真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第六部 『水着と水とHE∀ting Sφul』 其の八
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第六部 『水着と水とHE∀ting Sφul』 其の八

 

 

第十一話『戦女神の執念』

呉領 荊州長江中流域 赤壁

解説席

【赤一刀turn】

「おはようございます!ついにこの公開模擬戦も最終日となりました!

本日も実況のあたし、小喬と、解説の冥琳さま。」

「おはようございます。」

「そして昨日、一昨日と連戦された孫呉の王、『巨」

 

「『巨尻』では無いっ!!」

 

「・・・・・・・・・じゃあ・・・『碧眼王』・・・って、姉妹三人共瞳の色同じじゃないですか!いいんですか?これで?」

「かまわんっ!!」

「『碧眼王』孫権仲謀蓮華様・・・・・ま、いっか。そして三皇帝のお一人、赤北郷一刀さま♪」

「・・・・・・よろしく。」

「おはようございます。」

 蓮華が((初端|しょっぱな))からのお尻ネタにムスっとしてしまった。

「それでは本日の模擬戦、蜀対曹魏ですがどう予想しますか?冥琳さま。」

「まず曹魏だが昨日と同じ策は使えんな。」

「それはどうしてでしょう?」

「昨日の曹魏の策は孫呉の将の少なさを突いた物。蜀の将の多さを考えれば自然と答えは出る。」

「ええと・・・・・将の数は・・・・・孫呉が十・・・美羽と七乃はひと組と考えたら九ですか。曹魏は十二。蜀が・・・・・あれ?美以たちが四人ひと組としても・・・二十っ!?」

「そうだ。昨日の様な戦いは絶対できん。ならば曹魏が取る策は、孫呉と同じになる。蓮華様、対蜀戦で取った策は?」

「将の各個撃破ね。兵の練度を考えれば、それが最も効果的でしょう。」

「では曹魏が各個撃破を狙い。蜀が昨日の曹魏の策で来るとか?」

 小喬は小首を傾げて考える。

「それは無理だな。大喬と月なら蜀がその策で来たらどうする?」

「は、はい!」

「・・・・・そうですねぇ・・・」

 突然話をふられて大喬はびっくりして慌て、対照的に月は落ち着いて考えている。

「ちょっと説明用に黒板を持ってきますね♪」

 月はにっこり笑ってから、大喬を連れて奥から黒板を引っ張ってきた。

 そして白墨で左に蜀、右に曹魏の陣の図を描き説明を始めた。

「もし、蜀が緑ご主人様を艦に乗せた場合、華琳さんはすかさず蜀本陣を襲う遊撃隊を出しますね。」

 曹魏本陣から回り込む様に矢印を引いて蜀本陣につなげる。

 月は大喬に白墨を渡し、バトンタッチ。

「え、えぇと・・・今回の規範で『助け出した一刀さまを本陣に連れ帰らなければならない』のですから、本陣が取られては勝利条件が満たせなくなります。昨日はそれをさせないよう秋蘭様、桂花さん、風さん、稟さんが見事な采配をされていました。孫呉側が後手に回ったため対応が遅れたというのも有りますが・・・」

 また白墨が月にバトンタッチされる。

「もし蜀が一艦に全武将と緑ご主人様を乗せてしまうと、曹魏は取り囲んでしまえばいいだけで済みます。曹魏は負けなければいいんですから。更に紫ご主人様を高速船に乗せて逃げ続ければ完璧ですね。」

「このように奇策とは相手の虚を突き戦の主導権を握る為に用いる。最初からバレていてはまるで意味が無い訳だ。」

「なるほど、蜀は必勝の策を華琳さまの策以外の方法でやらなければいけない訳ですか。」

 小喬の言葉に蓮華が頭を捻る。

「そんな策あるのかしら?奇策を使わず本道で戦えばいいのではないの?」

「そうですね蓮華様。それも一つの策ではありますが・・・・・ここに私が考えた策が((認|したた))めて有ります。北郷、開戦したら開けて見てくれ。」

 俺は冥琳から書簡を受け取った。

 一体どんな策が書いてあるのやら。

 

 

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蜀本陣

【緑一刀turn】

 出陣前の檄を愛紗が将兵に飛ばす。

「皆の者!よく聞け!軍師殿四人が練りに練ったこの策を用いれば!

