Masked Rider in Nanoha 三十六話 機動六課、海鳴へ
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「ロストロギア関係の?」

「出張任務、ですか?」

「そう。これが終わったらヘリポートに集合。留守番は……多分また真司さん達かな」

 

 なのはの口から語られた言葉にスバルとティアナは揃って残念そうな表情を返した。また真司達が留守番をする事に申し訳なさと寂しい気持ちを抱いたのだ。

 

 あのアグスタでの戦いから既に一週間が経過したが、一度として怪人は動きを見せていない。それに対してなのは達が不安を抱く中、五代達は揃って不安は抱いていなかった。

 特に光太郎はこう告げた。邪眼の目的が自分達のキングストーンとデータなら下手に人を襲う事はしないはずだと。世間に怪人を知られる事なく時を待ち、最大の効果を狙える時期でそれを知らしめるはずだろうから。それが光太郎の根拠だった。

 

 その言葉にはやてもジェイルも納得した。下手に怪人を人々の前に見せ、それがライダーに敗北しようものなら邪眼の与える絶望は薄れると思ったのだ。そう、例え後にライダーを敗北させても、怪人をライダーが倒したという実績は消えない。

 それはつまりライダーがいる事がそのまま希望へと繋がる可能性を持つのだから。だからこそ、邪眼が襲うとすれば周囲に気付かれない場所。そう結論を出し、六課は隊舎周辺とロストロギア関係の研究施設などを重点的に警戒していた。

 

「そうですか。なら、もし怪人が現れたら真司さん達が?」

「そうなるね。それと、念のために手が空き次第だけどアリアさんとロッテさんが応援に来てくれるから心配いらないよ」

 

 なのはの口から出た名前に二人が驚いた。その名は以前闇の書事件の話を聞いた時に出た名前だったからだ。

 

「確かその二人って……」

「邪眼と戦った人達ですね!」

「うん。真司さん達だけでも大丈夫だとは思うんだけど、一応ね」

 

 そんな会話をしながら歩く三人。同じ頃、別の場所でも同じ話題がされていた。

 

「やっぱり真司さん達は他の世界へ行けないんですか?」

「……そうだね。色々と難しいんだ。真司さん達は、少し扱いが特殊だから」

 

 エリオの寂しそうな言葉にフェイトは同じような声で答える。それを聞いてキャロが残念そうに項垂れた。既にキャロはセインと仲を深めていて、その流れで真司ともよく話す。光太郎がしっかり者で優しい兄なら、真司はどこか頼りないけど楽しい兄。そんな風に思っている相手だけに、彼女はその同行がまた望めないのが悲しかったのだ。

 

「真司さん達、少し可哀想です」

「キャロ、気持ちは分かるけどそんな事言っちゃ駄目だ。真司さん達は確かに制約が多い。でもあの人達はそれを苦に思ってない。なら、それを可哀想って思うのはこっちの勝手な思い込みだからね」

 

 エリオのはっきりとした言葉。それに二人は驚きを感じるが、その正しさに頷いてキャロは自分が間違ってたと言って少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。それにエリオが少し慌ててそんな事はないと言って慰める。

 二人はそこから雰囲気を変えるためかこの出張任務の事について話し出した。それを眺め、フェイトは小さく微笑む。エリオの言った言葉。それはかつて光太郎がエリオへ告げたものと似ていたからだ。

 

 キャロの境遇に同情するように局員になろうと言い出したエリオ。それに光太郎は哀れんでいくのは駄目だと告げた。それにエリオは頷き、支え合うために局員になると答えたのだから。きっとその時の事が今の言葉へ繋がっているはず。そう思ってフェイトは笑みを零した。

 

(どこか光太郎さんらしくなってきたね、エリオ)

 

 幼い槍騎士を見てフェイトはそう思う。影響を受けただろう男の姿をその背に幻視しながら。その後、なのはとフェイトの両隊長は一旦隊員二人と別れて部隊長室へ向かったため、スバル達とエリオ達はそれぞれ先にヘリポートへと向かう事になる。

 そこには既に五代達の姿があった。五代と翔一はヘリを背にして真司と話しており、光太郎はヘリポートの橋の方で佇んでいる。その視線は空ではなく遠くに見えるクラナガンの街を見つめていた。

 

(……何事もなければいいが)

 

 彼の勘が告げていたのだ。何か嫌な予感がすると。それも、このミッドだけではなくこれから行くだろう場所に対しても。故に光太郎は迷っていた。自分がこちらに残るべきか否かを。既に五代と翔一がはやて達と同行する事は決まっている。こちらには真司とヴァルキリーズが残る事になっているが、それでも何か不安が消えないのだから。

 

 そんな風に思い悩む光太郎を見つめ、五代と翔一は真司と共に不思議そうに首を傾げていた。

 

「何かあったのかな?」

「何かを……考え込んでるみたいですね」

「やっぱ、アクロバッターとかを置いて行きたくないんじゃないかな」

 

 そんな感じで話す三人。実は真司は五代達の見送りをするためにやってきていた。本当は仕込みなどをしようと思っていたのだが、五代達が別の世界へ出かけると聞き、ならばと思ったのだ。前回と違い、別の世界へ行くとなれば何かあったら帰ってくるのも容易ではない。そう思ったからこそ、真司は見送りにきたのだ。

 

「到着! って、真司さんも来るんですか?」

 

 駆け足で現れたスバルは視線の先にいた真司を見て不思議そうに問いかけた。それに真司が見送りに来たと告げると納得したが、どこか残念そうだった。ティアナはその後ろから現れ、そんなスバルに呆れる。真司がいなければ誰がもしもの時怪人と先陣切って戦うのかと、そう言って。

 それにスバルが苦笑しつつ分かっていると答えた。そこへエリオ達も姿を見せ、真司を見てスバルと同じような反応を示して五代達が苦笑した。真司は二人にもスバルと同じ内容を告げるが、その表情は心持ち申し訳なさそうだった。

 

「って訳なんだ。ごめんな。一緒に行ってやれなくて」

「いえ、分かってますから」

「もし出来たら、お土産買ってきます」

 

 エリオとキャロの言葉に真司が軽く笑みを見せて、感謝と共にその頭を撫でる。それにくすぐったいやら嬉しいやらのキャロとエリオ。だが、エリオは視界の隅に見えた光太郎の方へ視線を向けた。

 そして真司達から離れてその傍へと歩き出す。光太郎は一度も視線をクラナガンの街並みから逸らす事無く佇んでいた。その横顔が思いつめている事を察し、エリオは僅かな躊躇いを感じつつ声を掛けた。

 

「……光太郎さん」

「ん? エリオ君か」

「どうしたんですか? 何か悩んでるみたいに見えます」

 

 エリオがそう言うと光太郎は苦笑した。そんなに顔に出ていたのかと思ったのだろう。しかし、エリオの表情がどこか不安そうなのに気付き、真剣な眼差しでその顔を見つめる。隠し事は出来ないと悟ったのだ。

 

「実はね、何か嫌な予感がするんだ」

「それって……」

「その可能性がない訳じゃない。でも、必ずって訳でもない」

「それでも僕は信じます。光太郎さんの勘が外れた事、ないですから」

 

 エリオの力強い肯定。それをどこか嬉しくも悲しく思い、光太郎はその肩に軽く手を置いた。自分の勘が外れた事はない。それは、決していい事ではない。何せ、大部分が悪い事に繋がるものばかりなのだから。

 だが、それを光太郎は必ず防ぐ。もしくは変えてくれるとエリオは信じているのだ。故の信頼。それを受け、光太郎は頷いてみせる。丁度そこへなのは達隊長陣が姿を見せた。それに気付き、光太郎はそこへ近付くとはやてへ開口一番こう告げた。

 

「はやてちゃん、俺は残るよ」

「えっ?!」

「どうしてです?」

 

 突然の光太郎の言葉に心から驚きを見せるフェイト。はやてはそれに理由を尋ねる。光太郎はそれに自分が感じている嫌な予感を話し、念のために自分も残ると告げた。それに対して誰も反論出来なかった。この数年間、光太郎の勘は恐ろしい程の的中率を誇った故に。

 更に、今回は邪眼絡みとなればそれを無視する事は出来ない。だからフェイトは自分の寂しい気持ちを押し殺し、はやてへ視線を向けた。

 

「はやて、光太郎さんには残ってもらおう。ライダーが二人いれば、余程の事がない限り心配ないし」

「……ええんやな?」

 

 はやての問いかけにフェイトは軽く笑みを返して頷いた。本当ならば一緒に連れて行きたい。エリオやキャロもそれを望んでいる故に。だが、それは自分のただのわがままだ。だからこそフェイトは、悲しみを振り切ってライトニングの隊長としての判断を下した。

 

「六課を……シャーリー達を頼みますね、光太郎さん」

「ああ」

 

 互いに見つめ合うフェイトと光太郎。フェイトの眼差しは微かな憂いを帯びている。光太郎はそこで確信する。彼女が自分へどんな感情を抱いているのかを。だからだろう。彼はその表情に影を落としてフェイトからさり気無く顔を背けて歩き出す。

 一方、そんな二人を見たなのはとはやては複雑な心境だった。フェイトが光太郎へ想いを寄せている事を二人は気付いている。だから友人としては光太郎を同行させたい。しかし、局員としてはそれが出来ない。万が一邪眼が怪人を複数送り込んできた場合、龍騎だけでは守りきれない場合がある。もしくは、守りきれたとしてもその手の内をかなり明かしてしまう可能性があるのだ。

 

(もどかしいな。フェイトちゃんの事、応援しようって決めたのに……)

(すずかちゃんもアリサちゃんも、久しぶりに光太郎さんに会いたいって言ってたんやけどなぁ……)

 

 なのははどこか昔の自分に近いフェイトに対して、はやては先程連絡を入れた友人二人に対して申し訳なく思いながら視線を周囲へと向ける。

 

「さ、なら行こか。六課はグリフィス君を初め、RXと龍騎にヴァルキリーズが守ってくれる。それに、リーゼ姉妹も来てくれる事になっとるから心配いらん」

「じゃ、みんなヘリに乗って」

 

 はやてとなのはの声に呼応し、スバル達がヘリへと乗り込んでいく。それを見送り、真司は隣へと歩いてきた光太郎へ視線を向けた。

 

「いいんですか?」

「当然だよ。俺達は邪眼を倒すためにここにいるんだ。それを忘れるフェイトちゃん達じゃないさ」

 

 明るく答える光太郎。しかし、その声の奥底には悲しみがあるように真司には聞こえた。それを確かめようと思う真司だったが、それをヘリの轟音が阻止する。飛び上がっていくヘリ。それを見送る真司と光太郎。

 やがて遠くなったヘリを見て光太郎は無言で隊舎内へ戻って行く。その後ろ姿がもの悲しげに見えた気がして真司は一人呟く。

 

―――そんなに悲しいなら、何でそれを分かち合おうとしないんですか。

 

 鈍感な彼でさえフェイトと光太郎の雰囲気がどこか違う事に気付いたのだ。故に真司は不思議でしょうがない。人とは違う光太郎の体。それを受け入れ、共に歩いてくれるだろうフェイト。

 その彼女と好意を抱き合いながらも、それを敢えて押し殺すその姿勢が。真司は知らない。光太郎が背負った悲哀。それこそが、元来仮面ライダーの持つ”人”ならざる悲しみだと。

 

 

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「フェイトさん……」

 

 キャロは先程から何も言わずに窓から外を見つめているフェイトに言いようのない悲しさを感じていた。エリオもそうだった。先程の光太郎はフェイトが好意を向けているのを知りながら、それを避けたように見えていたのだから。

 

(どうして光太郎さんはフェイトさんの気持ちを避けるんだ? まるであまり喜べないみたいな……あっ!)

