第6話 ミレイナ・レポート- 機動戦士ガンダムOO × FSS
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第6話 ミレイナ・レポート- 機動戦士ガンダムOO × FSS

 星団歴三千年代初頭惑星デルタ・ベルン、バビロン王国首都、ファルス・バビロニアの宇宙港。

 民間機と軍用機が相互乗り入れされているこの宇宙港の一角の格納庫に、デルタ・ベルンの最重要人物が訪れていた。

 その人物の名前は祇妃・ラキシス・ファナティック・バランス・天照・グリエス。デルタ・ベルンを統治する天照帝のパートナーにしてグリース王国の王女である。そんな彼女に似つかわしくない格納庫に人目を忍んで来たのにはある理由があった。

 自分宛に届いた別世界からの自分からの手紙。その手紙を別世界から届けた人物に会うためである。これはパートナーである天照帝にも相談できないことであった。

 彼女が訪れた理由、それはソレスタルビーイングのメンバーでありELSダブルオークアンタの主メカニック、現プトレマイオス3、通称トレミーの艦長に就任しているミレイナ・ヴァスティに会うためである。こうして、ミレイナは地球で別れたはずの女性と思いがけない場所で再会することになる。

 ミレイナはトレミーのブリッジから格納庫通用口に電子ロックを解除しようとした瞬間、トレミーの格納庫で((それ|・・))は目覚めた。

 

「ラキシスさん……。」

 プトレマイオスが秘匿されている格納庫にラキシスを招き入れたミレイナであったが、すぐに目の前の女性が地球で共に戦ってきた女性と別人であると認識し気持ちを入れ替え、ラキシスと距離を取ると地球連邦軍式の敬礼を行った。

「プトレマイオス艦長、ミレイナ・ヴァスティです。」

「祇妃・ラキシス・ファナティック・バランス・天照・グリエスです。」

「(天照!?……そうか、やはり。)」

 ミレイナはこの時、点と点が全てが繋がったと確信した。それは後で説明することになるが地球でのラキシスの乗機ディスティニーミラージュことナイト・オブ・ゴールドのメンテナンスを行っていたのはミレイナ本人である。

 ミレイナはこの時点で格納庫内から感じる異様な空気を肌で感じ取っていた。目に見えない、厳重に厳重に隠された殺気。――電子ロックを解除した刹那、紛れ込んできたのは間違いないです。そうミレイナは読んでいた。だがそれをおくびにも出さず笑顔でこたえた。

「ラキシス((様|・))のご訪問、恐悦至極に存じます。」

「ミレイナ艦長、こちらこそ、こんな夜分の突然の訪問に快く対応いただきありがとうございます。」

 暫し、ミレイナとラキシスは互いを見つめ合う。ミレイナの胸中には様々な思いが駆け巡るのだが言葉に出来なかった。――目の前のラキシスが自分や刹那を知らない人物であることは間違いないのだが……。だが先にラキシスが切り出してきた。

「ごめんなさい。貴女が私を知っていても、私は貴女を知りません。」

 ラキシスは左右に首を振る。

「はい……。」

「昨日、私の手元にこの手紙が届きました。手紙の差出人は私。筆跡も確かに私のものでしたし、手紙の材質もフロートテンプルでしか手に入らないものでした。」

 ミレイナはラキシスの説明によって、はじめて持参した封筒の中身について知ることになった。ミレイナも刹那も入国に必要な偽造書類の類だと思っていたのだが、どうやら個人宛の私書だったのだ。ミレイナは、先ほど刹那が出て行ったのも封筒の中身に関係があるのではないかと考えはじめた。

「(セイエイさんに用事がある人物……まさかあの((男|ひと))でしょうか!?)」

 だがミレイナはラキシスの次の発言からすぐに思考を中断して再び集中せざるを得なくなる。ラキシスは厳しい表情を見せる。

「ミレイナ艦長。私は貴女達を拘束してこの手紙の事や、そちらの奇妙な宇宙船のこと、詳しく調査します。」

「え?」

 ミレイナは色を失った。地球でのラキシスとの出会いや協力がなければ、ここまで来ることは出来なかった。しかし、ここで拘束されては元も子もないのだ。ミレイナが行動に移ろうとした瞬間、ラキシスの表情が和らいだ。

「ですが、ミレイナ艦長にお目にかかって私にはわかりました。きっと、遠い遠い未来なのでしょうね。私が貴女達と共に戦う運命なのは感じ取れました。」

 ラキシスから発せられたその一言にミレイナは目を大きく見開いた。自然と先ほどから感じていた殺気が霧散したからだ、

「だから私は貴女達を拘束するようなことはいたしません。ミレイナ艦長、いえ、……ミレイナさん、ってお呼びして宜しいかしら?」

「は、はい、どうぞです。ラキシス様。」

「ミレイナさん、私もラキシスで結構です。ここに来るまで何があったのか私に話してくれませんか。」

「わかりました。私達の((地球|・・))で何があったのか、お話しいたします。」

「よろしくお願いいたします。」

「ですが、ラキシス様その前によろしいですか?」

「はい? なんでしょう。」

 ラキシスは首を傾げる。

「お茶は三人分でよろしいですか?」

 ミレイナの一言に今度はラキシスが色を失うことになった。

「……ミレイナさん、私の護衛にお気づきでしたの、ね?」

「ミラージュ騎士には特に注意するように! と地球のラキシスさんからの念を押されていましたです。」

 ラキシスは右手を挙げると、次の瞬間ラキシスの両脇には白地に血の十字架が染め抜かれたロープをまとった大柄の騎士が姿を現した。何かの動物の頭蓋骨のようなマスクを被っており騎士の顔は確認できないが、その異様な姿は見たものを圧倒する迫力である。しかし、ミレイナはまったく動じる気配がない。

「私の方も種明かししますです。」

 ミレイナはパチンと右手の指を鳴らす。するとミレイナとラキシスの間を隔てるように巨大なマニピュレータが姿を現すのであった。

「……姫様、これはMH?」

「いえ、違います。これは……」

 重なり合った両掌のマニピュレータが左右に開くと、ミレイナが姿を現した。

「私達のガンダム、ELSダブルオークアンタです。」

「ガンダム? これが……。」

 ラキシスも護衛のミラージュ騎士も突然出現したクアンタに声を失った。それは当然であろう。MHに匹敵するほどのこれほどの巨大な起動兵器を目の前にして、ラキシスもミラージュ騎士もその存在すら察知することが出来なかったからだ。

 実はミレイナが電子ロックを解除しようとした瞬間、トレミー艦内のELS達、具体的にはクアンタが騒ぎ出したのだ。そのため、ミレイナは咄嗟にトレミーからELSダブルオークアンタを音もなく起動させ、光学迷彩を展開させ格納庫内に降着状態で待機させていたのだ。万が一に備えて、ラキシスとの会談はクアンタのマニピュレータ越しで行っていたのである。また、音もなくクアンタを起動できたのはGNドライヴ搭載機ならでの芸当でもあった。もっとも、現在クアンタはGNバッテリーと予備発電機で動作中だが。

「ラキシス様、それに騎士様、立ち話もなんです。夜も冷えてきました。熱いお茶でも飲みながら艦内でお話ししませんか?」

「賛成です。ですがご相伴に預かるのは私だけでお願いできませんか。二人はこれから用事があるようですから引き上げます。」

「ちょ、姫様!?」

 二人のミラージュ騎士がラキシスに苦言を申し立てる前にラキシスは片手をあげて制すると小声で何かを伝えた。するとミラージュ騎士はミレイナに一礼をすると現れた時のように次の瞬間姿を消していた。

「……ラキシス様、良かったのですか? 何だかお二人から渋々感が漂っていたように見えましたが。」

「いいんです。気にしないで下さい。」

 ミレイナもラキシスもお互い呆れた口調であった。ラキシスがどんな事を囁いたのか興味があったが、それは聞く気にはならなかった。

「わかりました。それではラキシスさん、私達の艦プトレマイオス3、通称トレミーにご案内いたします。」

 そう告げるとミレイナはラキシスをGN粒子が充満した格納庫からプトレマイオスの内部へと招くのだった。

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 物語はマリナが次元回廊に落ちたところまで遡る。

 刹那とELSダブルオークアンタはサタン・コマンダーを倒したが、それはマリナ・イスマイールの尊い犠牲と、突如出現した黄金のMSによるものであった。

 

「マリナァァァァ! 俺は、俺は……」

 刹那はマリナを助けられなかった自分に絶望した。刹那の右手には、異次元に落ちていくマリナの魂という「なにか」に触れたような不思議な感覚だけが残っていなかった。

 クアンタもサタン・コマンダーとの戦闘で満身創痍である。GNソードVも砕け散り、半永久機関であるGNドライヴ6号・7号も原因不明の異常停止状態。サタン・コマンダーによる切り落とされた右腕、左足は何とかELSによる癒着が始まっていたが、内部構造の復旧には時間が必要だった。

『刹那・F・セイエイ』

黄金のMSの搭乗者が脳量子波で宇宙に浮かぶ刹那に問いかける。とても悲しそうな声色だ。刹那は単身黄金のMSの前に立ちはだかる。

「……お前は一体何者だ。何故俺とマリナを知っていた!」

『私は、貴方達二人がサタンに殺される運命を見届けに来ただけ。だが、貴方達は運命に抗い自分たちで未来を切り開きサタンを倒してしまった。』

刹那は驚いた。自分たちが殺される運命を見届けに来ただけだと言い切ったからだ。

「では、何故俺に剣を渡した? この剣がなければ奴は倒せなかった……。」

 刹那が搭乗していないにもかかわらずクアンタは刹那の意志を体現したように剣を手に取り、再び黄金のMSに投げ返した。

 刹那もクアンタも先ほどから黄金のMSからは敵意を感じることがなかったからだ。だが、全てを信用しているわけではない。

『貴方達が私を呼び寄せたのです。だからこのディスティニーも貴方達に力を貸す事を了承したのです。』

「ディスティニーだと?」

 その時クアンタのレーダーが接近中のMSの機影を捉えた。すぐにクアンタから刹那へと脳量子波で情報が伝えられた。ラ・トゥールから出撃したGN-X VI2個小隊である。更に遠くではあったがGN-X小隊の支援艦も捕捉していた。