我等の勝利は間違いないと私は確信している!

しかし!将は勿論!一兵卒に至るまで全力を出し切らねばその勝利は覚束無いだろう!

一昨日の悔しさを思い出せ!戦乱の頃の苦しい戦いを思い出せ!

蜀の勇士たちよ!今日こそ勝利の美酒に酔おうではないか!!」

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 うん、やっぱり愛紗の激はいいな。

 なんか俺まで体の芯から震えて来て、戦乱の頃を思い出すよ。

 

「総員!配置に付けっ!!」

 

 愛紗の号令で全員が駆け出した。

 朱里と雛里も艦に乗り込んで行く。

 本陣に残るのは俺、桃香、そして愛紗と恋。

 前回攻撃の要だった二人が本陣にいる。

「ああは言いましたが、本当に成功するでしょうか・・・・・」

 心配そうに愛紗が訊ねて来るのを俺は笑顔で応える。

「大丈夫だって、華琳達には悪いけど今回の策は俺もギリギリまで協力するから。」

「うん!わたしも今回は最後まで抵抗するよ!!」

「・・・・・大丈夫。恋と愛紗、それにみんなが力を合わせれば絶対勝てる。」

 愛紗は俺、桃香、恋の顔を見て微笑んだ。

「すいません、弱気になりました。恋、合図が来たその時は!」

「・・・うん。がんばる。」

 孫呉と曹魏は一勝づつしてるんだ。

 勝たせてあげたいよな。

 

 

特設モニター

【エクストラturn】

ジャーン!ジャーン!ジャーン!と銅鑼が鳴り最終戦の開幕を告げた。

『さあ!いよいよ始まりました!両軍の船が今!出航して行きます!

曹魏側の楼船は昨日と同じ二隻。

対する蜀側は・・・七隻?これは第一戦目と同じ数ですね、冥琳さま。』

『ふむ、だが将の旗の場所を確認すると中々面白いぞ。』

『はい、え〜蜀の先頭を行くのは紫苑様と桔梗様の乗る艨衝ですね。今日の弓比べは二対一ですか。その後ろの船団に・・・えぇ!?

張!趙!馬!魏!馬!公孫!華!袁!文!顔!孟!

一隻に二人から四人が乗り込んでますが、固まって曹魏に向かっていきます!

その後ろの楼船にってこっちも!?

諸葛!?!陳!そして詠さまの旗も有ります!

あれ?愛紗様と恋様は?それに桃香様と緑一刀さまは・・・・・・

あっ!本陣にありま・・・した?けど・・・・・本陣から艦隊の間に船が連なっています。

何でしょう、あれ?』

 首を捻る小喬の横では冥琳がクスクス笑っていたが、ついに堪えきれず声を出して笑い出した。

『あっはっはっはっは!流石だな!やはりそう来たか。

北郷、書簡を開けてみろ。』

 言われて赤一刀が書簡を紐解く。

『うわっ!冥琳の考えた通りって事か?これ?』

『一刀!私にも見せて!』

 蓮華が寄り添って書簡を見る。

 月と大喬、小喬も一刀の後ろから覗き込んだ。

『さて、華琳。どう動く?』

 冥琳はまるで自分が蜀の軍師でも或るかの様にニヤリと笑ってみせた。

 

 

曹魏本陣

【紫一刀turn】

「どうもこうも無いでしょうに・・・・」

 華琳は憮然と呟いた。

 仮の玉座に座る俺と華琳はモニターを見上げている。

「なあ、あの縦に並べた船ってもしかして『橋』か?」

「えぇ、そうね。恐らくあのまま此処まで繋げるつもりでしょう。」

「俺と緑はもしかするとあの上を走らされるのか・・・・・相手の本陣まで・・・」

 向こうまで二キロくらいだったかなぁ・・・・・。

「で、対策は?」

「そうねぇ・・・・・防衛線を押し上げてこちらに到着する時間を遅くして、制限時間まで粘るっていうのが本当でしょうけど、ウチの武将達がこの過酷な状況をひっくり返せれば盛り上がると思わない♪」

「全ては春蘭達次第って事か?・・・・・・・・ドSだねぇ、女王様だけに。」

 

 

