リリカルなのは〜君と響きあう物語〜
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ロイドがこの世界に来てから数日経った頃。

また新たな人がこの世界へとやってきた。

そう、ロイドと共に世界を救った者の一人。

超絶ドジっ子天使がやってきたのだ。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「やっぱり似ているよなぁ」

 

ロイドは食堂にて一人ボ〜っと考え事をしていた。

考えれば考えるほどよく似ている二人の共通点。

なんか偶然なんだろうか。

世の中には似た人物が3人はいるっていうし、もしかしてアイツも。

 

「あ、ロイドじゃん、どうしたの?」

 

今から昼食なのか食器を持ったスバルとティアナが其処にいた。

スバルは何処に入るのか分からない程の大量の量の食事を抱え込んでいる。

始めてみた時ロイドは驚いたものだが数日経った今ではもう慣れてしまったようだ。

 

「ん? ああ、ティアナにスバルか、ちょっと気になったことがあってさ」

 

「気になること?何よソレ」

 

何か訊きたいことがある様子のロイドの横の席に座って彼の話に耳を傾ける二人。

ロイドの気になる事ってのは一体なんなのか?

今日の夕飯の事か? 

それなら今日はシャマル先生が腕によりをかけた料理を振る舞うと張り切っていたが、ソレを聞いたシグナム副隊長やヴィータ副隊長、なのはさんまでが揃って外食に行くって若干引いた顔で言っていたけどその反応の事か?

ソレはちょっと自分達も気になる。

 

「フェイトの事なんだけど」

 

ロイドの気になる事とは今日の夕飯ではなくフェイト隊長の事らしい。

 

「フェイト隊長の?一体何が気になるのよ?」

 

自分達の上司であるフェイトについて気になること、二人も興味を抱き始めた。

彼女は管理局を代表する魔導師の一人だ。

ちょっとした話題でもそこら辺のアイドルより噂になる。

ロイドはフェイトと一緒にいる時が結構多いし、その時彼女の身の回りで何か見つけたのだろうか?

 

「もしかして、フェイトって……」

 

「な、なによ」

 

二人は唾を飲み込み続きの言葉を待つ。

よくよく周りを見ると周囲で食事をしていた事務の兄ちゃんやら姉ちゃんまでもがロイド達の話に聞き耳を立てていた。

食堂の中がシーンと静まり返る。

そしてロイドが口に出した事とは。

 

「転んだ拍子に壁をぶち抜いたりしないか?」

 

フェイトが転んだ拍子に何処かの壁をぶち抜くイメージ映像が皆の脳裏を掠めた。

 

「「ぶっ!!」」

 

ティアナとスバルは思いっきり頭をテーブルにぶつけた。

周囲の人達も口に含んでいた物を思いっきり吹き出してしまう。

ゴホゴホっと咽かえる声が食堂の中を木霊する。

 

「おい、大丈夫か」

 

「大丈夫じゃないわよ!ってアンタの気になることってソレなわけ!!」

 

ティアナはロイドの胸倉をつかんで怒鳴りつける。

ロイドはいきなり首をしめつけられ、だんだん顔色が青くなってきている。

 

「ちょっと、ティア落ち着いて」

 

スバルは一人あわあわとしながらなんとか事態を収拾しようとしているがティアナのロイドの首を絞めつける力はさらに増していくではないか。

オロオロと周りを見ると丁度食堂の中に入ってきたエリオとキャロの二人を発見。

カクカクシカジカと訳を話し3人でティアナとロイドを引き離した。

その後なんとかティアナの怒りが沈まってロイドの話に戻る。

 

「で、なんでそんなことが気になったのかしら」

 

どこかまだ機嫌が悪そうだが一応ロイドの話を聞く気はあるようだ。

 

「実はオレの幼馴染のコレットって奴とフェイトがホントそっくりでさ、もしかしてフェイトも転んだ拍子に壁に穴を開けたりするんじゃないかと思って」

 

「そんなにフェイトさんと似ているの?」

 

育ての親でもあるフェイトとロイドの幼馴染が似ているって事に興味が湧いたキャロはロイドにその子の事を聞いてみたくなった。

 

「ああ、見た目や雰囲気に声なんて瓜二つだな。なんとなくフェイトみているとソイツ思い出すんだよな」

 

「でも転んだ拍子に壁に穴って普通はいないわよ。そんなドジな子」

 

