ソードアート・オンライン―大太刀の十字騎士―
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その後、五回ほど戦闘したところでシリカちゃんがようやくモンスターの姿になれ、私たちは快調に思い出の丘までの道のりを消化していた。

 

ちなみに、私は基本的には戦闘には手を出さず、シリカちゃんが危なくなると攻撃を弾くなどのアシスト役に徹した。

 

 パーティープレイでは、モンスターにダメージを与えた量に比例して経験値が分配されるので、シリカちゃんになるべくダメージを与えさせた方が、シリカちゃんに経験値が入るので、あまりダメージは与えない。

 そして、やっと思い出の丘に着く。

 

 その道は丘を巻いて頂上まで続いている。

 

「あれが《思い出の丘》だよ」

「見たとこ、分かれ道はないみたいですね?」

「うん。ただ登るだけだから道に迷う心配はないけど、モンスターの量が相当らしいから。気を引き締めて行こーう」

「はい!」

 

 ここからは、複数モンスターが現れるので、複数の時は私が一匹を残して撃破した。

 

 そんなこともあって、激しさを増すモンスターの襲撃を返り討ちにしていき、高く繁った木立の連なりをくぐると――そこが丘のてっぺんだった。

 

「うわあ……!」

 

 着いた途端、シリカちゃんが数歩駆け、歓声を上げた。

 

 丘のてっぺんは、周囲を木立に取り囲まれ、ぽっかりと開けた空間一面に花々が咲き誇っている。

 

「いやー、やっと着いたね」

 

 私は駆けていったシリカちゃんに歩み寄り、刀を腰の鞘に納めながら言った。

 

「ここに……その、花が……?」

「うん。確かー、真ん中あたりに岩があって、そのてっぺんに……」

 

 私の言葉が終わる前に、シリカちゃんが走り出す。

 私もそれを追う。

 そして、岩まで着いたシリカちゃんが叫ぶ。

 

「ない……ないよ、ヒナさん!」

 

そんなバカな、と思いながら私も岩を見るが、確かに何もない。

 

「おっかしいなー、そんなはずは……。――いや、ほら、見てごらん」

 

 私はシリカちゃんにもう一度、岩を見ることを進める。

 

「あ……」

 

 花は、使い魔を失ったビーストテイマーをシステムが感知してから咲く仕組みだったらしく、今まさに一本の芽が伸びようとしているところだった。

 

 芽はたちまち成長していき、花を咲かせた。

 

 シリカちゃんが私を見てきたので、私は笑顔を浮かべながらゆっくり頷いた。

 

 シリカちゃんは頷き返し、花にそっと右手を伸ばした。

 

 その手が花の茎に触れた途端、茎が中ほどから砕け、シリカちゃんの手の中には光る花だけが残った。

 

 そして、シリカちゃんはそっとその表面に指で触れる。

 

 ネームウィンドウが音もなく開く。

 

 《プネウマの花》

 

 それがこの花の名前だった。

 

「これで……ピナを生き返らせられるんですね……」

「うん。心アイテムに、その花の中に溜まってる雫を振り掛ければいいんだ。だけどここは強いモンスターが多いから、街に帰ってからにしようね。もうちょっと我慢して、急いで戻ろー」

「はい!」

 

 シリカちゃんは頷き、メニューウィンドウを開いて、そこに花を乗せた。

 

 そして、アイテム欄に格納されたのを確認すると、それを閉じる。

 

 正直、安全を確保するなら、転移結晶で一気に帰還すればいいんだが、結晶は高いのであまり使いたくなかった。

 

 それに、私がいれば、だいたいの事態にも対応できるし。

 

 まあ、なにも起きないで帰るのが一番なんだけど、そうもいかないんだろうなー、と思いながら私たちは丘を下り始めた。

 

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