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曹魏軍船団前曲

【エクストラturn】

 秋蘭の足元には二本の矢が突き立っている。

 秋蘭と紫苑、桔梗の弓比べは引き分けに終わった。

 しかし、紫苑と桔梗の攻撃はまだ終わっていない。

 まず秋蘭の右の先登に火矢代りの朱矢が打ち込まれた。

 その朱を消そうとした兵が狙撃され、墨の跡をつけて脱落となる。

 その間にも朱矢が次々打ち込まれ、その先登は審判から炎上判定を受けて停船した。

「なんという容赦のない・・・・・」

 秋蘭は何本かの飛来する矢を撃ち落としたが、結果はご覧の有様だ。

 紫苑と桔梗を狙ってもこの距離では躱されるのが落ち。

 二人も同じ理由で秋蘭を狙わないのである。

 秋蘭も他の蜀の船を狙おうとしたが諦めた。

 そこには鈴々、星、翠といった面々が舳先で武器を構えている。

「船速を上げろ!弓兵の射程までとにかく急げ!!」

 秋蘭に取れる策はこれしか無かった。

「蜀がここまで強引に攻めてくるとは・・・・・後の無い((軍|おんな))は恐ろしいな。」

 苦笑いで秋蘭は蜀の船団を見つめた。

 

 

蜀艦隊前曲

 

「桔梗!次は右を!」

「応!紫苑!!」

 二人の後ろには矢筒が大量に置かれ、空になった物を兵が次々取り替えていく。

 『矢継ぎ早』という言葉を体現する二人に、味方ですら言葉を失っていた。

 

「ボケっとするなっ!!敵の矢が来るぞ!速度上げろっ!!」

 

 星の叱咤に艦隊が速度を上げて突っ込んで行く。

 蜀の陣形は縦列陣。

 その陣頭に武将がかたまり、飛来する矢を薙ぎ払って行き、瞬く間に両船団がぶつかった。

 しかし蜀の勢いは止まらず、無理やり曹魏の船団を引き裂く様に曹魏本陣を目指して突進する。

 紫苑と桔梗は楼船一番艦に移り次の仕事に取り掛かる。

「わたくしは右翼を担当するわ!」

「おう、一艘たりとも本陣に通しはせんぞ!」

 二人の指揮の下、突出しようとする曹魏の船に矢の雨を降らせていく。

 一方、最前線では武将同士の戦いが始まった。

 

「愛紗はどこだあああああああああっ!!」

 

 春蘭が蜀の艨衝に飛び込んだ。

 愛紗が先陣と思い込んでいた春蘭はモニターを見ていなかった。

 

「愛紗は本陣でお兄ちゃんを守っているのだ!」

 

 鈴々が春蘭の前に立ち塞がる。

「ならばお前ら全員蹴散らして、愛紗の所まで行ってやる!!」

「やれるもんならやってみろなのだあっ!!」

 七星餓狼と丈八蛇矛が激しい火花を散らした。

 

 他の船では霞と華雄が戦っている。

「張遼!こうして刃を交えていると董卓軍の頃の演習を思い出すな!」

「全くやで!少しは強うなったか?ウチの方が勝ち越しとるんやで♪」

 華雄は霞の挑発に乗らず、余裕の笑みを見せる。

「ふ、今の貴様と私とでは決定的に違う物がある。」

「ほう、言うてみい。」

 

「貴様は曹操の家臣となり、私はお嬢様の親衛隊長という事だっ!!」

 

「・・・・・・・はあ???」

「お嬢様の期待を背負う私は無敵だあああっ!!」

「(あぁ、要するに華雄が一昨日みたいに暴走せんよう、月が何か言うた訳か。)」

「改めて行くぞ!張遼っ!!」

「おう!おんどれの忠義、見届けたるで!!」

 霞は余裕を持って華雄の一撃を受け止めたつもりが、その重い攻撃に驚いた。

「(な?アホの思い込みの所為か?油断出来へんで、こりゃぁ・・・)」

 

 更に他の場所では星と凪、焔耶と季衣、翠と流琉、そして沙和と真桜のコンビに蒲公英、白蓮、猪々子が対峙していた。

 猪々子が沙和と真桜を前に不敵な笑みを浮かべる。

「ふっふっふ。こんな組み合わせになると思ってたぜ。」

「なんや一体?」

「どういう意味なのぉ?」

 