 GN-X小隊は支援艦よりGN粒子の供給を受けていた。その結果タイムラグが発生したにせよ引き続きGNブースターによる高速追尾が可能であった。サタン達の脅威は取り除かれたといえ、非常警戒態勢は解かれていない。敵味方信号は細工がしてあるとはいえ、地球連邦軍に遭遇するのは避けたいところだ。だが、クアンタはGNドライヴも停止している上に満身創痍でろくに身動きがとれない。

『刹那、話は後で。私に掴まって!』

 黄金のMSディスティニーはクアンタに手を差しのべる。

「どうするつもりだ?」

『ディスティーでダブルオークアンタを曳航します。』

 刹那は一瞬躊躇するが、すぐに意図が理解できた。クアンタのコクピットに素早く戻るとリジェネに通信を繋いだ。

「こちら刹那・F・セイエイ、リジェネ応答しろ。アンノウン(宇宙船)から出撃した『艦載機』は全て撃破した。」

すぐにヴェーダのリジェネから返答が来る。

「刹那・F・セイエイ。随分やられたようだな。だが、宇宙船の方も撃破したと報告が入っている。詳細は判らないがとりあえず危機は去ったようだ。」

「了解した。それではこれより『友軍機』と共に帰投するが、こちらの接近中のGN-X小隊の足止めを頼みたい。出来るか?」

「……わかった。やってみよう。しかし、連邦軍も甚大な被害を出している。うまくいくかは保証できないからな。」

 リジェネとの通信が切れる。地球連邦軍はサタン達によって戦艦1隻にMS部隊多数がやられ、頭に血が上っている状態だ。サタンが倒されたという報告を受け取ったとしても、倒した相手が正体不明の友軍機では簡単に事態が収まらないだろう。

『刹那?』

「お前も地球連邦軍『所属機』か? しかし、お互い姿を見られるのはまずいようだな。」

『あ! ……確かにそうね。』

 刹那は先ほどのリジェネとの通信の最中に、ディスティニーをヴェーダに照会していたのだ。勿論、リジェネも照会内容について把握していたが、今はそれについては触れないでおくことにした。

 クアンタが損傷を免れた左手でディスティニーの手を掴んだ。ディスティニーのパイロットはクアンタを確保するとディスティニーを一気に加速させた。みるみる加速していくが、GNブースターを装備するGN-Xが迫ってくる。

『(おかしい、出力が出ない!? さっきのバスターランチャーの発射の際にどこかショートしたの? それとも調整が甘かった!?)』

 ディスティニーは地球からのスクランブル発進、更に必殺のバスターランチャー発射と息つく暇もなく強力なエンジンにものをいわせていた。しかし、ここにきて急ぐあまり機体の調整が間に合わずエンジン出力が急激に落ちてしまっていたのだ。内心焦るパイロットの心情を酌んだように刹那が接触回線でコンタクトを取ってきた。

「ディスティニーのパイロット聞こえるか?」

『刹那。』

「追いつかれるのは時間の問題だ。ここでクアンタを切り離せ。お前だけでも逃げろ。」

『何を急に言い出すの? ろくに動けないMSでどうするつもり!』

「一応、これでも友軍機扱いだ。多少の時間稼ぎは出来るだろう。その間に逃げろ。」

『ば、馬鹿な事を言わないで。』

 刹那の提案にディスティニーのパイロットは声を荒げた。確かに友軍機扱いとはいえ、元々がソレスタルビーイングのガンダムである。51年前とはソレスタルビーイングを見る目が多少なりとも変わったとはいえ、ELSダブルオークアンタを地球連邦軍に捕獲されるわけにはいかない。刹那もそれをわかった上での発言である。さらにクアンタはGN-X以外の新たな機影すら捉えていた。

「だが、このままでは二機とも捕まるぞ。」

『くっ……。』

 刹那がクアンタをディスティニーから切り離そうとしたとした瞬間、まったく別の通信が入った。それは落ち着いた男性の声であった。

「姫様、遅くなりました!」

『クリサリス公!』

「新手の奴か!?」

 クアンタとディスティーの後方から大型戦闘機のような機影が急速接近すると容易く二機を追い抜く。そして、それは刹那達の目の前で人型へと変形した。

「可変MS!?」

 刹那は自分たちを追い抜き、目の前で飛行形態から人型へと変形した可変MSの変形プロセスに目を見張った。それは刹那が知っているどのMSの変形とも違ったからだ。ガンダム・キュリオス、アリオス、ハルート、フラッグ、イナクト、ブレイブなどいずれも違う。機械的ギミックによる変形だけではなく、装甲自体が形態変化を行う。

 槍のように尖った頭部、左右対になった巨大な黒い翼は背面へコンパクトにまとまり、MSの全長を遙かに上回る大砲を右手に、赤い十字架が描かれた巨大な楯を左手に持ったMSが姿を現した。

『刹那、この機体は私達の味方です。』

「味方だと? お前達は一体……。」

「姫様。私のヴォルケシェッツェで姫様のディスティニーと、ダブルオークアンタを曳航します。ディスティニーの出力を多少なりとも回していただければ今ならまだ逃げ切れます。」

『わかりました。クリサリス公、感謝します。』

 可変MSは左手に装備した楯を右手に装着し直すと、空いた左手でクアンタの右肩を掴んだ。

『クリサリス公、ティータ姉様、お願いします。』

「ティータ、姫様のディスティーと協調。」

「イエス、マスター!」

 ディスティニーと新手の可変MSが一斉にエンジン出力を上げて加速する。GN-Xの機影がレーダーから消えるのは時間の問題であった。

 誰もが安堵した事だろう。だがそれは一時的なものでしかなかった。

「刹那! お願い、返事をして。」

「セイエイさん! セイエイさん!」

 ELSダブルオークアンタのコクピット内にフェルトとミレイナの悲壮な声が響き渡ったからだ。

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 ELSダブルオークアンタは突如出現した二機の機動兵器によって地球へと曳航されていた。GNドライヴが停止した以上、量子ワープを行う事も出来ない。さらに地球への帰路は地球連邦軍の裏をかかないといけないため遠回りを強いられていた。それが今の刹那には歯がゆかった。

 

「刹那、ごめんなさい。私達、マリナさんを助けられなかった。」

「私もイスマイールさんの手を握って、意識がなくなりそうな度に何度も何度も声をかけて、その度にイスマイールさんは握り替えしてくれていたのに……。」

 刹那の耳には先ほどまで通信を行っていたフェルトとミレイナは今にも決壊しそうな感情を抑えている震えた声が離れなかった。そして突きつけられたマリナ・イスマイールの『死』という現実。

「……俺はマリナのガンダムにはなれなかった。」

 深くクアンタのシートに身を沈めた刹那が嘆いた。

『刹那。』

 刹那の今の心情を酌んだのか、ディスティニーのパイロットが接触回線で語りかけてきた。

『本当に良かったの? 王宮の人間にマリナさんの処置を任せて。せめて、貴方が地球に辿り着くまでマリナさんは別荘に……。』

 これ以上言葉を繋げられなかった。刹那は地球への帰投が遅れるためマリナをアザディスタン王宮に引き渡し、今後の適切な処置をお願いするようにフェルトに頼んでいた。マリナの遺体はすぐに首都へと移送され然るべき手続きが行われ安置されることになるだろう。そうなれば、刹那といえどもマリナと対面することは容易ではない。だが、地球への帰路は容易ではない。

「……ディスティニーのパイロット。少し質問して良いか?」

『はい?』

「あの悪魔は一体何だ? サタン・コマンダーと名乗っていたが機械ではなかった。あれは生物ではないのか? それも、かなり進化した高等生物と俺はみた。」

 刹那からの質問にディスティニーのパイロットはドキッとした。大型のサタンを生物として認識する人間は多いが、高等生物として認識する人間はなかなかいないからだ。更に「進化した高等生物」と断言した刹那の観察眼に舌を巻いていた。単なる化け物と捉えてしまう人間のほうが多いのだ。

『刹那、私の話を聞いてください。』

「なんだ?」

『貴方はマリナ・イスマイールが本当は死んでいないと考えていませんか?』

 その言葉に刹那の心は揺さぶられた。自分の目の前で起きた異次元へと引きずり込まれたマリナの魂、そしてフェルトとミレイナからのマリナの死亡報告。だが、心のどこかではマリナの死の事実を受け止めきれない自分がいた。刹那自身もこれは決して受け入れがたい現実からの逃避なのかわからなかった。

「違う。マリナは死んだ。」

 だから刹那の口から出た言葉は自分の気持ちを否定する言葉だった。

「マリナは、もう死んだ。マリナの魂は異次元に引きずり込まれ、マリナの肉体は生命活動を停止した。……マリナを助けることはもう出来ない。」

『そう……やはり、貴方はそう考えているのね。』

 ディスティニーのパイロットは小さく咳払いをすると続けた。

『刹那、貴方はこれから選択を迫られます。マリナさんのお陰で折角手に入れた命を大事するのか、それとも命を捨てる覚悟があるのか。』

「それは、どういう事だ?」

『貴方がマリナ・イスマイールは死んだ、と考えるのであれば、これから先わざわざ危険な世界に足を踏み入れる必要はありません。現に、地球ではマリナ・イスマイールは死亡したのは事実です。ですが』

