リリカルなのは〜君と響きあう物語〜
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「ロイド・アーヴィング……豚らしい名前だな。お前は直接このマグニス様が処刑してやる。ありがたく思え!」

 

マグニスはロイドに斧を向けると共に凄まじい殺気を込めた視線で睨み付けた。

その殺気は一般人なら思わず気を失ってもおかしくない程の悪意を込められたものだったがロイドはその殺気を感じてないかのように受け流していた。

ロイドは世界再生の旅の間にこの様な殺気を日常茶飯事で受けていたのだ。

今更その程度の事で怯むわけがない。

だが、そんなロイドの態度を見て更にマグニスは殺気立つ。

怒りで斧を握る握力が更にましその手からポタポタと血が滴り落ちる。

正に何時ロイドに斬りかかってもおかしくない一触即発の中。

 

「お前なんかに俺がやられるかよ」

 

ロイドは二本の剣を自分の目線よりやや上くらいの場所で交差上に構えマグニスに対峙した。

フェイトはこのロイドの構えや立ち振る舞い方から見て大凡の実力を感じ取った。

凄まじい実力だ。

並みの使い手ではない。

独特の剣の構え方からどことなく我流の物であることがわかる。

だが隙が全くない。

剣の使い手は管理局の中にも多数いるのだがこのロイドから発する剣気と同等の物を発せるのはシグナムくらいの物だと思う。

そのロイドの発する力を感じ取っているのはフェイトだけではなくマグニスもだ。

その証拠に僅か3歩程の間合いにいるロイドに向かって自慢の斧を斬りかかっていない。

真正面から切り込んでも返り討ちにあってしまうのが分かるのだろう。

だから今は動けない。

機を伺い最大の力を込めた斧の一撃をその生意気なツラに叩き込むのはもう少し様子を見てからと考えているのだろう。

お互い動けない硬直状態が続く。

 

「どうした? 来ないならこっちから行くぜ?」

 

ロイドはそう言うと右足の踏込と共にマグニスの懐に入った。

左手で持っていた剣でマグニスの斧を下から打ち上げる。

 

「ぐぉ!?」

 

斧を打ち上げられたことで態勢を崩したマグニスは無防備な状態だ。

この隙を見逃すほどロイドは甘くない。

すかさず右手の剣でもってマグニスの身体に向かって一撃を叩き込む。

マグニスの屈強な筋肉に覆われた鋼のような身体でもロイドの剣はたやすく入った。

思わぬ一撃に目を剥いて驚くマグニスだがロイドの連撃はまだ続く。

右足を軸に回転をかけた勢いで独楽のように廻り第3、第4撃を叩き込んだ。

思わず後ろに倒れるような形でよろめきながら距離を取ろうとしたマグニスだが。

 

「剛・魔神剣!!」

 

ロイドが剣を地に勢いよく振り下ろすと共に生じた衝撃破に飲まれマグニスは後ろの壁へと吹っ飛ばされた。

吹っ飛ばされ勢いが凄まじく壁にめり込んだ形で倒れこむマグニス。

このロイドの一連の流れるような攻撃はほんの刹那の間の物であった。

見ていた周りの人々はポカンと口を開けたままだ。何が起きたのか分からないという様子。

この中で唯一戦いに付いて行っているのはフェイトだけだろう。

そして彼女はまだこの戦いが続くこともわかっている。

ロイドの傍にまで寄って彼を援護するようにバルディッシュを構える。

 

「まだこの程度じゃアイツは倒せない。

此処からは私も戦う。 気を抜かないで」

 

横に現れたフェイトの登場に目を瞬かせたロイドだがニッと笑いすぐに目線をマグニスの倒れている方へ向けた。

フェイトは信用できる。そう直感で判断したのだ。

それとロイドはフェイトの言っていることがすでに分かっている。

 

「ああ。大丈夫。油断なんてしないから。アンタ……え〜っと」

 

「フェイト。フェイト・T・ハラオウン。……来る」

 

マグニスが倒れていた場所から瓦礫が弾き飛ばされた。

モクモクと立ち込める埃の中から、赤いドレッドヘアーを縛っていた紐が取れて髪をそのまま流すような姿になったマグニスが現れた。

しかし先ほどと変わったのは髪型だけではなく目付き鋭くなり額にはブチ切れる寸前の血管が無数に浮かんでいた。

ようするにぶちギレの状態だ。

 

「この……豚がぁぁ!!!!」

 

マグニスの怒りに呼応するかのようにマグニスの持っていた斧のデバイスが巨大な姿に変わっていた。

まるでプレセアの持っているような大斧になってしまった。

その斧を片手で軽々と振り回す。

さすがにあの斧の一撃は剣では防ぎようがないだろう。

 

「覚悟はいいか? この豚がぁぁ」

 

