マクロスF〜とある昼行灯の日常〜
[全1ページ]

【いつもの日常からの変化@】

 

 

 

「…はい、これで彼の情報は全部。フロンティアの主回線に紛れ込んで、あるだけの情報を集めたけど…それをどうするの?」

 

「ありがとう、グレイス。ちょっと、ね」

 

 

ふふふ。ようやくグレイスに頼んでいた情報が揃ったようね。

全く、この私を5日も待たせるなんて。

 

あの後、チャットを繋いでいた端末を間一髪でハッキングし、そしてそのままフロンティアの主回線にグレイスの回路を紛れ込ませ、彼のことを徹底的に洗ってもらったの。

 

その成果が漸く…。

 

 

 

「『S.M.S.』所属、鉄 ダイチ。年齢28歳、階級は中尉。バルキリーの予備パイロット。嗜好はお酒、趣味はドライブに昼寝…って!半分以上どうでも良いことじゃない!ここまでしか分かってないの?」

 

「無茶言わないでちょうだい、本来この『S.M.S』は傭兵部隊でその本質は極秘扱い、表立って活動しているわけじゃないの。新統合軍と違って情報はあまり出ていないのよ」

 

「ふ〜ん…傭兵部隊、ね…」

 

 

傭兵、か。あの時彼、『食いっぱぐれの無さそうな』って言ってたわよね。

地獄の沙汰も金次第ってことか。

ならば。

 

 

「傭兵なら、お金で動くってことでしょ?彼一人とバルキリー。1000万クレジットあれば足りるかしら」

 

「シェリル、あなた…」

 

「勘違いしないで。これは私の舞台を彩るための演出の為。貯蓄もあるし公演とアルバム発売で印税が入ってくる。元はすぐに取れるって算段よ」

 

 

そう、この方法ならば両方共に利があると言えるわね。

私ならば、彼に私自身の魅力を叩きつけてあげ、その後奴隷のように扱ってあげる。

そして彼は、私にレンタルされることでお金ももらえるし私という知り合い(ご主人様)も作れるのよね!

 

ふっふっふ、見てなさい…

 

 

この私に跪くのよ、鉄 ダイチ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「シェリル…言いにくいのだけど、貴方悪人みたいな顔してるわよ?」

 

 

し、失礼な!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第2ミサイル管制室兼スネーク小隊所属、鉄中尉入ります」

 

「ああ、入りたまえ」

 

 

ったく、ジェフリーの旦那ってば、何の用だ?

艦橋に呼ばれるのは、オレの階級では珍しいことだ。

しかもスネークリーダーのジェシカじゃなく、オレだけを呼ぶってのは…何かあるな、こりゃ。

 

ちょっとやそっとじゃあ驚かねぇつもりだけどよ、それでも艦長に呼ばれるってだけで緊張してくらぁ。

 

 

「最近の訓練はどうだね?」

 

「はぁ、オズマ少佐に叩かれるだけ叩かれる毎日です。もうこの年齢になると質を落とさないように神経削る毎日ですな」

 

「ははは、そうかね。中尉のことは新統合軍時代からよく知っている。腹を割って話したいところだが…」

 

 

ちっ、いやなところで話を切りやがるな。今の会話は前菜に過ぎねぇってのが強調されてて嫌な感じだ。

 

 

「用件について話そうか。いつまでも中尉を緊張させっぱなしにするわけにもいかんからな」

 

 

早く早く。ハリーハリー…

 

 

「どうぞ、紅茶をお持ちしました」

 

 

ぐ…またいいタイミングで流れをぶった切ってくれるな。

このオレンジ色の髪の娘はモニカ・ラング。オペ娘3人衆の一人だ。

っておい。オレを見るときと艦長を見るときの温度差は何だ!?

ムカツクが顔に出したら最後、オペ娘3人があること無いこと言いふらしてオレがバカを見るのが目に見えてる。ここはガマンだ…

 

 

「ありがとう、モニカ君」

 

「ひゃっ…」

 

 

ってこら、オレの目の前で堂々とセクハラしてんじゃねぇよ。

尻触って喜ぶ女性なんざ一人もいねぇ…ってモニカちゃんよ。

何頬赤らめてやがる?

何喜んでやがんだくそったれ。

 

リア充か?彼女いねぇオレへのあてつけか?