 ディスティニーのパイロットは一旦区切る。決して勿体ぶるような喋り方ではないのだが、刹那もELS達もその言葉の先を固唾をのんで待った。

『貴方がマリナ・イスマイールを死んでいない、マリナ・イスマイールを助けたいと考えているのであれば、私達の世界に足を踏み込まないといけません。しかも、今の貴方では助け出すことはまず不可能でしょう。それは自殺行為に等しい。』

「なに!?」

 その一言に刹那だけではなくELS達も反応した。だが、ディスティニーのパイロットは意に介さずに淡々と話を続ける。

『悪魔の正体ですが、奴らは魔界から現れた本物の悪魔です。悪魔と言っても怪物ではありません。進化した生命体です。ありとあらゆる武器や科学を駆使し次元を超越して出現します。私の言っていることが信じられますか?』

「……今は、信じらそうだ。だが、どうしてマリナの命を狙った? 退魔の巫女と奴らは言っていた。」

『奴らはマリナさんの殺害が目的でこの世界に来たのではありません。奴らの目的はマリナさんの魂。だけど、サタン達がマリナさんの魂を狩る前に別宇宙へ飛ばされてしまいました。』

「あれは、奴らの仕業ではないのか?」

『詳しいことは私達もわかりませんが、あれはサタン・コマンダーの仕業ではないでしょう。』

「……まて。奴らの目的はマリナの魂ならば、奴らは別宇宙にも現れるというのか!?」

『あ! 確かに、その可能性もあります。』

「しかし、マリナの肉体は地球だ。ではいったいどうやって……。」

『それは……。』

 刹那もディスティニーのパイロットも言葉につまった。普段の刹那であれば魂など死生観に係わる話はしない。しかし、実際に目の前に悪魔が現れ、マリナの魂が現れ自身を守ったのだ。

『姫様それ以上は司令に怒られますよ。』

 会話に割り込んできたのはクアンタを曳航している機動兵器のパイロットだった。こちらはディスティニート違い男性の声だ。

『刹那・F・セイエイ、これは警告だ。これ以上の詮索は君の命にかかわる。我々の世界にかかわるのであれば覚悟を示して欲しい。』

「覚悟だと!?」

『そうだ、覚悟だ。サタンは強い。我々でも手を焼く奴らだ。マリナ・イスマイールの加護を受けられない今の君とその機動兵器では、サタンにかすり傷一つつけることは出来ないだろう。』

 その言葉に刹那は反論できなかった。満身創痍のクアンタを修理したとしてもGNドライヴが停止している状況ではサタン相手に戦うことは無謀だということを理解していたからだ。仮にGNドライヴが稼働していたとしても先のサタン・コマンダーとの戦いを振り返ると一筋縄ではいかない相手である。訪れた長い沈黙を破ったのは別の女性の声であった。

『マスター、アザディスタンへの降下ポイントに間もなく到着します。付近にMS反応は見られません。』

『了解した、ティータ。姫様、間もなくです。』

 気がつけば地球が見える距離までに近づいていた。ここまでくれば、GNドライヴが停止してもELS達の力を使い強行着陸になるだろうが地球への降下は十分可能である。二機の機動兵器はクアンタから手を離し、距離をとって向かい合った。

『私達は強制しません。私達の世界に足を踏み込むのも貴方の自由。刹那、貴方に時間を与えましょう。』

「お前達は何者だ!?」

『私の正体を知ってしまえば後戻りは出来なくなります。今は私達は貴方の味方です。私としては貴方を死なせたくはありません。これは本心です。』

 二機の機動兵器はクアンタから距離を取り始める。

「待ってくれ!」

『刹那、ここから大気圏に突入すればアザディスタン上空に降下出来ます。次に会うときまでに答えを用意しておいて下さい。』

 刹那がディスティニーのパイロットを呼び止めようとするが、二機はすぐに別ルートで大気圏に突入してしまった。現在のクアンタでは追跡することも出来ない。二機の機動兵器が織りなす光跡をただ見ているだけしか出来なかった。

「……トレースも計算済みか。フェルト、ミレイナ、リジェネ、聞いていたな?」

 刹那は通信を切ってはいなかった。送信のみを活かした状態、つまりコクピット内の会話を外部に流していたのだ。

「刹那・F・セイエイ、聞こえているよ。魂とは非現実的な話だが、ガンダムの戦闘データを見る限り信じるしかなさそうだ。あの『機動兵器』の追跡はヴェーダが引き受けよう。」

「頼む。」

「刹那はこれからどうするの。マリナさんを追いかけるつもり?」

「今は情報が少なすぎる。フェルト解析を頼む。」

「……わかったわ。刹那が入手した機動兵器の情報はすぐに解析を始めるわ。だけど、ELS達からの情報の整理はお願いできるかしら?」

「ELS達からの情報は俺が整理しよう。」

「セイエイさん、アザディスタンへの降下ルートの算出は完了です。ついでにELSダブルオークアンタへの送信も完了したです! マリナさんが待っています。お早い帰投をお願いするです。」

「……了解した。刹那・F・セイエイ、ELSダブルオークアンタこれより帰投する。」

 刹那とクアンタはマリナの眠るアザディスタンへ降り立つべく大気圏に突入していくのだった。

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 数日後、アザディスタン王国からマリナ・イスマイールの死亡が公表された。死因は『老衰』。マリナの死は国内外にショックを与えることになる。

 連邦政府には地球連邦軍MSと外宇宙から出現した謎の生命体の戦闘は報告されていたが、すぐに情報統制が行われた。また、サタン・コマンダーとの戦いの最中に起きたマリナ失踪に繋がる不思議な事象については報告されていない。

 

 刹那はマリナと最後の別れを告げるためアザディスタン王国首都に来ていた。

 フェルトとミレイナも希望していたが、刹那の話とクアンタの状態を見て諦めざるを得なかった。

 現在、傷ついたクアンタはソレスタルビーイングの秘密ドッグに運ばれミレイナ達の分析が行われているはずだ。

 マリナの国葬を明日に控え、アザディスタンの首都には国内外から多くの弔問者が集っていた。

 国民だけではなく、マリナの元から巣立っていった多くの子供達、アザディスタン復興に際してマリナに共感して協力してくれた国や企業の代表者、人種の垣根を越えての参加であった。

 その日の深夜。アザディスタン首都では武装した兵士達がそれぞれオートマトンを従えて警備にあたっていた。

 その中でも王宮の離れには重要人物が匿われており、その護衛のた兵士やオートマトンが配備されていた。連邦軍からも『状況を鑑みて』アザディスタンへのMS4個小隊派遣協力が打診されていたが、アザディスタンとしては弔問者への配慮もあり首都へは2個小隊のみ、残り2個小隊は郊外での野営という条件付きで受け入れていた。

 厳重に警備された離宮であるが、その内部で怪しい人影が蠢いていた。大人一人が腹這いで進める程度の換気ダクト内を一人の男が匍匐前進で進んでいる。ダクトは離宮内の廊下に沿って配管されており、男がしばらくダクト内を進むと光が漏れてきている箇所を見つけた。通風口である。

 男は通風口のメッシュ状の蓋を慎重に外すと、そこから身を乗り出して物音を立てずに静かに廊下に着地した。

「ここまでは情報通りだが、さて。」

 男は廊下を慎重に進む。目指すは離宮の中央。外の警備とうってかわって離宮内の警備は不思議と手薄であった。

 廊下は多数の写真やパネルが飾られており、様々な展示物で埋め尽くされていた。だが、男はそれらの展示物には脇目もふらずに廊下を突き進んだ。その中の一枚の写真には男が当時搭乗していたMSの写真もあったのだが男はついに気がつくことはなかった。

 そして男はついに目的の部屋への入口に辿り着く。

 部屋へ通じる巨大な両開きの扉は金や銀の装飾が施されていた。

 重厚に仕立て上げられた扉はこの部屋の威厳をあらわしていると言っても過言ではない。しかし、この装飾が施された扉はその見た目と異なり内部にEカーボンを多用し重火器は勿論、歩兵用携帯ロケット弾や爆弾にも耐えうる防弾扉に仕上げられていた。それだけ厳重にしてでも守らないいけないモノがこの中にあるからだ。

「確かにこの扉を壊すにはMSが必要だろう。更に部屋の内部はセンサーが張り巡らせているというが……、頼むぞ。」

 男は廊下の壁面に埋め込まれた電子ロックに静かに手を添える。しばらくすると扉の電子ロックが解除され、部屋の中のセンサーも沈黙してしまった。これは男と同化しているELSが離宮の保安システムを掌握したから出来た芸当である。

 部屋の内部は強力なエアコンディショナーが絶えず稼働しており室内の温度は低温に保たれていた。すべてはこの部屋の主のための設備である。時間は深夜であったにも関わらず部屋の中央部分は僅かばかりの照明が灯されていた。男にはその光景が非常に幻想的に見えたのであった。

 男は開き放たれた扉に数回ノックをすると、部屋へと足を踏み入れる。まるで私室に入るようなリラックスしたノックであった。だが、この部屋の主は何もこたえようとしない。男は構わず部屋の中央部に静かに鎮座する主の側へと歩み寄った。そして、男は扉と同じく金や銀で装飾された蓋に手をかけると、その一部分をゆっくりとずらした。そして『数日ぶりに』この部屋の主と対面を果たした。

