ハイスクールD×D〜HSSを持つ転生者〜 第50話
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第50話〜ゲーム終了〜

 

 

一誠(いっせい)と匙(さじ)が殴り合ってから数分。未だに二人は殴り合っていた

 鎧を素手で殴っている匙の拳は、傷口が開き、血に染まっていた。

 体術は互角だが、攻撃力と防御力は一誠のほうが断然上だった。

 俺から見ても一誠のほうが有利だ。だが――

「…勝つんだ。…今日、俺はお前に勝って……夢の一歩を踏む…ッ!」

 今の匙を見ていると、もしかしたら匙が勝つんじゃないかと思ってしまう。

 そのぐらい今の匙は、強い。一発一発に匙の思いがこもっていた。

 

 アザゼルが言っていたが、こもった一撃はどんな強固な鎧でも生身まで

 ダメージを与えることができるらしい。

 そのときは信じられなかった。でも、今なら信じられる。目の前にその

 こもった一撃を放っている奴がいるからな。

 匙は…きっと強くなっている。この戦いのなかで…!

「兵藤ォォォォォォォッッ!」

 匙と一誠は、再び打撃戦を始めた。

「ひとつ聞かせろォォォォッ! 主のおっぱいはやわらかいのか!? マシュマロ

 みたいって噂は本当か!? 女の人の体は崩れないプリンの如くというのはマジ

 なのか!?」

 さっきの決意の眼差しはドコへやら、嫉妬の炎を激しく燃やしながら

 殴っていた。

「おっぱいを揉んだとき、どう思ったんだよ! ちくしょぉぉおおおおっ!!!」

 ……お前ら二人は、本当に似ているぞ。

「……二人とも、スケベな先輩ですね」

 小猫が痛烈なツッコミをしていた。俺も思ったよ、小猫。

「……クリス先輩は、あんな風にはならないでくださいね?」

「…俺は、絶対にあんなにならないぞ。なったら、小猫に嫌われるからな」

 俺の言葉に小猫の顔は真っ赤になった。真っ赤になった小猫も可愛いよ。

 

「でもな兵藤! 一番はおっぱいじゃない! 先生だ! 先生なんだよ! 俺は先生に

 なっちゃいけないのか!? なんで俺達は笑われなくちゃいけない!?」

 匙は俺達――いや、これを見ている多くの者に向かって吼えた。

「俺達の夢は笑われる為に掲げたわけじゃないんだ………ッ!」

「俺達は笑わねぇよ! 命かけているお前を笑えるはずねぇだろうがよッ!」

 ああ、俺達は笑わない。むしろ応援したいぐらいだ、匙。

 向かってくる匙に、一誠はこれでもかってぐらい殴った。

 顔は腫れあがり、歯は折れ、口からは血が垂れ落ちている。

 しかし、匙はそれでも一誠に向かってくる。なんて気迫なんだ…!

「今日! 俺は! お前を超えていくッッ!」

 匙の叫びは、一誠の心に重くのしかかった。

 それから一誠は殴り続けた。

「ひゅー………ひゅー……」

 匙はもう、限界のはずだ。肋骨が折れ、肺に穴が空いても、匙は向かっていく。

「来いよ、来いよ匙ィィィィィッ! 終わりじゃないだろ!? 俺達バカができる事

 なんざ、ただ突っ走ることぐらいしかできないもんな!」

 匙は、向かっていく。ボロボロなのに、向かっていく。これが、俺の戦いだと

 言わんばかりに…

 

「兵藤ォォォォォォッッ!!」

「匙ィィィィィィィッッ!!」

 二人は同時に殴りあった。

 完全に顔面を捉えた一誠の拳に、匙の意識は完全に絶った。

 それでも、匙は一誠の右腕を放さなかった。意識が無くとも、匙は闘っていた。

 この戦いでは匙の負けだ。でも、心では匙の圧勝だと思う。

 匙は光に包まれて、消えていった。

『ソーナ・シトリーの『兵士(ポーン)』一名、リタイア』

「クリス、小猫ちゃん。手を握ってくれないか?」

 一誠は無理矢理笑顔を浮かべながら言った

 俺達は一誠の手を握る――震える拳を抑えるように。

「初めてなんだ、ダチをぶっ倒したのは。わかっていたけど……」

 兜を収納させた一誠の目を真っ直ぐ見ながら言った。

「一誠、お前はよく頑張った」

「かっこ良かったです。イッセー先輩」

 俺達の言葉で、一誠の震えは止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 匙との死闘が終わり、俺達は水分補給をしていた。

