IS~音撃の織斑 二十六の巻:頂上決戦 その一
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「ふーー・・・・」

 

一夏は更衣室で汗を拭くと、ISスーツに着替えた。

 

「いよいよか・・・・しかし・・・・まさか黛の奴が校内放送でこれを言うとはな・・・千冬姉との対戦と言い、これと言い・・・・余計にプレッシャーが・・・・・しかもこの情報流したの楯無と本音だしなあ。」

 

コキリと首を鳴らすと、目付きが鋭くなる。白式を展開してカタパルトに乗ると、アリーナに射出された。既に楯無もミステリアス・レディを展開して滞空している。

 

『さあ、いよいよ始まりました!こんな弾けた対戦カードは今回限り!我らのIS学園最強生徒会長の更識楯無さん、そして人類初の男性IS操縦者、五十嵐一夏君!彼は一度とは言え元世界最強の織斑先生をも下した超大物!この勝負、私もどうなるか分かりません!』

 

(黛・・・・何故てめえがアナウンサーをやってるんだ・・・?しかも俺が千冬姉を倒した事を今ここでバラすなよ!!)

 

「用意は良い?」

 

楯無に呼ばれて我に帰った一夏は閃爪刃、雪羅のカノンを展開する。

 

「勝てる自信は無いが・・・・精一杯足掻いてやるぜ。まあ、目標はシールドエネルギーの半分を削る位か。(昨日の内に頼んでおいたあれが来たのは良いが、果たして上手く行くかどうか・・・・)」

 

ブザーが鳴り、試合が開始された。一夏はまず様子見として閃爪刃で斬りつけてみるが、ラスティー・ネイルで受け止められ、更に下半身を振り上げて踵の閃爪刃で攻撃を試みるが、それも防御された。

 

「悪いけど、そう簡単にやられはしないわよ?」

 

パチンと指を鳴らすと、周りが爆発した。

 

「忘れてないわよね?((清き情熱|クリア・パッション))の事。」

 

「ああ、忘れてないぜ?簪との戦いでしっかりお前の手の内はある程度見尽くした。」

 

煙が張れると、そこに立っているのは無傷の一夏だ。左腕のエネルギーシールドが再びカノンに戻り、更に右手には涅槃が握られていた。

 

「そのクリア・パッション、もう俺には効かねえぞ?(五秒だけでもそれなりには取られるな・・・まだ問題は無いが・・・)」

 

「だったら、効くまで何度でもやるまでよ!」

 

「範囲を広げて俺を見つけられなくなっても俺は知らんぞ?」

 

変形させた鬼哭とカノンで一発ずつ楯無を攻撃し、鬼哭を草薙に変形させた。すると、二つのエネルギー弾が『拡散』したのだ。

 

「え?!きゃっ!」

 

辛うじて避け切った楯無は掠っただけでも三割近くシールドエネルギーを奪われてしまう。

 

「何なの今の・・?」

 

「言うなれば、フレキシブルの応用だ。その水のベールがある所為で、射撃計はほぼ意味を成さないだろう?だったら、フレキシブルで翻弄してみてはどうかと思ってな。もう一丁!」

 

今度は十王を使って一斉射撃を行い、それらが拡散、または湾曲した。だが、一瞬一夏は頭を痛みに抑えた。

 

(あまり多用出来ないな、これは・・・・頭がぶっ壊れちまう。これ全部を操るとなると・・・・)

 

だが楯無はそれを見逃さず、蒼流旋のガトリングを使って牽制、一夏に接近し始めた。もう片方には伸びて来るラスティー・ネイルが・・・・

 

「来ると思ったぜ。」

 

そこで一夏はダブルイグニッションブーストで楯無に接近、彼女の背後は零落白夜のエネルギーが迫る。そして両肩のアクアクリスタルを破壊するのと、クリア・パッションが発動するのはほぼ同時だった。爆発の中から二人が飛び退いた。

 

「あの水が厄介だったんでな・・・・痛み分けとは言え、潰してやったぜ。残るは、その武器だけだ。(まずい・・・・シールドエネルギー俺も半分位まで減っちまった。いよいよ零落白夜の使い所を見誤るとヤバいな。)」

 

