魔法少女リリカルなのはmemories 第五章 ベルカ時代の記憶(メモリー) 第七十話
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「フェイトちゃん、大丈夫なん?」

「うん、少し気絶はしていたけど一応歩けるまでには回復したから」

 

 はやては聖王教会を後にするとフェイトが連れて行かれた病院の病室に即座に向かった。

 非殺傷設定でもあったのでフェイトに怪我を負うほどではなく、一時の気絶だけで済んでいた。

 しかし、それでもヴィヴィオとアインハルトの二人をなのはに連れて行かれたのは事実であり、その事にフェイトは悔しかった。

 

「それと、先ほど私もなのはちゃんに会った。ヴィヴィオやアインハルトは居なかったけど」

「え、じゃあ私に襲撃したあと一度なのは達のアジトに戻って、ヴィヴィオとアインハルトを置いてすぐに聖王教会に向かったっていう事?」

「多分そういう事なんやろうな。それに聖王教会は先ほどこの戦いについては中立を保つと管理局に正式に通達も届いたからしいからな」

 

 カリムからその事は聞いていたが、フェイトが目を覚ます前に聖王教会から管理局に向けて中立を保つという通達が届いたらしい。だがそれは聖王教会がナノハをオリヴィエの末裔だと認めた事であり、フェイトやはやてにとってあまり信じられない事であった。

 フェイトもはやても一度ナノハの姿を見ているが、やはり長年一緒にいる二人にとっては信じがたい事であった。だが実際にあの姿のナノハと会って、ナノハの決意がより一層揺るぎがないと二人は分かるのだった。フィルノにしたがっているわけではなく、自分の意志で動いていると。

 

「…………」

 

 と、そこで突然はやてが黙り始める。唯フェイトとの会話が思いつかないからではなく、ナノハに会った時に言われたあの言葉を思い出していた。

 

『――夜天の書を((闇の書|・・・))に書き換えた張本人を知りたくない?』

 

 そのナノハが言った言葉は、はやてが一番知りたかった事でもあった。調べても事細かく本に記されているわけではなく、それ以前に闇の書に変えた張本人はいまだに分かっていない。だからこそはやてはその事を知るのを諦めかけていたが、ナノハは闇の書になった原点を知っていると言っていた。そんな嘘をナノハが付くとは思わないし、そもそも意味がない。そうなるとナノハは本当に知っているとなるが、どうしてナノハが知っているのかと気になった。

 しかしはやては真実を知れるならば知りたいとあの時思った。ヴィータ達ヴォルケンリッターやリィンフォースを苦しめた原因をマスターだけでなくはやての意志としても知りたかったのであった。

 

「……はやて?」

 

 突然黙ってしまったはやてをみて、フェイトはどうしたのかと思っていた。その言葉にはやてはフェイトをそっちのけにして闇の書の事を考えていたことに気づいた。

 

「すまん、ちょっと考え事としてたわ」

「それって、私に関係ある事?」

「いや、フェイトちゃんには関係ない事だからそれほど気にせんでもええよ」

 

 はやてはフェイトに向けてそう言ったが、はやてが一人で何かを抱え込んでいるのではないかと何故か思ってしまった。どうしてそう思ったかは分からないが、多分なのはが居なくなる時になのはが一人で抱え込んでいたのが原因だろうとなんとなく思った。

 とりあえずはやてが一人で抱え込んでいるかどうかは分からないので、フェイトはそのことについて何も言わなかった。

 

「それで、管理局はどうするんやろうか。フェイトちゃんは目の前になのはちゃんと戦ったから分かるとは思うけど、今のなのはちゃんは私たちですら太刀打ちできへん。たとえフィルノが殺されようとも、今のなのはちゃんならそのまま続けるやろうな」

「そうだろうね。今回は相手が少人数だろうと管理局側の方が不利に近いから」

「今更ながら、管理局が私たちに対して出力リミッターを掛けなかったのもようやく分かった気がするな」

「でもそうなると、管理局の上層部はなのはが聖王の末裔だと気づいていたことになるのだけど」

「……もしかしたら、一部の人間は知っていたかもしれんな」

 