 

 

「おおっと、話をもどそうか」

 

 

さっさと言いやがれ。いい感じに緊張は解けてきたし、話も今なら頭に入らぁ。

つーか、さっきまで女のケツ触ってたのを微塵も感じさせねぇのは流石だ。男として尊敬できるな。

 

 

「大統領府から直電があった。S.M.S.所属、鉄中尉。バルキリーを以ってシェリル=ノームのコンサートの演出に参加せよ」

 

「はぁ?」

 

 

…何言いやがってんだこの人…

てか、シェリル何とかって誰だよ?

どこぞの有名人か?

 

 

「ふむ、その顔ではイマイチぴんと来ていないようだ…ミーナ君、中尉に情報を頼む」

 

「はい、艦長」

 

 

割り込んできたのはオペ娘3人衆の一人、ミーナ・ローシャンという女だ。

何でもすっげぇビンタ(頭)良いって噂なんだが…天然入ってそうな感じだ。

だが時折出すニヤッした笑み零すのは止めてくんねぇかな…寒気がしたのはオレだけじゃないはずだ。

 

うおっ、画面出す時は出すって言えや!びっくりすんだろうが。

 

 

「シェリル=ノーム。ギャラクシー船団出身の17歳。幼少の時から歌手としての活動を開始、今や『銀河の妖精』の名を冠するトップアーティストへと成長。現在異船団訪問コンサートの最中で、次の目的地はアンドロメダ船団の予定。中尉はバルキリーにて単独フォールドを決行、こちらの時間で約1週間後にアンドロメダ船団に到着、合流した後任務開始となります」

 

 

……

………何だこの任務…

 

アイドルだぁ?バカか!?

んなもんに構ってるヒマあったら酒かっくらって寝るわ!

所詮アイドルなんざオレ達パンピーの手の届かないところにいる存在だろ。

御伽話の主人公に会うようなもんだ、何を話せっちゅーんだ?!

 

…そうだ、拒否しよう。

任務を選べるからこそのS.M.S.なんだ、それが良い。

 

 

「鉄中尉。この任務に関しては拒否権は無いのだよ」

 

 

終わった。

もういいや、シェリルとかなんとか言うガキのお守りって思えばいいんだな。

それよか任務は演出って言ってたし、本人と顔合わすことも無いだろ。

 

 

「ふむ、言い忘れていたが、ボーナスとして中尉に150万クレジットが支払われる」

 

「喜んでやりましょう、艦長閣下」

 

さっすがは艦長、話が分かってんね!ノーギャラならノーサンキューってとこだがこれほどの好条件を出されちゃあ嫌とは言えねぇわ。

 

要はポジティブに、てことだな!

任務にだけ集中して、打ち上げとかあっても端の席でちびちびやって適当な時間にドロンすればいいってこと。

 

うほ、何か夢が広がってきたな!!

150万…何に使おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ…分かり易」

 

 

ラムちゃん?オレは今は機嫌が良いから何も言わないよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【いつもの日常からの変化A】

 

 

 

もう座りなれたバルキリーのコクピットの中。

オレはマニュアル通りの手順でバルキリーを目覚めさせる。

 

コクピット用アーマーを座席、ペダルに固定、乗機及び接続正常が確認されたならば手元にレバーが上がってくる。

左手でレバーを握り、認証。

と、同時に右手でメインスイッチを全てonにしていき、全てに光が灯るとモニター上の文字が『stanby』から『ready』に変化する。

よし、発進準備完了っと。

 

 

 

はぁ、相変わらず手間だな。

最初の頃は物珍しさもあり、嬉々として触ってた記憶があるが、今となっちゃあ只の一連行動に過ぎん。もうちょっと簡略化されればな…今度ルカにでも相談してみるか。

 

 

 

 

今回の任務は、戦闘行動じゃなく広報活動に近い。

だからアーマードやスーパーパックは装備せず、補助用アフターバーナーのみの装備で身軽に行けるのは有り難い話だ。バーナーにしてもタダじゃないっつーのに、銀河の妖精とやらは随分金持ってんな、くそ。

 

あの後冷静になってよくよく考えてみたら、150万クレジットのボーナスで喜んでたオレに腹が立ってきた。

相手はオレよりかなりの年下、なのに1000万以上の金を即金で出すくらいの大物。

 

銀河でトップクラスのシンガーともなればそりゃあ分かるけどよ…あまりにも理不尽すぎんだろ。

ま、分相応って言葉があるように、向こうには向こうの、オレにはオレのお似合いな立場ってもんがある。世の中の理不尽さを呪うのはここまでにしておこうか。

 

その金持ち少女は今、チャーター機に乗って先にアンドロメダ船団に移動を開始しているとか。

ぼやぼやしてたら雇用主の機嫌を損ねちまうってか?