エリオとキャロは顔を見合して「アハハ……」と乾いた笑声を上げる。

スバルは首をチョコンと傾け二人を見るが何で“そんな事をする人に思い当たる人がいます”な様子なのだろうかなと思った。

その理由は後に分かる。

 

「いや、コレットのドジはそんじゃそこらのドジとは次元が違うぜ」

 

思い出すのはコレットの数々のドジぶり。

何もない所で転ぶのは当たり前。

転んだ拍子で壁に穴をあけるのは当然。

そして事態を好転させる謎の幸運の持ち主。

あるドジな暗殺者などコレットが転んだ拍子で穴に落ちてしまったのだ。

暗殺者は後に語る。

 

「コレットのドジは神様に愛されすぎたドジっぷりだよ。お陰で雷に続き落とし穴までトラウマに……」

 

そのドジな暗殺者を含め彼女のドジの犠牲になった人物は星の数ほどいるのである。

 

「コレットのドジで俺達の命が救われたりしたこともあるぜ。

はっきり言ってあのドジでなにが起こるか誰にもわからないぞ」

 

詠唱を間違えて上位天使術の複合技までうっかりドジでやってしまうのだから。

「間違えちゃった」と舌を出して謝りながら多くの敵を消し炭にしてきた彼女はおそらく史上最強のドジっ子だろう。

 

「へえ〜。そんなドジっ子なんだ〜〜。おもしろそうだね〜会ってみたいな〜その子と」

 

スバルはロイドの話から想像したコレットを頭の中に浮かべてみる。

フェイト隊長に似ているってことは……金髪で、声もフェイト隊長そっくり。

もしかしてオッパイもフェイト隊長みたいに大きくて……。

と考えているが残念ながら最後の部分はフェイトのソレとは真逆である。

 

「きっと今頃どこかの壁をぶち抜いているだろうな」

 

 

 

―――パリーン 「きゃ!」

 

 

 

突如話をしていた三人の側の何もないはずの場所からまるで【壁】をぶち抜いたかのように一人の女の子が倒れてきた。

長い金髪に白を基調とした服装の見た目15〜16歳の女の子。

顔面から転んだようで額を「痛てて」と片手で抑えているが無傷のようだ。

 

「いたたた、あれ?ここ何処だろ?」

 

キョロキョロと周りを見渡しているが「アレレ?」と頭の上に“?”浮かべまくっている。

意図して此処に来たようではないようだ。

そしていきなりこの六課の隊舎の中に女の子が入ってきた事でフリーズしていた周囲の人物達も我に返り始め騒ぎ出す。

 

「え、ええ!?いきなり女の子が現れたぁ〜!」

 

「あなた一体何者なの?」

 

ティアナとスバルは突然の乱入者の登場にあわてている。

それはそうだろ。そんな変な登場の仕方をする奴がいたら大抵の人はパニックを起こしてしまう。

だがロイドだけは右手の人差し指を女の子に向けて、大声で叫んだ。

 

「ま、まさか……コレット! お前なんで此処にいるんだ!?」

 

「あれ? ロイド? えへへ〜。また転んじゃった……って、ロイド?

此処、何処?」

 

どうやらこの子が先ほどまで噂になっていたコレットって子らしい。

なるほど。

声も見た目もフェイトに似ているなとスバルもキャロもエリオも思った。

ティアナは「ハァっ」とため息をついて部隊長やなのはに連絡を入れた。

 

「また新しい次元漂流者です」と。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「コレット・ブルーネルです。コレットって呼んでください」

 

コレットはロイド達に連れられ部隊長室にまで連れてきた。

中でははやてやなのはが居たが若干顔が引きつっている様子。

ティアナからの報告で聞いた限りでは非常に非常識な次元漂流者のようであるで。

とりあえず其処の部分から話を訊いてみようかと思った。

 

「よろしくコレットさん。早速質問なんやけどどうやって此処まできたんや?

アナタはロイドのように次元の歪みに入ったとは違うようやけど。

(っていうかズッコケて次元の壁をぶち抜いて登場って……何かの間違いやろ)」

 

「次元の歪み?