斧をガリガリと地面を削りながらロイドへと歩を進める。

今マグニスの頭にあるのはロイドを真っ二つにすることだけ。

マグニスはデバイスにありったけの魔力を込める。

デバイスから凶悪な炎が包まれるではないか。これは……。

フェイトすら威圧されるほどのプレッシャー。

間違いなくマグニスの最大の大技だ。

フェイトはロイドに引くように小声で話しかけるがロイドは全く引こうともしない。

斧から放たれる炎は天高く火柱を立ち上げ、その爆発する瞬間を今か今かと待ち望んでいるようだ。

マグニスはその斧に応えるために両手で握りしめた後天高くジャンプをした。

 

「うおりゃあああああああ!!!!」

 

落下の勢いを加えた一撃は正に巨人の一撃と言うべきものだろう。

その一撃が放たれた場所は底の見えない程巨大な大穴が一瞬で出来た。

辺りの建物にまでその衝撃は伝わり幾つかの棟を倒壊させるに至った。

 

「ロイド!」

 

フェイトは声を上げる。

あの一撃から逃げ出せたようには見えない。

もしかしたらロイドは……。

不安を抱かずにはいられないフェイト。

だが、

 

「うおおおおぉぉぉぉ、魔皇刃!!」

 

ロイドは無事だった。

防御技の粋護陣を張り爆発の瞬間を最低限のダメージで抑え、爆発の後に起きる衝撃を利用し飛天翔駆を使い天空にまで飛び上がったのだ。

先ほどマグニスがやったことをそのまま返すかのようにやり返すロイド。

 

「ぬうお!」

 

魔皇刃はマグニスの頭上に放たれた。

そのロイドの一撃はさしものマグニスでも耐えられるものではなかった。

 

「くそ、この俺様がこんな小僧に押されるなど……バカな」

 

マグニスは信じられない。

ロイドからは魔力を感じられない、つまり魔法を使えないただの小僧だと思っていたのだ。

そのため舐めてかかっていた。

ロイドは世界再生の旅で多くの戦いを続けてきていた。

魔物にディザイアン、そしてクルジスと。

その経験は彼を一流の剣士にしていた。

この程度の敵など今の彼の前では唯の人間と大差など無いのだ。

 

「さあどうする? もうお前に勝ち目はないぜ。おとなしく負けを認めろ」

 

斧を杖代わりにしてなんとか立っているがもはやマグニスには戦う力など残ってはいないだろう。

先ほどの一撃でマグニスは魔力も体力も全て使い果たし、部下も失っているのだ。

対するロイドはまだ余力が残っている。

これ以上続けてもどちらに分があるのか。誰が見ても一目瞭然だろう。

最後にロイドはマグニスに降参を求める。

しかし。

 

「下賤な豚が、俺様を舐めるな!」

 

「うわっ!」

 

マグニスはいきなりロイドを蹴り飛ばす。

マグニスは最後の力をデバイスに注ぎ込み、弾き飛ばされたロイドに向かって攻撃を仕掛けようとした。

 

「くたばれ、この豚が!」

 

ロイドは吹き飛ばされたせいで無防備な状態だ。

さすがのロイドでもこの攻撃を受けるとただでは済まないだろう。

 

「ちっ!! しまった!!」

 

「グハハ〜〜!!!! これでお仕舞だ。最後に笑うのはこのマグニス様だ!!!!」

 

今まさにデバイスを振り下ろそうとした時、マグニスの動きが突然止まった。

マグニスの体に黄色のリングがくっ付いていた。

 

「バインドだと!?」

 

バインドを破ろうとするマグニスだがこのバインドの拘束力は凄まじい物だ。

体力の有る無しに関わらずコレを破るのは容易いことではない。

だがコレをやったのは誰だ?

ロイドではないだろう。奴に魔法が使えないのは自分がよく知っている。

もし使えるなら戦いの最中に仕掛ける機会が合った筈だろう。

 

「私もいるってこと忘れないで欲しい」

 

そう、フェイトがバインドをかけたのだ。

フェイトの魔法は管理局の中でも屈指の使い手である。

数々の違法犯罪者を縛りつづけた彼女のバインドから逃げ出すのは無理だとわかっているがマグニスは腕力に物を言わせてなんとか破ろうと足掻く。

 

「へへ、サンキュー助かったぜ。んじゃ最後のトドメといくか」

 

ロイドはフェイトに礼を言った後に剣を持ってマグニスの元へ寄っていく。

「くそ!こんなモノ!」

 

なんとかバインドを破ろうとするがフェイトは更にバインドの数を増やしマグニスの身体を縛ってしまう。

もはや身動きすらできないだろう。

 

「いくよ、ロイド!」

 

「ああ!」

 

フェイトとロイドはマグニスに最後の攻撃を仕掛けるため武器を構える。

此処にきてマグニスは必死に攻撃をやめるように訴えてきた。

 

「ま、待て! や、やめろーーーー!!!!」

 

だが2人はその訴えを聞き入れず。

 

「サンダースマッシャー!!」

 

「獅子千裂破!!」

 

