかかった店の前に辿り着いた。丁度定休日だが、猛の連中が出入りする為に鍵はかかっていない。

 

「ここは・・・?」

 

「俺の仲間が集まる場所だ。」

 

ラウラの手を引いて中に入ると、クラッカーが幾つか鳴った。壁には大文字で、こう書かれていた。

 

『ラウラ・ボーデヴィッヒ様、ようこそ猛へ!』

 

「これは・・・・」

 

「兄様・・・?」

 

「俺は何もしてないぞ。」

 

「俺だ。お前に妹分が出来たんだったら、歓迎会位は開いてやらないとな。」

 

市が奥から出て来た。テーブルには豪華な料理が沢山並んでいる。更に、関東支部のメンバーが殆ど揃っていた。

 

「やあ、君が一夏君の妹分だね?」

 

「は、はい!ラウラ・ボーデヴィッヒです。」

 

立花を前にして多少緊張していたのか、ラウラの声が少し裏返ってしまった。

 

「私は、立花勢地郎。この猛関東支部の局長だ。一夏君の妹分と言う事は、私達の家族でもあると言う事だ。何かあったら、私達を頼りなさい。」

 

「は、はい・・・!」

 

「でも、おやっさん、良かったんですか、殆どの皆さんがいますけど。」

 

「まあ、サバキ君とショウキ君がリハビリも兼ねて行くと言って聞かないからね。せめて保険をと思ってバンキ君も一緒に行かせておいたから、まあ今日位は大丈夫だろうと思う。」

 

立花は笑みを崩さずに問題は無いとでも言いた気にブンブンと手を振る。

 

「そうですか。ところで、もう既に師匠から聞いたかどうかは知りませんが、((学園|コッチ))で化け鯨が出たんです。」

 

「ああ。そうらしいね。いや、実はこっちでも新しい物が出てね。」

 

「新しい?」

 

「うん、それが、恐らくは夜雀だと思うんだ。イブキ君に聞いた所、外見はキツツキとスズメバチを足して二で割った様な姿だと言っていたね。」

 

「夜雀・・・・それだけですか?」

 

「いや、他にも、活動報告で見たが、牛頭馬頭、アカシタ、そしてカミキリが出た。」

 

「そんなに・・・?!相手も色々とやってるみたいですね。」

 

「ま、今日は無礼講だ。食って飲んで喋って笑え。話はそれからだ。」

 

そんな訳で、宴が始まり、ラウラも挨拶や手続きを済ませた。

 

「兄様、これから何をするのですか?」

 

「ん?まあ、夏が近いからな。本格的に鍛錬を一からやり直さなきゃならない。」

 

「一から、ですか?それに、それと夏に何の関係が・・・?」

 

「ああ、そうか。お前には言ってなかったな。魔化魍はドイツで言うイルリヒト、ガイストと似た様な物だ。捕食対象は人間。体はどでかく、姿は千差万別。未確認の奴も当然いる。夏は、馬鹿デカいのが出ない代わりに、太鼓の音撃でなければ倒せない厄介な奴らが出現する。太鼓以外の音撃で倒そうとすれば、分裂する。」

 

「成る程・・・・」

 

「お前は元軍人だから射撃は当然上手い。だから、イブキさん辺りに最初にお前を見てもらう事にする。」

 

「え・・・?・・・・・私は、兄様に修行を付けて欲しかったのですが・・・・」

 

ラウラはそれを聞いてしょんぼりしていた。

 

「俺は何も、お前を鍛えないとは一言も言っていないぞ?お前のトレーニングメニューを考えておいた。それに、既にイブキさんにそれを送ってある。だから、俺がいなくとも、俺の修行をしている事になる。だからそうしょげるな。」

 

元気付ける様にラウラの頭を撫でた。ラウラは擽ったそうに体を揺すったが、全く拒まずに寧ろ気持ち良さそうに薄目になってすり寄って来た。まるで猫だ。

 

「あらら、ラウラちゃんたら一夏君にべったりねー。」

 

「みどりさん、誤解を生む様な事言わないで下さい。ラウラは妹分であり、俺の仲間です。」

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

Side:一夏

 

さてと、飯も食ったし、俺はヒビキさんに連れられた。着いた先は公園だ。誰もいない。

 

「さてと。一夏、お前に弾変身が出来る様になりたいって言ってたな。」

 

「はい。」

 

「この修行は、お前は恐らく死ぬかもしれない。」

 

その言葉は楔の如く俺の胸に深く突き刺さった。

 

「俺は今でこそ出来る様になったけど、お前位の歳ではまだ出来なかったからね。俺だって紅を維持するのに制限時間はあるんだよ。そうは見えないかもしれないけど、負担も半端無い。そもそも、何で俺に頼むの?イスルギさんだったら教えてくれるでしょうに。」

 

確かに、ヒビキさんは独学で鬼の技を学び、それを我流で極めた。だが、だからこそだ。

 

「分かっています。確かに師匠なら教えられるでしょう。けど、師匠は、俺はもう一人前だと言っていました。誰に教えを乞おうが、お前の自由だと。だから僕は、ヒビキさんにお願いしたいんです。自分の中の何かを掴む為のきっかけが欲しいんです。だから、お願いします。」

 

俺は深く頭を下げて頼み込んだ。まあ、師匠はこうも言っていたがな。『ヒビキは師匠を持った事もなければ弟子を持った事も無い。師匠の立ち場がどんな物か知るのも立派な勉強だ』ってな。

 

「分かった。基本的な事は俺が教えてやる。だが、時間も押してる。今から始めるぞ。」

 

「はい!よろしくお願いします。」

 

何が何でも短期間で二段変身を絶対に体得してみせる!!

説明
最近全然ISが登場しない・・・・やばいな、これ。
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コメント
ラウラの身長で変身…シュール過ぎてワロたwww(神薙)
更新お疲れ様です。 ラウラに魔化魍の話をするのが唐突な感じがしました。 事前に鬼のこととか説明してましたっけ?(デーモン赤ペン)
タグ
仮面ライダー響鬼 インフィニット・ストラトス 

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