「……マリナ・イスマイール。遅れてしまった。すまない。」

 ここはマリナ・イスマイールの遺体が安置されている霊廟である。

 刹那は先日まではマリナの非公式ではあるが同居者であった。しかし、マリナが亡くなった今、アザディスタンとしては刹那の存在は伏しておきたい人物へと変わったのだ。そのため『明日の葬儀』への参加は許可がおりなかったのだ。それは刹那も十分納得していたが、『今夜の弔問』に関してはアザディスタンからは何も制限はなかった。それで刹那は今夜マリナとの面会することにしたのだ。

 刹那は棺の中の花々に囲まれたマリナが穏やかな表情で眠っている事に気がつくとフェルトとミレイナから聞かされた話を思い出した。

 

『刹那、息をひきとる前、最後にね、マリナさんが見えないはずの目を開けて微笑みながら私達にこう言ったの。』

『二人とも、ありがとう。って。』

 

 恐る恐る震える手をマリナの頬へと手をのばす。マリナの冷たくなったその肌に触れた瞬間、まるで全身に電気が走ったかのような強い衝撃を受けた。

 幼少の頃に自らの親をこの手で殺め、少年兵として人を殺し、惨たらしく殺された仲間の死体を乗り越え、ガンダムマイスターとなった後も、戦争根絶という目的のため陸で空で宇宙で更に多くの人間を殺め、そこでも仲間の死と別れを経験し、十分すぎるほど死体には慣れていたはずだった。

 だが、目の前の女性はどうだ。刹那自身も何が起きたのか、わからなかった。自然と自分の頬に暖かいものが伝わりはじめていたからだ。

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 翌日、マリナ・イスマイールの葬儀は厳かに執り行われる。弔問者はすべてボディチェックを受けた後での弔問となるため、霊廟のある王宮に通じる道は弔問客で溢れかえっていたが、アザディスタン王宮の兵士やオートマトン、さらには連邦軍から派遣された兵士達が統制を守り通していた。

 

 その頃、十代の少女に手を引かれた老婆が霊廟の出口から姿を現した。少女は老婆の孫で今日は付き添いで弔問に訪れていた。

「お祖母様。もの凄い人混みですね。」

 少女は霊廟の入口に列ぶ弔問者を指さして老婆に話しかけた。

「確かに凄い列だね。これは数ブロック先まで列んでいるわ。これもマリナの人徳なんだろうけど……。こんな人生で彼女も幸せだったのかしら。」

 孫娘に手を引かれながら老婆が空を見上げながら呟いた。

「ところで、お祖母様とマリナ様のご友人は今日は来られていないの? この長蛇の列に並んでいるなら大変だわ。」

「ああ、彼なら昨夜のうちにマリナと二人っきりでお別れをすませたそうよ。」

「え?」

「ウフフ。さあ、私はこの後久しぶりに会う人が居るから、王宮の外で待っていなさい。」

「えー! お祖母様、やっぱり私も付いていっちゃ駄目?」

「駄目。そういう約束でしょ。」

「はいはい。わかりました。もしかして、お祖母様の昔の彼氏だったりして? お祖父様が留守だからってお祖母様たら大胆ね。」

「馬鹿おっしゃい。私は昔からクラウス一筋だよ。」

「てへへ。ごめんなさい、シーリンお祖母様。それじゃ終わったら連絡頂戴。私も適当に観光してくるから。」

 孫娘は手を振りながら王宮の中庭へと駆けていった。

「私はイノベイターではないから携帯のスイッチは入れておくんだよ。」

「はーい。」

「まったく。誰に似たんだろうね。」

 シーリン・バフティヤールは元気に駆けていく孫娘の後ろ姿に微笑みと同時に溜息を送ると、王宮へと足を運ぶのだった。

 

 その頃、マリナ・イスマイールの遺体が安置されている霊廟ではある一組の男女がマリナと最後の別れを行っていた。男性の方は2mを遥に越える金髪の長身だ。他の弔問者より頭二つ分は飛び抜けて大きい。一方、対照的に連れの女性は160cm程度の小柄であった。

「マリナ・イスマイール、このようなかたちでの再会は大変残念だ。」

「私達がマリナさんと出会って、50年近く経ちますね。」

「我々の因縁に巻き込んで本当に済まないと思っている。だが、お前を助けるための((騎士|・・))が直そちらに行くだろう。安心しろ、俺が徹底的に鍛え直してやる。サタン共の思い通りにはさせやしない。」

 この一組の男女はしばらくマリナに二言三言、何かを話しかけると他の弔問者に席を譲り退室したのだった。

 

「少し、早く来すぎたかしら。」

 シーリン・バフティヤールは王宮の一室に足を運ぶが、待ち合わせの人物はまだ来ていない様子であった。部屋の窓側に近づくと配下の弔問者の列を見て溜息をついた。シーリンはマリナの侍女として、アザディスタンを離れた後も、マリナの良き親友として相談役として、マリナ同様アザディスタンに尽くしてきた女性だ。誰よりも先にマリナにお別れの挨拶が出来たのはそういうことだからだ。

 その時、ドアを数回ノックする音が部屋に響いた。

 シーリンは高齢とはいえ、素早く壁伝いに身を寄せるとハンドバッグの護身用のハンドガンに手をかける。

「誰? この部屋は今は使う事は出来ないわ。」

「シーリン・バフティヤール、俺だ。」

 その声を聞いた瞬間、シーリンの表情は温厚な祖母の顔に戻った。扉を開けると一人の男が入ってきた。

「シーリン・バフティヤール。」

「こんにちは、刹那・F・セイエイ。」

 刹那はシーリンを優しく抱きしめる。

「お元気そうで何よりだ。」

「クス、女性の扱いは上手になったわね。」

 これはマリナ仕込みの女性への挨拶方法だが、マリナから人を選んでやるようにきつく言われていた。

 刹那はシーリンの手を取ると、ソファへとエスコートする。

 シーリンは地球連邦議会の議員時代から中東方面特使としてマリナを支えていた。高齢となった今でも貧困国の援助等で精力的に活動するなど、ミレイナの会社との接点も少なくはなかった。

「こんな機会で貴方に会いたくはなかったけど、話とは何かしら?」

 刹那はシーリンに向き合うとまっすぐ向き合った。

「俺は……マリナを助けることが出来なかった。許せるものではないと思うが許して欲しい。」

 刹那はシーリンに対して深々と頭を下げる。突然の刹那の謝罪にシーリンは困惑するのだが

「貴方は何を馬鹿なことを言っているの。そんな事はないわ。」

「だが、事実だ。俺はマリナに助けられ、こうして生き延びることが出来た。」

「マリナは自分の運命を全うしたの! 貴方に責任はないのよ。」

「だが」

「刹那・F・セイエイ! それ以上続けるのなら私も怒るわ。貴方はマリナの気持ちを考えたことがあって!」

 一向に話の見えない刹那に対して、ついにシーリンが声を上げる。刹那とサタン達の戦闘記録は連邦政府の極一部しかアクセスできないからだ。

 それでもマリナの魂が突如消えたことについては報告されていない。

「刹那が地球に帰還してマリナと一緒に住むようになって、どれだけ彼女が幸せになったのか貴方にはわからないの! 貴方が地球から遠く離れたELSの母星で対話を行っていた50年、彼女も貴方と同様に戦っていたの。」

「それは理解している。」

「彼女は一個人の幸せを放棄して一生をアザディスタンの復興に捧げたわ。苦しい道を自ら歩んできたのは彼女も一緒。」

 事実マリナは女性として一人の母親ではなく国民の母親になることを選んだため生涯独身を貫き通した程だ。

「そして、多くの協力や賛同を得て、やっとアザディスタンが復興したの。その代償に彼女が失ったものも決して少なくなかった。復興のため彼女は個人の幸せを全て注ぎ込んだのよ。だけど、神様はちゃんと彼女を見ていたわ。最後の最後で彼女に素晴らしい幸せを与えてくれた。」

 シーリンは刹那の顔をキッと睨むが、すぐに優しい顔になる。

「それは貴方よ。刹那・F・セイエイ。神様は貴方を彼女の元に帰してくれた。だから、もうそんな事は言わないで頂戴。」

 流石の刹那も何も言い返せない。

「だけど、ちょっと意地悪な神様ね。50年なんて言わずに5年でマリナの元に帰してくれても良いのに。」

「重ね重ねすまない。許してくれ」

「……もう!貴方は。私では駄目ね。ほんと、マリナに怒って貰って欲しいわ。」

 刹那と話をすると大抵こうだ。話が食い違って口論なるか、一方的にシーリンに怒られるパターンになる。

 そしてマリナが仲裁という介入を行い、シーリンはその度にマリナと刹那の夫婦漫才を見せつけられていたのだった。

 それを思いだしたのだろうか、シーリンは目尻にたまった涙をハンケチで拭い去る。

 

「マリナの血筋について?」

 刹那は先のサタン達との戦闘でサタン・コマンダーが口にしていた『退魔の巫女』についてシーリンに尋ねる必要があった。だが、シーリンに戦闘の様子を話すわけにはいかないし、それこそ『マリナの魂が謎の空間に吸い込まれました』とは口が裂けても言えなかった。そのためマリナの周辺から質問する。

