魔法少女リリカルなのはmemories 第四章 覚醒する末裔の記憶(メモリー) 第四十九話
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 そして翌日の第97管理外世界。なのはやはやてが生まれ故郷で、フェイトが過ごしてきた海鳴市内にある海鳴臨海公園にて、一人の少女が私服姿で立っていた。

 

「ついこの前来たばかりだけど、あの時はそれほど暇がなかったし、その前の時にはかなり前だったから久し振りになるのかな?」

 

 その女性、高町なのはは公園を見渡しながら独り言を言っていた。

 昨日言った通り、フィルノ達よりも先に海鳴にやってきており、やっておきたいことを今のうちにやっておきたいことだったのだ。

 今日という日を過ぎてしまえば、次に故郷に戻ってこれるのは何年も先になるかもしれない。いや、一生戻ってこれないという事だって考えられた。

 最後の可能性という事もあって、なのはは何としても仕事をする前にみんなの顔を見ておきたいと思ったのである。しかも今日は世界的に言えば休日、大体の人が家に居たり出かけていたりするだろうと思ったからちょうどよかったのであった。

 

「さて、まずはお母さんの所へ会っていこうかな?」

 

 なのははそう思って公園から歩きだし、時間になるまでに目的の事を終わらせようと少し急ぐのだった。

 全く変わらないというわけでもないが、ほとんど見覚えのある街並みを見ながら、なのはは歩いて行く。

 久しぶりに見に来ていたので、余り変わってないんだなとなのはは思うのだった。

 そう思っている家に、目的地である翠屋の前へと辿り着いていた。

 

「連絡もせずに私が入ってきたら、お母さんとか驚くかな?」

 

 そんなことを思いながらも、なのはは翠屋の入り口のドアノブを持って回し、ドアを開くのだった。

 

「いらっしゃい……ってなのは!?」

 

 ドアが開いたのを見て一番最初に見てきたのは、なのはの姉である高町美由希であった。

 相も変わらず翠屋で手伝っており、今は美由希が一人で店番をしているようだった。

 

「あれ、お母さんとお父さんは?」

「今、ちょっと材料が足りなくなって買い物に行ってるよ。すぐに戻ってくると思うよ。お父さんは翠屋JFCで出かけているよ」

「じゃあ、少し待っていようかな。お姉ちゃん、ショートケーキと紅茶を一つずつ」

「ショートケーキと紅茶ね。分かった」

 

 それから美由希はショートケーキを取り出して皿に乗せ、紅茶を淹れてからなのはが座っているテーブルの前に置いた。

 

「それにしても、連絡もしないでいきなり来てどうしたの?」

「まぁ、ちょっとね」

 

 美由希の言葉を聞く限り、自分が管理局で指名手配されているという事は知らないのだとなのはは思った。そうでなければそんなことを問うわけがなかったからである。

 ケーキと紅茶を飲み、少し優雅にしていながらもなのははのんびりとしているのだった。

 

「ただいま戻った……ってなのは!?」

「あ、お母さん」

 

 美由希とほとんど同じような驚き方をしてきた高町桃子だったが、なのははまったく動じずに普通に返した。

 突然帰ってきたことに驚いていた桃子であったが、すぐに落ち着いてなのはに話しかける。

 

「いきなりどうしたの? 突然家に帰ってきて」

「まぁ、ちょっと家族全員に言っておきたいことがあってね。このことは後でお父さんにも伝えておいて」

 

 なのはの言葉に桃子と美由希は疑問に思えたが、言葉と顔から見る限り真面目な事なんだろうと冗談を交えないようにしていた。

 今は偶然にも客がなのは以外は誰もおらず、なのはだけだったのでこの場所で話すことができた。

 

「……それで、一体何の話なの?」

「うん。ちょっと理由は言えないのだけど、今いろいろとごたついてて、もしかしたら数年、いや一生こっちに戻ってこれないかもしれないという事を言っておこうかなって」

「一生戻ってこれないって本当?」

「まだわからないけど、もしかしたらそうなるかもしれない。それにこれは自分で決めた事でもあるから……」

 

 その言葉を聞いて、そこまでなのはが真面目に考えて選んだ道なんだと二人は思うのだった。

 なら否定する必要はない。それがなのはが選んだ道なんだし、決心がついているような感じであった。

 

「わかった。そこまでいうならがんばって突き通しなさい。美由希も同じ意見でしょ?」

「うん、なのはが決めた事だからあたし達がどうこう言う事ではないと思うから」

「ありがとう、お母さん、お姉ちゃん」

 

 二人の言葉を聞いて、なのはは心から嬉しく思い、感謝するのだった。

 

「それじゃあ、次はすずかちゃんの所へ行くからそろそろ行くね」

「分かった。それじゃあ、行ってらっしゃい」

 

 なのははケーキを食べ終わり、紅茶を飲み終わると椅子から立ち上がり、料金も一応払って翠屋から出て行こうとしました。料金を払った時に別に払わなくてもいいとは言われたが、なのはは一応客だからという事でお金を払ったのでした。

 

「それじゃあ、行ってきます」

 

 そしてなのはは、二人にそう言って翠屋を後にするのだった。

 

 

----

 

 

 次になのはは先ほど言った通りすずかの家に向かっており、入り口の門の前に立っていた。

 門の近くにあるインターホンを押し、誰かが出てくるのを待っていました。

 

『はい、ってなのはさん!?』

「その声はノエルさんですか? 今、すずかちゃんは居ますか?」

「えぇ、今日はアリサさんも来ていまして、さらに数日前からは恭弥さんと忍様も帰ってきています」

「ならよかったです。それと来て早々に頼むのは少しどうかと思いますけど、ちょっと全員を同じ部屋に集めてもらいますか」

 

