願い。
[全1ページ]

 

昔あるところに女の子がおりました。

笑顔が素敵な女の子でした。

 

夏の晩の事です。

女の子はお母さんとおばあさんに言いました。

 

「きょうはね、ようちえんで大人になったころの話をしたのよ

 わたしね、大人になったらおばあちゃんになりたいの

 だっておばあちゃんはおりょうりもおさいほうも、できるんだもの

 わたしがおばあちゃんになったら

 ママはひいおばあちゃんで、おばあちゃんはもっとひいおばあちゃんでしょう

 そのころは、ちょうちょ結びもできるかしら」

 

 

その可愛らしい話を聴いた女の子のおばあさんは、女の子をそっと撫でながら言いました。

 

「貴女がお祖母さんになる頃には、おばあちゃんやママは死んじゃってるのよ」

 

すると女の子は泣き出してしまいました。

 

「そんなのやだよ」

 

お母さんにぎゅうとしがみついて泣いている女の子を見ると、

一部始終を見たお母さんとおばあさんはにっこりと笑いました。

その優しく目を細める様子は、二人とても良く似ておりました。

 

 

 ・・・

 

「ね、まるで今のあなたみたいでしょう

 ずっと昔に、ママも同じ事をお話していたのよ」

 

「でもママは死なないよね」

 

それは病室での夜のこと、

ふとした拍子に泣いてしまった男の子と、まだ若いお母さんとのお話でした。

 

 

説明
きっと誰にでも憶えのある、幼いゆえの愛しい願い。少女の願いは大好きな人たちとずっと共に過ごすことでした。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
400 399 1
タグ
月と少女シリーズ 童話 ほんわか 母子 女の子 思い出 

岡保佐優さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com