「マリナは皇女に選ばれる前は普通の家庭で育ったと聞いていたが」

「えぇ、確かにそうよ。彼女は元々は音楽が好きだったから大学でも音楽を専攻していたわ。」

「だが、王制復活に伴い王族の血を引く彼女は皇女に選ばれた。」

「何が言いたいの、刹那?」

 シーリンは怪訝な顔をする。

「現在のアザディスタン国王はマリナの血筋とは違う。」

「……確かに違うわ。今の国王は所謂分家ね。マリナは姉妹が居ないからマリナの家系は途絶えてしまったわ。」

シーリンは刹那の顔を見るとため息をつく。

「?」

「何でもないわ。続けて。」

「マリナの血筋について何か他に話はないのか? 例えば特別な血筋だったとか……。」

 その瞬間、刹那にはシーリンのメガネが一瞬光ったように見えた。

「……例えばどんな?」

 何かシーリンの表情が硬い。刹那も感じ取り慎重に言葉を選びながら話をする。

「例えば、王族の血筋というがマリナは女性だ。女性が政治に関わる事が許されなかったアザディスタンで何故マリナが皇女として役目を果たさないといけなかったのか。困窮した経済、保守派と改革派の対立、彼女が背負うには重すぎる責務だった。他にも理由があるのではないかと思っただけだ。」

「刹那、マリナを買い被りすぎよ。彼女は王族の血筋だっただけ。他には理由はないわ。」

「……そうか。」

「そうよ。」

 シーリンは年老いたとは思えない眼光で刹那を睨む。だが、以外にも刹那の方から視線を外した。

 刹那はシーリンの側に行き、一片のメモを手渡す。

「これは?」

「俺の連絡先だ。しばらくアザディスタンを離れないといけなくなった。何かあったらここに連絡して欲しい。」

「……わかったわ。」

「シーリン・バフティヤール、今日は久しぶりに会えて嬉しかった。」

「私もよ。マリナと三人だったらもっと良かったけど。」

 刹那は再びシーリンを優しく抱きしめると部屋の出口に向かう。しかし、すぐにシーリンに呼び止めらた。

「まって」

「何だ?」

「刹那、一つだけ忘れないでおいて欲しいことがあるの。」

「?」

「それは、マリナが独身を貫き通したこと。彼女は確かに女性としての幸せよりも国の幸せを選んだ。」

「だけど、他にも理由があったのよ。」

「……理解しているつもりだ。」

 刹那は力なく言い残すと退室していった。シーリンはそんな刹那の後ろ姿を見て悲しい気持ちになる。

「マリナが選んだこととはいえ、どうして神はマリナの血を残すことを許されなかったのだろうか。マリナと刹那ならどんな試練でも乗り越えられたかもしれないのに……。」

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 朝靄の中、刹那はスメラギ・李・ノリエガに会うため、とある施設に向かっていた。そこはドーバー海峡が良く見える丘の上に建っている。

 刹那は乗ってきたバイクを駐輪すると施設の正面玄関ではなく、面会者用の入り口から施設に入った。

 面会の手続きを済ませるとスメラギの部屋に向かう。そう、ここはスメラギが入院している介護施設である。

「リーサ・クジョウ……この部屋か。」

 ソレスタルビーイング解散後に再び元の姓であるリーサ・クジョウに戻ったスメラギであったが、戦後ソレスタルビーイングでの評価や(政府の宥和政策の一環でもあったが)数度の大戦を阻止した功績を称えられ外宇宙航行艦にまでその名が付けられた。

 現在はこの介護施設に入所しており隠居中である。前にも説明したがそれは表向きで地球連邦軍のオブザーバー兼((解散した|・・・・))ソレスタルビーイングとの仲介役も務めている。

 スメラギの病室は個室ではなく相部屋だった。刹那は病室にしては随分厚い扉を数回ノックする。

「どうぞ。」

 スメラギとは違う女性の声が中から聞こえてきた。刹那は扉を開けると病室に入った。

「おはよう、刹那・F・セイエイ。やっと礼儀を覚えたようだな。」

 スメラギのパートナーである女性がベッドから上体を起こすと刹那に挨拶を交わした。

「おはよう、カティ・マネキン。ノックを忘れて殴られるのは誰でも嫌なものだ。」

 スメラギ・李・ノリエガの好敵手であり、良き理解者でもある地球連邦軍元准将カティ・マネキンである。現在は二人仲良く示し合わせたように入所していた。

 刹那が地球に帰還した時に初めてスメラギの病室を見舞いに来たとき、ノックをせずに病室に入ったためカティに怒られたものだ。シーリン同様、刹那の正体を知る数少ない人物である。

「まぁ、私もクジョウも慣れたがな。それよりも、マリナ皇女が亡くなれて……お前も辛かっただろう。」

「心配させてすまない……それよりもスメラギ・李・ノリエガは?」

 刹那はスメラギのベッドが空になっている事に気がつく。

「先ほどまで居たんだがな。クジョウは『朝の散歩』だろう。悪いが探してくれないか?」

「彼女はまた抜け出したのか。」

 スメラギは朝食が終わると度々病室を抜け出してはカティを困らせていた。逃亡には車椅子を使っているのだが、ミレイナ製のGN型番で始まる車椅子である。機動性には定評があった。

 しかし、刹那も慣れたものでスメラギの逃亡先はわかっている。海がよく見える屋上だ。

「やはり、ここに居たのか。おはよう、スメラギ・李・ノリエガ。」

「おはよう、刹那。遅かったわね。この前の戦闘以来ね。病室の窓から貴方がバイクで来るのを見つけたから、ここに来たのよ。」

 刹那はスメラギの車椅子を押しながら屋上を回ることにする。

「フェルトから簡単な話は聞いているわ。クアンタとマリナさんの件で私に会いに来たのね?」

「それもあるが、スメラギ・李・ノリエガの顔も見たかった。」

「あら、お上手。マリナさんの教育の賜ね。こんなシワシワのお婆さんの顔が見たかったなんて、お世辞でも嬉しいわ。」

 刹那は屋上に設けられたベンチに座りスメラギと相対すると、マリナの診察からサタン・コマンダーとの戦闘、黄金の機動兵器『ディスティニー』との遭遇まで、一通り報告した。

「クアンタの状態だがGNドライヴが停止した状態だ。ミレイナの言葉によると『凍結された』ようだと言っていた。」

「私もフェルトから聞いたときは信じられなかったけど、刹那の今の話を聞いたらGNドライヴの異常停止も何だか信じられる話ね。悪魔が出てきてマリナさんを狙うなんて、宇宙人が現れるSFの世界から一気におとぎ話の世界へ吹っ飛ばされた感じよ。」

 刹那はスメラギの言葉に内心苦笑した。対話の道中で様々な世界や文明を見てきた者としては、自分の中では『それが日常』になりつつあったからだ。

「クアンタのGNドライヴは度重なる改良で互換性が無くなっている。もっとも載せ替えようにもツインドライヴ専用のGNドライヴも簡単には調達できないがな」

 近年GNドライヴが民間企業でも製造できるようになってはいたが、擬似ではない純正GNドライヴは連邦軍でも極わずかしか配備されていない状況だ。更に純正ツインドライヴ対応となると入手は絶望的だ。

「それと、マリナさんが『居なくなってしまった』この状況で、悪魔達がもう地球には来ないとは誰も保証できないわ。」

「悪魔達と戦えるMS、パイロットは極わずかだろう。いや、現在の地球連邦軍には居ないかもしれない。」

「……刹那は悪魔達が言っていたマリナさんの加護を信じるの?」

「信じるも何もマリナに助けられていなかったら俺は悪魔に殺されていた。」

「そうか、マリナさんの加護を受けられないこの状況ではお先真っ暗ね。」

 スメラギは溜息をつくと空を見上げる。

「マリナさんはこの宇宙のどこかに居るのかしらね。」

「それで『退魔の巫女』についてだけど何かわかった?」

「ヴェーダにも該当する情報は見つからなかった」

「そうなると古い民間伝承とか土着信仰かもしれないわね。」

 刹那は先日シーリン・バフティヤールに会った際に何かを隠している雰囲気を掴んではいたがスメラギには報告しなかった。刹那はいずれシーリンから話してくれるだろうと信じていたからだ。

「俺達を助けてくれた黄金の機動兵器ディスティニーだが、こちらについてはわかったことがある。」

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 そこは、とある建物の屋上。

 郊外が見渡せる屋上でひとりの少女が空を見上げながら嘆いていた。

(やはり、刹那は助けに行くのでしょうか。だが彼が生還できる可能性は低い。)

 少女は空を見上げながら、死地に赴く剣士を憂う。

(それとも二人はあそこで運命を受け入れた方が良かったのでしょうか。)

(いいえ、それは駄目。死んでは何もならない。あそこで死んでいたら彼らの運命は終わっていた。)

 少女は空から地表に視線を落とす。眼下には町並みが広がっている。

(生きているからまだ運命は続けられる。でも、彼らのこれから先の運命は予測が出来ない。……それは私も同じ……。)

 少女は町並みを見渡しながら考える。

(私が420年前、初めて地球を訪れた時から運命が変わり始めていたのかもしれない。)

 

「姫様〜!」

 少女は声のする方向に振り返る。スーツの女性が屋上の出入り口から少女の方に駆け寄ってくる。

「姫様、お待たせいたしました。会議も終わりましたので、デブリーフィングを始めたいと思います。」

「はい、わかりました。イエッ」

 スーツの女性が少女の唇に人差し指を押し当てる。

「『姫様』、私は『今は』ソーニャ・カーリンです。」

「ふにゃ〜ごめんなさい。お姉様。」

「姫!」

「ひ〜、ごめなんさい。カーリン部長。」

 女性は少女を建物の入り口に促す。

(私の本来の運命では、2185年に目覚め、ソーニャ・カーリン『大尉』と出会うはずだった。)