「普通組の相手はやっぱり普通組♪」

 

「な、なんやてえ!?」

「沙和と真桜ちゃんは、ふ、普通組じゃないの!」

 言い返す二人に蒲公英が暗い顔で滔々と語りだす。

「春蘭や五虎将ほど強くなくて・・・・・朱里たちほど弱いわけでもない・・・・・受け入れようよ・・・・・現実を・・・・・たんぽぽみたいにさああぁぁぁぁ!」

「「ひいいぃっ!!」」

 最後はホラーの様に迫る蒲公英に二人は思わず後退る。

「そうそう♪受け入れてしまえば結構なんとかなるもんだぜ♪白蓮様を見習えよ。」

「・・・・・・・・・お前ら・・・私をダシに遊んでるだろう。」

 白蓮の顔は笑っていたが、こめかみにはしっかり血管が浮いていた。

 

 そんな武将たちの戦いの最中でも、蜀の船による『橋』の構築は進んで行く。

 中、小型船で造られた『橋』の間に二百メートル間隔で楼船を配置している。

 揺れの小さい楼船を支柱代りにしているのだ。

 

 

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蜀楼船四番艦

 

 戦場の中間点で詠は望遠鏡を覗いて紫苑達の居る一番艦を見ていた。

「朱里!雛里!紫苑から合図が来たわ!!」

 そこには紫苑が空に放った煙矢が尾を引いている。

「こちらも打ち上げます!それっ!」

 朱里が用意してあった打ち上げ花火に火を点けると、ひと呼吸置いて発射された。

 空高く飛んだ花火は空中で破裂音と盛大な煙の花を咲かせる。

「さあ!いよいよ恋殿の出番なのです♪」

 

 

蜀本陣

 

「合図が上がった!行くぞ、恋!!」

「うん。」

 愛紗と恋は一度頷きあってから一気に船で出来た『橋』を走り出した。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

「がんばって!愛紗ちゃん!恋さん!」

 急速に遠ざかる二人には聞こえないと分かっていても、桃香は言わずにはいられなかった。

 

 

解説席

【赤一刀turn】

「蜀本陣から愛紗様と恋さまが飛び出したあ!船で造られた橋の上を!

走る!走る!!走る!!!」

 すげぇ・・・・・どう見ても下手な馬より速いぞ、アレ・・・・・。

「おお!途中に置かれた楼船にも一気に最上甲板まで飛び上った!」

 正に弾丸って感じだ・・・・・二人は紫を連れてくる為に向かったワケだが・・・あのスピードで運ばれる紫・・・・・・・取り敢えず合掌しておこう・・・。

「所であの船、思ったほど揺れていない上に列も乱れていないのはどういう事でしょう?」

「ああ、それは・・・」

 小喬の疑問に俺は冥琳の書いた書簡をモニターにも映るように広げて見せた。

「船と船の間を鎖で繋いであるらしい。本陣の艀みたいに。」

「なるほど!そういう事なんですね♪」

「名付けるなら『連環の計』って処か。」

 まさか赤壁で本当に『連環の計』をやるとは・・・・・使い方がまるで違うけど。

「おおっと!そう言ってる間にも、愛紗様と恋さまは中間点の軍師の乗る楼船も越えて行った!

この先には両軍入り乱れる戦場が待っている!

二人は躱すのか!?蹴散らすのか!?」

「味方も居るのだから蹴散らしはしないでしょう・・・・・・・たぶん・・・」

 蓮華は言ってて自信が無くなったみたいだ。

 愛紗と恋の突進を見ていれば、その気持ちは解る。

 

 

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曹魏本陣

【紫一刀turn】

 華琳の取った対策も虚しく、防衛線は突破され、最初に曹魏本陣に姿を現したのは・・・。

 

「おーーーーっほっほっほっほっほ!やはりわたくしは守るより攻める方が合っていますわねぇ♪」

 

 まあ、説明はいらんだろう。

「また勢いだけでここまで来ちゃうなんて・・・・・文ちゃんも居ないのに、華琳さんに敵うわけないよう・・・・」

「さあ華琳さん!大人しくそちらの一刀さんをお渡しなさい!さもなくば力ずくで奪って行きますわよっ!!」

 斗詩の嘆きは無視っすか・・・・・相変わらず苦労してるなぁ、斗詩・・・・・。

「まさか貴女が一番乗りをしてくるとはね、麗羽。一体どんな策を使ったのかしら?」

 確かに。華琳じゃなくてもそこは気になる所だ。

「は?策?わたくしは前が空いているから真っ直ぐ来ただけですわよ。」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 成程・・・・・袁家の幸運力だけでここまで来たわけか。

 はっ!まさか朱里と雛里はそこまで計算して麗羽を配置したのか!?