 さっきアナウンスで俺達の『騎士(ナイト)』一名がやられた。

 そのときもベルセの血流が流れたが、抑えた。

 祐斗がやられたというのは、可能性が低い。多分、ゼノヴィアだろうな。

 相手がカウンター系の神器を持っていたのなら、ゼノヴィアには辛いしな。

 因みに、一誠の右腕には匙のラインがある。どうやら、敵本陣にまで続いている

 らしいが、まだ消えない。

 その時、通信機器から連絡が来た。

『オフェンスの皆、聞こえる? 私達も本陣に向けて進軍するわ』

 部長も動くのか。終盤だな、俺達も敵本陣へ向かうか。

 

 

 

 

 

 

 

 デパートの中央広場に着いたとき、俺たちは歩を止めた。

 そこには、敵総大将の会長がいたからだ。

「ごきげんよう、兵藤一誠くん、神矢クリスくん、塔城小猫さん。なるほど、

 これが赤龍帝の姿ですか。凄まじいほどの波動を感じますね。誰もが危険視する

 のは当然ですね」

 冷静な口調でいう会長。

 あの会長が前に出てくるとは…策士の会長の事だ。これには、裏がある。

 会長は結界に囲われていて、その結界を発生させているのは生徒会『僧侶』

 二名。その内の一名に、ラインが繋がれていた。

 祐斗も俺達とは逆方向から現れた。やはりやられたのはゼノヴィアか…。

「…ソーナ、大胆ね。中央に出てくるなんて」

 その声は…部長か。朱乃さんやアーシアもいる。

 その時――一誠が膝をついた。…一誠?

 さっきからふらついていたが、これは…貧血の症状だ。

 まさか…!

 俺は、三つ編みを解き消滅の力を鎌の刃に纏わせ、ラインを斬った。

 そのラインから血が吹き出る。

 それを見て、俺はわかってしまった。

「会長。これがあなたが考えた赤龍帝の倒し方ですね?」

 俺の言葉に会長は冷笑を浮かべた。

「そうです。神矢クリスくんの言うとおりです。人間をベースの転生悪魔。

 半分の血を失うと致死量です。戦闘不能になると、医療ルームに強制転送

 されます」

 匙は…これを狙っていたのかよ。

 

「もう手遅れです。あなたは医療ルームに転送させるほどの血を失いました」

 俺達は裏の裏を読まれていたってわけだな。

 会長の視線が一誠と俺に移る。

「サジは――彼はずっとあなた達を超えると言っていました。サジにとってあなた達

 は同期の『兵士(ポーン)』であり、友人であり、超えたい目標だったのです」

 一誠に向ける匙の気迫。明らかに高密度だった。

 俺は! お前を! 超えていく!

 匙の言葉が脳裏で蘇る。そうか、そうだったのか。

 なぁ匙。今回はお前の勝ちだ。一誠はお前の攻撃だけでリタイアになりそうだ。

 だが、一誠がただでリタイアになると思っているのか?

「高まれ! 俺の欲望ッ! 煩悩開放ッッ!」

 赤いオーラが一誠を包み込む。…何をする気だ? お前は

「広がれッ! 俺の夢の世界ッ!」

 一誠を中心に謎の空間が展開する。女性陣は身の危険を感じたのか、身を守る

 格好をしていた。

 一誠が会長に質問した。

「あなたは今、何を考えている?」

 会長は何も喋っていないのに、勝手に頷いていた。

「ソーナ会長。いま俺の新必殺技は心の声を聞けるものだと思いましたね?」

 その言葉に会長は酷く驚いていた。

「これが俺の新技! 『乳語翻訳(パイリンガル)』ッッ! 質問すれば、偽り無く

 おっぱいが話してくれます! 相手の心がわかる最強の技なんです! うぅ、

 血が足りない…」

 

 一応、一誠がある意味最強の技を放ったときに俺は会長の本当の居場所が

 わかった。

 結界について調べたら、精神だけをここに置いて、あとは立体映像らしい。

 仙術を完全開放して気を探ってみると、会長は屋上にいた。

 俺が屋上へ向かおうとしたとき、一誠は倒れた。

「イッセーさん!」

 アーシアの回復能力が周囲に広がっていく。だが、一誠には意味が無いんだ。

「これを待っていました! 『反転(リバース)』!」

 淡い緑色の光が攻撃的な色に変わった。

 アーシアはそれをまともにくらい、消えていった。

 リバースを使った『僧侶』の人も消えていった。同士討ち、か。

 一誠も光に包まれて消えていった。

『ソーナ・シトリーさまの『僧侶』一名、リタイア』

『リアス・グレモリーさまの『僧侶』一名『兵士』一名、リタイア』

 ドクンッ!