 

 

よし、そろそろ行くか。

 

 

 

「スネーク2、鉄中尉出る」

 

 

アンドロメダに着くまでの数日間、宇宙観光としゃれ込みますか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ?ダイチが広報活動ですって?!」

 

「お、落ち着けジェシカ。これには深いわけがあってだな…そもそも先方からのご指名だってことらしい」

 

「だからってスネークリーダーの私に一言も無いのは何故なんですか!?ていうかこの2日間姿も見なかったし」

 

「だ、ダイチの野郎が臨時ボーナスが出たって騒いでてな…そのままオレとランカを連れて遊びに、な。まさかお前に報告していなかったとは知らなかった」

 

「わ、私を無視するなんて…!」

 

 

…おいおい、ダイチよ。

お前マジか?

 

普通フロンティアから離れる時はいついかなる場合でも直属の上司に報告するのが筋ってもんだろ。

確かに、個別指名されて胡散臭いような任務、そして艦長からの直々のお達しだ、舞い上がるのは仕方ないとしても…お前、本当に元新統合軍の軍人なのか?

オレも自信無くなってきたぜ…

 

 

「かーっ、ダイチなんかに本当に務まるんですかい、この任務。あいつにはどう考えても向いてないでしょうに」

 

「そう言うな、ギリアム。戦闘行動ならまだしもコンサートの一つの演出の為だそうだし、そんなに難しいことはないだろう」

 

 

…逆だと思うが、あえて口ではそう言っておく。

あいつの戦闘能力はオレと同等。いや、上をいくかもしれん。

ただ、ダイチが本気になることは滅多に無い…あの圧倒的な力を示せば、今の小平和な世の中では浮いてしまいがちになるからか。

いや、ダイチのことだ、大方面倒くさいとかそんな下らん理由なんだろう。

 

ギリアムはS.M.S.の古参のパイロット。途中から新統合軍から移籍してきたダイチには思うところがあるのだろう、よく絡んでいるのを見かける。

悪いやつでは無い、腕も立つ。

ただ折り合いが悪いんだろうな。

 

オレがそう考えている間も、ギリアムが話題を変えジェシカの元に移動していく。

 

 

「なぁ、ジェシカ。今度飲み行こうぜ〜?小隊内の団結よか他小隊とのコミュニケーションも必要だろ?な?」

 

「ギリアム大尉。私は…」

 

「ははっ、慌てる表情を魅力的だな。あんな昼行灯より楽しくしてみせるぜ?オレぁ」

 

「……」

 

「そんなに睨むなって。所詮昼行灯は昼行灯だろうが。締りが無ぇったらよ。オレならその点…」

 

 

あーあ、一回振られたことあるくせに良くやるよな、全く。お前妻帯者だろうが。

お前が幾ら押したところで、ダイチがいる限りジェシカはお前には靡かんだろうよ。

つーかギリアム、お前昼行灯て言葉の意味、知ってて言ってんのか?

大方新統合軍の知り合いから聞いたんだろうが、『存在薄い・役に立たない』って表向きの意味合いじゃあない。

確かに、照明(行灯)は昼に見ても誰からも気にされることは無い。

だが、夜ならば?

そしてダイチにとって夜を示すのは?

今の仮初の平和であれば、示す必要もない。お前も、そしてオレも…な。

 

 

「お、噂をすれば」

 

 

廊下の先のモニターから、ダイチが乗っているバルキリーの情報が流れてきた。

1回目のフォールド成功、か…

次元断層の奥に行けば行くほど通信が届きにくくなり、こちら側が掌握するのが難しくなる。

 

心配はいらんと思うが、気をつけろ、ダイチ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デフォールド完了、後は直線上にある時空断層をうまく小規模フォールドすれば予定通り到着だな」

 

 

ふい〜、やっぱ慣れねぇな。

真っ暗な宇宙空間を、ナビがあるとは言え単機で移動するんだ、何らかの事故も否定できねぇわな。

 

この後は次のフォールド予定地点まで自動操縦、そして索的敵レベルを最大に。

んでオレは寝る!

 

オズマとランカちゃん引き連れて遊びに行ったのは良かったが徹夜で飲んだのが失敗だったわ。

二日酔いは無いとはいえ、多少の影響が身体の節々に…

くそ、5歳若ければこんなことには…!!