「まあ、いいわ。力ずくで奪うと言ったのですから相手をしてあげましょう♪」

 華琳はS気たっぷりの笑みを浮かべて鞭を鳴らした。

 斗詩の大金槌と華琳の鞭。

 今回のルールじゃどう考えても華琳の勝ちだな。

 だけど・・・・・。

 

「斗詩!麗羽!よく持ち堪えた!!今行くぞっ!!」

 

 愛紗と恋が空から降ってくる。

 どうやら戦場を飛び越えて来たみたいだ。

 ここでも袁家の幸運力が発揮されたな。

 着地した愛紗達はそのままの勢いで華琳に迫った。

「華琳殿!いかに模擬戦といえど、同盟国の王に刃を向けたくはない!ここは大人しく紫のご主人様を引き渡して頂こう!」

「ふぅ・・・そうね、流石に愛紗と恋相手に私では勝てないわ。」

 華琳は観念したように鞭を足元に落し、愛紗に近付いて行く。

「で、では・・・・・」

 愛紗は戸惑ってるな。華琳がこうもあっさり負けを認めるとは思って居なかったんだろう。

「えぇ、一刀は連れて行っていいわよ。でもその前に、折角だから愛紗の構えた姿を間近で見せて貰えないかしら?」

「・・・・・こ、こう・・・ですか?」

 一瞬考えたみたいだが、自分が有利になりさえすれ、華琳が自分を脱落させる事はないと判断した愛紗が青龍偃月刀を構えて見せる。

「ふふ♪武神と謳われるだけあって見事な構えね♪でもごめんなさい、愛紗。奥の手を使わせて貰うわ♪」

「え?」

 ((和|にこ))やかに笑って、華琳は偃月刀を自分の肩に当てた。

 刃の無いレプリカだから切れる事は無いが、この時点で華琳の脱落が決定した。

 それと同時に愛紗の背後、俺と華琳の正面に途轍もない殺気が膨れ上がる。

 いや!爆発したと言った方がいい!

 

「愛紗!きさまああああっ!!華琳様に手を掛けよったなあああああああああっ!!!」

 

 姿は見えないが、その咆哮を上げた殺気の所在場所が俺にさえ解る程。

 その殺気の主は当然春蘭だ!

「くっ・・・・ご主人様、非常事態故少しだけご辛抱下さい!

恋!手を貸せっ!!」

「え?え?え?」

「うん、分かった。どこにするの?」

 恋!何がわかったの!?出来れば俺は分かりたくないんだけど!!

 ちょっと?二人で俺を担ぎ上げて・・・・・。

「一刀、出来る事なら無事に・・・は無理でしょうけど、戻ってきてくれると嬉しいわね♪」

「紫苑と桔梗の所へっ!!」

「了解。」

 

「うおりゃああああああああああああああっ!!」

「ふんっ!!」

 

 強烈なGを感じたと思った次の瞬間、俺は空中に居た。

 

「うわああああああああああああああああああ!!」

 

 視界に紫苑と桔梗が急接近する!実際に接近しているのは俺の方だが!

「ご主人様!」

「お館!!」

 俺の覚悟していた衝撃は無く、代りにとても柔らかく心地よい弾力に受け止められた。

「ご主人様、観衆の前でこれ以上はご遠慮下さい♪」

「そんなにこれがご所望なら今夜にでもお伺い致しますぞ♪」

「ほへ?」

 ご想像通り俺を受け止めたのは二人のおっぱい。

 しかも俺は条件反射で二人のおっぱいを手にしていた。

 紫苑はビキニ、桔梗がワンショルダーのツーピース、どちらも肌の露出か多いため、かなりの部分が直に触れている。

 二人の言葉が冗談だと分かっていても、思わず生唾を飲み込んでしまう。

「主!ニヤケて鼻の下を伸ばしている場合ではございませんぞ!」

「星!?あれ!?戦いは!?」

「春蘭の剣圧に前線は敵も味方も吹き飛ばされました!将は何とか持ち堪えましたが兵は壊滅です!春蘭は愛紗と恋の所に向かいましたが、秋蘭もかなり怒っておりますな。今頃仕切り直して戦いが再開しておりましょう。」