マグニスにトドメの一撃をぶちこんだのだ。

 

「ぐわーーーー!!!!!! ち、ちくしょおおおおおおおおお!!!!」

 

トドメの攻撃を受けたマグニスは完全に意識が飛ぶ瞬間にロイドとフェイトを睨み付けた。

この2人の顔を絶対に忘れない。

“絶対に復讐してやる”

魔物のごとき邪悪な目を見た2人はゴクリと唾を飲み込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「犯人逮捕に協力ありがとうございます。ロイドのおかげで助かったよ」

 

マグニスの一味は駆けつけた地上部隊に身柄を引き渡し、銀行の周りにいた人達も怪我人も居らず無事に現場から解散していった。

此処にいるのはフェイトと事件解決に協力したロイドだけだ。

 

「【ドワーフの誓い第1番、平和な世界が生まれるように皆で努力しよう】だ。

 オレは大したことしてないって、なあ、ところで此処ってどこなんだ?シルヴァラントやテセアラにこんな大きな街があるなんて聞いた事ないんだけど」

 

事件の事はただ偶然そこに居たから協力しただけだし、本来の目的はこの場所の情報を得る事。

目的を思い出したロイドはフェイトに訊いてみる。

彼女はこの世界の住人なので情報を訊くにはうってつけの人材だろう。

 

「? シルヴァラント?テセアラ? ごめん、聞いたことないんだけど」

 

思った通りシルヴァラントもテセアラも彼女は知らないようだ。

此処までは何となく予想していたロイドだがやっぱり違う世界だと思うとガックリと来る。

だが帰る手段がないというわけではない。

とりあえず事情を聴きたいらしいフェイトの顔を見て溜息をついた後ロイドは此処までの事情を話すことにした。

 

「実は……」

 

ロイドは『異界の扉』での出来事からこの場所に来て事件に巻き込まれるまでの事情を話す。

フェイトはロイドの話す事を全て手帳に書き込んだ後、顎に手を当てて暫し考え込む。

ロイドの話した事から考えるとコレは間違いないだろう。

 

「そう、ならロイドは【次元漂流者】なんだ」

 

「【次元漂流者】?」

 

ロイドの問に頷いた後、次元漂流者の事を教える。

 

「ロイドみたいに別の世界になんらかの事故で飛ばされた人の事だよ」

 

次元世界を管理する管理局に務めていると時たまこういう人の事を耳にするのだ。

大抵そういう人達は何らかの事情で生じた次元の裂け目に入り込んでしまい漂流者となってしまう。

コレもロイドの事情と一致する。

 

「ところでこの世界は何処なんだ?」

 

「ここは【ミッドチルダ】っていう世界。ロイドのいた世界とはまた別の世界なんだ。

多分ロイドの世界とはかなり離れた場所にあると思う」

 

シルヴァラントもテセアラも聞いたことが無いということは管理局でもその世界を発見していないという事。

この世界の周辺にあるような世界では少なくともないだろう。

 

「そんな!……参ったな……。

俺、早く帰らないといけないんだよ。エクスフィアの回収っていう目的があるんだ。

なぁ、なんとか帰る方法見つからないかな?」

 

フェイトが言うには自分みたいな人間を返してきた経験が彼女にはあるようだ。

なら、もしかしたら帰る方法、少なくともヒントくらいは知っていて欲しいと思いロイドは尋ねてみる。

もし無かったら完全にお手上げになってしまうからロイドは内心かなり焦っている。

エクスフィア?と聞き慣れない単語に疑問を抱いたフェイトだがロイドが焦っているらしいのを察した彼女は彼の不安をまず払拭してあげることにした。

 

「だいじょうぶ、管理局はそんな漂流者を保護して元いた世界に送り届けるのも仕事だから」

 

「管理局?」

 

「あっそういえばまだちゃんとした自己紹介してなかったね。私はフェイト・T・ハラオウン。時空管理局の機動六課のライトニング分隊隊長なんだ。

管理局っていうのは簡単にいえば次元世界を管理している部署ってとこかな」

 

「俺はロイド、ロイド・アーヴィング。よろしくな、管理局ってのはよくわかんねえけどとりあえずオレは元いた世界に帰れるんだな。よかった〜」

 

ふぅっと胸に溜まっていた不安を吐き出したロイド。

クスッと微笑んでからフェイトはこれから行き場のないロイドをとりあえず保護するために彼女の所属する機動六課への同行を誘う。

 

「うん、だからロイドにはひとまず機動六課に来てもらうことになるね、今回の事件でのお礼もかねて私が責任もってロイドを送り届けるから」

 

「わかった、じゃあよろしく頼むよ、フェイト」

 

フェイトの差し出す手を握り返しこうしてロイドは機動六課に行く事になった。

 

説明
2話目です。
分量少な目ですが読んで下さると幸いです。
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タグ
テイルズオブシンフォニア クロスオーバー リリカルなのは 

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