魔法少女リリカルなのはmemories 第五章 ベルカ時代の記憶(メモリー) 第六十三話
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「戦う前に話したいことはたくさんあるんだけど、それよりもフェイトちゃんの方が私に聞きたいことがいっぱいありそうだから、聞きたいことがあったら聞いて。今回だけは答えられる分だけ答えてあげるから」

「…………」

 

 なのはに対する警戒心は全く解かずのまま、フェイトはなのはを見つめていた。

 確かになのはに聞きたいことは山ほどある。どうしてこんなことを始めて、フィルノと共に行動し、そして人を殺すようなことをしたのか。正義感があるなのはがこんなことをするなんて思いもしていなかった。

 だからこそ聞きたい。管理局に敵対する理由を、そして人殺しをした理由を。

 

「…………」

 

 しかし、目の前になのはが現れていざとなると声が出てこなかった。何も難しい事を質問するわけではないのに、どこかで躊躇ってしまう自分が存在していた。

 それはどうしてか。フェイト自身は理解していないようであったが、内心の中で僅かながらもそれを知ってしまったら後戻りはできないような気がしたのであった。まるで、今まで信じていたものに裏切られるような感じであった。

 

「……そう、何も聞かないんだね。だけど、これだけは言っておくよ。二週間もしない内に歴史上に刻まれるような出来事が起こることをね」

「れ、歴史に刻まれるような出来事ってまさか――」

 

 いや、実際それしか考えられなかっただろう、管理局に敵対しているのならば、JS事件のような事が起こってもおかしくない。いや、もしかしたらそれ以上の事をなのは達はやろうとしているのではないかと思った。

 そしてなのはは、フェイトが思った通りの言葉を言い放つのだった。

 

「そう、二週間もしない内に管理局との戦争になるでしょうね。そしてそれによる犠牲者もかなり出るとは思うけど、それは仕方ないことであり、犠牲者が出ることも覚悟して私は今の状況にしているのだから――」

 

 それは、なのはが行方不明になっている間に決意したことであったのだろう。行方不明になっている間に真実を知り、そしてエメリアが居た研究所で初めて人を殺めたのだから。

 

「さて、そろそろ本題に入ろうか。こんなことしておいて唯話に来ただけっていう訳ではないんだから」

 

 その言葉を境に、空気が一変する。なのはは先ほどのように普通に話しているときと打って変わって、フェイトを敵対する人物として見ていた。ここからは管理局となのはやフェイルのが居る組織、ツュッヒティゲンの一員としての会話だとフェイトは察した。

 

「それで、なんで私がフェイトちゃんの前に現れたのかというと、フェイトちゃんが数日前から監視しているヴィヴィオとアインハルトを捕えにきただけなんだよね。本来ならば捕える必要なんてなかったのだけど、二人が自分の手元になかったら嫌な予感しかしないものだから」

「嫌な予感ってどういう事よ?」

「嫌な予感は嫌な予感だよ。何が起こるかなんて私ですら分からないし、別に二人を捕えたところで何かするつもりはないよ。だけど二人を管理局の近くに置いておくのは、こちら側として危険人物となりかねないから」

 

 どうしてという事をフェイトは聞かなかった。なのはが言っている理由も分からなくもなく、もしかしたら管理局側がヴィヴィオとアインハルトに対して何かされるかもしれないとなのはの考えであったのだろう。

 それはなのは側もするのではないかとフェイトは一瞬思ったが、そもそもなのはやフィルノ達の組織は研究所を幾つも破壊している時点でそのような人体実験をするつもりはないのだろうし、そうなるとなのはが言った言葉は事実であるんだろうとフェイトは思うのだった。

 しかし――

 

「だけど、もしなのはがそのためにヴィヴィオとアインハルトを捕えるかもしれないとしても、ヴィヴィオとアインハルトは私が守る。管理局にも簡単に利用させたりしないし、なのはに渡したとしても本当に何もしないかというのは分からないから渡さすつもりはない。そのために私は二人の近くに多くいることにしたのだから」

「……やっぱり、フェイトちゃんはそう言うよね。そういうと思ったから、このような状況を作らせてもらったんだけどね」

 

 刹那、空中に桃色の弾丸が無数に現れ、それはフェイト達を囲むように存在していた。

 そう、この付近の魔力濃度を高くしていたのはすべてはこのためであった。分散されていた魔力はすべてなのはの魔力であり、自ら分散させて魔力濃度が高いような状況を作っていたのだ。

 そしてその弾丸はフェイト達が避けようがないようにされており、防ぐしか方法がなかった。

 