 

 エリオはそこで気付いた。気付いてしまった。何故光太郎がフェイトの気持ちを無視するしかないのか。それは、彼が仮面ライダーだからだという事に。光太郎は言った。仮面ライダーは人知れず平和のために戦うと。それは、終わる事無い戦い。それを光太郎は夢にまで語った。

 ならば、その道を自分以外に歩かせるはずはない。フェイトの想いを受け止める事が出来ないのはそのためだ。別れが訪れた時、フェイトの悲しみが少しでも少なくすむように。決して自分などについてこないように。そう思っているからこそ、光太郎はフェイトと親密になるのを避けているのではないか。

 

 そんな風にエリオがある意味で光太郎の心境を当てている横で、スバルとティアナはこれから行く場所をなのはから聞いて驚いていた。それはなのは達の故郷だったのだから。地球は日本、海鳴市。そんな、まるで誰かがなのは達をそこへ行かせようと図ったかのような場所へ六課は向かう。

 

「やっぱり魔法文化が無いんですか」

「うん。私やはやて部隊長みたいな人が稀なんだ」

 

 ティアナの納得したような声になのはは頷いて答えた。ティアナは翔一との付き合いから地球がどういう場所かは大体聞いていた。魔法を使える者などほとんどいない。それどころが魔法そのものさえ知らない世界だと。

 スバルはむしろ納得していた。自分の父親であるゲンヤは地球出身者の子孫。故に魔力は無い。そんな事を知っているからこそ彼女は笑顔で頷いていた。

 

「ですよね。うちのお父さんも魔力無くって」

「スバルさん、クイントさんそっくりですから」

「ギンガさんもですけど、本当に似てますよね」

 

 キャロとエリオの言葉にスバルは嬉しそうに頷く。それを聞いて五代は少し複雑な表情を浮かべた。光太郎から聞いた話によれば、スバルとギンガはクイントの遺伝子を基に作られた戦闘機人。故にその関係は親子というよりは最早クローンに近い。

 キャロとエリオはそんな事を知らない。それだからこそ心からスバル達が似た者親子だと感じているのだろう。その素直さに喜びを感じつつ、スバル達の生まれの重さに微かな悲しみを抱く五代。だが、その時ふと思い出す事があった。

 

(しかし、スバルちゃん達がイレインやファリンちゃんと同じだとは思わなかったなぁ。今日、すずかちゃんが二人を連れてくるとスバルちゃんに紹介出来るんだけど……)

 

 自動人形と戦闘機人は同一の存在。そう知った時、五代は驚きと同時に納得していた。外見からは信じられない程の能力を発揮するスバルやイレイン。それが同じと言われ、心から頷けたのだ。そして、そのどちらも優しい心を持っている事にも。

 五代はイレイン達がスバルやヴァルキリーズの事を知ったらどんな反応をするのかと考えて一人笑う。そんな五代の横で、翔一ははやて達八神家の面々と会話に花を咲かせていた。リインはエリオやキャロぐらいの大きさになったツヴァイの格好を直し、笑みを浮かべていた。

 

 ツヴァイはアウトフレーム―――つまり外見をある程度まで操作する事が出来、最大まで大きくすると十歳児程度の身長になるのだ。地球には普段のツヴァイを受け入れるような土壌がない。故に、混乱や騒動を避けるためにその状態になる必要があった。

 ちなみにリインが同行しているのははやての個人的な要望。だが、それを止める事は誰もしない。家族の同行を希望する気持ちは分からないでもない。それにリインがいるとツヴァイの笑顔が一際嬉しそうだったのもある。

 

「……よし。これでいいぞ、ツヴァイ」

「ありがとうです、お姉ちゃん」

「礼はいらない。姉として当たり前の事をしただけだからな」

「それでもです」

 

 姉妹仲良く笑顔を見せ合う二人。それを横目にし、微笑みを浮かべるはやて達。ちなみに、ツヴァイの巨大化を見たスバル達は揃って軽い驚きを見せた事から始まる一騒動があった。驚くスバル達に対し、五代と翔一は以前に何度か見た事があるために平然としていた。そしてスバル達にそこまで驚く事じゃないと言ったのだ。

 だが、そんな二人も初めて見た時は同じような反応を見せた事をはやて達から告げられる。それにスバル達が五代と翔一へ軽く文句を言ったために、二人が揃って頭を下げて場を和ます結果で終わったが。

 

「ま、わたしらはちょう寄る所があって、別の転送ポートから海鳴入りや」

「すずかちゃん家の庭からだよね」

 

 翔一の言葉にはやては頷いて視線をなのは達へ向けた。

 

「そういう訳やから、わたしらは別行動や。後で合流はするけどな」

「了解。ヴィータ副隊長とシグナム副隊長も部隊長達と一緒ですね?」

「ああ。私達はロングアーチからの直接指示で動く」

「ま、そういう事だ」

 

 二人がそう答えたのを聞き、なのは達は揃って頷く。八神家は全員で行動し、なのは達はそれぞれで動く事で話し合いは終わり、こうして出張任務は始まったのだ。

 

 

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 海鳴にある湖畔のコテージ。普段人がほとんど寄り付かないような静かなそこへなのは達は現れた。ここは、現地の協力者がなのは達に貸し出してくれている待機所であり転送ポートだ。その協力者は、今回の事をはやてから聞かされ、今ここへ向かっている最中だったりする。

 

「……ここが」

「海鳴……」

「綺麗な所ですね」

「いい景色……」

「キュク〜」

 

 スバル達四人が初めての海鳴に思い思いの反応を示し、それになのはとフェイトは笑みと共に頷いていた。五代はそんな六人とは違い、第二の故郷とも言える街に来た事を嬉しく思っていた。その気持ちが行動となって表れるのが彼らしさだ。

 

「は〜るばる来たぜ、海鳴〜!」

 

 そんな風にはしゃぐのも仕方ない。有名演歌歌手の歌を使ったそれに全員が一瞬呆気に取られ、すぐに笑い出す。その笑い声に五代は嬉しそうに振り向き、照れたような笑みを見せた。

 そんな平和な雰囲気の中、遠くから聞こえてくる音がある。それは車のエンジン音。それが段々そこへ近付いていた。それに全員の視線が音の方へ動く。すると、そこから現れたのは一台の車。そして―――一人の女性の姿だった。

 

「なのはっ! フェイトっ! 雄介さんっ!」

「「「アリサ(ちゃん)っ!」」」

 

 車の窓を全開にして、アリサは大声で呼びかけた。その自慢のブロンドが日差しで輝く。それを見た三人が嬉しそうな声を返して走り出した。スバル達四人はそんな光景に苦笑。まるで遊びに来たような印象を受けたからだ。

 だが、そんな風になってしまう気持ちも分かるため、それをとやかく言うつもりは四人にはない。それよりも今は現れた人物の事を教えてもらおうと思い、その後を追った。

 

 車から降り、アリサは笑顔でなのはとフェイトの手を取った。こうして直接会うのは本当に久しぶりだったのだ。五代の方はそこまででもない。何せ彼はこの四月まで海鳴で暮らしていて、アリサも顔を合わせる事はあったのだから。

 

「ったく、いきなり連絡してきたと思ったら今日来るなんてね。驚かすのはアタシの役目だってのに……」

「にゃはは、ごめんね」

「この任務自体が本当に急なものだったから」

 

 アリサのやや文句めいた声に二人は苦笑。五代はそんな三人のやり取りを見て笑顔を浮かべている。そこへスバル達が追いつき彼へ尋ねた。あの女性は誰なのかと。それに五代は実にあっさりと答える。

 アリサ・バニングスと言ってなのは達隊長三人の幼馴染。少し素直じゃない所があるが、優しく綺麗な女性。五代がそんな風に説明すると、それを聞いていたのかアリサが少し照れたように視線をスバル達へ向けた。

 

「えっと……ま、まぁそんなとこよ」

「否定しないの?」

 

 フェイトのややからかうような声になのはが笑う。アリサはそれに少しだけ戸惑うが、開き直り何も間違っていないと言い切った。そんなアリサに全員が笑みを見せる。そして、サムズアップをアリサへ送った。それに彼女もすかさずサムズアップを返すも、その直後やや苦笑しながら五代へ言った。

 

「もうその子達にも伝染させたんですか?」

 

 その表現に五代が苦笑。だが、その表現もあながち間違っていないと感じたのかそれを否定はしなかった。そんな五代の反応に今度は周囲が苦笑する。場の雰囲気が和んだのを受け、アリサは五代達と一緒にいるという感覚を強く覚えて微笑みを浮かべた。

 

「とりあえず、今日はアタシとすずかで出かける約束してるの。だから、夕食は一緒にここで食べましょ」

「それは構わないけど……いいの?」

「当然! 仕事だけど、少しは息抜きも必要でしょ?」

 

 アリサのウインクと共に告げられた言葉になのはとフェイトは嬉しそうに頷き返し、五代は笑顔を浮かべた。そしてアリサはすずかを迎えに行くと告げて車に戻るとそのまま走り去って行った。

 それを見送り、なのはとフェイトは全員で手分けして探索魔法と併用し街にサーチャーとセンサーの設置をすると告げて動き出す。最後に、今回はロストロギアの捜索任務である事を踏まえ、念のため調査は用心するようにと忠告して。

 

 こうしてなのはは五代と、スバルはティアナ、ライトニングは三人でそれぞれ歩き出す。一方その頃、別働隊の八神家組は月村家の庭でその家の主となったすずかと再会を果たしていた。

 

「そか。なら、夕方にまた会おな」

「うん。翔一さん達もまた」

 

 久しぶりの再会を喜んだのも束の間、アリサがなのは達にしたのと同様の話をすずかははやてに聞かせた。なので、夕方にもう一度ゆっくり話そうとなり、これから仕事のはやて達と出かけるすずかはそう言い合って歩き出す。

 

 すずかは迎えに来るアリサを待つために門前で待ち、はやて達は海鳴での指揮所になるコテージへ向かうために月村家の車を借りた。道中の運転はシグナムが受け持ち、はやて達を送った後はそのままフェイト達と合流して車で行動となる。

 ヴィータはそこから単独で飛行魔法によりセンサーを上空から散布する事になった。まぁ、その後はスターズに合流するのだが。リインはファリンやイレインと共に夕食のために色々な準備をする事になり、月村家に残る事にした。

 

 ツヴァイも手伝うと言ったのだが身体的な面から却下となった。それよりもはやての手伝いを頼むと姉に言われれば、ツヴァイも頷くしかなかったのだから。コテージへ向かって去っていく車を見送るリイン達三人。

 そしてその小さくなった車を見てイレインがぽつりと呟いた。彼女が一番会いたかった相手への気持ちを込めるように。

 

「……にしても五代は別の場所、か」

「ああ。期待させてすまない」

「リインさんが気にする事じゃないですよ。それに、来てるなら後で会えますし」

 

 イレインの残念そうな声にリインがそう申し訳なさそうに言うと、ファリンが笑みを浮かべて言葉を返した。まだ五代と離れて三ヶ月にもならないが、それでも二人にとっては長い時間だった。更に最近はもう一人の家族でもあったゴウラムさえいなくなってしまったため、二人は五代を身近に感じる事が出来なくなっていたのだから。

 