 ちょうどよくアリサも来ていると知ったなのははアリサの家に行く手間が省けたと思っていた。

 さらに言えば、海外に居た二人も戻ってきているという事を聞いて、偶然にしては出来過ぎのように思えたぐらいだった。

 それから少しすると、ファリンが門の前までやってきて、門を開いてなのはを門の中に入れます。

 

「お久しぶりですね。なのはちゃんに言われた通りに皆さんを一室に集めています」

「ありがとうございますファリンさん。それで場所は?」

「私について来てください」

 

 ファリンに言われた通り、なのははファリンの後をついて行く。

 すずかの家の中に入り、ある部屋の手前へと連れて行かれます。

 その手前の部屋のドアを開くと応接間になっており、そこにはなのはの兄である高町恭也とその彼女である月村忍、なのはの親友である月村すずかと今日、すずかの家に来ていたアリサ・バニングスがそれぞれ近くで座っていたのだった。

 

「みなさん、なのはさんが来ましたよ」

「なのは、久しぶりだな」

「本当に久しぶりだね」

 

 ファリンの言葉に全員が振り向き、恭也と忍の二人は久し振りに会うかのような顔で出迎えてきた。

 

「なのはちゃん……」

「なのは……」

 

 だが、アリサとすずかの二人は何か複雑そうな顔をしており、なのはもその表情を見てなんとなく分かった感じだった。

 多分、自分が管理局に指名手配されている事をはやてやフェイトから聞いていたのだろうとなのははすぐに思った。そうでなければ久しぶりに再会するのに複雑そうな顔なんてするわけがないし、恭也や忍みたいに温かく迎えてくれるはずなのである。

 また、なのはが指名手配されているという可能性もあるのに、なのはが堂々とやってきたことにアリサとすずかは疑問に思えたのである。突然やってきたという事もあるけど、それでもなのはが危険な場所に立ち寄っている事には変わりないのだから。

 そしてなのはは全員が座っている席で空いている椅子に座るのだった。

 

「それでは紅茶を――」

「私は良いよ。すぐに帰るから」

「そうですか。それでは何かあったら申し付けてください」

 

 そう言ってファリンは応接間から出て行った。

 昔と違ってかなり変わったなとなのははファリンを見ながら思うが、そんな他愛無い事は今気にすることではないと思ってみんなの方へ振り向くのだった。

 一部空気が重かったが、それでもなのはは口を開いてここに来た理由を話し始める。

 

「……今日、私がここにやってきたのはちょっとした理由があるの」

「それは、俺たちを集めるぐらいの重要な話なのか?」

「うん、お兄ちゃんの言うとおり。今日話しておかないと、多分数年以上は話すことはできないかもしれないから」

 

 そしてなのはは、翠屋で桃子と美由希に話したことを話していった。色々ごたついてて、数年、いやもしかしたら一生この世界には戻ってこれないかもしれないという事。そしてそれは自分で決めた事だと。

 そんな短い内容ではあるが、結構重要な話であった。

 その話を聞いて全員少し黙ってしまうが、それを打ち砕くかのようにアリサちゃんが口を開いた。

 

「それは、今なのはが管理局に指名手配されているという事と関係しているの」

「……やっぱり、会った時の様子からして知っていましたか」

 

 なのはの言葉に、アリサとすずかは頷き、そしてその事に驚いたのは全く知らなかった恭也と忍の二人った。

 

「なのは、管理局に指名手配されているというのは一体?」

「えぇ、私はそれほどの事をしたのですから当然の事です。そして私はその事に悔いはないし、今はそのために動いてるの。どんな犠牲を伴っても」

「たとえそれが、フェイトちゃんやはやてちゃんでも?」

「うん、それが私の選んだ道だから――」

 

 まったく意見を変える気配のないなのはを見て、誰が何と言おうともなのはは曲げないだろうと思った。それほどまでの決意なんだろうと伝わったのである。

 

「……俺は、なのはの思うとおりにすればいいと思ってる。それがなのはが選んだ道ならば」

「私も恭也さんと一緒の意見かな。なのはちゃんが思った通りにすればいいと思う」

「お兄ちゃんに忍さん……」

 

 さっきも桃子と美由希の二人に言われたばかりなのだが、自分が進んだ道を推してくれると本当にありがたいとなのはは思った。

 

「……私も、今回なのはがやっている事は何も問わない。この事もフェイトやはやてには言わないから」

「私もアリサちゃんと同じ意見。今回の事に関しては何もしないで中立を保つことにするから」

「……ありがとうアリサちゃん、すずかちゃん」

 

 どちらにもつかないと言われて、なのははさらに嬉しく思うのだった。

 嬉しいことでもう少しその嬉しさの余韻に浸かりたいが、生憎なのはには時間があまりないのですぐに椅子から立ち上がるのだった。

 

「それじゃあ、私はもう行きますね。そろそろ戻らないといけないので」

「わかった。そして頑張ってこい」

「うん!!」

 

 なのはは恭也の言葉に笑顔で答え、そしてなのはは月村家を後にするのでした。

説明
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

消されていた記憶とは、なのはと青年の思い出であった。

二人が会ったことにより物語は始まり、そしてその二人によって管理局の歴史を大きく変える事件が起こる事になる。

それは、管理局の実態を知ったなのはと、親の復讐のために動いていた青年の二人が望んだことであった。



魔法戦記リリカルなのはmemories ?幼馴染と聖王の末裔?。始まります。
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