そのアナウンスが聞こえたとき、ベルセの血流が流れ出した。

 もう、抑え切れない。

「……先輩? どうしたんですか?」

 小猫が心配そうに訊いてくる。

 

「何でもねぇよ、小猫。俺は会長を屠ってくるから待ってろよ?」

 俺は一気に駆け出した。まずは、反転を持っている『僧侶』を殺る。

 そのとき、朱乃さんがその『僧侶』に向かって雷光を放った。

 ちっ! あのままじゃ、俺までくらってしまう。厄介だぞ、S状態の朱乃さんは…!

 俺は鎌の刃に纏わせていた少量の消滅の力を、今度は大質量にした。

 そして、鎌を回す。

 すると、消滅の力が鎌全体に広がり、盾のようになった。

 ヒュンッ! ヒュヒュンッッ!!

どうやら、鎌の先端が音速を超えたらしいな。

 ドォォォォォォオオオオオオオオオオオオンッッッ!!! 

雷光が消滅の力に衝突し、消えた。その間に、俺の後ろにいた生徒会の『僧侶』を

 斬った。

「早い…」

 そう一言だけ漏らすと、光に包まれて消えていった。

『ソーナ・シトリーさまの『僧侶』一名、リタイア』

 まずは一人。次は、副会長の真羅先輩だな。あれを使うか。

 でもその前に、祐斗に言っておいたほうがいいよな

「祐斗。あれは…俺が使っていいか?」

 俺の言葉に祐斗は頷いた。

 

「そうだね、使っていいよ。真羅先輩も倒しちゃってくれないかい?」

「やってやるさ。――ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、聖母マリア。

 我が声に耳を傾けてくれ!」

 空間が歪み、裂け目が生まれた。俺はそこに手を突っ込む。

 これは――唯一、ベルセを止める方法だ。

「?でしょう!? そんなことが!」

 真意を知った先輩が驚愕していた。

 ゼノヴィアと祐斗のおかげだ。ゼノヴィアがこれの使用方法を教えてくれたから

 できるんだよ! お前の無念、ここで晴らす!

「聖なる刃に宿りしセイントの御名において、俺は解放する! 来い、デュランダル!」

 左手にデュランダルを持ち、俺が創造したデュランダルを右手に持つ。

 前代未聞の聖剣デュランダルの双剣だ。

 そして、今の俺は、ヒステリア・パラディン。聖剣専用のHSSになっている

「! あなたには、聖剣が扱えるはずは…!」

「先輩。あなた方には敗因が二つある。一つは、最新の情報を得ることができな

 かった事。二つ目は、俺の怒らせた事だ…!」

 右のデュランダルは静かになっている、波動も出ていない。完全に扱えている

 証拠だ。

「いくぞ」

 言葉を合図に、左右のデュランダルが聖なる波動を纏い始めた。神々しい光だ。

「デュアル・デュランダル! いけ…!」

 二つのデュランダルを重ね、相乗効果より強大になった波動が先輩を襲う。

 先輩はリタイアの光に包まれて、消えていった。

 波動は先輩を襲っただけで、周りはドコも壊れていなかった。

『ソーナ・シトリーさまの『女王』一名、リタイア』

 

「はぁ…はぁ…はぁ」

 少しばかり疲れたが、まだいける。

 左右のデュランダルは出番が終わったとばかりに消えていった。

「やっぱりクリスはすごいね。デュランダルを完全に使いこなすって」

 祐斗が話しかけてきた。

「いや、俺はまだデュランダルの実力を半分も出していない。ていうか

 出せなかった…」

 

 俺は息を整えると、会長の待つ屋上へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デパートの屋上。そこに俺達は集まっていた。

 俺は会長に訊いた。

「『王』は最後まで残らないといけないから、ここにいたって訳だな。さぁ、

 王手(チェックメイト)だ。大人しくとられな」

 俺の言葉に会長は苦笑した。

「いやですよ。私達は必死でこのゲームに勝とうとしているのだから」

 会長は水の使い手だ。ちなみにレヴィアタン様は氷の使い手だとか

 普通は、眷属の誰かが行くべきだが…ここは、部長に任せるか。

 部長が一歩前に出る。一騎打ちする気だな。

 それから、部長と会長の一騎打ちがはじまった。

 二人はさまざまなものを魔力で作り出し、ぶつけ合った。

 最後は二人同時に攻撃を仕掛けたのだった。

 

 

 

『投了(リザイン)を確認。リアス・グレモリーさまの勝利です』

 いろいろ壮絶だったゲームが終了した。俺達の勝ちという結果で

説明
神様の悪戯で、死んでしまった俺―――神矢クリスはハイスクールD×Dの世界に転生した。原作の主人公、兵藤一誠らに会っていろんな事に巻き込まれる。
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