 

 

力んだってしゃあない、シートを倒して、足以外のプロテクターを外して、と。

 

おやす『warning!warning!』…はぁ。

シートを起こしてモニターを見る。

丁度直線上の宙域からunknownの信号を確認、と。

 

やれやれ、プロテクター装備、戦闘行動は回避し隠密行動を最優先…

 

お、ちょうど良い具合にデブリが。

あそこでやり過ごすとしますか。

ファイター形態からガウォーク形態へ移行、四肢をデブリの表面に押し付け、頭部だけを出すようにして様子を窺う。

 

 

あ、その前に。

 

 

『無人偵察カメラ射出』

 

 

これをあのポイントに…よし、設置完了。

 

ついでに遠隔デコイも射出しておくか。

いざという時にはコイツを囮にして少しでも有利になるよう心がけないとな。

 

 

再接近まであと7分。

頼むから気づかずに行ってくれよ…

 

 

 

この10数分後、この願いは儚くも崩れ去ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【いつもの日常からの変化B】

 

 

 

「え?」

 

「どうしたの、シェリル?」

 

「…ううん、何でもない」

 

「そう…」

 

 

どうしたのかしら、今何か妙な胸騒ぎを覚えた。

 

今、私達は護衛機に守られながらチャーター機を使ってアンドロメダ船団へと向かっている。

私達に危険は無いはずだけどね。

目的地、もうちょっとで肉眼で見えてくるとのことだけど…

 

 

「シェリル、見えたわよ」

 

 

グレイスが窓際の席から姿勢を崩して私に見せてくれる。

特別な材料で作られている、一昔前までは有り得なかったらしい文明。

 

宇宙船団。

 

 

新天地を求め、宇宙を旅する。

 

それは人類の願い。

 

いいえ、人類だけじゃない…他の生命体も本能で願っているのかもしれない。

その生命種が生き残る為…どんなに泥を啜り、血で身体を染めようとも。

 

 

この広大な宇宙…人類だけしか存在していないとは、誰も断言できないのよね。

 

っ…!!

 

 

「来た!!!グレイス、メモとペンを!」

 

「はい、こちらに」

 

 

このように、私には感情が限りなく不安定になり、そしてある一定の瞬間を迎えた時にインスピレーションが沸いてくるの。これは…人間の、いえ、生物としての本能。

それが私は普通の人より強いのかもしれない。

 

私は、次々とあふれ出す詞を書きとめながら、頭の隅でずっと考え続けていた。

人類が向かう未来、私達の生存、そして…

 

 

 

 

 

この歌のタイトルは…『ライオン』で決まり!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す〜っ……はぁ〜〜……」

 

 

もう少し。

もう少しですれ違う。

自動CPの予想はドンピシャリ。ほぼ直線でこちらに向かっている。

あと1分。

 

 

………

……………?!

後ろ!!

 

 

「どわっ!?」

 

 

くっそ、いきなり射撃を受けた!

おかしい、じゃあさっきまでの反応は?!……ちっ、オレとしたことが、あちらさんのデコイにすっかり騙されたって訳か!

あくまで狙いはオレだったということ。

 

紫?まだ視界に入ってないが、一瞬だけ光が見えた。

まだ後ろを取られている。闇雲に動き、狙いをずらすしか今のところ手段が無ぇ!

 

 

「くっ?」

 

 

緊急離脱した先に弾幕を張られていた!

緊急移行、そして緊急バーナー点火!!

 

ガウォークからファイター形態に、最大戦速を以って離脱する!

 

 

『ALERT!ALERT!』

 

 

やっべ、ミサイルの照準に入っちまった!

迎撃かデコイの影に入って振り切るしか無ぇ。

 

更に加速…

 

くそったれ、後手に回ってばっかだ。

相手はかなりの腕の持ち主、だが。

 

 

「ここだ!!」

 

 

誘導ミサイルがオレの機体の後ろに一直線に並んだ今!

 

 

ファイターからバトロイドに形態移行。

ガンポッドを3発発射する。

その隙に相手機を探知、オレの左後方上、距離350。

 

 

ミサイルに着弾し、周りを巻き込んで爆発、大きめの爆炎ができた。今だ!

 

そこから敵機のファイター形態の下方に逆噴射、下を取った!

 

 

「今までの分、借りを返させてもらう」

 

 

ほう、相手もバトロイドに形態移行したか、だが遅い。

 

 

 

「うおりゃあああああああ!!」

 

 

 

ライフルを三点斉射で5連続射撃、相手を牽制しながら高速で近づく。

一閃!!

 

オレの左手に握られた一振りのナイフが相手の装甲を傷つける。

交差し、抜け出してその後急速方向転換。

ペダルを微調整、今度は足からの噴射を利用して更に近づき斬り付ける。

 

 

チィィィィッ!!