 だが、今日は久しぶりに会える。光太郎は来ないのが残念ではあったが、二人としては早く夕方にならないかと思うぐらい楽しみであった。それもあってかファリンが喜びを表情へ浮かべて先陣を切るように口を開いた。

 

「さ、準備を始めましょう! 道具や調味料を運ばないといけませんから」

「なら私は車をガレージから出してくるな」

「では、私達は荷物を持ってこようか」

「ですね」

 

 イレインが軽く小走りで去るのと同時にリインとファリンは連れ立って屋敷の中へ向かう。互いに近況を話しながら笑みを浮かべる二人。すると、リインの視線がふと何かに止まる。それは綺麗な大広間の柱。正確には、その一部にある傷だ。

 リインがそれに不思議そうに首を傾げるとそれにファリンも気付き視線を追って疑問の正体に気付いた。そして、リインへ向かって懐かしそうに告げる。その傷がこの家の者にとって何を意味するかを教えるために。

 

「その傷は、思い出の傷なんです」

「思い出?」

「はい。あれは、まだ忍お嬢様とノエルお姉様が屋敷にいらした頃です……」

 

 その時の光景を思い出すようにファリンはゆっくり語り出した。それは、忘れる事の出来ない光景。燃え盛る炎の中、それに照らし出されるように戦う戦士の姿。それを思い出して、懐かしそうに、嬉しそうに彼女は語るのだった。

 

 

 

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 その日、月村家に一人の男がやってきていた。名を月村安次郎。忍とすずかの親戚に当たる男だ。しかし、彼はノエルとファリンを引き渡すようにと二人に言ってきた。金儲けと自身の欲望のために二人を利用しようと企てて。

 忍はその裏にある邪悪な企みに気付いていたのでそれを拒否。そして、その日の夜。突如として月村家を巨大トレーラーが強襲。そこから現れたのがイレインだった。

 

 彼女は安次郎が見つけ出した自動人形。しかも、イレインは自分と同型の意思を持たない自動人形を操る能力を有していた。そのため、ノエルとファリンが忍とすずかを守るために戦ったが多勢に無勢。徐々に追い込まれていった。

 最早ここまでかと誰もが思った時だ。イレインは勝ち誇る安次郎へ反旗を翻し、その顔を強打して意識を奪った。そう、イレインは従来の自動人形とは違い、主に対する加害制限が無かった。その対処として掛けられていたリミッターがあったのだが、解除条件が主を侮辱されるという曖昧な条件のため、既に忍の暴言によって解除されていたのだ。

 

―――ありがとう、月村忍。あんたのおかげでもう芝居せずにすむよ。

 

 そう言ってイレインは驚く周囲に対して攻撃を再開しようとした。そこへノエルからの連絡を受けた恭也が参戦。挟み撃ちの形を取って形勢を立て直す事に成功する。しかし、そこまでだった。御神の剣士である恭也はまさに強者。

 だが、あくまでも生身の人間だ。傷付いても腕を無くそうとも止まる事無い自動人形の前では、その剣技も心理的な効果がなく炎燃え盛る中で彼の体力がいつまでも続く訳ではなかった。そして、その動きが鈍った所を量産型のブレードが斬り裂こうとした時だった。何者かが量産型を突き飛ばしたのは。

 

 それに全員の視線が集まる。その人物こそ五代だった。

 

「……それで、五代さんは呆気に取られる恭也様へ大丈夫ですかって言って、イレインへ向き直ったんです……」

 

 五代はイレイン達へ向き直ると尋ねた。何故こんな事をするんだと。それにイレインは答えようとせず、一体の量産型を五代へ差し向けた。それにノエルやファリンが動こうとするが間に合わない。恭也も神速を使おうとするも、体力低下のために出遅れてしまった。

 誰もが五代の死を覚悟した。だが、五代は死ななかった。そのブレードが当たった瞬間、その部分が白い鎧に覆われていたのだ。それをキッカケに五代の体全体がその姿を変えていく。それは白のクウガ。グローイングフォームと呼ばれる戦士の力が弱った時やその覚悟が鈍い時になる姿だ。

 

 その変化に恭也達は声が無かった。戸惑い、恐れ、躊躇い。幾多もの感情が渦巻き、誰も何も出来なかった。しかし、クウガは違った。その変わった己の手を見つめ、小さく呟いた。

 

―――……また、こうするしかないんだ。

 

 そんな風にぽつりと呟き、クウガは迷いながらも量産型へ拳を振るった。その一撃に量産型は軽くよろめくようにたたらを踏む。そこへクウガは回し蹴りを放ち、その体を完全に外へと吹き飛ばした。それで量産型の一体は沈黙したのだ。

 それに誰もが息を呑む。突然目の前に現れた謎の存在。それが異形へと変化し自動人形をたった二発で倒してしまったのだから。イレインはそれに怒りを燃やし、残る全てを一斉にクウガへ差し向けた。それにクウガは拳を一度だけ見つめ、どこか躊躇いながらも立ち向かった。

 

 クウガは懸命に戦った。それに呼応し、恭也達も反撃を開始。クウガが多くの量産型を引き受けたため、恭也達が各個撃破でその援護をし形勢は逆転した。それに危機感を感じたイレインは逆転を狙って単身クウガへ襲い掛かった。

 残った量産型を恭也達へあてがい、クウガと一対一で戦うイレイン。量産型と違い明確な意思を持つイレインにはクウガも苦戦を強いられた。そして、遂にその首をイレインの電磁鞭が捉えた。その電撃を受けて柱にもたれかかるようにクウガは倒れたのだ。

 

 そんなクウガの首元へブレードを突きつけ、イレインは勝ち誇ったように告げる。

 

―――さっきこんな事をした理由を聞きたがったな。私はこいつらが邪魔だ。だから、私のためにこいつらを殺す。それが、こんな事をした理由だ!

 

 その言葉を言い終わるのと同時にイレインは勝利を確信してブレードをクウガ目掛けて突き刺した。しかし、それをクウガは紙一重で避けるとイレインを殴り飛ばしたのだ。

 

「驚く私達を尻目に、五代さんはこう言ったんです。邪魔だからって……」

 

―――邪魔だからって、そんな事のために誰かを殺させない。

 

 そう断言し、クウガは構えた。それは、戦士が姿を変える際に取る構え。戦う意思を、その覚悟を示す、五代にとってはもう二度とする事のないはずだったもの。

 

―――変身っ!

 

 その声と共に白い体はまるで周囲の炎を吸い込むように赤く変わっていく。そして、その頭部の角が立派な物へ変化したのを見て誰もが言葉を失った。イレインでさえこう思ったのだ。もう、目の前にいるのは先程までの存在とは別の相手だと。

 クウガは炎にその身を照らし出されながらイレインへとゆっくりと歩き出す。イレインはその光景に恐怖を感じるも何とかそれに立ち向かった。その電磁鞭をクウガ目掛け放つがそれを彼は自らの手で受け止めて掴んだのだ。

 

 流れる電撃を物ともせず、クウガはそれをキッカケにイレインを自分の前へ引っ張った。当然イレインは体勢を崩す。クウガはそうやって自分の前へ来たイレインの首元へ手刀を叩き込んだ。それはイレインの意識を刈り取るもの。

 それと同時に残っていた量産型の動きも止まる。それに安堵する恭也達を余所に、クウガはイレインの体を優しく抱き抱えて忍の傍へ近付いた。そして戸惑う忍に対しこう頼んだのだ。

 

「この子を許してやってくれないかって。きっと話せば分かってくれるはずだから。そんな風に五代さんは言ったんです」

「……そうか。それでは、この傷は……」

「はい。五代さんが変身するキッカケになった時のモノです」

 

 そう言ってファリンは傷を優しくなぞる。この傷を残そうと言い出したのは実はイレインだった。その後、彼女は意識を取り戻すと五代達から揃って怒られたのだ。それに戸惑い、状況を把握しかねているイレインへ五代が言った。

 まずは思っている事や考えた事を話して欲しいと。それを聞かないと力になれないから。それにイレインは呆気に取られたが、そこで彼女はある事に気付いた。それは自分の調子がよくなっている事。そう、調整されていたのだ。それも完璧なまでに。

 

 その礼代わりとしてイレインは自分の事を五代達へ話した。人間のように好き勝手生きるために自分の正体を知っている者達を全て消そうと思った事を。それに五代は、自動人形の事を知る知らないに関わらず、自分のために誰かを泣かせてはいけないのだと説いた。

 でなければ、今度はその泣かせた誰かが誰かを泣かす。そうやって悲しみの連鎖が続くのだからと。それを聞いたイレインがそれに自分は関係ないと言おうとした瞬間、五代ははっきりこう言い切った。それは必ず最後には自分へ帰ってくると。

 

 そんなやり取りを経てイレインは月村家で生活する事になった。当初の理由は外で暮らしていくだけの資金も何もないからだった。それに世間の常識が無かったのもそれに拍車をかけた。五代は忍から恭也を助けてもらった礼と、イレインの事についての責任を取るという形で無理矢理居候となった。

 

 それをファリンがリインへ語り終わった時だ。二人の背後から声がしたのは。

 

「その傷は、私の忘れちゃいけない記憶の証でもある」

 

 それはイレインだった。その声に二人は視線を向けるが、その言葉の意味をリインは理解したのか視線を傷へと戻した。

 

「私は悪い事をした。それは、絶対に消える事のない事実。だから、それを忘れずに生きようって決めたのさ。五代の奴や私を受け入れてくれた忍お嬢様達へ恩返しするためにも、な」

「……そうか」

 

 闇の書として多くの命を殺めてしまったリインにとって、そのイレインの言葉は良く分かるものだった。まさに彼女自身の気持ちと同じだったのだから。

 故にリインは何も言わず、その決意と気持ちに思いを馳せた。一人ファリンは少し空気が妙なものになったのを感じ取り、明るく手を叩いて雰囲気を変えようとした。

 

「さあさあ、早く荷物を纏めてコテージに行きましょう。五代さん達を驚かせないと」

「そうだな。アイン、行こうぜ」

「ああ」

 

 三人は傷から視線を外し厨房へ向かって歩いていく。その話題を今日の夕食時の事に変えながら。楽しそうに、嬉しそうに、三人は話すのだった。

 

 

 

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 海鳴の街を歩きながら五代となのははそれぞれ感慨に耽っていた。なのはにとってはかなりの、五代にとってはわずかの期間だが共に慣れ親しんだ場所には変わり無いのだから。

 

「何か懐かしいです」

「そうだよね。俺でもそうなら、なのはちゃんはもっとだよね」

 

 変化していない街並みを眺め、二人はそう話す。だが、なのはは少し苦笑気味にこう告げたが。

 

「でも、あれ? お仕事中なのに帰ってきちゃったって感じしますけど」

「あ〜、それは何か分かるなぁ」

 

 そう話しながら笑顔で歩く二人。そことは違う離れた場所では、スバルとティアナが海鳴の穏やかな空気を感じていた。それと共にミッドとの共通点に気付いて会話をしている。

 

「何か和むねぇ」

「そうね。ミッドの田舎とかに近いかも」

「いいなぁ、こういう感じ」

「ま、アタシも嫌いじゃないわ」

 

 そう言いながら歩く二人だったが、スバルが何かを見つけ足を止めた。それにティアナも気付き、視線をスバルの見ている方向へ向ける。そこにあったのは移動式のアイスクリーム販売所だった。

 サンプルらしき物がいくつか並んでいて見ているだけでも楽しめるのだが、ティアナは隣の相手が何を考えてそれを見つけたのかを薄々勘付いていた。

 

「……アイスクリーム屋ね」

「ね、ね、ティア」

 

