魔法少女リリカルなのはmemories 第五章 ベルカ時代の記憶(メモリー) 第六十八話
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 時間ははやてがカリムが居る部屋を出て行ったときまで少し遡る。

 はやてはセインに連れていかれて聖王教会を後にしようとしていた。

 

「本当に今の聖王教会は忙しそうやな。カリムと少ししかお話が出来なかったっていう事を考えるに、やっぱり今来ている聖王を模した彼女が問題なのか?」

「そうですね。管理局から彼女の事を聞いたときも少し動揺が走りましたが、今回はさらにすごかったです」

「そうやろうな。早く今までみたいに平和な日々に戻って欲しいな」

「私もそう思い――」

 

 はやてとセインが話していると、前方から誰かが歩いてくる音がしてきた事に気づく。

 普通に聖王教会の人間ならそれほど気にしなかったが、歩いてくる旅に甲冑から鳴る音が聞こえてきていた。

 それらの音はそれぞれこちらに近づいてきており、はやてたちが居る通りを通るだろうとすぐにわかった。

 はやてはすぐにそれが誰なのかと分かり、なるべく遭遇しないようにしたかった人物であった。

 そしてついにはその姿を見ることが出来、その周りには聖王教会の人が数人一緒に歩いていた。

 だが、その中央に居た人物である聖王を模した彼女の顔を見て、はやて、セインの二人は驚いていた。なぜならば、その顔がどう見てもなのはにしか見えなかったからだ。

 

「な、なのはちゃん……なのか?」

 

 そう、今回ナノハは自分の姿がばれないように付けていたお面を付けておらず、顔を曝してしまえばなのはだってすぐに気づかれてしまう。どうして今回お面を付けていなかったのかと言えば、先ほどフェイトに姿を現しているので必要が無くなっていたからだ。

 そしてこちらに向かってきていたナノハは目の前にはやてが居ることに気づき、それから周りに居た聖王教会の人達に向けて言う。

 

「……ここからはカリムがいる場所まで分かるから、これ以上はついて来なくても良い」

「しかし、私たちはそこまで案内するようにと……」

「なら言い方を変える。目の前に居る八神はやてと少し話がしたいから今すぐに居なくなって貰えるか?」

 

 言い回しするのを止めて、ナノハは周りに居た聖王教会の人達に向けて言い放つ。別にナノハは聖王教会の命令などに従う必要もないし、聖王教会が勝手に同行をしてくれる人達を連れて行って貰っていただけであるので、きっぱりと邪魔だという事を直接言ったのであった。

 さすがにナノハを縛る権利は聖王教会にはないし、そこまで言われてしまえば彼らもそれに従うしかなかった。

 周りに居た聖王教会の人達はナノハから離れていき、その場所にははやてとセイン、そしてナノハの三人だけとなっていた。

 

「……さて、この姿で会うのは初めてになるのかな。はやてちゃん」

 

 口調は全く変わっていたが、はやてを呼ぶときの呼び方ははやてが知るなのはと変わりがなかった。

 信じたくなかったはやてであるが、フィルノと共に行動している事から考えるに否定できずにいた。

 だから今は目の前に居る人物がなのはだと思い、どうしてそのような格好をしているのかとはやては聞く。

 

「どうして……なのはちゃんがそんな姿をしているんや?」

「……それは、そろそろそっちも分かっているんじゃない? ユーノ君もいることなんだし、レイジングハートの正体ももうわかっているとは思うけど」

「…………」

 

 なのはに言われ、さらにはレイジングハートとテュディアが本来作られた理由もなのはの姿を見てなんとなく理解できてしまっていた。

 レイジングハートとテュディアが本来作られた理由、それはなのはの姿を見る限りあの二つは聖王の力を覚醒させたりするなどのような物であろうとはやては思ってしまった。

 それでも一つ疑問に残ることがある。どうしてそのような力がなのはに宿ったのかという事であり、たとえオリヴィエが聖王の力を封印させておく二つを残してあったとしても、見も知らずの他人に与えるわけがない。与えるとしてもオリヴィエの子孫か末裔のぐらいとしか――

 