 

 

まるで火花が散っているかのような刃と刃。

一瞬だが相手の機体の全容が視認できた。

 

 

「っ!?」

 

 

何だ、この機体…見たことが無ぇ。

おそらく、見ただけでも出力やスピード、装甲からしてVF-25よりも高性能なのは間違いない…

これほどの機体を作れる技術…まさか!?

 

なんて考えてる暇は無ぇ、デコイを使って牽制、誘導ミサイル数発発射。

と同時に右手にガンポッドを装備、射撃する前動を見せる。

 

くはっ、馬鹿正直なこって。

射線をずらし、奴から少しずれた方向に数発射撃、そこには宇宙空間を彷徨う小型のデブリが浮いている。

表面を削り、それなりの勢いで小片が飛び散り、回避しようとしていた敵機へと降りかかる。と同時に、デコイからの誘導ミサイルが飛び込んでくる。

さて、どう出る?

 

【……】

 

 

ほぉ、デブリには見向きもせずに誘導ミサイルに対してアンチミサイルアタック。頭部銃からの射撃に加えてライフルでも、か。

げ、更にはデコイまで丁寧に潰してくれやがった。

てかあのライフル、威力ありすぎじゃね?最初にアレで襲われてたら無傷じゃすまなかったかもな。

 

と、それまでの間の数秒の内にデブリの影で狙撃体勢を作り終えたオレが奴に向かい、3発の射撃をかます。1発は正面、残りは左右に。そしてその間に這ってデブリの裏に回り、そこからどう動くか、視覚モニターを凝視する。

 

「な…?」

 

…化け物ですか?普通銃弾をナイフで打ち落とすなんざ、人の業とは思えねぇよ。

こちらはフォールドエンジンの波動を無くし、腕部にのみ手動で操れるようにコマンドしている。探知には引っかからないはず…

 

 

しばしの沈黙。

 

 

今度は相手の方が方向転換、ライフルを乱射した後ファイター形態に移行し飛び去っていく。

 

 

「ふぅ…」

 

 

逃げられた…いや、何か急に戦意が無くなった感じがした。

何者かに指示された…か?

 

 

「っと…」

 

ナイフのエネルギーを解き、辺りに索敵レーダーを走らせる。

この宙域に機体や生物反応は無し…今度は間違いないみたいだ。

 

念の為、無人カメラを回収する。映っていればいいが…

解析…ん、一応映っちゃあいるな。これで一応のデータは抑えれた。

デコイはさっき確認したとおり爆散してる…参った、ジェシカに何て言われるか…

 

やれやれ、これは任務外だぜ?ジェフリーの旦那…

 

いざと言う時のために、武装解除してこなくて良かった。

消費は出来るだけ少なめに抑えた、エネルギーもナイフにのみ振り分けたから問題ないはず。

 

 

 

「アンドロメダで補給、できっかな…?」

 

 

はぁ、まだ始まってもいないのに初っ端から疲れた。

頼むからこれ以上は何も起きないでくれよ?

 

 

「フォールド開始」

 

 

最終フォールドだ、これで目的地まで次元断層は無いはず。

 

妙なヤツに会わないよう祈るのみ… 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※  ※  ※  ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのパイロット…できる」

 

『何をしている、奴の能力は測れたのか?」

 

「いえ、予想以上の錬度でした…危うくこちらが」

 

『何だと…分かった、本格的に仕掛けるのはまだ早い。帰参せよ』

 

「了解」

 

 

説明
オズマに鍛えられ、ジェシカに追い掛け回され、そしてオフは悠々自適に過ごす。

そんなダイチに、平和な日常から蹴り出されるような任務が舞い込む…
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
12598 11826 5
コメント
コメント、ありがとうございます。励みになっています、これからも宜しければ読んでやってください^^(これっと)
初めて読ましていただきましたが、とてもレベルの高い作品で面白かったです!これからも更新頑張ってください(キシメン)
更新お疲れ様です(フル)
コメント、ありがとうございます^^25回目の正直でエラーが出ることなく更新できましたw次回更新は今月中にする予定です。(これっと)
きたぁ!まってました!次からはシェリル編ですね、楽しみです(ピキュルー)
いや〜〜〜〜〜〜面白かった。次の更新も楽しみにしています。(w)
更新お疲れ様です。次回更新も楽しみに待っています。(t-chan)
タグ
ほのぼの コメディ ときどきシリアス マクロス 主人公←複数? 友情 戦争 歳の差? 

これっとさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com