 予想通りのスバルの輝くような目を見て、ティアナはやはり買い食いを考えているのだと確信した。なので一瞬注意でもしようかと思ったが、ある事に気付き、それを許してやる事にした。きっと、頭ごなしに注意するよりも簡単にスバルが諦めるだろう事実を。

 

「買ってもいいけど、あんたこの世界のお金、持ってるの?」

「あっ……」

 

 無情にも告げられたティアナの冷静な指摘にスバルは沈黙。地球、それも日本の貨幣などスバルが持っているはずもない。故にスバルの買い食いは自然に阻止される。

 そんな落ち込む子犬のようなスバルを見て、ティアナは軽くため息を吐いた。そして、こう言ってスバルの立ち直りを促す。それは、念話でなのはに頼んでみればいいとの提案。それにスバルは割かし本気で思い悩み、ティアナはそれに心から呆れとある種の尊敬の念を抱く。

 

(五代さん達に一番近いかもしれないわね、この子の反応って)

 

 同じ頃、チームライトニングも海鳴の街を歩いていた。だが、その中核であるフェイトにはどこか影がある。本来ならここにいて楽しく過ごす事が出来たはずの相手がいない。それがフェイトの心に影を落としていた。

 勿論、彼女とて光太郎の判断が良いのは理解している。そして、それを支持した事も間違っていないと思っている。いるのだが、フェイトはどこかそれを否定しかかっていた。

 

(光太郎さんと一番上手く動けるのは私。なら、いっそ私も残って備えた方が良かったんじゃ……)

 

 実際に怪人が現れた際、龍騎やヴァルキリーズではRXと上手く連携出来ないのではないか。そんな事から発展した発想は、知らずフェイトの醜い部分を浮き彫りにさせる結果となる。それはフェイトへエリオが告げた言葉がキッカケ。

 

「フェイトさん」

「何?」

 

 マルチタスクで一方で光太郎の事を考えながらエリオへ対応するフェイト。だが、そんな彼女へエリオはきっぱりと告げた。

 

「真司さん達を信じてください」

 

 それにフェイトは思考を停止した。どういう意味か分からなかったからではない。嫌と言う程に理解したからこそ、フェイトは思考を停止してしまったのだから。自分は今何を考えていたと。信じると決めた真司やヴァルキリーズをどこかで役不足と思っていなかったか。自分が一番RXの傍にいるべきだと決め付けていなかったか。

 そう思い、フェイトは自分の醜さに嫌悪感を感じた。これでは光太郎に合わせる顔がない。人の醜さを見ながらも、人の強さや優しさを信じようとする光太郎。そんな彼と共にあるためには自分もそうでなくてはいけない。故に、フェイトはエリオへ心から感謝を込めて頷いた。

 

「……そうだね。信じるよ。真司さんもヴァルキリーズも、きっと光太郎さんと一緒に六課を守ってくれるって」

「はいっ!」

 

 フェイトの表情がいつものものに戻った事に嬉しく思いながらエリオは笑顔で頷いた。キャロはそんな二人のやり取りを聞きながら、服の中に隠しているフリードへ笑みを浮かべて声を掛ける。

 

「今日のフェイトさんどこか変な感じだったけど、やっと戻ったよ。エリオ君って凄いね」

「キュク」

 

 頼もしく感じる槍騎士の姿にキャロは微笑みを浮かべて視線を向ける。それにエリオは気付いて振り向くと笑顔を見せた。そこへ丁度車に乗ったシグナムがクラクションを鳴らし、その存在を教える。こうしてライトニングは本当の形となって捜索へ当たるのだった。

 

 一方、コテージに辿り着いたはやて達は指揮所としての準備を進めていた。ザフィーラと翔一は共に力仕事担当。シャマルはこの任務を依頼してきた聖王教会との連絡をしている。相手はシスターシャッハ。八神家とは馴染みの深い相手だ。

 シャマルがシャッハと任務についての打ち合わせをする横で、はやてはツヴァイと二人で光太郎の感じた予感に備えるべく、グリフィス達との連絡を密に取れるよう通信機能の確認を行なっていた。

 

「……はい。では……」

「何かあったか?」

「捜索対象のロストロギアの持ち主が夕方までには特定出来そうだって。ただ、それよりも遅くなる可能性があるかもしれないから覚悟しておいて欲しいとも言われたわ」

 

 シャマルの告げた内容に全員から安堵と苦笑を浮かべる。そして早速とばかりにシャマルが念話でなのは達へそれを教え始めた。こうして、一先ずはやて達は光太郎の予感が告げていたのはロストロギアの方ではないと考えた。となれば、残る可能性は少ない。

 そのため、はやて達に微かな不安がよぎる。そう、この海鳴に邪眼の魔の手が迫っていると考えたのだ。そしてそれが意味する事を考え、はやてがはっきりと周囲へ告げた。

 

「警戒は怠らんようにしよ。ロストロギアが危険でも、邪眼が来てもええように。でも、あまり緊張しすぎるのも駄目やからな。程々にしよか」

「そうだね。光太郎さんの予想が外れてよかったってなるかもしれないし」

 

 翔一がそう言うと全員が笑顔で頷いた。そうなってくれるといいと口々に言い合って。こうしてはやて達は不測の事態に備え心構えをしておく事にした。それをなのは達へも伝えるのと同時にはやてはすずか達との夕食をどうするかを悩んでいた。

 もし邪眼が五代と翔一を狙ってくるとすれば二人を巻き込みかねない。だからといって離れているのも危険かもしれない。きっと、邪眼は自分達の事を調べあげているに違いないのだ。

 

(ここは、多少危険があっても一緒に居てもらうべきやな。いざとなってもライダー二人にわたしらがおれば安全や)

 

 そう結論付け、はやては視線を空へ向けた。視界に広がる澄み渡る青空。それに眩しさを感じるがはやてはそれにこう思うのだ。この空のように、何事もなく過ぎてくれればいいのにと。

 

 そんな事を露も知らずに道路を走る一台の車がる。アリサ運転のものだ。助手席にはすずかの姿がある。楽しげに会話をしているが、その話題は当然この後の夕食に終始していた。

 

「やっぱ、バーベキューよね」

「そうだね。折角のコテージだし」

「ファリンさん達が調味料とかは用意してるんでしょ?」

「うん。リインさんも一緒に準備を手伝ってくれてるから、材料はこっちで用意しようかなって」

 

 すずかの言葉にアリサはよし来たと言わんばかりに頷き、車の速度を少しだけ上げる。それがアリサの気分が上機嫌になってきた証拠だと思い、すずかは笑みを浮かべた。アリサはお祭り好きだ。だから、こういうイベント事には目が無い。

 今もどうやってなのは達を驚かすか、または喜ばすかを真剣に考えているのだろう。そう思い、すずかはある人物の事を思い出して少しだけ寂しそうな表情を見せる。それにアリサが気付き、不思議そうに首を傾げた。

 

「どうしたのよ?」

「光太郎さんと会えなかったのが残念だなって」

 

 その告げられた名前にアリサも同意するように頷いた。彼女もそれは残念に思っていたのだ。初めて会った時、不覚にもいい男だと思った相手。しかし、フェイトの光太郎を見る目から何かを気付き、アリサは軽くため息を吐いたのだ。

 どうしてこうも自分が少しいいなと思う相手には戦う気を起こせない相手がいるのだろうと。そう、実はユーノもそうだった。初めて会った本当のユーノの姿。その好青年ぶりにアリサは少しいいなと思った。だが、ユーノと少し接している内に分かったのだ。

 

(ユーノはなのはの事が好きだって分かったのよねぇ。雄介さんはお兄さんって感じだし、翔一さんはアタシには合わない感じだし……まったく、アタシにはどうしていい人がいないのよ?)

 

 もういっそ多少性格に難があってもいい。唯我独尊を地でいくような男や、気弱で人前で自分の意見をはっきり言えないような男でも構わない。あるいは自分のような素直に気持ちを言う事が出来ない男や男らしくあろうとするが美人に弱い男でも。

 そこまでして自分にもいい人が現れて欲しいと、そんな風に心から思うアリサ。しかし、そんな彼女は意外と基準が厳しい。なので、いい人を見つける前にどこかで妥協出来る部分を作らねばならないと、この後相談を受けたはやて達から揃って同じ事を言われる事になる。

 

「確かにね。ま、またきっと会えるでしょ」

「そうだね」

 

 楽しげに話す二人。その顔には当然ながら欠片の不安も無かった。今日はこのまま何事もなく楽しく過ぎていく。そんな風に思いながら車は風を裂くように走るのだった。

 

 

 

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 時間も過ぎ、辺りを夕日が包みだした頃、なのは達スターズはヴィータも合流してロングアーチからの指示を待っていた。だが、その五人の手にはアイスが握られている。あの後、スバルは散々悩み五代へ相談。それに苦笑した五代は、手持ちからいくばくかのお金を渡してスバルとティアナへアイスを買ってきて欲しいと頼んだのだ。

 

 無論、それは彼の分だけを買うには多い。そう、五代は自分のお使いをしてもらう代わりにお駄賃として二人にもアイスを買ってきていいと告げたのだ。そこへ狙ったようにヴィータが合流し、当然ながらアイス好きな彼女を五代がその話へ乗せない訳がない。

 こうして副隊長のお目こぼしも受けたスバルが心から感謝して走り出し、ティアナはそれに呆れつつも五代へ頭を下げて心なしかどこか嬉しそうにその後を追った。その結果が五人が手にしているアイスだ。

 

「……ホント、五代さんに感謝しなさいよ」

「分かってるよ。でも、出来るならダブルが良かったなぁ」

「ちょっと、アンタ本気で感謝してる?」

 

 そんな会話をする二人の隣では、なのはとヴィータが五代のした行為に微笑みを浮かべていた。立派な局員で上司でもある彼女達が許可するには少々問題がある買い食い。それを民間協力者である五代ならば何の気兼ねもなく出来るからだ。

 しかも、彼女達の分も五代の善意からの物であれば断るのも気が引ける。そういう公明正大な言い訳を得て、なのはもヴィータもこうして二人と同じようにアイスを食べているのだから。

 

「ご馳走様です、五代さん」

「何かわりぃな」

「いいからいいから。何かさ、こういうのもいいよね。みんなで遊びに来てるみたいで」

「お仕事なんですけど……」

「あ……じゃ、親睦を深めているって事で」

 

 なのはの苦笑混じりの答えに五代はそう言って笑う。その屈託のない笑顔になのはも笑って頷いた。それならいいですと。それにヴィータも同意するように頷いて三人は余計に笑みを深めた。そうして五人がアイスを食べ終わったのを見計らったようにロングアーチからの念話が入る。

 一旦全員コテージに帰還し、食事を兼ねた休息を取るように。そこには、ロストロギアも危険性がなく後は広域探査の結果待ちとなった事も要因としてある。それになのは達は了解と返し、即座になのはがフェイトへ念話を送る。それはこれからどうするかと言う相談。

 

 フェイト達はシグナムが車で動いていたので、その後はなのは達を迎えに行くと返した。それになのはは感謝と共にある場所で待っているを告げてから念話を切った。

 

「……と言う訳で、私達は翠屋に行こうか」

「「翠屋?」」

「そうか。それはいいな」

「いいね。スバルちゃん達にも味わってもらおう。桃子さん自慢のケーキや士郎さん自慢のコーヒーなんかを」

 

 なのはの挙げた名前に疑問を浮かべる二人に対し、ヴィータと五代は名案だと笑顔でサムズアップ。そして、翠屋の説明をしながら五人は揃って歩き出す。向かう先はなのはと五代にとっては馴染みの喫茶店。その途中、なのはは携帯で母である桃子へ連絡を入れる。