「……ま、まさかなのはちゃんって聖王オリヴィエの――」

「そういう事。高町、いや不破という名は第97管理外世界にて周りに合せた名前。五百年という間第97管理外世界にある日本に溶け込み、ゼーゲブレヒトの子孫だと気づかれないようにするための名前だった。今ではお父さんのおかげで高町となっていたけど、歴とした聖王オリヴィエ様の子孫であり、今の私の名前はナノハ・ゼーゲブレヒト。それが今の私なの」

「……作り話、っていうわけではなさそうやな」

 

 そもそもなのはがこんなところで作り話を言っても利点はないし、なのはの姿から考えたとしてもその話は事実だろうとはやては思う。

 そして、それを認めてしまうと先ほどフェイトが襲撃され、倒した本人も目の前に居るなのは、いやナノハであることはすぐに分かり、その事について確認しようとはやてはナノハに問いた。

 

「……先ほど、フェイトちゃんを襲撃したのはなのはちゃん、いや|あなた《・・・》なのか?」

「その通りだね。そしてヴィヴィオとアインハルトを誘拐したのも私。まぁ、彼女たちに何かをさせるつもりはないし、誘拐した理由だって管理局が彼女たちに何もしないように念のための行動だから」

「なら、どうしてフェイトちゃんを……」

 

 はやてはナノハに向かってフェイトを攻撃したのかと言おうとするが、すぐに言おうとした答えを自分で分かってしまった。

 あの時フェイトはたとえナノハが何もしないと言ったところで、ヴィヴィオとアインハルトを誘拐させないようにしただろう。もし自分がフェイトの立場だったとしてもそのようにするだろうし、たとえ負ける分かっていても二人を守ったとはやては思った。

 

「……なんとなく聞きたい内容は理解したけど、どうやら自分で答えが分かったようだね。さて、そろそろ私も行かないといけないからこれで失礼するとしますか」

 

 それからナノハははやてとセインの方へと歩きだし、はやてとセインの横を通っていくのであった。

 

「あ、そうそう。一つ言い忘れていたけど――」

 

 と、通り過ぎてから少し進んだところでナノハはまた足を止め、顔を少しだけはやての方へと向けた。

 はやてはナノハの方へと顔を向かないまま、ナノハの言葉を待っていた。一体何を言い忘れていたのかと思っていると、ナノハはとんでもないことをはやてに言うのであった。

 

「――夜天の書を((闇の書|・・・))に書き換えた張本人を知りたくない?」

「っ!? な、なんで今そないな話を?」

 

 予想にもしていなかった言葉にはやては同様していた。闇の書、かつてはやてを苦しめ、リィンフォースを自ら消滅させることになった原因。

 どうしてナノハからその事を言われるのかと思っていたはやてであるが、今のナノハにはオリヴィエの記憶がすべて頭の中にある。要はオリヴィエが生きていた時代にあった出来事を始まりから終わりまで全て知っており、その中に夜天の書を闇の書に書き換えた出来事の記憶も含まれていた。

 だからこそナノハは知っている。闇の書に書き換えた張本人と、その子孫を。

 

「……まぁ、今すぐ知りたいというのならば行っても構わないが、この内容は私と同じようにはやてちゃんの人生を変えることとなるかもしれない。それでも知りたいというのならば、私が((八神はやて|・・・・・))の前に現れたときに聞いてくると良い」

 

 ナノハは最後にはやてをフルネームで呼び、それがどういう意味で言ったのかはやてには理解できていた。これ以上の内容は親友とかではなくて、自分みたいにそれなりの覚悟があるのかという意味でナノハは呼んだのだろう。それを聞いたら聞き返せなくなる、そんな思考がはやての中によぎっていた。

 そしてナノハはそれを言ったあと、またしても歩き出してはやてとセインの二人から遠ざかっていくのであった。

説明
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

消されていた記憶とは、なのはと青年の思い出であった。

二人が会ったことにより物語は始まり、そしてその二人によって管理局の歴史を大きく変える事件が起こる事になる。

それは、管理局の実態を知ったなのはと、親の復讐のために動いていた青年の二人が望んだことであった。



魔法戦記リリカルなのはmemories ?幼馴染と聖王の末裔?。始まります。

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