えーと、それはよくわかんないけど……私はいつもみたいに転んで気がついたら此処にいたんです」

 

どうやらマジのようだ。

 

コレットは普段からズッコケる癖を持っておりコケた拍子に“何か”を引き起こしてしまう体質の持ち主であると話したが今回のソレはいつも以上の事を引き起こしてしまったらしい。

 

「エヘヘ、またやっちゃった」

 

って言っているあたり、もしかしたらロイドも知らなかったがコレが次元の壁を破いて他の世界へ初進出ってわけでもないかもしれない。

ロイドもまさかコレットのドジが此処まで凄まじい事を引き起こすとは信じられず

 

「コレットのドジが世界を超えた……」

 

と呟いている。

当然信じられないのはロイドだけではない。

はやてもコレットの話を聞いて頭痛を起こしたのか頭を押さえている。

 

「ま、まさか、転んだ拍子に次元の壁をぶちぬいたってことか。んなアホな」

 

今まで管理局で保護してきた次元漂流者は大抵の場合、別次元に渡ろうとしている時に不慮の事故に巻き込まれ……とか何らかのロストロギアの暴走に巻き込まれ……とかそういう話だったが「ちょっと転んでしまい次元漂流者になっちゃいました」?

どんなドジっ子だ!? そんな軽いドジで次元漂流者になってしまうと言うなら年間何万人、何十万人の漂流者の人達を管理局は保護しないといけないのだ?

 

「そ、そんなことないと思うよ、きっと偶然起きた次元の歪みにたまたま転んだ拍子に入ちゃったんだよ」

 

「そ、そうやろな、きっとそうや。そうに決まっている」

 

なのはとはやては常識としてなんとか結論づける。

その結論も天文学的確率のモノだが。

なんで周りがそんな悩んでいるのか分かっていなのはそんな非常識をやってのけたコレットだけだ。

 

「どうしてロイドも此処にいるの?」

 

コレットはロイドも此処に居る事が気になっているようだ。

つい先日、『次元の扉』まで行ってくると言ってから行方が分からなくなっていたのだ。

コレットがこけたのは行方の分からなくなったロイドを探しに行こうと村の外に足を一歩踏み出した正にその時だったのだ。

 

「ああ、オレもちょっと事故に巻き込まれちまってさ。元居た世界に帰るために此処の人達の世話になっているんだ」

 

ロイドが怪我をしていたら……もしかしたらとんでもない事件に巻き込まれちゃってロイドが困っているのではないか?などと連日不安ばかり募っていたコレットだったが

ロイドは何処も怪我もしていないようだし元気なようだ。

心配していたが無事であるのがわかって安心したのかコレットはニッコリと微笑んで

「ロイドが無事でよかった……」と小声で呟いた。

 

「アナタ達は私達が責任持って元いた世界に戻します。

ただアナタ達の世界を見つけるまでもう少し待っていてもらいたいの」

 

なのはは事情を話す。

本来世界を渡るというのは非常に大変な物であり、転んだだけでホイホイと世界を渡れるような簡単な物でもない。

ロイド達の世界へ帰すというのももう暫し時間が掛かってしまうのだということをコレットに話すと。

 

「分かりました。ロイドもいるし大丈夫です。

それと私もロイドみたいに民間協力者になりたいんです」

 

コレットはロイドと同じような事を言い出した。

 

「えっ」

 

「危ないよ、コレット」

 

コレットは見た目おしとかやかな子だ。

とても争いごとには向いていないように見える。

コレットのような子は危ない目に遭ってほしくないと思うなのはとはやてだったが。

 

「コレットはこれでもなかなか強いぜ。それに結構、頑固だから言い出したら聞かないと思うぜ」

 

ロイドからもコレットの頼みを聞いてもらえるように進言してみる。

 

「はあ、分かったわ。なら明日模擬戦をしてもらうわ。実力のない人が現場にいても足手まといになるからコレットさんの実力を見極めないとあかんしな、それとロイド君も一緒に模擬戦してもらうな、まだうちらはロイド君の戦い見てないしな」

 

近い内にロイドの実力を見極めないといけないと思っていたし、なら丁度いい。

それに最近シグナムの戦闘マニアの魂が危険地帯に突入し始めているようで六課の新人達が「副隊長が最近目が逝っちゃって危ない気がします」と報告も入っていた。

ロイドとコレットには悪いが……本っ当に悪いがシグナムのガス抜きに協力してもらうとしよう。

 

「コレットさん、部屋の用意ができたよ」

 