 急に行って驚かせる事のないようにと思ってのその配慮。それと同時にある程度の商品を用意してもらうのを頼み、更に五代もいると伝えるとスバル達にも聞こえる声で待っていると返事があった。それに五代もなのはもヴィータさえも苦笑し、スバルとティアナは意外そうな表情を見せる。

 

「……五代さんって、なのはさんのご両親にも好かれてるんですか?」

「にゃはは、五代さんは六課に来るまでうちで働いてたんだよ?」

 

 ティアナの言葉になのはは無理もないかと思いつつそう答えた。そして、そこから五代が翠屋での話を始めるとなのはとヴィータもその話に耳を傾けた。彼女達も知らない時の五代の話はとても面白く楽しいものだったのだ。

 そんな風に話しながら目的の場所に着き、そのドアをなのはが開ける。それと同時に鳴った来客を告げるベルの音で三人の人物が一斉に声を掛けた。

 

「「「いらっしゃいませ」」」

「久しぶり、お父さん、お母さん、お姉ちゃん」

「おかえりなのは。また綺麗になったな」

「おかえり〜」

「ちょっと父さんも母さんも止めなよ。なのはは仕事でこっちに来てるんだから」

 

 なのはの笑顔に士郎と桃子が帰宅を喜ぶかのような言葉をかけ、それに美由希がやや呆れ気味に指摘する。だが、その彼女もどこか嬉しそうに笑っている。

 スバルとティアナは桃子の姿を見て驚愕していた。いくら何でも若すぎると思ったのだ。なのはぐらいの年の子がいるとは思えないような容姿。それに、二人して同じ感想を抱いた。

 

((お母さん、若っ!))

 

 そんな二人とは違い、五代もなのはと同じように三人へ挨拶を始めた。だが、その視線が美由希へ移った時、五代の表情がどこか楽しそうなものへ変わった。

 

「ご無沙汰してます士郎さん、桃子さん。あれ? こちらの方はモデルさんかな?」

「も〜、美由希ですよ五代さん」

「ああっ、美由希ちゃんか。いや、気付かなかった」

 

 苦笑しつつ指摘する美由希。それに五代は一際驚いたように反応を返す。これも五代なりの挨拶。美由希は自分に彼氏が出来ないと五代にぼやいた事があり、その理由として自分が美人じゃないからと告げた。それ以来、こうして事ある毎に五代は美由希を誉めるのだ。

 それは世辞ではない。言われる事で自覚する事もある。そう信じるからこそのもの。美由希もそれを知っているからこそ、そんな五代の気持ちが嬉しいのだ。兄である恭也はこんな事を言ってくれる相手ではなかった事もその一因。故に美由希にとっても五代は頼れる兄に近い感覚があった。

 

 そして、なのはがスバルとティアナの紹介をし、二人が礼儀良く挨拶をする。そしてフェイト達が来るまで店で待たせてもらう事になったのだが、五代が大人しく待っているはずはなく……

 

「はい、モンブランですね。飲み物は、アイスティー……っと。かしこまりました」

 

 そこには、以前使っていたエプロンを付けオーダーを受ける五代の姿があった。既にピークは過ぎたものの、忙しいのは変わり無く五代は進んで手伝いを買って出たのだ。なのは達はそんな五代に感心するも苦笑していた。

 何せ、それは六課の五代をどこか彷彿とさせるのだから。それだけではない。なのはにとっては何度か見た光景でもある。だからだろう。なのはもスバル達へ待っているように告げ、その手伝いを始めたのは。こうして二人が働く姿を眺め、スバルとティアナは意外そうに呟いた。

 

「「なのはさんが店員してる……」」

「……小さい頃から偶にやってたぞ」

 

 局の憧れであるエースオブエース。それが管理外世界の喫茶店でウェイトレスをしている光景は、どこか不思議な印象を二人に与えた。それにヴィータがどこか苦笑しながら呟く中、フェイト達が翠屋に現れる。が、忙しそうに働くなのは達の姿を見て軽く驚きを浮かべる事となる。

 

 その頃、コテージ付近では料理の腕を振るうははやてと翔一の姿があった。更にリインもそれを補助するように動き、ファリンとイレインはテーブルのセッティングなどをしている。シャマルとザフィーラは六課との連絡中。未だに何の異常もないため真司達はいつものように過ごしていると教えられていた。

 ただ、光太郎だけはやはりまだ警戒しているため、なのは達が帰るまでは宿舎に帰らずに待っているとの事も告げられる。それを聞き、二人は揃って警戒を強めた。

 

「そう、分かったわ。ありがとうアルト」

『いえ、もし何かあったら必ず連絡します』

「頼む」

 

 そうザフィーラが告げると通信が切れた。それに互いに視線を送り合い頷く二人。ツヴァイはいつもは出来ない配膳の手伝いをしてリインから誉められ、ファリンとイレインからも微笑まれていた。

 そんな和む光景を見たシャマルは笑みを見せるも、すぐそれを消してはやてへ近付いた。彼女は鉄板で焼きそばを作っていて、食欲をそそる匂いが漂っている。それに顔が綻ぶのを感じながらも、何とか表情を崩さないようにしてシャマルははやてに耳打ちした。

 

 それにはやては特に驚いた様子もなく頷き、翔一へ視線を向ける。翔一はアリサ達が買ってきてくれた材料を仕込み、バーベキュー用に串に刺していた。その材料を持ってきた二人は、現在ツヴァイの可愛さに笑みを浮かべながらテーブルでなのは達の帰りを待っていた。

 

「翔にぃ、光太郎さんはわたしらが帰るまで寝ないらしいわ」

「……そうなんだ。なら、俺達も気を抜きすぎないようにしないと」

 

 その翔一のどこか納得した答えにはやては小さく頷き、シャマルへ視線を戻す。それにシャマルも軽く笑みを浮かべて頷き、ザフィーラの元へと戻っていく。張り詰めるのは良くないから適度に気を抜こう。はやてと翔一の会話からそんな風に感じ取ったのだ。

 そんな時、コテージ近くに車のエンジン音が聞こえてきた。それにすずか達が揃って反応を示す。はやてと翔一はそんなすずか達の反応に気付かれない程度の笑みを浮かべて料理を続けた。

 

「いい匂い!」

「ですね!」

 

 我先にと車から降りたスバルとエリオが開口一番そう言い合って走り出す。

 

「少しは我慢しなさいよ」

「でも、お腹空きました……」

 

 そんな二人に呆れながら後から降りてきたティアナがため息を吐けば、キャロがそんな二人を擁護するようにそう告げた。

 

「……良かった。シャマルは何も手を出してないようだ」

「マジか。それなら……飯は期待出来るな」

 

 副隊長二人は家族の一員の料理不参加をどこか安堵したように言い合い、それを聞いた五代が苦笑していた。翔一から少し聞いたシャマルの失敗談。それの多くは料理関係だったのだから。そんな五代達を見つめ、なのはとフェイトは苦笑し合った。

 

「やっぱりどこか休暇みたいだね」

「そうだね。いつか本当にこんな風にみんなで来れたらいいな」

「真司さんやヴァルキリーズ、かな」

「……スカリエッティも、ね。いないと真司さん達が気にするから」

 

 なのはの言い方に軽い戸惑いを感じつつもフェイトはそう告げた。それからなのははまだフェイトの中のわだかまりが消えてないのを感じた。だが、その声に嫌悪も憎悪もないのに気付き、少しだけ安心もしていた。

 これなら、いつかフェイトとジェイルも分かり合えるのではないかと思えたからだ。既になのははジェイルに対して犯罪者などという印象はない。しかし、彼女はそれを周囲にも要求する気は無い。ジェイル自身も言っていたのだが、した事は消えないのだ。

 

(ジェイルさんは、フェイトちゃんに対してどこか負い目を感じてる。フェイトちゃんは、そんなジェイルさんの態度に負い目を感じてる。優しいんだね、二人共)

 

 きっと二人は互いの気持ちを分かり合おうとしているのだろう。そう思い、なのはは笑う。それにフェイトは気付かず、ただなのはが漂う匂いに微笑んだのだと思い、同じように微笑む。そして二人もはやて達を手伝うために動き出した。その姿はやはり休暇を楽しむ女性にしか見えないと気付かぬままに。

 

 

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 大勢で賑わうテーブル。話題の中心人物が五代なのは仕方がないだろう。いつでもどこでもムードメーカーは五代なのだから。今もすずかやアリサだけではなくファリンやイレインにも話しかけられ、それを活かして五代はスバル達への橋渡し役をしているのだ。

 すると、そこへ車のブレーキ音が聞こえてきた。その音で全員が視線をそちらへ向けると、そこには美由希とアルフ、そしてエイミィの姿があった。それにスバルとティアナは見慣れない相手が二人いる事に首を傾げて五代へ尋ねた。

 

「あの、美由希さんと一緒にいるのは誰です?」

「一人は使い魔みたいですけど……」

「あっちの女の人はエイミィさん。クロノ君の奥さんで、フェイトちゃんの義理のお姉さん。で、もう一人はフェイトちゃんの家族でアルフさん」

 

 五代の言葉に名前を挙げられた二人が手を振って応じた。その気さくさにスバルもティアナも親しみ易さを感じて笑顔を見せる。こうして食事を兼ねた紹介の時間が始まった。はやてが、まるで休暇の慰安旅行の様相を呈したと表現すると、それに周囲から同調するように笑いが起きる。

 そして乾杯の後、アリサを筆頭に現地の者達の自己紹介が始まった。とはいえ、既に五代が簡単に紹介している者達がほとんどのため、実質はすずか達月村家だけのようなものだ。彼女達の次は当然ながらスバル達四人の自己紹介だった。

 

「それで、私は五代さんやなのはさんみたいに、困ったり苦しんでいる誰かを安心させてあげられる人になろうと思ったんです」

「なので、アタシは兄や翔一さんのような誰にでも同じような態度で接する事の出来る人を目指しています」

「だから、僕は光太郎さんを目標に色々な鍛錬に励んでいます」

「いつか、真司さん達と一緒にここに来れたらと思います」

 

 四人に共通するのは締めにライダーとの関わりを示す言葉を持ってきた事。それを聞き、アリサ達は揃って五代達ライダーの影響力を感じていた。真司だけは彼女達も良く知らない。それでも、五代や翔一と同じような、いい意味で存在感のある人物だとは思った。

 四人の自己紹介が終わった後、自然と話題はここにいない光太郎や会った事さえない真司の事になるのもその存在感故の事。だがそんな中、五代はスバルを手招きし、イレインやファリンと改めて引き合わせた。そして、三人へ互いの共通点を教えたのだ。

 

「……って事なんだ」

「そうですか。この子も」

「私らと同じなのか」

 

 五代から聞かされたスバルの生まれ。それに二人はどこか嬉しそうに笑みを見せてその頭を撫でた。スバルも急に聞かされた事に驚きはしたが、二人が自分達の姉にも当たる存在と思え、嬉しく思っていた。

 ヴァルキリーズが大勢で仲良くしているのを見ながら、彼女はどこかで羨ましく思っていたのだ。ギンガだけでなくもっと自分にも姉妹がいればと。そんな時に出会ったファリンとイレイン。それにスバルは勝手ながら姉認定をした。

 

「あの……ファリンさん、イレインさん」

「はい?」

「ん?」

 

 スバルの声に何か変な感じを覚え、二人は不思議そうに声を返す。それにスバルは意を決して告げる。

 

