IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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「シャルロット! いたか!?」

 

「ううん! こっちにはいなかったよ!」

 

瑛斗が墓地に行ってから一時間が経った。いくらなんでもおかしいと思った俺たちは瑛斗とシャルロットが最後に連絡をとった墓地に来ていた。しかし瑛斗の姿はどこにもなかった。

 

「瑛斗! どこだー!」

 

「返事してー!」

 

「瑛斗ー!」

 

「瑛斗さーん!」

 

「どこ行ったのよー!」

 

「瑛斗くーん! どこー!」

 

「瑛斗!」

 

行き違えてる可能性もあるので、エリナさんは家に残っている。

 

(どこに行ったんだよ…瑛斗!)

 

「一夏…瑛斗になにかあったら、僕…………僕!」

 

今にも泣きそうなシャルロット。声が震えている。

 

「大丈夫だ! 瑛斗は絶対見つかる!」

 

「でも電話にも出ないし――――――」

 

 

prrrrrrr!

 

 

「「!」」

 

俺の携帯に電話が掛かった。

 

「瑛斗から!?」

 

「いや…エリナさんだ。もしもし」

 

『一夏くん? 瑛斗は見つかった?』

 

「いえ…………まだ」

 

『こっちからも連絡してるんだけど、全然出ないの』

 

「何も言わないでどこか行くヤツじゃないのに――――――」

 

 

ドガアァァァァンッ!!

 

 

突然、爆音が響いた。

 

「な、なんだ!?」

 

『どうしたの!? 爆発音が聞こえたけど!?』

 

「わ、わかりません!」

 

「一夏、アレ!」

 

鈴が指差した方向を見る。

 

夜空を青い光の筋が駆けて行った

 

「なんだ…あれ………IS?」

 

俺は白式のヘッドギアを展開して、目を凝らした。

 

空中を飛行するそれは、刺々しい装甲に身を包んだ人の形をしていた。

 

 

「グオオオォォォォォッ!!」

 

 

そして聞こえた獣の咆哮のような叫び声。

 

「ッ!」

 

ビリビリと空気を震わせるその声に、俺たちは威圧された。

 

「アレは何だって顔ね?」

 

「!」

 

林の影から人が出てきた。

 

「あなたは…………!」

 

「ふふ…………」

 

出てきたのは亡国機業のスコール・ミューゼルさんだった。

 

だが、その右腕からは血が垂れている。

 

「アレに私もやられたわ」

 

「お兄ちゃん! 今の叫び――――――」

 

俺に駆け寄ってきたマドカはスコールを見て足を止めた。

 

「………あ…ああ」

 

そのまま俺の背に隠れる。

 

「マドカ?」

 

「お兄ちゃん…あの人………なんだか怖いよ…………」

 

完全に怯えきっている。頭の隅にスコールさんの記憶があるのか。

 

「あら、そういうことなの。ふふふ…………」

 

スコールさんはツカツカと俺に近づいてくる。

 

そしてマドカに顔を近づけた。

 

「ひ…………」

 

そしてすぐに顔を離した。

 

「悪いけど、今はあなたたちの相手をしている場合じゃないの。帰らせてもらうわ」

 

「待ちなさい!」

 

 

ザッ!

 

 

鈴の声と共に、みんながISを展開した状態で現れた。

 

「手負いだからといって、容赦はしない!」

 

箒の声に、スコールさんはだから、とつぶやいてから笑みを消した。

 

「あなたたちみたいな雑魚に付き合ってられないって言ってるの!」

 

 

カッ!

 

 

『!?』

 

突然周囲が閃光に包まれ、その光の中から金色のISを展開したスコールさんが飛び出してきた。

 

「マドカッ!」

 

俺はマドカを庇うように立つ。

 

しかしスコールさんはそのまま俺の真横を素通りし、俺たちを見下ろす高さで浮遊した。

 

「あの化け物、早いうちに止めないと大変なことになるわよ」

 

「どういうことだっ!」

 

ラウラがプラズマ手刀を発振してスコールさんに突進する。

 

「ふっ!」

 

スコールさんが右手を前に突き出すと、ラウラの動きは突然止まった。いや、『止められた』。

 

「あなたたちを倒すことは簡単だけど、そうするとあの子が黙っていないから見逃してあげるわ。じゃあね」

 

そのままスコールさんは夜空に消えた。

 

「…………うっ!」

 

動きの停止が解除されたラウラはフラリと姿勢を崩した。

 

「ラウラ、大丈夫!?」

 

シャルロットがラウラの身体を支える。

 

「あ、ああ。問題ない。それより――――――」

 

ラウラは遠くに見える夜の空よりも黒い何かを見た。

 

「こちらに気づいているようだ…………」

 

「一夏、マドカ! 早くISを展開しろ!」

 

「う、うん!」

 

「わ、わかった!」 

 

俺とマドカは白式とバルサミウス・ブレーディアを展開して空中に浮遊する。

 

「みんな油断しないで! 相手は全くのアンノウンよ!」

 

楯無さんが俺たちに言う。

 

「……………」

 

そのアンノウンは俺たちを見たまま動かない。

 

 

フォンッ

 

 

『!?』

 

そして一瞬でその場から消えた。まさに瞬間移動と言える消え方だった。

 

「消えたっ!?」

 

セシリアが驚きの声を上げる。

 

「一夏っ! 上!」

 

鈴が俺に怒鳴るように叫んだ。見上げるとアンノウンが俺に大型ビーム砲の銃口を向けていた。

 

「ガァァァッ!」

 

放たれた真っ赤なビームはまっすぐ俺に迫ってきた。

 

「お兄ちゃん!」

 

 

バリバリバリッ!