「流石ね。お姉さんもやられたわ・・・・(けど、まだ切り札が残ってる。水も残り少ないし、ギリギリね。どうにか使えれば・・・)」

 

 

 

 

 

 

「凄いですわ・・・・ビットを使うだけには留まらずあんなに沢山のフレキシブルを制御出来るなんて。」

 

「あれはまだ完全には出来ていない。ビット運びは簡単だが、あのスプレッドが兄様の脳にかなりの負担をかけている。面での攻撃力は絶大だが、更にあれをフレキシブルで操ろうとしている。昨日からずっと無茶な訓練を続けていたので、一時は気を失って倒れてしまった。」

 

「そんな・・・・では、使い過ぎれば・・・・」

 

「兄様は間違い無く何らかの後遺症に苦しむ事になる。今さっき頭を数秒抑えたあれがそうだ。」

 

箒の疑問にラウラは何の躊躇いも無くそう答えた。

 

「成る程、三次元の公式を何度もやれば頭がパンクするのも無理も無いわね。」

 

鈴音はアリーナでの激戦を見ながら腕組みをして頷く。

 

「にしても、凄いよね、一夏って。この短時間でもうあんなレベルに登り詰めてるんだもん。代表候補生か、ううん、もう国家代表クラスだよ。」

 

「シャルロット、私もそうは思っていたが兄様は違うと言い張る。だが今回ばかりはそれを否定せざるを得ないだろう。教官を一度とは言え倒すだけでなく、学園最強とここまで渡り合えるのだから。最早国家代表を超えているかもしれん。」

 

 

 

「楯無。とりあえず、この一撃で最後にしよう。エネルギーの有無に拘らず、この一撃でシールドエネルギーが少ない方が負けを宣言する。恐らくお前には何らかの切り札がある。そうだろう?」

 

「どうかしら?(どう言うつもりなのかしら・・・・ま、乗ってあげましょうか。)でも、良いわよ。このままやっていたらずるずると長引くだけだし。」

 

楯無は周りに残っている水を全て集中させ、蒼流旋の先端の一点に集中させた。一夏は、それを見て雪羅をカノンモードで残りのエネルギーの半分をそれに回した。そして二人は同時に動き出し、接近した。

 

「うおおおおおおおお!!!」

 

「はああああああああ!!!」

 

楯無は構えた蒼流旋を突き出してイグニッションブーストで突っ込んで来た。それに対し一夏はカノンモードで零落白夜での渾身の砲撃を放った。二つがぶつかろうとしている。だが、一夏はまだこれで終わってはいなかった。

 

「まだだぜ!ようやく編み出せた新技、見せてやる!(残量エネルギーで零落白夜を使えるのは残り一発限り。これで決まらなきゃ、俺の負け・・・・)」

 

零落白夜を草薙に纏わせ、楯無に向かって飛んで行くエネルギー弾を斬った。だが、そのエネルギーは草薙に絡め取られるかの様に刃を巨大化させた。

 

(新技、名付けて:((残月破|ざんげつは))!)

 

拮抗していた力が崩れ、蒼流旋が破壊されると、楯無は後ろに吹き飛ばされた。

 

「ヤバい!!」

 

残り微量のエネルギーでイグニッションブーストは使えない。PICだけでどうにか落下地点まで辿り着き、楯無しが地面に激突するのを防いだ。だがその衝撃で絶対防御が発動し、一夏のシールドエネルギーがゼロになった。

 

『第一試合終了!勝者、更識楯無!物凄い戦いを見せてくれました。正にシーソーゲーム!会長就任以来の辛勝!こんな戦いは未だかつて見た事はありません!善戦してくれた五十嵐一夏君の未知数の可能性にも驚きです!明日の第二ラウンドにもご期待下さい!』

 

「くっそ・・・・負けちまったな。」

 

楯無を立たせると、一夏もISを解除した。

 

「でも驚いたわ、あれ。何だったの?」

 

「特訓の成果、とでも思ってくれ。終わって早々悪いが、俺は寝る。フレキシブルを使い過ぎて頭がガンガンするんだ。」

 

ヨロヨロとピットの方まで歩いて行き、手近な椅子にどっかりと腰を下ろした。

 