「お二人を私のお姉ちゃんって思ってもいいですか?」

「「……は?」」

「……駄目ですか?」

 

 何を言われたのか一瞬理解出来なかった二人だったが、スバルはそれに構わずにそう問い直す。その子犬のような可愛さに元々妹分であるイレインが反抗的な事もあったファリンが嬉しそうにその体を抱きしめた。

 それにスバルが驚くものの、それが受け入れだと理解し笑顔を見せる。イレインもそんなスバルに何か思うものがあったのか、ファリンとは逆からその体を抱きしめて笑った。

 

 その光景を見て五代は頷いていた。生まれが特殊な三人。だからこそ、その出会いに縁を感じたのだろう。魂の姉妹とでも言えばいいのだろうか。五代はそんな事を考え、三人にサムズアップ。それに三人も気付き、満面の笑みでサムズアップ。

 一方、なのは達は幼馴染同士での会話に花を咲かせ、今はなのはとユーノの事を話題にして彼女を困らせていた。何せ唯一の恋人持ちとなったなのはだ。それに対して四人は年頃という事もありそれぞれに思う事もある。

 

「で、単刀直入に聞くけど、どこまでいったの?」

「あ、アリサ……」

「さすがにそれは……」

 

 直球な質問にフェイトとすずかが苦笑。だが、はやてはそれに同意するかのようになのはへ視線を向けてこう言った。

 

「キスぐらいはしたやろ?」

「ううっ……どうしても言わないと駄目?」

「「駄目(や)」」

「「よ、容赦無い……」」

 

 軽く涙目ななのはに対し、アリサとはやては即答。そのあまりの速さにフェイトとすずかはなのはに同情しつつ、やはり興味はあるのかそれを止めようとしない。こうしてなのははユーノとの関係をある程度まで話す羽目になる。

 とはいえ、まだキス止まりなので別に話しても問題無かったのだが。ちなみに、それを聞いてはやてとアリサが軽くがっかりしたのを追記しておく。その後もガールズトークは続き、なのはの受難は終わらなかった。

 

 エリオとキャロはアルフやエイミィとの再会に喜びを見せ、楽しげに会話していた。エリオにとってもキャロにとっても、二人は人の優しさや温もりを教えてくれた存在。過ごした時間はそこまで多い訳ではないが、それでも思い出は沢山あるのだから。

 

「そうかい。光太郎は六課にね」

「はい……」

「一緒に来てくれるはずだったんですけど……」

「仕方ないさ。邪眼が動き出したなら、仮面ライダーはそれに備えて当然だ」

 

 やや申し訳ないような二人を見て、エイミィはそう明るく言って気にしないようにと続けた。

 

「そうそう。会えなかったのは残念だけど、ま、その気になれば会えるしね」

 

 アルフが少し笑みを浮かべてそう告げるとエリオとキャロはそれに頷いた。彼女へいつか六課に遊びに来て欲しいと付け加えるのを忘れずに。それにアルフは嬉しそうに笑みを見せるも、何かを思い出してやや表情が曇る。見ればエイミィも同じような表情だ。

 それにエリオとキャロが疑問を浮かべるが、エイミィがそんな彼らへ告げた。邪眼との戦いはどうなっているのかと。それに二人も表情を引き締める。知り合ったヴァルキリーズを基にした怪人を創り出し、六課へ差し向けてきている。そう二人は言ってこう締め括った。

 

「「でも、六課にはライダーもいるから大丈夫です」」

 

 二人揃ってその手はサムズアップをしている。それにアルフもエイミィも頷いてサムズアップを返す。互いに見せ合うは信頼の笑顔。ライダー達の強さを知っているからこそ、その心に絶望はない。不安があろうとも、それを上回るだけの希望があるのだから。

 そんな四人の傍ではティアナが美由希からなのはの昔話を聞かされ、驚くやら笑うやらと忙しく表情を動かしていた。実は運動音痴気味だとか機械関係にやたらと強いなどの知らない話は、ティアナの中にあったなのはのイメージを大幅に変更させるだけのものがあった。

 

「……で、家のパソコンはなのはに一回全部バラバラにされてね」

「凄いですね」

「あたし達もビックリしたよ。いや、でもちゃんと組み立てたんだから大したもんだと思ったけどね。そのなのはカスタムは未だに現役だよ」

「なのはカスタムって……何か凄そうですね」

 

 美由希の出した呼び方に苦笑しつつ、ティアナは視線を美由希から後方のなのはへ移した。それに美由希も視線を動かし感慨深く笑った。フェイト達と楽しげに話す姿はただの年頃の女性としか見えなかったのだ。

 

「そんななのはが今は先生してる。しかも、結構人気者なんだって?」

「はい。若い子の憧れですよ。エースオブエースって呼ばれてますし」

 

 ティアナがそう楽しそうに言うと美由希もそれに笑みを返す。視線の先では、なのはがはやてとアリサからユーノといつ結婚するのかとからかわれている所だった。それに大弱りしているなのはを見て二人は笑ったのだから。

 ティアナの中に、もう完璧人間としてのなのはのイメージはない。誰であれ、どこかに欠点や弱点がある。そしてそれを補うだけの才能や技術が必ず誰にでも眠っている。なのははそれを目覚めさせたのだ。そう考えるからこそティアナも思う。

 

(アタシも……いつかアタシだけの何かを見つけ出してみせる。他の誰にも負けないオンリーワンを!)

 

 視線の先では、あまりのはやてとアリサのしつこさにフェイトやすずかへ助けを求めるなのはの姿があった。それに二人が苦笑すると風が流れる。少し優しく涼やかな風が。

 

 その風を感じながら翔一達も眼前の光景に笑みを浮かべていた。リインと手を繋いでご機嫌なツヴァイは終始笑顔を絶やさない。翔一はそんな姿に子供らしさを感じて微笑む。と、それを見てリインが口を開いた。

 

「いいものだな」

「そうですね。アインさんがいるから、リインちゃんも嬉しそうですし」

「嬉しそうじゃなくて嬉しいですよ。お姉ちゃんがいると、心が暖かくなるです」

 

 周囲がそれぞれに繋がりを持ったり、深めたりするのを見ながら翔一とリインは微笑み合い、ツヴァイはそんな二人の間でニコニコと笑っていた。普段は中々仕事をしている場所の関係で共に過ごす事が出来ないリイン姉妹。だからだろう。こうして共に長い時間を過ごせるのはツヴァイにとっては嬉しくて仕方ないのだ。

 

 そんな会話をしながら笑い合う三人を見つめ、シグナムが呆れるように笑みを浮かべていた。

 

「まったく、これは一応仕事なのだがな」

「シグナム、貴方も一応って言ってるわよ?」

「ま、きっと誰もが同じ気持ちだろうよ。どっか休暇みてえな雰囲気だからな」

「それは否定せんが、気を抜きすぎるなよ」

 

 守護騎士達は周囲の光景を見ながら笑みを浮かべる。彼らも口をついて出る言葉はやはり和んでいるものばかり。こうしてある程度の時間を過ごした一同は汗を流す事になる。

 そして話し合いの結果、海鳴市にあるスーパー銭湯へ向かう事になった。無論、その話を聞いた瞬間スバル達が揃ってあの話題になった場所だと気付き、小さく喜んだのは言うまでもない。

 

 

 

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「はい、いらっしゃ……団体様ですか?」

「そうです。大人が……十八人と子供が四人です。あ、支払いはわたしがしとくから、みんなは先に行っててええよ」

 

 突然の団体客に戸惑いを感じながらも愛想よく対応する店員。それに無理もないと苦笑しつつはやてが全員分の支払いを始める。そんな彼女の言葉通り、なのは達は一足先に店内へと足を踏み入れていく。

 その雰囲気は和気藹々といったもの。まぁ、スバルがヴィータに対し大人料金にするのかと言って軽く睨まれたりはしていたが概ね平和だった。そして五代達は当然の如く男湯へ。キャロはエリオへ手を振ってフェイト達と共に女湯へ向かった。それにエリオは少しだけ安堵していた。

 

 実は、キャロはどこか性別を気にしていない時がある。自然保護隊での日々での中にこのような出来事があったのだ。

 

 その日、色々と疲れたエリオは浴室へ向かい疲れを落とそうとしていた。時間は遅く、他の隊員達は既に入浴を終えた後だったのだが、そこへキャロが一緒に入ろうと現れたのだ。勿論裸で。

 エリオはそれに慌てて背を向けたものの、今でも思い出そうとすれば容易に思い出せるぐらいその光景は脳裏に焼きついてしまったのだ。時にエリオとキャロが六課に来る二ヶ月前の出来事だ。

 

(良かった。キャロが男湯に来なくて。決まりを見たら、十一歳以上の男女はちゃんと分かれないといけないってあったから)

 

 自分達は十歳。ぎりぎり決まりに抵触しない年齢だ。だが、キャロもエリオだけならともかく五代達もいるので男湯に行こうとは思わなかったのだ。それは、エリオが寂しくないから。そう、あの時もエリオが一人なのを気の毒に思い、キャロは行動したのだから。

 

「エリオ君、湯上りには何を飲む?」

「あ、僕は……コーヒー牛乳でしたっけ。それで」

「お、いいね。じゃ、俺はフルーツにしようかな」

「俺はラムネにしておきます」

「……入る前から出た後の話をするな」

 

 楽しそうに話す五代と翔一を見て、ザフィーラはそう苦笑しながら指摘する。そして五代達は衣服を脱ぐ前にエリオのためにと銭湯のマナーを教え始めた。それにふんふんと頷くエリオを眺め、ザフィーラは思うのだ。やはり彼もまだ子供なのだな、と。

 

 その頃、女性陣は既に脱衣所から浴室へと移動していた。様々な種類の風呂が点在するのを眺め、感心しているのはスバルとティアナだ。その手にタオルを持ってスバルは周囲を見渡し、ティアナはそんな彼女を軽く注意していた。

 

「ったく、あまりキョロキョロすんじゃないわよ」

「いやぁ〜、話に聞いた通りだったもんだからつい」

「ま、それは同意するけど……。で、どうする?」

 

 どこから入るのかを決めるべくスバルへティアナは意見を求めた。それにスバルはとりあえず一番大きな風呂へ向かおうと提案。それにティアナも頷いた。

 と、そこへ遅れて現れた相手がいた。当然二人の視線はそちらへ向く。そこにはスバルと同じように周囲をキョロキョロと見ていた少女がいた。キャロだ。

 

「キャロはどうする? 私達は一番大きなお風呂行こうと思うけど」

「あ、その前に体洗いたいです」

「うっ、そうね。そうした方がいいか」

「あはは、だね」

 

 キャロの言葉にティアナは失念していたという顔をし、スバルも年下から入る前のマナーを指摘された形になり、やや苦笑気味に同意した。こうして三人は体を洗うために歩き出す。

 洗い場にはなのは達がいた。五人の美女が揃って体を洗う光景はやや銭湯の光景としては浮いたものがあるが、本人達には当然そんな感じはしないため平然と会話をしながら過ごしていた。

 

「やっぱなのはは体のバランスいいわね。これはユーノがいつか鼻血でも出すんじゃないかしら」

「あ、アリサちゃん、その話はもう止めてよ〜」

 

 なのはの整った全身を眺め、アリサは少し悔しそうに告げる。だが、後半はやはりからかう事を忘れないのがアリサクオリティだ。なのははそんな言い方に苦笑するも、いつかユーノの前でこの状態になるのかと考えたのか顔には赤みが差していた。

 