(だが、私は100年近く早く目覚め『彼』と出会ってしまう。2188年に『彼』の同志の探査船で一緒に宇宙に上がる。)

 少女は傍らを歩くスーツの女性を見る。

(そして、今、私の側にいるソーニャ・カーリン部長は『私の姉』だ。)

「姫様? 私の顔に何か?」

「カーリン部長はいつ見ても綺麗だな、って思って見ていました。」

「あら、社長みたいな事を言うんですね。」

(うー、あの顔でそんな事言うのは、ムッツリスケベの証拠です。)

「ところで、姫様、一つお伺いしても良いかしら?」

「はい!? 何でしょう?」

「どうしてディスティニーを『金の剣』としてヴェーダに登録させたのかな〜って。」

「昔、地球でお世話になった時、私のお世話をしてくれた方々がディスティニーを見てこの名前を付けました。」

「そうだったの。私はあの時のコードネームだと思っていたわ。」

 ――金の剣。それは星団歴2998年惑星ジュノーでのコーラス王朝とハグーダ帝国の最終戦争において、『銀の剣』と共にディスティニーが投入された際のコードネームだった。

「考えることは、皆同じなのかもしれませんね。」

「クス、案外そうかもね。」

 少女とスーツの女性は社長室の扉を叩く。

「ログナー社長、姫様をお連れしました。」

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「ソレスタルビーイング『所属機』!? そんな戦力は私も知らないわよ。」

 場面は再びスメラギの介護施設。スメラギは刹那からの方向に思わず大きな声を出してしまった。

「ああ。ディスティニーはヴェーダにソレスタルビーイング所属機として登録されていた。」

「謎の機体? いえ、そんな機体があればヴェーダを掌握しているティエリアやリジェネが真っ先に報告してくるわ。」

 スメラギはヴェーダに計画されていなかった『トリニティ』による武力介入を思い出させたが、刹那の説明で更に驚くべき事実を知ることになる。

「ミレイナの報告では『これは巧妙に仕組まれた、ある意味システムトラップです。トランザムシステムとツインドライヴシステムを私達に伝えた、あのシステムトラップにそっくりです。』ということらしい。」

「まさか、イオリア・シュヘンベルグ!」

「ディスティニーはイオリアが絡んでいる。ディスティニーを運用する組織はヴェーダに何らかの方法で不正アクセスし、ディスティニーを地球連邦所属機、コールサイン「ゴールド・ソード、金の剣」として不正登録していた。しかし、これがイオリアが仕掛けたシステムトラップのトリガーになっていた。」

「どういうこと?」

「ヴェーダには既に『ソレスタルビーイング所属機:コールサイン ゴールド・ソード、金の剣』が登録されていたからだ。」

「刹那、ちょっと待って。地球連邦軍のMSが機体を照会したときは『地球連邦軍所属機』として照会されたという記録があるわ。」

 何度も言うようだがスメラギは介護施設に入居しているのは表向きである。

「やはり、知っていたのか。確かに『ラ・トゥール』から発進したMSがディスティニーと遭遇していることは確認済だ。」

「でも、そうなるとディスティニーの情報はどうなるの? 二つの情報が……、まさか!」

「そうだ。ヴェーダはディスティニーの情報について上書き禁止、その代わり重複登録するようになっていた。」

「イオリアの仕掛けそうなトラップから推理すると、正しい情報へのアクセスは純正GNドライヴを認証キーにしたデータアクセス、というわけね。それ以外のアクセス経路は不正情報を返すという仕掛けね。だけど、クアンタのGNドライヴは……。」

「フェルトとミレイナによると、クアンタのGNドライヴは凍結状態らしいが、6号機・7号機ともに『問い合わせ』すると返信するそうだ。それにディスティニーについての情報へのアクセス手段だが、GNドライヴだけではなく、もう一つの認証キーが必要だった。」

 刹那は携帯用端末をスメラギに手渡すと先日の戦闘映像を見せた。クアンタのメインカメラの映像以外にもELSが収集した情報も記録されていた。刹那は携帯用端末を操作してシーンを飛ばす。

「このシーンからだ。」

 スメラギに見せたのはクアンタが二機の機動兵器に曳航されていくシーンであった。これはクアンタのメインカメラの映像だけではなく、機体各部のカメラ及び各種センサーによる分析情報も合成され俯瞰的な映像となっていた。

「次にこの二機の機動兵器のスキャン映像だ。」

「両脚に高熱源体があるわね。これは動力源? もしかしてツイン・エンジン?」

「ミレイナも二機一組のエンジンという見解を示していた。そして、このエンジンから独特のノイズが発生している事もわかった。更にディスティニーと、もう一機の機動兵器では発せられるノイズはそれぞれ違う。」

「ノイズ? 同じエンジンが搭載されているかわからないけど、機体特性が変わればチューニングも異なるからそれが原因ではないの?」

「確かにスメラギの言うとおりだ。だが、これはミレイナに言わせると機械は年月が経てば『個性』が出てくるそうだ。」

 機械というのは工場で大量生産された量産品であったとしても使用者が異なれば経年変化は異なる。それはエンジンも同じであった。今回、クアンタがキャッチしたノイズとはまさに経年変化から発生したノイズであった。

「このノイズを解析するために、偶然フェルトがクアンタのコクピットからヴェーダにアクセスしたのが突破口となった。」

それは、偶然の発見だった。秘密ドッグに搬送されたクアンタだったが、コックピット内部で戦闘記録や収集したデータを解析していたフェルトが、クアンタに搭載されていたヴェーダのターミナルユニットを経由して調査を行っていたところ、突如クアンタのコックピットにディスティニーの情報が表示されはじめたのだ。

「そのデータのコピーがこれだ。」

 再び携帯用端末を操作して『一番最初に』ヴェーダに登録されたディスティニーの情報を表示させた。

「情報の登録者は、イオリア・シュヘンベルグ。」

 スメラギも半ば驚き疲れていた。イオリア自らがディスティニーを調査して登録したことになるのだ。

「まって! そうなるとディスティニーは二百年以上前の機体になるわ。」

「……ミレイナだけではなくフェルトも何度もデータを検証した。だが、このデータが偽造されたという証拠を見つける事はできなかった。ディスティニーは二百年以上前から存在している可能性が高い。」

「刹那、ミレイナやフェルトの反応は?」

「反応か……。『悔しいですが、ディスティニーはパパ達が作ったガンダム以上です……。』だそうだ。」

「そんな!?」

「彼女は客観的に物事を見る事が出来る人間だ。それにミレイナはすでに自分なりにディスティニーの分析を終えての発言だろう。ディスティニーのデータを見てみればスメラギも同じ事を言うはずだ。」

 ミレイナは両親が遺した最高傑作と言えるELSダブルオークアンタを遙かに凌駕するディスティニーの前に自分の非力さを思い知ったのだった。

 だが、ミレイナは知らない。人間が作った対話のためのモビルスーツ・ガンダムと、神様が一人の少女にせがまれ、神様本人も知らず知らずに強力に作り上げてしまった黄金の巨人・ディスティニーを比べること自体が間違いであることを。

 スメラギはディスティニーの関する情報に目を通した。ディスティニーに関する情報は、ディスティニーのパイロットからのヒアリングと、イオリアの独自調査報告という内容だった。

 

 西暦2090年、イオリアはバルト海の船旅の途中、『必然』的に海底に鎮座していた黄金に輝く巨大人型ロボットを発見する。

 翌年イオリアとその友人は私財を投じ、巨大ロボットをサルベージしイオリアの隠れ家のドッグに回航することになる。

 巨大ロボットは海の底に沈んでいたはずであったが、その表面には一切のフジツボや貝類が付着していないどころか錆等も発見されなかった。

 イオリアと親友であるE・A・レイが本格的な調査を開始しようとした矢先、巨大ロボットの頭部から一人の少女が姿を現したのだ。

「ディスティニーの頭部に記されていた情報? これは地球の文字!?」

 ディスティニーの細部には漢字・アルファベット・数字など地球で使われている文字が記されていたのだ。だが、イオリアとE・A・レイはディスティニーは地球外で作られたことを直感する。

「少女の名前はラキシス、この巨大ロボット・ディスティニーのパイロットね!? 一見すると可愛い女の子にしか見えないけど……。」

 携帯情報端末に映し出された報告書には栗色の髪の毛をしたショートカットの少女がイオリアとE・A・レイに囲まれた写真が表示されていた。

「巨大ロボットは、モーターヘッド、ナイトオブゴールド・ラキシス。別名をディスティニー・ミラージュ。2988年惑星デルタ・ベルンでロールアウトされる。設計者は天照帝(アマテラスのミカド)、副座式だがラキシス単体でも行動可能?」

「追撃神? ミラージュ? 幻想? 惑星デルタ・ベルンというのは刹那の報告にあった、宇宙空間にある惑星? また天照帝と記されているが、だからと言ってこの人物が地球出身の人間とは考えられない……。」

 スメラギは次にイオリアがラキシスとの会話から得られた情報に目を細める。

「1945年、ラキシスはディスティニーと共に地球を訪れる。当時、第二次世界大戦に枢軸国側に参戦後、再び宇宙に戻るその時までナイトオブゴールドと共にバルト海で眠りについた。そして、2090年イオリアと出会うために自ら目覚めた……。」