(やばい・・・・フレキシブルとスプレッドを使える様になったは良いが・・・・・後の負担が絶大だな。これ、二段変身がまた遠のいたか、ハハハハ・・・・)

 

「うあっ・・・・」

 

一夏は頭を抑えた。再び頭痛が襲いかかるが、どうにかそれを無視して立ち上がった。

 

「一夏、大丈夫?」

 

「ん?ああ、シャルロットか・・・・とりあえずは大丈夫、の筈だ。フレキシブルを使い過ぎた所為で少し頭がふらふらしてるだけだから。少し休めばまた元に戻るさ。今日の分の鍛錬は少し延期になるがな。所で、他の奴らはどうしてる?」

 

バッグの中から市の特性滋養強壮剤である漢方粉ドリンクを水に溶かして一気に飲み干した。

 

「ああ、楯無さんならそろそろこっちに来る筈だし、他の皆は」

 

「兄様!大丈夫ですか?!」

 

「ほら来た。」

 

ラウラに続いて続々と入って来た。

 

「大丈夫なのか、一夏?!」

 

「ああ、問題無い。今さっき漢方ドリンクを飲んだから、今日の間は大丈夫だ。まあ、

今日は俺の負けだから、少しへこむがな。流石に総簡単には勝てないか。」

 

「ですが、無茶をいたしますわね、一夏さんも。零落白夜のエネルギーにまた零落白夜を纏わせて強化するなんて・・・・」

 

「あれにも私は驚いたわー、まさかミストルティンの槍が破られるとは思わなかった。」

 

「まあ、実際の所俺も上手く行くかどうかは分からなかったから半ば自棄糞でやったんだがな。恐らく使う機会は極めて少ないと思う。あれだけのエネルギーを使うのは自殺行為に等しい。箒のISが羨ましいぜ、回復出来るんだしな。とりあえず、明日は第二ラウンドがあるんだよなー。こっからが怠くなるぜ。さてと、後は黛先輩との約束があるからな。」

 

「「「約束って何(何ですか)?」」」

 

一気に戦闘モードに入ったのが約三人。

 

「取材の約束だ。あいつが代わりに報酬を用意するとか言ってたからな。とりあえず、条件次第では俺にとっては悪い話では無いからな。報道部の奴らは本当にまるで狩人だからな。隙あらば俺を捕まえようとする。出来るだけ手短に終わらせる。」

 

一夏は立ち上がってずるずると体を引き摺りながらも報道部に向かった。だが、それが心配になったのか、楯無が肩を貸して支えた。

 

「おいおい・・・・俺はそこまでひ弱じゃねーぞ?」

 

「良いじゃない別に。それに、これでお願い一つ聞いてもらえるんだから。」

 

「何?それは終わった後だろ?」

 

「でも、昨日はずっと特訓してたから言えなかったし、一夏も言わなかったでしょ?」

 

「うっ・・・・」

 

痛い所を突かれ、一夏は押し黙る。確かに、それはそうだ。

 

「分かった。これは俺のミスだな。何が欲しい?出来る範囲で頼む。」

 

「じゃあ、こうしたい。」

 

一夏を壁に押し付けて顔を近づける。

 

「予測はしていたがな・・・・まさかここでやるつもりか?監視カメラの存在、忘れてる訳無いよな?」

 

「大丈夫。ちゅっ。」

 

楯無は一夏の首に腕を回し、一夏も自然と楯無の腰を抱き寄せていた。初めての感覚に一夏は目眩がして来た。だが、心地良い物で、不思議と気分が良い。一旦離れると、呼吸を整え、改めて報道部を目指した。

 

「悪い、待たせた。出来るだけ手短に頼む。報酬の方、お忘れなく。」

 

「はいはーい。」

 

薫子はボイスレコーダーとカメラを持っていそいそとやって来る。

 

説明
はい、一夏 vs 楯無 ラウンドワンです。
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コメント
ビット=フレキシブルこれはセシリーの最終目標ともいうべき芸当なのに早くもマスターするとは、さすがこの作品の一夏だな(氷狼)
修行の所為か→修行の成果 随分と無茶な戦いをするね。今後の鬼の活動に影響が出なければ良いのだけど?(西湘カモメ)
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仮面ライダー響鬼 IS 

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