「フェイトちゃんは相変わらずお肌スベスベだよね」

「す、すずか、くすぐったいよ」

 

 すずかの手がフェイトの体を優しく撫でる。それにこそばゆいものを感じてその身をくねらせるフェイト。すると、それを見ていたはやてが何かを思いついたように頷いたかと思うとフェイトとすずかの間へ移動した。

 

「そうやですずかちゃん。そないに軽く肌を触るからくすぐったいんや」

「「だからって胸に手をやらない」」

 

 言葉と共に伸ばされたはやての手を彼女達は同時に止めるとぴしゃりとそう言い切った。勿論、そのままの姿勢ではやては二人から軽くお叱りを受ける。それを見たなのはとアリサは呆れつつもはやてらしいと笑い、その後は五人で思い出話を始めた。

 そんな感じで盛り上がるなのは達から離れた場所では、美由希達が熱めの檜風呂で表情を緩めている。四十三度という熱さだが、それも慣れてしまえば心地良いのだ。五人は小さく聞こえてくるなのは達の会話に笑顔を見せていた。

 

「いや、あの頃と変わらないね。なのはちゃん達はさ」

「早々変わるもんでもないだろ。まぁ、外見はかなり変わったかもしれないけど」

「アルフ、それは当然だよ。あれからどれだけ経ったと思ってるの。なのは達ももう二十歳になるんだよ?」

 

 なのは達の関係が魔法と出会った頃と変わらない事。それを確かめながら美由希達は目を細めるように笑った。ファリンとイレインは三人ほどなのは達との付き合いがある訳ではない。そのため二人の話題は違う人物の事だった。

 

「て事は、五代が来てもう十年近くになるんだな」

「そうですね。もう少し早く帰って来てくれれば、お嬢様やお姉様にも会ってもらえたのに」

 

 恭也と忍はつい最近ノエルを伴って日本へ遊びに来たのだ。無論、五代との再会自体はもう何年前に実現している。それでも外国暮らしの忍達とは中々会えないのも事実。五代も海鳴に戻ってから数える程しか忍達と会っていなかったのだから。

 そこから話題は忍達の結婚式へ移る。そう、忍と恭也だけでなくそこにいた者達全員の共通した思いは一つ。そこに五代がいなかった事を残念に思った事だ。エイミィは辛うじて五代だけは結婚式に参列してもらえたが、やはり翔一がいなかった。

 

「……恭ちゃんも忍さんも、五代さんにも見て欲しかったって言ってたもんね」

「そうだな。あの時の忍お嬢様は綺麗だった」

「恭也さんもです。とても凛々しかったですから」

「あたしやクロノ君も、翔一さんがいなかった事は未だに少し気にするからねぇ」

「仕方ないさ。でも、二人共写真で見て言ってたじゃないか。この場にいれなかったのが残念だって」

 

 そんな風に話し、その場の空気が若干しんみりとしたものになった。そう、思い出してしまったのだ。五代達にもそういう思いをさせている相手がいるかもしれない事を。それぞれの世界で彼らを待つ者達。それもその時の自分達と同じ気持ちを抱いているのではないか。

 そう思い、五人は何も言わない。ただ黙って湯の熱さを感じるだけ。しかし、何故か先程までは熱かったはずのそれを、今は少し冷たく感じていた。

 

 一方男湯でも五代達が体を洗い終わり、それぞれに思い思いの湯船へと浸かっていた。エリオは五代と共に行動し、翔一はザフィーラと昔来た時を思い出して楽しそうに会話をしていた。

 

「どう? 初めての銭湯は?」

「凄く面白いです。こんなに色々なお風呂があるんですね」

「だよね。ここは俺も初めて来たけど楽しいもんなぁ。次、あれに入ろうか?」

「はいっ!」

 

 五代の指差したジャグジーに視線を向け、エリオは元気良く頷いた。その頭の片隅には仕事中だからあまりはしゃいではいけないとの思いがあるが、それでも五代の雰囲気に子供らしくなっていく事をエリオは止められなかった。

 五代と共に彼は湯船を出るとその横を歩きながら視界に入った打たせ湯に興味を抱き、それについて質問を始めた。それに五代が話を始めるとエリオはそれに聞きながら足を進めていく。そんな光景を別の場所から眺め、翔一とザフィーラは揃って笑顔を浮かべていた。

 

「エリオ君、楽しんでますね」

「そうだな。本来なら注意の一つでもする所だが、あいつの場合は切り替えが出来るからな。大目に見よう」

「ですね。でも、何かいいですよね。こういうの」

「ああ。だがしかし……これではまるで旅行だな」

 

 ザフィーラの言葉に翔一はそれですと言わんばかりに頷いた。そして、いつかの話を実現したいと言い出した。そう、六課での慰安旅行だ。今度は真司達も一緒に海鳴へ来たい。そんな話をザフィーラは聞きながら苦笑する。

 その理由。それは、その話が邪眼を倒した事が前提になっているだけではない。ジェイルの罪も無かった事のようにされていて、誰も犠牲になった者がいないのだ。そんな夢物語のような話をザフィーラは嬉しそうに、だがどこか悲しそうに聞き入るのだった。

 

 念話で湯上りのタイミングを合わせ、全員は休憩所のような場所でそれぞれに飲み物を手にしていた。そこでも少し揉め事のようなやり取りがあったが、それは敢えて詳しくは語らない。キッカケは牛乳は瓶の物か紙の物かどちらが美味しいかだ。結果だけ言えば瓶派のイレインが紙派のファリンを論破した。

 その議論は聞いている五代達を納得させたり、驚かせたり、苦笑させたりと様々な反応を示させた事を記す。そんな楽しい時間を過ごし待機所であるコテージへ戻ろうとした時だ。なのは達のデバイスに反応が現れたのは。

 

 それになのは達が動き出す。五代と翔一は念のため美由希達の傍で待機する事になった。変身したくても海鳴では結界でも張らないとライダーの姿になる訳にはいかない。

 それに、もし邪眼が手を出してくるのならすずか達が危険になる。そう判断したはやてにより、二人はそのまますずか達と共になのは達を待つ事になったのだから。

 

 飛び去っていくなのは達と走り去るスバル達を見送り、五代と翔一は光太郎の嫌な予感が当たりつつあるような気がしていた。そんな二人を見てアルフがやや明るい表情で笑いかける。

 

「大丈夫さ。いざとなったらアタシやアインがフェイト達の所まで転送魔法を使うから」

「そういう事だ」

「ありがとうアルフさん」

「お願いします」

「あたし達はどうしようか?」

「そうだね……万が一って事もあるし」

 

 本来ならもう帰ろうと思っていたエイミィと美由希もそんな五代と翔一の雰囲気からどうしようかと考え出す。下手に動いてそこを襲われでもしたら大変だと思ったのだ。それに気付き、イレインとファリンが全員で動けば大丈夫と言い出し美由希を送るために翠屋の方へ歩き出す。

 それに五代達も頷いて、どこか遠慮する美由希とエイミィへ笑顔を見せた。きっと、大丈夫だからと。だが全員で動くとさすがに人数が多いため、五代組と翔一組で分散する事になった。その旨をリインが念話でなのは達へ告げる中、そのメンバーが決まった。

 

「じゃ、俺はエイミィさんを送っていきます」

「うん。俺は美由希ちゃんを送るよ」

 

 そして翔一がリインと共にエイミィを、五代がアルフ達と共に美由希を送る事で分かれて歩き出す。丁度その頃、海鳴市の外れにある者達が現れた。その者達は一人を除き、全員がまったく同じ外見でバイザーのような物を装着している女性。

 そんな彼女達に一人の女性が無機質な声で告げた。それは、たった一言。命令通りの相手を狙えとの指示。それにその女性達は頷いて動き出す。その遠ざかる背中を見つめ、そこに残った者が吐き捨てるように呟いた。

 

―――”人形”というのは中々どうして言い得ている。精々捨て駒に使わせてもらうとするか……

 

 そう呟いて彼女―――黒髪のオットーとでも呼ぶべきアハトはその場から音も無く消えた。その消え去る瞬間、アハトは小さく呟く。他の奴らは上手くやっているだろうかと。そう、アハトは邪眼の指示でこの海鳴にとある物の実験を兼ねて襲撃を行なわせたのだ。

 狙いは六課の関係者達。仮面ライダーの正体をある程度知った邪眼だったが、当然ながら彼らとの深い関係者は魔法世界にはいない。なので、なのは達の関係者を狙う事にしたのだ。

 

 こうして海鳴に放たれる悪の魔の手。それが牙を向けるのは本来なら力を持たぬはずの者達。しかし、忘れてはならない。彼らには仮面ライダーがついているのだから。

 

 

 

-9ページ-

「これで終わりね……」

「意外と面倒だったけど、何とかなったね」

 

 やや疲れたようなティアナの声にスバルがそう明るく返す。ロストロギアはただ逃走するしか出来ない物だった。まぁ、分裂したようになって本体を分からないようにしてきたがそれだけだ。斬撃などを無効化したものの、ならばとフォワード四人は魔法で足止めを決行。

 その際防御魔法を使用してきた事には若干驚いたが、それでミスをするような四人ではない。結果として相手の防御魔法をスバルとエリオが突破し、そこを突いてキャロが確保したのだ。今はキャロがシャマル達の監督の下、ロストロギアの封印処理を行なっていた。

 

「……ふぅ、出来ました」

「お疲れキャロ」

 

 初めての封印処理に息を吐くキャロにエリオは笑顔で声を掛ける。短時間とはいえ、初めての四人での連携。それも見事なまでにやり遂げた事にティアナ達は達成感を感じていた。その成功の裏には確実に訓練やアグスタでの経験が活きている。

 なのは達も上空からその一連の流れを見て満足そうに頷いていた。彼女達の成長を感じ取っていたのだ。そして後は五代達と合流して帰るだけとなった時、フェイトの頭に念話が聞こえてきた。相手はアルフ。

 

【フェイト、大変だ!】

【アルフ?】

【敵だよ! しかも複数。女みたいなんだけど、どこか機械みたいって言うか。とにかく今は雄介とファリン達が相手にしてる!】

 

 それだけでもう十分だった。フェイトは即座にアルフが言っている内容を口に出して周囲へ伝えた。それになのはが即座に反応。一路五代達がいるだろう場所へ向かっていく。だが、はやて達八神家は別の方向へ向かって動き出した。

 悟ったのだ。翔一の方にも何か動きがあるだろうと。フェイトはそれに気付き、なのはと同じ方向へ向かう事にした。はやて達は人数が多い。更に構成員は歴戦の騎士であるヴォルケンリッター。ならば自分はなのはと共に五代の応援に向かおうと。

 

 一方、スバル達は隊長陣から聞いた内容に驚きつつ翔一達の居る場所目指して走っていた。五代のいる場所よりもそちらの方が近いとシャマルから念話があったためだ。

 

「邪眼の仕業かな!」

「分からない! でも、おそらくそうでしょうね!」

 

 シャマルが展開した結界内をマッハキャリバーで走りながらスバルはティアナへ尋ねた。彼女はエリオとキャロと共に本来の姿へ変わったフリードに乗って移動している。やがて彼女達の視界の先にアギトとリイン、それにエイミィの姿が見えてきた。

 それだけではない。はやて達八神家が勢揃いし襲い来る謎の女性達と対峙していたのだ。しかしまだ反撃らしい反撃はしていない。そう理解し、スバル達は即座にその理由を把握すると大声を出した。

 

「「「「エイミィさんの護衛は任せてくださいっ!」」」」

「よっしゃ、これで攻めに転じる事が出来るな」

「そうだね。ティアナちゃん達に後ろは任せよう」

 

 聞こえてきた頼もしい声。それに笑みを浮かべてはやてが呟けば、アギトも頷いて応じる。リインは魔法を長時間使う事が出来ない。しかも強力な魔法は使用する事自体が厳しい。そのため、相手もエイミィを守るリインばかりを狙ってきていたため、アギト達は防戦をせざるを得なかったのだ。

 しかし、スバル達がリインの援護についてくれれば攻撃に出る事が可能。そう判断し、アギト達は無言で視線を交わす。それだけで何を考えたかを理解し合い、八神家の反撃が幕を開けた。

 

「行くぞ!」

「アイゼンっ!」

「レヴァンテイン!」

 

 ザフィーラ、ヴィータ、シグナムが右方向の敵を迎え撃つように動き出せば……

 

「はっ!」

「行くで、リイン!」

”はいです!”