「恐らくイオリアが必然と言っていたのはこのためだろう。」

 次にディスティニーの簡単ではあったが性能が記されていた。

「全高およそ17m、MSと同じ大きさだが重量は144t。モビルアーマー並の重さね。でも、これでは機動力に問題があるのでは?」

「それは問題ない。ディスティニーの出力は推定3兆3千億馬力以上だ。」

「え? えー! 本当だわ。桁間違いではないの? 一、十、百、千、万……」

 スメラギは何度も携帯情報端末のモニターに映し出された数字の桁を確かめるが紛う事なき数値だった。

「ディスティニーは、装備が白兵戦、それも攻撃に特化している。主力兵装はスパッドと言われる光学サーベル二本、スパイドと呼ばれる実剣が二本だけだ。スバイドだがディスティニーにより受け渡された時にELS達が内部構造を解析してくれた。いずれも地球上に該当する金属や化合物は見当たらなかった。」

 ここでスメラギはディスティニーの兵装に疑問を感じる。

「ディスティニーにはビームライフルのような射撃武器は見あたらないわ。そしてリジェネの報告にもあった巨大な大砲、バスターランチャー。((宇宙船|アンノウン))を蒸発させるほどの破壊力を持っているようだけど、だからと言って砲撃機とは言えないわね。この機体は格闘戦に特化していると断言できるわ。砲撃や遠距離攻撃は別の機体が担う……。」

「もう一機の可変機が恐らくそうだろう。」

「……恐らくディスティニーは直接戦闘に参加する機体ではないわ。恐らく『飾りね』。」

「どいうことだ?」

「後で話すわ。それにしても、イレーザーエンジン、デュアルツイスター・システムか。ディスティニーのエンジンは半永久機関と記されているけど、イオリアも驚いたでしょうね。」

「イオリアは人類の革新と来るべき対話に備えてGNドライヴの開発を選んだ。」

「イレーザーエンジンを開発していたら51年前のELS襲来時に人類は全滅していたかもね。」

「だが、イレーザーエンジンは脅威だ。ラ・トゥールから発進したMS小隊を追い越した機動性だけではなく、低軌道ステーションの観測カメラにディスティニーと思われる機体が地上から飛び立ってくる様子が撮影されていた。」

「……刹那、イノベイターでもディスティニーの操縦は出来そうかしら?」

「残念ながら厳しいだろう。」

 イレーザーエンジンの出力は暴力的だ。TRANS-AM以上のGに耐えるとなるとイノベイターでも相当な訓練を積む必要があると刹那は判断したが、それでもディスティニーのパイロットに太刀打ちできるかは別の問題であった。

「刹那なら?」

「ELSの力を借りれば操縦は出来るだろうが、ディスティニーのパイロットは俺より強い。」

 刹那はスメラギの手から携帯情報端末を取ると、クアンタのメインカメラ映像に切り替えた。肩から胸をGNソードVで斬られたサタン・コマンダーが斧を振り上げて最後の反撃を試みる場面だった。

「俺が回避行動に移るよりもはやく、ディスティニーのスパイドがサタンを刺し貫いた。」

「……確かにそうね。」

「ディスティニーとそのパイロットは、俺とELSダブルオークアンタを遥に凌駕しているといっても過言ではない。」

「ミレイナが『完敗』したという理由がわかったわ。イオリア自らの情報登録、パイロット混みでガンダム以上の性能とは……頭が痛いわね。」

「ラキシスが『自殺行為』だと言っていた理由がこれだろう。」

 ディスティニーの情報には、ラキシスからヒアリングした惑星デルタ・ベルンをはじめ、ジョーカー宇宙やジョーカー太陽星団についての情報も記されていた。

 ディスティニーはジョーカー太陽星団ではモーターヘッドという戦闘兵器に属している事がわかった。

 刹那もスメラギもマリナが飛ばされた宇宙は、ディスティニーが製造されたジョーカー宇宙、それもジョーカー太陽星団だと睨んでいた。そこではディスティニー以外のモーターヘッドもいるはずだ。万が一クアンタとモーターヘッドが対峙した場合、最悪のシナリオも考えられる。

 GNドライヴ6号・7号が停止し、ELSのみの動力ではクアンタがモーターヘッド相手に太刀打ちできないのは誰の目にも明らかだった。いや、そもそもクアンタが完全な状態であったとしてもモーターヘッドに勝てる要素は少ない。

 モーターヘッドを操る、騎士とファティマについてもイオリアの情報には記されていたが、スメラギの常識を超えていた。

 騎士とファティマが操るモーターヘッドについてイオリアも技術者として驚異を感じていた。イオリアの情報には単独でディスティニーを動かすラキシスについて、彼女が騎士なのかファティマなのか明記されていなかった。記されていない理由に『ある単語』を使いたくはなかったとだけ記されていたが。

「それで刹那はどうするつもり?」

「うん?」

「マリナさんは……残酷な言い方だけど地球では故人。魂が飛ばされたのが本当だとしても、そんな危険な世界まで追いかけてもマリナさんと再会出来ないかもしれない。」

「スメラギ・李・ノリエガ。特別にどうということはない。ELSとの対話の道中、俺とティエリアとクアンタは強大な力の前に何度も倒され、その度に這い上がって、そして未来を切り開いて来た。だからこうして地球に帰って来ることが出来た。今回も何とかなると俺は信じている。」

「刹那!?」

 刹那の発言にスメラギは目を丸くする。刹那は口を開くとスメラギにこう告げた。

-9ページ-

「司令、私は刹那さんをジョーカー太陽星団に送り込むのは反対です。今回ばかりは刹那さんでも生きて帰ってはこれません!」

「姫、今の私は社長です」

「あ、ごめんなさい。」

 ここでもミレイナと同じく刹那を心配する女性が居た。

 旧AEU領、西ヨーロッパの都市にある新興企業の社長室。そこでは、ディスティニーのパイロットであるラキシス、この企業の社長であるログナー、そして秘書ではないが部長のソーニャ・カーリンが先日のサタン襲来時のデブリーフィングを行っていた。

 そう、彼らこそが刹那達の戦いをモニターし、ヴェーダをクラッキングしてディスティニーの偽情報を登録した集団である。

 今、社長室ではジョーカー太陽星団に魂が飛ばされたマリナ・イスマイールを救出するために、刹那を派遣するかどうかで、ラキシスとログナーが対立していたのだ。当然、ラキシスは派遣には反対していたが、意外にもログナーは刹那の派遣には賛成していたからだ。

「社長はどうして刹那さんが生還出来ると思っているんですか? モーターヘッドの恐ろしさは社長もわかっているはず。」

「確かに姫様の言うとおり刹那とGNT-0000 ダブルオークアンタでは我がミラージュどころか、星団3大モードヘッドの足下にも及びますまい。」

「だったら」

 

「俺は(あの馬鹿は)ガンダムマイスターであると同時に、今はガンダムだ」

 スメラギとラキシスに、刹那とログナーが一斉に答えた。

(刹那、逞しくなったのか、昔に戻ったのか……。)

(司令までソープ様みたいな、訳わからない事を言わないでください!)

-10ページ-

 ログナーの社長室。

「カーリン、刹那とクアンタを倒すのに最良と思われるモータヘッドをあげてくれ。」

「はい、社長。L.E.D.とインフェルノ・ナパームの使用を推奨します。」

「え!」

 ログナーの問いにカーリンは即答する。その答えにラキシスは驚いた。

 L.E.D.、型式番号ミラージュB、L.E.D.ミラージュとは天照帝が開発したジョーカー星団最強のモーターヘッドである。完全な殺戮マシーンであり騎士とファティマは操縦者ではなく安全装置でしかないという。わずか15騎のL.E.D.ミラージュで惑星一つを制圧した伝説をもつ。また、インフェルノ・ナパームとはレッドミラージュが使用する火炎放射器だ。射程150mの火炎放射能力を有しその炎はモータヘッドだけではなく霊魂などの霊的な存在も焼き尽くすと言われている。

「雷丸では駄目なのか?」

「はい。GNT-0000 ダブルオークアンタであればモーターヘッドの機種は問いません。ホーンドミラージュでも撃破可能です。しかし、姫様とクリサリス公が入手したサタン・コマンダーとの戦闘記録を解析した 結果、GNT-0000[E]・ELSダブルオークアンタを敵対した場合、L.E.D.ミラージュのインフェルノ・ナパームの使用を推薦します。」

「イエッタ姉様……どうして。」

「姫様、ジョーカーのモーターヘッドは『モーターヘッド』戦を考慮して設計されています。モーターヘッドより劣るモビルスーツ相手では問題ないでしょう。ですがL.E.D.ミラージュはモーターヘッド戦は所謂『おまけ』。本来の目的は姫様のご存じの通りです。それに姫様、今の私はソーニャ・カーリンです。」

「姉、じゃなかった、つまり、カーリン営業部長はELSダブルオークアンタはモビルスーツではないと?」

「ええ。能力に開きがありますが、GNT-0000[E]ELSダブルオークアンタは姫様のディスティニーに近い存在だと私は解析しました。」

 ラキシスはその一言に衝撃を受けた。

 ディスティニーが躊躇せずELSダブルオークアンタに実剣を渡したのは何かを感じたのではないかと思ったからだ。

「それだけではない。ELSダブルオークアンタ、えぇーい、面倒くさいからクアンタだ。刹那もクアンタもELSと融合している。モーターヘッドと接触した場合、ELSがモーターヘッドを取り込む恐れがある。最悪、騎士とファティマ毎な。」

 その一言で室内が静まりかえった。モーターヘッドの擬態。擬態した瞬間、ELS達はその情報を共有する。もし、モーターヘッドが取り込まれ、大量のELSモーターヘッドがジョーカーに出現したら……。取り込まれたのがL.E.D.なら、あるいは。