そこにフェイトが部屋に入ってきた。

フェイトとコレットが並んだことで部屋の中にいた人達が「へ〜〜」っと声を出してマジマジと二人を見比べる。

金髪でどこかオットリとした二人はなんていうか、とてもよく似ている。

此処で初めて会ったフェイトとコレットはロイドの仲介も入りお互い挨拶をした後、すぐに浮きとけあって和気藹々と話しこんでいる。

なのははフェイトとコレットがほのぼのとした感じで話している様子を見て「まるでちょっと歳の離れた姉妹みたい」呟いてとニコニコと笑っている。

なのはの姉妹みたいという呟きを聞いてはやては頭の片隅で分割思考を用いてちょっとしたセクハラ的な事を考え始めた。

確かコレットは16歳って言ってたな。とコレットのプロフィールを書いたメモを見てはやてはもう一度二人のある部分を見比べる。

 

「(フェイトちゃんは今、19歳。でコレットは16歳。ん〜……あと3年でコレットがフェイトちゃん並みにメロンになるか考えてみると……無理やな。

フェイトちゃんが16歳のころには既に大きかったし。

そこんところだけは決定的に真逆のようやね)」

 

何を考えているのだ? 

この豆狸は。

無意識なのか手をワキワキと動かすな。

はやてがそんなセクハラ的な目で見ていることに気付かずフェイトとコレットは話を終えたらしい。

そして、フェイトはコレットを連れて部屋を出ようとした。

まさにその時。

 

「えっ?あっ、キャー!!」

 

フェイトはなぜかバランスを崩し転んでしまった。

なのはもはやてもロイドも手を差し出す間もなくコロンコロンと転がり始めゴロンゴロン!!!!と猛スピードになり転がっていくフェイト。

部隊長室のデスクから壁までの距離を勢いを上げて転がっていくフェイト。

 

 

そして。

 

 

 

部隊長室の壁に見事なフェイトの人型の穴が出来た。

穴の周りには無駄な亀裂も入っておらず見事な人型の穴である。

両手を上げて万歳したポーズの形はオリンピックの体操選手の決めポーズを髣髴させる物だ。

点数は間違い無く満点。金メダル。

 

「大丈夫ですか、あれ? キャー!!!!」

 

転がって行ったフェイトを追いかけて助けに向かったコレットまで同じように転がっていく。

「あっ」と言っている間にフェイトと同じように「坂道に転がっていく玉」のようになって真っ直ぐ壁まで転がっていくコレット。

言っておくが別にバナナの皮が落ちていたわけでもない。

ただ彼女達が何もない所で勝手に転んだだけだ。

そしてコレットもフェイトの穴の横に穴をまた一つ開けてしまった。

コレもまた芸術的な穴であり正に匠の業というか。転がり慣れた人だけが放つことのできる見事な物であった。

だが穴は穴である。

この部隊長室の部屋の持ち主にとってそんな2つの穴は部屋の変わったデザインでもなんでもなく悲しい物でしかない。

 

「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーー!!

新築の隊舎なのに〜〜、私の部隊長室の壁に穴が〜〜!!」

 

はやてが六課に響き渡る絶叫を上げたからかゾロゾロと六課の隊員や事務員達が集まってきた。

そして皆こう言う。

 

「まぁ、見事な人型」

 

コラ!アルト!! 写メを撮るな!!

エリオとキャロは「フェイトさ、また、やったんだ」と小声で話している。

後で2人に話を聞いてみて初めて知ったことである。

10年以上一緒にいるなのはすらも知らなかった事だったがフェイトのドジっ子の才能が此処最近開花してしまい時々こうやって穴を開けてしまう事があるのらしい。

 

「やっぱり、フェイトも穴を開けるじゃないか」

 

とロイドは言う。

ちなみにその穴を開けたフェイトもコレットも何処も怪我しておらず全くの無傷であった。

穴の前で地面に手を付き思いっきり沈んでいるはやてがあまりにも哀れで居た堪れなかったからロイドが穴は塞いでくれた。

 

この日。

フェイトとコレットという二人のドジッコが機動六課に誕生した。

してしまった。

 

彼女達はその後もまた壁に穴を開け続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故か部隊長室の壁ばかりに。

 

説明
え〜っとコレで第4話ですね。
今回コレットが初登場です。

感想待ってま〜す。
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コメント
まってました!! 次の話も楽しみだ! (biohaza-d)
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