「分かったわ、星ちゃん!ここはわたくしと桔梗で守るからご主人様を早く!」

「という訳ですから、主!我が背に!」

 ここで躊躇っては俺が曹魏に味方したと蜀のみんなを悲しませる。

 覚悟を決めて星の背中におぶさった。

「主の胸板が直に背中に・・・・・主の鼓動を感じて、これは中々・・・・・」

 

「何をしておる、星!さっさと行かぬか!!」

 

「あっはっは♪いや、ついな・・・・・では、行きますぞ!!」

 俺の構築した建前をあっさり壊してくれた星が走り出した。

 星の事は信頼しているが、楼船の最上部から飛び降りられては流石にビビる。

「主!速度を上げますが掴まりづらいなら胸を掴まれても」

「大丈夫だからこのまま行こう!」

 ただでさえ情けない格好な上、そんなセクハラしたら後でみんなから何をされるか。

 それに、俺の理性にも限界が有るんだぞ!

 

 

曹魏本陣

【エクストラturn】

「春蘭!早く一刀を追いなさい!!」

 愛紗に襲い掛かろうとする春蘭に華琳が叫んだ。

「し、しかし愛紗は華琳様を!」

 華琳の声を聞く程度には理性が残っていたようだ。

「一刀を取り返せば愛紗の方から挑んでくるわ!急ぎなさい!!」

「ぎょ、御意っ!!」

 春蘭は来た道(と言っても水上に点在する船だが)を引き返す。

 それを見て愛紗が慌てた。

 このままでは、ここで春蘭を足止め出来れば誰かが紫一刀を蜀本陣に連れて行ってくれると目論んだのが御破算になってしまう。

「恋!」

「うん!」

 二人も春蘭を追って曹魏本陣を後にした。

「ちょっと、華琳。脱落者が指示しちゃ駄目じゃない♪」

 審判の腕章を付けた雪蓮が華琳の元にやってくる。

「忌の際の遺言とでもしておいて頂戴。大体あなた、私が言うのを止める事も出来たのに黙って見ていたでしょうに。」

「こんな盛り上がる事を止めるわけ無いじゃない♪」

 心底嬉しそうな雪蓮である。

「ふふ♪さすが快楽主義者。」

 華琳も笑って答えた。

「処で華琳♪死んじゃったあなたにお供えが在るんだけど♪」

 嬉しそうに瓢箪を掲げて見せる。

「せっかくだから頂くわ。あの映像を見ながら後はゆっくりしましょう♪」

 華琳と雪蓮は日除けの下の仮玉座に座って酒を酌み交わし始めた。

 

 