「一応、これらはすべて非殺傷設定だから死ぬ必要はないのだけど、さすがに避けきれるかな? しかもヴィヴィオとアインハルトを守らないといけない状況であるフェイトちゃんに」

「くっ」

 

 事実だった。たった一人であったのならばなんとかなったかもしれないが、自分の近くには守るべきヴィヴィオとアインハルトの二人が居る。そのような状況で完全に防いだり避けたりすることは不可能であり、出来るとしても二人を守りきる事だけだった。

 なのはの狙いはヴィヴィオとアインハルトなので、たとえ自分が倒れたとしても二人を守りきればいいとフェイトは思うのだった。

 

「さて、戦う前にもう一度聞きますが、何か聞きたいことでもないのかな? さっきは何も言えなかったようだけど、本当は聞きたいことがあったはずだと思いますから」

「…………」

 

 なのははもう一度聞きたいことがないかとフェイトに問うが、それでもフェイトは何も言わなかった。

 それを見ていたなのはは一度ため息を吐きそして空中に浮いている弾丸をフェイト達に放とうとしていた。

 

「待ってくれませんか? 一つだけ、なのはさんに聞きたいことがあります」

 

 しかし、それを遮るかのようにアインハルトがなのはに話しかけていた。

 その言葉を聞いたなのははすぐに攻撃しようとするのを止めて、アインハルトの方へと顔を向けるのだった。

 

「……別に良いけど、一体何の話? どうでもよい話だったらすぐに攻撃に――」

「やっぱり、最初になのはさんに会った時から疑問に思っていましたが、今核心を持てました。どうしてあなたに疑問に思っていたのか」

「…………」

 

 アインハルトの言葉になのはは言わなかった。いや、まだこの時はアインハルトが何を言おうとしているのか分かっていなかったのである。

 だから今は何も言わずにアインハルトが何を言いたいのか聞くまで黙っている事にしたのであった。

 

「その答えは簡単だった。だって、なのはさんは私と同じようですから」

「っ!?」

 

 アインハルトがどういう意味で同じと言ったのかなのははすぐに理解していた。

 なのはとアインハルトの共通点、それはそれぞれが聖王オリヴィエと覇王イングヴァルトの子孫であるという事。まさか自分がオリヴィエの子孫だという事に気づかれるとは思っていなかったなのはは驚いていた。

 そして、その言葉を理解したのは二人だけではなく、フェイトもどういう意味でアインハルトが言ったのか理解していた。最初はアインハルトが同じって言った事に理解できなかったが、アインハルトが覇王イングヴァルトの直系子孫である事を思い出し、そしてフィルノと共に行動している中にオリヴィエに似ている人物がいたという事を考えて、一つの結論が出てしまったのであった。それは、フェイトが思いたくもなかった事実であった。

 

「ま、まさかなのはがあれを……」

「……もう、隠し通せるわけではなさそうだね。もういいわ。フェイトちゃんから記憶を消すわけにもいかないし、一々口調を変えるのがめんどくさかった」

 

 その言葉は今までのなのはの口調ではなくなっていた。容姿だけを見れば高町なのはだろうとは思うが、言葉を聞くと聞きなれた口調ではなくなっていた。それが今のナノハの口調であり、オリヴィエの意志を継ぐものであった。

 

「なのは……なんだよね?」

「確かに私は高町なのはではあるが、ナノハ・ゼーゲブレヒトでもある。れっきとしたオリヴィエ様の子孫であり、オリヴィエ様の意志を継ぐものよ」

 

 容姿はどう見てもなのはであるのに、声を聴いてしまうとどうしてもなのはに思えてなくなっていた。

 そもそもどうしてなのはがオリヴィエの子孫だったのか。オリヴィエの子孫は居るはずがないと思っていたし、オリヴィエの血が続いているのはクローンであるヴィヴィオだけだと思っていたのだ。

 その本人であるヴィヴィオはどういう事か理解できておらず、とりあえず黙ってナノハ達の会話を聞いている事にしていた。

 

「さて、正体もばれてしまったことですし、さっさと終わらせますか」

 

 そして、フェイト達に向けて先ほどから上空にあった弾丸を全て放つのだった――

説明
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

消されていた記憶とは、なのはと青年の思い出であった。

二人が会ったことにより物語は始まり、そしてその二人によって管理局の歴史を大きく変える事件が起こる事になる。

それは、管理局の実態を知ったなのはと、親の復讐のために動いていた青年の二人が望んだことであった。



魔法戦記リリカルなのはmemories ?幼馴染と聖王の末裔?。始まります。
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