 はやてはフェイトの言葉に否定することはなく、逆に頷いていた。

 そうなると今まで親友として一緒に居たなのはが聖王の末裔だと管理局の一部の人間は知っていたという事であった。なのはですら知らなかった事実を、管理局は知っていたことになるのだから。

 

「とりあえず、今はこの話はどうでもええ。時間を省いても何とかしてなのはちゃんに勝たなければ意味がない。意識が戻ったばかりやけどフェイトちゃんもええか?」

「そうだね。なのはに勝たなければ多分管理局の勝利は難しいからね。上層部もなのはの対策をしようとしてるとは思うけど」

 

 ツュッヒティゲンのリーダーであるフィルノ・オルデルタではなく、ナノハ・ゼーゲブレヒトであるとフェイトとはやては重い、その対策を考えるのであった――

 

 

----

 

 

 フェイトとはやてがナノハの対策を考えていた翌日、フィルノから召集されて集められる。

 集まった中にどうしてかリィナが居なく、フィルノはその事に気になった。

 

「デュナ、リィナはどこに居るんだ?」

「ちょっとヴィヴィオとアインハルトの二人の様子を見ていないといけないからっていう事で、二人の様子を見てるわ」

「……まぁ、それなら仕方ないか」

 

 リィナが来ていない理由を聞いたフィルノは納得し、今この場にいる全員を一度見てそして言い放つ。

 

「遂にここまでやってきた。俺たちが目指してきた目の前まで!!」

「……っていう事は、遂にミッドチルダに攻撃するという事?」

 

 アリシアはもしかしてと思ってフィルノに聞く。フィルノはそれに頷き、そのまま話し始める。

 

「あぁ、研究所を破壊しながらも違法研究と管理局が繋がっている証拠もかなり出揃ったし、黒幕の正体や主要メンバーも大体把握することが出来た。そしてその中でもさらに重要人物が二人」

「ヘレスナ・リュベル一等空佐とミルティス・ベスカ中将の二人だろ?」

「その通りだ。リュベルについては因縁があるので俺がやっても構わないか?」

「それはみんな構わないと思うよ」

 

 アリシアがフィルノ以外のみんなに振ると、全員頷いていた。

 

「それじゃあ私がミルティス・ベスカ中将と戦っても構わないか?」

「別に構わないが理由は」

「聖王オリヴィエ様のやり遂げなかったことをやりたいから。まぁ、殺すのは私ではないかもしれないけど」

「どういうことだ?」

 

 元々それはナノハに頼むつもりであったのだが、フィルノはまさか自らナノハが名乗り出るとは思わず、つい理由を聞きたくなった。

 そのフィルノの疑問に、ナノハはすぐに答える。

 

「フィルノには言ってなかったけど、先ほど八神はやてに会ったからな。もしかしたら、この戦いを終わらせるのは八神はやてかもしれない。まぁ、来なければ私が殺すが」

「……まぁ、ミルティス・ベスカ中将を殺すのならば構わんが」

 

 一体、ナノハははやてに対して何を吹き込んだのか気になっていたが、今は聞く必要もないと思って後回しにする。今はそれよりも大事な話があったからである。

 

「それで、他の事なんだが――」

 

 フィルノはそれ俺の役割を全員に伝え、結構は明後日という事になった。

 その明後日、歴史を揺るがす大きな事件が始まり、オリヴィエの意志を継ぐためにナノハは動き出すのであった。

 

 

 

 そして始まる。復讐のために戦ってきていたフィルノ・オルデルタと、すべてを犠牲にして管理局を変えようとしている高町なのはの最後の戦いが始まろうとしていた――

説明
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

消されていた記憶とは、なのはと青年の思い出であった。

二人が会ったことにより物語は始まり、そしてその二人によって管理局の歴史を大きく変える事件が起こる事になる。

それは、管理局の実態を知ったなのはと、親の復讐のために動いていた青年の二人が望んだことであった。



魔法戦記リリカルなのはmemories ?幼馴染と聖王の末裔?。始まります。

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