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蜀楼船七番艦

【紫一刀turn】

「主、どうやら春蘭が追いついて来たようです。」

「えぇ!?まさか愛紗と恋を倒したのか!?」

 走る星の背中で、首だけ後ろに向けてみると先程通過した楼船が揺れていた。

 距離にして二百メートル位だ。

「流石にそれは無いでしょう。あの二人の気もその後ろから追って来ております。」

 春蘭のバーサークモードは、愛紗と恋が追いつけない程らしい・・・・・。

 星が目の前に迫った最後の楼船に飛び上がる。

 その最上甲板には蜀の軍師四人、朱里、雛里、詠、ねねが居た。

 その顔は四人とも不安の色が浮かんでいる。

「朱里!作戦変更だ!私も春蘭の足止めに加勢する!四人で主を本陣へ!!」

「はわわ!わ、分かりました!」

 多くを語らずに行動を開始したのは、予めこういう事態も想定していたからだろう。

 モニターで見た時はもっと曹魏寄りの楼船に居た四人が一番蜀寄りのこの楼船に移動している事からもそれが伺い知れる。

 走り出した俺達の前に続く船で出来た『橋』。

 だがここから蜀本陣まで四百メートルは有りそうだ。

 あのまま星に運ばれていたら手前で追いつかれていただろう。

 ならば少し時間が掛かっても春蘭の足止めをしたほうが勝利の確率は上がる。

 上手くいけば春蘭の脱落だって狙えるのだ。

 問題は俺や朱里達の足では平地を移動する様なわけには行かないという事か。

 多少手間取りながらも蜀本陣を目指す最中、朱里が俺を見上げていた。

「どうしたの?朱里?」

「その・・・紫の・・・ご主人さま。本当なら曹魏の・・・」

「朱里、それは言わなくていい!」

 済まなそうに言う朱里の声を遮った。

「俺は『北郷一刀』だ。今は全力で朱里達の為に走るぞ♪」

「は・・・・・はいっ♪」

 建前としてはルールに法ってだが、やはり俺の心中には昨日勝っている曹魏より蜀に勝たせてあげたいという依怙贔屓がある。

 それに朱里とは前の外史の記憶も有るので、遠慮されるとかなり寂しい。

 そんな事を考えながら暫くは無言で走り続ける。

「あと少しですぞ!頑張るのです!!」

「ねねは元気・・・だな・・・前は・・・ヒイヒイ・・・言ってたのに・・・」

 俺なんか、かなり息が苦しくなって来てるのに。

「あれから恋殿と毎日走ってますからな♪腰の運動しかしていないお前とは違うのです!」

「お、俺だって・・・春蘭に・・・追いかけられて・・・・・・・そういえば・・・春蘭は・・・」

 詠がチラリと後ろを確認してくれた。

「大丈夫、かなり近付いてはいるけど星と愛紗と恋が足止めしてるわ!」

「そ、そうか・・・よし!あと一息・・・」

 蜀本陣を見ると桃香と緑が見えた。

 と、思った瞬間足が滑り、視界がひっくり返る・・・・・。

 

「「ご主人さまっ!!」」

 

 朱里と雛里の叫ぶ声。

 視界に映る二人は俺に向かって飛びつく最中。

 その背景は抜けるような夏の青空。

 もしかして俺、水に落ちてる途中なのか?

 

 

蜀本陣

【緑一刀turn】

「きゃああああああああああっ!!」

 桃香の悲鳴と紫、朱里、雛里が水に落ちる音が重なる!

 やばい!走って疲れている所であれは!

 

「貂蝉!卑弥呼!お願いっ!!」

 

 走る俺の耳に詠の悲痛な叫びが聞こえた!次の瞬間

 

ドォオオオオオオオオオン!!と、水柱と共に水中から飛び出した二つの影!

 

「ご主人さまの危機ならば!」

「呼ばれなくても即参上っ!!」

 

 貂蝉と卑弥呼は三人を抱えていた!

「「とうっ!!」」

 着地した二人は直ぐに三人を下ろす。

 紫は二三度咳き込むが直ぐに朱里と雛里に駆け寄る!

「紫っ!!」

「お、俺は大丈夫だ!!それより二人が!」

 朱里と雛里は気を失っていた!

 俺たちは無我夢中で人工呼吸をする!

 俺が雛里に、紫が朱里に息を吹き込む最中、華佗の声が近付いて来る!

 

「我が金鍼に全ての力!

 賦して相成るこの一撃!

 俺達の全ての勇気!

 この一撃に全てを賭けるっ!!

 

 もっと輝けぇぇええっ!!

 

 ((賦相成|ファイナル))!((五斗米道|ゴットヴェイドオ))ォォオオオオオオォォォォ!

 

 げ・ん・き・に・なれぇぇえええぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 水上を例の気を利用した方法で移動して来た華佗は、ジャンプして俺たちの頭上を飛び越えた。

 その時振るった金鍼が光り輝く!

 

「病魔!覆滅!!」

 

 朱里と雛里が同時に水を吐き出し咳き込んだ。

「朱里!」

「雛里!」

「「けほっけほっ・・・・・ご、ご主人さま・・・・?」」

「「よかった・・・無事で・・・・・・」」

 俺は雛里を、紫は朱里を抱きしめた。

「はわわわわわ!!」

「あわわわわわ!!」

 

『緑北郷!紫北郷!朱里と雛里は無事なようだな!』

 