 

 

マドカが俺の前にブレードビットを繋ぎ合わせたシールドを運び、ビームを受け止めた。

 

しかしビームの威力が強すぎて、ビットはバラバラに飛び散った。

 

「この距離なら!」

 

セシリアがスターライトmkVをアンノウンに向けて、レーザーを撃つ。

 

「ガァッ!」

 

アンノウンがそのレーザーに向けて左手を突き出した。

 

 

バチィッ!

 

 

するとその左手の前でレーザーは見えない何かに弾かれたように消えた。

 

しかし、その消え方には見覚えがあった。

 

「BRFですって!?」

 

瑛斗のG−soulのシールドに積まれているBRFと同じ消え方だった。

 

「セシリア離れろ! ビームが効かないのなら接近戦で動きを止める!」

 

箒が両腕に刀を構え、アンノウンに急速接近する。

 

「たあああっ!」

 

そして下から切り上げた。

 

「グゥッ!」

 

だがその刀はアンノウンの黒い装甲に包まれた拳に弾かれた。

 

「何だとっ!?」

 

「ガアァァァァッ!」

 

そのままアンノウンは姿勢が崩れた箒の紅椿の装甲に蹴りを叩きこむ。

 

「うあっ!」

 

「箒っ! この野郎っ!」

 

俺は雪片弐型を振り上げ、アンノウンに斬りかかる。

 

「ガゥゥッ!」

 

その斬撃は簡単に躱されて、アンノウンのパンチが白式の装甲を叩いた。

 

「なんなのよコイツ!」

 

鈴が衝撃砲を放ち、俺からアンノウンを引き?がす。

 

「落ちて…!」

 

そこに簪がホーミングミサイルを発射する。

 

だがアンノウンはビーム砲で全てのミサイルを撃ち落とした。

 

「みんな散らばって! アイツの攻撃を互いにカバーできる距離を保つの!」

 

楯無さんの指示で俺たちはアンノウンを囲むように周囲を飛ぶ。

 

そこで変化は起きた。

 

「ウッ………!」

 

突然、アンノウンのISが光り始めた。

 

装甲がせり上がり、青い光を放つ何かが露わになる。

 

「グアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

カッ!

 

 

青い光が爆発するように周りに広がった。

 

「な、なんだ!?」

 

咆哮の勢いに吹き飛ばされそうになり、バーニアを操作して姿勢を保つ。

 

その光が消えると、光の中心から黒いISが姿を現した。

 

背中には短い突起が左右に二つ。肩の装甲はさらに刺々しくなり、全身の装甲が飲み込まれそうな漆黒に染まっている。両腕にはクリアブルーの三十センチほどの大きさの結晶体が巻きつくように埋め込まれていた。

 

そして何よりも目を引いたのは、その装甲と装甲の間に走る青色のラインだった。

 

鼓動するように青い光を点滅させている。生き物みたいだ。

 

「まさか…一次移行…………なの」

 

シャルロットが震えるような声でつぶやいた。

 

「グオォォォォァァァァァ!!!」

 

アンノウンが咆哮をあげると結晶体が埋め込まれた装甲が音を立ててせり上がり、アンノウンの手首あたりに着いた結晶体はアンノウンの指を包むように固定された。

 

つまり、大型のクローアームになったんだ。

 

「ラウラ! 危ないっ!」

 

マドカが叫ぶ。アンノウンはラウラに右腕と一体となったクローを振りかざした。

 

「食らうかっ!」

 

ラウラはAICを発動してアンノウンの動きを止めた。

 

だけど、アンノウンはすぐに動いた。AICで止められているはずの身体を!

 

「なんだとっ!?」

 

「ガァァッ!」

 

ラウラは咄嗟に躱したから振り下ろされたクローはシュヴァルツェア・レーゲンの肩の装甲の一部を抉るだけにとどまった。

 

「しっ!」

 

アンノウンはそのままラウラから離れ、プラズマ手刀の斬撃を躱す。

 

「AICを跳ね返すとは…あの女の『化け物』というのは嘘ではなかったようだ」

 

ラウラは眼帯を外し、『越界の瞳』を露わにした。

 

「シャルロット! 瑛斗を所在特定信号で捜せ! 応援を頼む!」

 

「う、うん!」

 

ラウラに言われてシャルロットが瑛斗にサーチをかける。

 

その数秒後、シャルロットの顔が蒼白になった。

 

「そんな……嘘…!」

 

「どうした?」

 

「…いや………そんな…!」

 

シャルロットは小刻みに震えるだけでラウラの問いに応えない。

 

「シャルロット! どうしたんだ!?」

 

ラウラがシャルロットの身体を揺する。

 

「いま…瑛斗を捜したら………!」

 

震える人差し指をアンノウンに向けた。

 

「すぐ………そこにいるって…!」

 

「何だって!?」

 

俺はG−soulから発せられる信号をサーチした。そして、すぐに信じられない結果が出た。

 

《G−soul所在、七メートル前方です》

 

ウインドウに出たのは、そんなどうしようもない表示だった。

 

「じゃあ…それじゃあ、俺たちが戦ってるのは…………!」

 

アンノウンはまた目の前からフッと消えた。

 

そして俺の真上からクローを振りかざしながら急降下してきた。

 

 

 

「瑛斗なのか!?」

 

 

 

振り下ろされたクローが俺の目の前に迫った。

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