「だが、その可能性は低いだろう。刹那がジョーカー太陽星団相手に積極的に喧嘩を売る理由がない。」

 確かにその通りである。ELSとの対話の道中、刹那達から攻撃を仕掛けたことは一度もなかったのだ。

「ですが、社長。だからと言って刹那とELSダブルオークアンタがモーターヘッド相手に生き残れる保証にはなりません。」

 ラキシスは食い下がる。

「確かに姫様の仰るとおり、刹那さんとELSダブルオークアンタはマリナさんの加護を受けていなければサタン・コマンダーに殺されていたでしょう。サタンに殺された者は魂は永遠に魔界を彷徨うとも言います。社長と違い、ELSと融合した刹那さんでも復活は出来ないかもしれません。」

「マリナ皇女の加護がなければクアンタではサタン・コマンダーを倒すのは不可能だったでしょう。」

 刹那達は知らないことだが、サタン・コマンダーを相手に出来るのは、ジョーカー太陽星団でも僅かしかいない。その内の一人が、今ここにいるログナー社長であった。

 しばらくの沈黙の後、ログナーが切り出した。

「姫様の刹那を思う気持ち、ログナー確かに理解しました。」

 以外にもここでログナーがラキシスに頭を下げる。

「ログナー社長! 考えを改めてくれるんですね!?」

「姫様、それではこうしましょう。ミレイナ『博士』と刹那は近々我が社を訪れる予定です。」

「はい、お二人とも来週の創立記念パーティーに招待しています。」

「ですが、姫、彼らの意志を尊重することも大事です。パーティーの時に、私が刹那の実力を試して彼を説得してみましょう。それから彼らに自分たちが ジョーカー太陽星団で通用できるのか判断させてはどうですか? つまり、ちょっとだけ騎士戦を体験をしてもらい、考えを改めて貰うのです。」

「(騎士戦の体験という部分が若干ひっかかりますが……)わかりました。その方法でお願いします。」

 ラキシスもログナーの提案を受け入れる事にした。今度はラキシスがログナーに軽く頭を下げる。

「姫、そんなことをされては陛下に怒られます。」

 だが、言葉と裏腹にログナーの口元が若干緩んでいたことを見逃すカーリンではない。

(あれは絶対何かを企んでいるわ。刹那さん、ラキシスごめんね、ごめんね、うちのマスターを許してね。)

 心の中で必死に謝るカーリンだった。

-11ページ-

 ラキシスは退室しており、社長室にはログナーとカーリンの二人だけであった。

「当面の問題は、刹那がマリナを連れ戻すまでの間、サタン共と戦う組織をどう作るかだな。」

 ログナーはやはり刹那をジョーカー太陽星団に派遣するつもりだった。

「はい、マリナさんが不在ですので、いつサタンの侵攻があるかわかりません。それにラキシスもいます。」

「イノベイターでもサタン相手に完敗だった。イノベイターでも騎士の代わりにならないか……。」

「マスターその比較は間違いです。そもそも外宇宙での異種との対話のために人類が進化したイノベイターと、戦闘を目的に作られた騎士ではスタートラインが違います。」

「……地球側でサタンと戦える人材のリストアップを続けてくれ。」

「はい、承知いたしました。マスターお聞きしても良いですか?」

「なんだ?」

「マスターはクアンタをどう評価していますか?」

「……化け物だな。」

「え?」

「進化の止まらない化け物だ。」

「それは、どういう意味ですか?」

「そのまんまの意味だ。モーターヘッドはジョーカー太陽星団では確かに強力だ。だが、ナ・イ・ンも言っていたがそれは現在のジョーカー太陽星団での話だ。 AD世紀のマシンメサイアと騎士に比べれば劣る。それにジョーカーはサタン共と同じく進化の袋小路に突入し、緩やかに退化の道を歩み始めている。」

 事実、最強のモーターヘッドであったが彼らの歴史、星団歴4000年前後から寿命から次々と不稼働になっていく。また、騎士の血も薄まり騎士の弱体化や、ファティマも寿命を迎え始めていた。反面、刹那やELSダブルオークアンタには寿命という言葉がない。だが、それでも現在の刹那とELSダブルオークアンタには優位性はあまり見られないのだが……。

「ジョーカー太陽星団出発までに、どこまでELSダブルオークアンタを改良できるかが鍵ですね。」

「最悪、現地改良も視野にいれないとな。」

「それでは、マスターのミレイナ・ヴァスティ『博士』の評価は?」

「……そうだな。」

 ログナーはカーリンに4本の指を見せたが、最終的に5本全ての指を見せる。

「それは……シグナル・ボーダー5本ということですね?」

 シグナル・ボーダーとはジョーカー太陽星団で技術者が身分を示すための飾り紐である。

 1本線は大学教授等の博士、医師、2本線で大学学長等、3本で医師や博士などの複数の技能を持つ技術者に与えられる。4本線でモーターヘッドやファティマのマイスター、5本線でモーターヘッドやファティマの制作者であ るマイトにあたる。つまり、ログナーの評価ではミレイナは5本線のマイトにあたる。

「60歳を過ぎたいえ、地球連邦軍の技術者で彼女に匹敵する人材はそうそう居ない。だいたい、普通の技術者がELSダブルオークアンタの整備なんて出来るわけないだろう。あんな化け物を平気でメンテナンスや改良出来るのは、ミレイナ博士と、うちの陛下ぐらいだ。」

「確かにソープ様がクアンタを見たら悶絶しそうですね。私のお父様も生きていたら、刹那さんも危ないです。」

「そうだろう?」

 カーリンもサラッと凄いことを言ってのける。

「それに彼女にイレーザーエンジンなんて見せてみろ。嬉々として解析・改良を始めるぞ。」

「……はい? なるほど、承知いたしました。」

 カーリンはニッコリとログナーに微笑む。つまり、そう言うことだ。

「所でラキシスには、話をしなくても良いのですか?」

「何の話だ?」

「お惚けにならないで下さい。私達が地球に居る理由です。」

-12ページ-

「ここまでのお話しで、何か質問はございませんか?」

 舞台は再びジョーカー太陽星団に戻る。

 トレミーの艦内ではミレイナから地球での映像と資料をもとにラキシスに説明を受けていたが、丁度一区切りがついた所であった。しかし、ミレイナは問いかけたものの、ラキシスはティーカップを持ったままフリーズしていた。

「あの〜ラキシスさん、私の説明、下手でした?」

 ミレイナがラキシスの覗き込むと我に返ったのか、ラキシスは慌ててしまいティーカップを床に落としてしまった。幸いにもティーカップが割れる事はなかったが、ラキシスはバツが悪かった。

「ミレイナさん、ご、ごめんなさい。私、ちょっとだけ、ぼぉ〜っとしていました!?」

「……まったくもって荒唐無稽なお話しですよね。」

 溜息まじりにミレイナとしては、まったく要領の得ない話を延々と聞かされるラキシスに同情していた。

 

 ラキシスの提案で、話の続きは後日と言う事になった。ラキシスは付き添いのミラージュ騎士と共に空中宮殿へ帰っていったのだが、帰り際にラキシスの言葉がミレイナは気になっていた。

「ミレイナさん、このお話しを誰かになさいましたか?」

 勿論、首を横に振るとラキシスもにっこり微笑んだのだが、その笑顔はミレイナにとって背筋が凍るほどの衝撃だった。

「ELSダブルオークアンタが居てくれて助かったですぅ。」

 ミレイナはラキシスが今日話した内容の理解よりも自分たちへの信用の方が問題と考えていた。万が一、この世界のラキシスに信用を得られなければ即刻捕まってクアンタもトレミーも没収されてしまうからだ。だが、今日の感触ではとりあえず次回会うまでは、どうにか自由は保証されたようだとミレイナは安堵していた。

「ところでセイエイさん、まだ帰ってきませんが大丈夫でしょうか?」

 

 ラキシスは帰りの((ディグ|リムジン))の車内で険しい表情を浮かべていた。その普段の様子とは違うラキシスに護衛のミラージュ騎士も気が気でなかった。

「姫様、あの者達が何か失礼でも?」

「いいえ、違います。ただ、突然の『友人』の訪問に驚いただけ。」

「『御友人』ですか……!? 我々には初対面にしか見えませんでしたが……。」

 二人のミラージュ騎士は首を傾げていたが、ラキシスも現在の状況を整理するのがやっとであった。

(未来の私の友人だから現在の私が知らないのは当然。だけど、未来の私が送り込んできたと言う事は何か良くない事があるのは間違いない。ミレイナ・ヴァスティ、そして今日会う事が出来なかった刹那・F・セイエイという男。そして、あの巨人、ELSダブルオークアンタ。彼らはこの世界に居てはいけない存在。どうする? ラキシス。)

「そうそう、二人とも。今日の事はまだ陛下には内緒で、お・ね・が・い、しますね。」

 言葉のあとに続くラキシスの微笑み。しかし、美しいモノには棘があるように二人のミラージュ騎士とってそれは脅迫以外の何物でもなかった。

 

第六話完。

-13ページ-

次回予告

 エレーナは刹那と自分の上司を面会させるのだが、そこで待ち構えていたのは彼女の想像を遥に超えた『対話』であった。

 

後書き

 まずはじめに、第5話投稿から大幅に時間が経過しましてごめんなさい。

 第6話にしてこのSSの主役の一人であるログナーが登場しました。これで主役はすべて登場となります。

 第7話も引き続き宜しくお願いいたします。

 

2013.2.7 クリサリスの表記を卿から公に修正。

2013.2.7 ラキシスをお嬢様から全て姫様に修正。

2013.2.7 第7話の次回予告を修正。

 

説明
ミレイナは遂にラキシスと再開した。そして、ミレイナの口から語られる地球での出来事にラキシスは唖然とするのだった。約3万文字の第6話です。
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