 モニターから冥琳の声が聞こえてきた。

『では審議の結果を伝える。』

「「は?審議?」」

 ここは蜀本陣。当然、紫も蜀本陣にいるわけだ。

『水面に落ちる紫北郷を救けようと飛び込んだ朱里と雛里は『救助行動』を適用。

脱落とはならない。

また、貂蝉と卑弥呼により蜀本陣に到着しているが、

こちらも救助の為の非常事態として認められた。

 

よって本日の模擬戦は蜀の勝利とするっ!!」

 

 観客席から盛大な拍手と歓声が沸き起こった。

「「おめでとう。朱里、雛里♪」」

「「・・・・・・・・・・・・・」」

 二人は俺たちの腕の中で全身を真っ赤にして縮こまっている。

 途端に歓声が俺と紫に対する嫉妬と殺意に塗り変わった・・・・・・。

「「あはははは・・・・・・・・・・はぁ・・・・」」

 二人を放り出す訳にはいかない俺たちは、甘んじてそれを受け入れた。

 

 そして特設モニターからは小喬の声が聞こえて来る。

『観客のみなさま!この三日間、三国合同水上演習にお付き合い頂きありがとうございます!今回は三国が仲良く一勝一敗で終わりました。また何時か合同演習をご覧頂ける日の為に晋帝国は日々鍛錬して参ります。それではここ赤壁での演習は終了致しますが、数え役満★しすたーずの舞台を最後までお楽しみ下さいね〜♪』

 こうして公開演習の幕は閉じた。

 

 

 その夜行われた宴で俺と紫はみんなから散々愚痴を言われた上に、赤も巻き込んで賞品としての仕事を色々約束させられたのだった。

 

 

 

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あとがき

 

 

作品紹介にも書きましたが

予告では前後編にする予定でしたが

今回は分けると勢いが死ぬと思い

一本にまとめました。

勝敗の結果は多分、読者のみなさんの予想通りだったと思いますw

 

 

碧眼王

三国志演義の孫権は「碧眼児」と呼ばれ、孫堅に「貴人の相」と言われたとか。

それを踏まえて蓮華はキャラデザインされたのでしょうが

シャオと雪蓮も蒼い目になっていますよね〜♪

深く突っ込むとヤバそうなのでここはスルーしておきますw

 

 

連環の計

七話で緑一刀が本陣の艀を見て連想してましたが

実際に採用されてしまいました。

当然、雛里のアイディアですw

 

 

普通組

萌将伝の三国合同記録会で猪々子が蒲公英に言った

「ようこそ!普通組へ♪」

の後日談的なネタです。

でも、猪々子と斗詩って魏√で季衣と流琉を簡単にあしらう

力の持ち主として登場してたのに・・・・・

 

 

一刀の理性

基本装備としてちゃんと備わっています。

性能は以前に比べかなり劣化していますがw

 

 

 

次回は第六部最終話

変態たちがまたバカな話をする回ですw

 

 

 

説明

まずはお詫びからです。
前回の予告で前半戦と書きましたが一本にまとめました。orz

第十一話、蜀対魏です。
勢いを重視したため水着の描写がほとんどありません。
でもみんな水着姿ですよw


ご意見、ご指摘、ご要望、更に
「軍隊の演習をこんな形で見るのは初めてです!いやあ、驚きました!スゴイですねぇ!将軍様方もスゴイですが、王様三人がスゴイですよ!孫仲謀様は正に神ですね!!思わず手を合わせて拝んでしまいましたよっ!!」
等のご感想がご座いましたら是非コメントをお寄せ下さい。

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コメント
アルヤ様  その通りですw 変態たちの溜め込んだデータを彼らの妄想グラフィックボードが処理しきれるかが問題ですがw(雷起)
神木ヒカリ様  今回もそうですが、時折プロットを無視した落ちを恋姫達がしてくれますw 恋姫は偉大ですw(雷起)
ロドリゲス様  着地点に紫苑と桔梗がいなくても一刀なら死にはしなかったでしょうw これからも機会があれば飛ばせてあげたいですねw(雷起)
次回?変態(おとこ)たちによる報告会だろ?(アルヤ)
落ちが予想外w。(神木ヒカリ)
空を駆ける種馬wwww(ロドリゲス)
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恋姫 恋姫†無双 真・恋姫†無双 萌将伝 北郷一刀 華琳 愛紗 春蘭 朱里と雛里 描写が無いけど水着姿です 

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