「クラールヴィント、お願いっ!」

 

 アギト、はやて、シャマルが左方向を引き受けるとばかりに動き出した。リインはそんな六人を支援するためにバインドを使って相手の動きを制限しようと試みる。そこへスバル達が駆けつけ、エイミィを守るリインの前で構えた。

 

「アインさん、戦闘は私達が引き受けますっ!」

「すまない。なら私はエイミィの護衛に専念する。それと、倒した際はこいつらの爆発に気をつけろ」

「爆発? ……まさか、こいつら!?」

 

 リインの口から告げられた単語にティアナが何かを思い出して驚愕する。その表情と反応からリインも彼女が正解を導き出したと悟って頷いた。

 

―――ああ、おそらくマリアージュだ。

 

 同じ頃、五代達の方でもマリアージュに対して反撃を開始していた。防戦一方だったところへなのはとフェイトが現れたためだ。それだけではない。マリアージュを引き受ける人間が多くなった事で、すずかとアリサの護衛をアルフ一人で可能となったのだ。

 それはこの中で一番戦闘能力が高い人物の参戦を意味する。そう、五代だ。フェイトがイレインと共に前線を引き受け、なのはとファリンがそれを的確に援護。そして五代は一人もっとも先頭でマリアージュと戦っていた。

 

「くっ! 倒した時が一番厄介ってのは嫌なもんだ!」

 

 イレインは目の前で爆発したマリアージュを見てそう吐き捨てる。無事に美由希を送り届けてコテージに向かっている途中、突然現れた怪しい女性。自動人形であるファリンとイレインにはその異常性が即座に理解出来たため、不意を突かれる事は避けられたのが唯一の救いだろう。

 

「きゃっ! やりましたね!」

 

 マリアージュの攻撃をかわすも、その一撃がメイド服を切り裂いた事に怒りを見せてファリンはブレードを構え直す。その後ろでは、すずかとアリサが揃ってクウガ達の雄姿を見守っていた。

 突然現れた襲撃者。殺意も何もなくただ機械のようにこちらを殺そうとする無表情の相手。そんな異様な存在に最初こそ恐怖に飲まれた二人だったが、ファリンとイレインの奮闘やなのはとフェイトの参戦、それにクウガの姿がそれをかき消した。

 

「頑張れ! なのは! フェイト!」

「ファリンもイレインも気をつけて!」

 

 もう今の二人に怖いものは無い。だが戦う力はないため、今はせめて気持ちだけでもと思い声援を送っている。親友と家族へ声援を送り、そしてその声を一番先頭で戦う優しい男へ向けた。

 

「「負けるな! 仮面ライダー!!」」

 

 その声に応えるようにクウガはマリアージュを蹴り飛ばすと振り向き様に彼女達へサムズアップ。それだけではない。なのは達もそれぞれマリアージュを撃退しサムズアップを二人へ向けた。その直後起きる爆発。それを見ながら二人もサムズアップを返し笑顔を見せるのだった。

 

 

 

 

-10ページ-

 マリアージュを全て倒し終わった事を確認し、はやては視線をアギトへ向けた。彼は何故か最後に相手したマリアージュのいた位置で立ち尽くしている。それに何か妙なものを感じてはやてはその傍へ近付いた。

 

「どないした?」

「……うん。何か妙な感じがしたんだ」

「妙?」

 

 返ってきた言葉にはやては首を傾げた。アギトは変身を解かず、そのまま視線を上へ向ける。それに続くようにはやても視線を上に向けた。そこには星空が広がるのみ。すると、アギトはこう言った。あまりにも手応えが無さすぎたと。それが何を意味するかを察して息を呑むはやてへ駄目押しとばかりにアギトはこう続ける。

 

「それに戦っている間中、あいつらは執拗にエイミィさんを狙ってた。まるで、目的は最初からエイミィさんだったみたいに」

「……マリアージュの試運転を兼ねた六課関係者を狙った襲撃。そう言いたいんやな?」

 

 はやての苦い声にアギトは頷いた。それを聞いていた守護騎士達も浮かない表情だ。光太郎が危惧していた状況。それをまさかこんな形で知る事になるとは思わなかったからだ。当のエイミィは、かつて管理局員だったためそこまで気にしていなかった。むしろ覚悟していたとまで言ったぐらいだ。だが、はやてはそうではない者達を知っている。

 非日常との接点など自分達としか無いような大切な存在。それを思い出し、はやては一先ずシグナム達にエイミィを送っていくように頼んで視線をスバル達へ向けた。その表情は指揮官としてしっかりしたもの。だが、その内心はそうではないと誰もが悟っていた。

 

「一旦、待機所に戻ろか」

 

 それを表すように、声にはどこか疲れたような響きがあった。こうしてはやて達はコテージ向かって動き出す。同時刻、なのは達も同じような結論に辿り着いていた。何せ、マリアージュは揃ってファリンやイレイン、そしてすずか達ばかりを狙ってきたのだから。

 それに気付いたのかアルフは美由希がいなくて良かったと心から告げた。御神の剣士である美由希でも武器を持たない状態でマリアージュと戦えるはずもなく、仮に倒せたとしても恐ろしい爆発を起こす相手にはきっと大怪我を負わされただろうからその言葉は間違っていない。

 

 それになのはも同意し、視線をクウガへ向けた。彼は念のためと言って緑に変わり、周囲の様子を窺っている。すずか達が超変身を見た時に揃って驚いていたのだが、それがなのはに昔の自分を思い出させたのは言うまでもない。

 しかし、そんな風に和んだのも一瞬だった。何故なら今回の相手の狙いはこれまでと違ってライダーではない。だからこそ、なのはだけではなくフェイトさえその表情は暗い。

 

「……フェイトちゃん、今回の狙いは」

「間違いないよ。絶対すずか達だ。ファリンさんやイレインさんがいたから良かったけど、これがもし……」

 

 そこで二人は揃って沈黙した。巻き込んでしまったと思ったのだ。しかも、これで終わりではないだろうとも思って。邪眼が自分達の関係者に目を付けたのならきっとまた何か動きを見せるはず。そして、その標的になるだろう親友や知人達へ彼女達が打てる手は驚く程少ない。

 そう考えて気落ちする二人を見て、すずかとアリサが互いの顔を見合わると揃って頷いた。二人はそのままなのはとフェイトへ近付き、励ますために彼女達の手をその両手で優しく握る。

 

「そんなに気にしないで、なのはちゃん」

「すずかちゃん……」

「そうよ。雄介さんの話を聞いた時からどこかで覚悟はしてたんだから」

「アリサ……」

 

 そう、二人は五代を通じて聞いたライダーの話から、その敵がいるのならいつか自分達を狙う可能性があると予想していたのだ。何故なら、過去仮面ライダーが戦った相手は地球を侵略しようとした存在。ならば、人体改造などを行う者達が選ぶ手段は卑劣極まりないもののはず。

 そう考えた二人はなのは達のせいではないとはっきりと言い切った。悪いのは六課ではなくその敵。悪逆非道の限りを尽くす邪眼なのだと。その思わぬ言葉に言葉を失うなのはとフェイト。そんな二人へすずかとアリサは力強い笑みを返して告げる。

 

「アタシ達はアタシ達なりに用心するわ。それに、今回の事で敵も簡単には手出し出来ないって分かったでしょ」

「それに、私達にはファリンやイレインがいるし、アルフさんに美由希さんだっている。私だって普通の人よりは強いって事、忘れないで」

 

 言葉と共に向けられる笑顔。それはなのはとフェイトを元気付け、周囲に安心を与える笑みだ。ファリンとイレインもそんな二人の言葉に力強く頷き、その時は任せろとばかりにサムズアップを見せる。それに二人も感謝するように頷くと笑顔を浮かべた。

 五代は変身を解除し、そんな光景を見つめて拳を握り締めていた。今までも何度か未確認との戦いでやるせなさを感じた事はある。だが、今回はそれとは質が違う。何せ襲われるだろうと分かっているのに守れないのだから。

 

(俺や翔一君、光太郎さんに真司君。ライダーを一人は海鳴にいるようにしたい。でも、それで戦力が減った所を邪眼が襲うとしたら……いや、もしかするとそうする事自体が海鳴へ怪人を送り込ませる原因になるかも……)

 

 守る力を持つ自分達。だが、それが敵を呼び込む理由になりかねない。そう思うと、五代は悔しくて仕方ない。未確認との戦いで感じる事の無かった無力感。それを、今五代は強く感じていた。

 そのジレンマこそ、歴代ライダーがどこかで感じていた感覚。守る力を持つ自分達がいる事がその守るべき者達を危険に晒してしまうという矛盾。事件をクウガ抜きで起こしていた未確認相手では起きようのない事態に、五代は何とも言えない気持ちになった。

 

 そんな五代に気付いたのかアルフが小さくため息を吐くとその隣へと近付いた。

 

「あんま気にすんなって。いざとなったら助けに来てくれるんだろ?」

「それは……うん」

「ならそれでいいよ。あんた達が来るまで絶対誰も死なせないし傷つけさせない。勿論、アタシ自身もね」

 

 アルフの言葉に五代は嬉しく思っていつもの笑顔を返す。当然、その手にはいつもの仕草があった。アルフもそれでこそだと告げて笑顔とそれを返す。こうして出張任務最後の騒動は終わりを迎えるのだった。

 

 

 

-11ページ-

 待機所の掃除等を終わらせ、はやてはすずか達へ別れを告げていた。その表情は心なしか明るい。そう、なのはとフェイトから二人の気持ちを聞かされたのだ。故にはやてはならば自分が気にしていては二人に申し訳ないと決意。気持ちを入れ替え、絶対に守るのだと心に誓ってこうして立っていた。

 

「じゃ、今度は休暇中に来るわ」

「そうしなさい。あ、その時は光太郎さん達も連れてきなさいよ」

「城戸さんって人にも会いたいし、ヴァルキリーズだっけ。ファリン達の親戚の子達にも会いたいからね」

「うん、絶対連れてくるよ」

「待ってて」

 

 幼馴染五人はそう言い合って笑顔を向け合う。その横ではスバルがファリンとイレインへ元気良く挨拶していた。

 

「今度は、ギン姉も連れてきます!」

「楽しみにしてるからね」

「今度は泊まりで来い。色々と五代の話を聞かせてやる」

「はいっ!」

 

 親戚の姉とも言える二人との出会い。しかもそれが自分達と同じぐらい幸せに暮らしている。それをギンガやノーヴェ達が聞けばどう思うだろう。そんな事を考えながらスバルは笑顔を浮かべた。それに二人も笑顔を返す。

 それを少し離れた場所で見つめ、ティアナ達は微笑んでいた。五代と翔一はなのはやスバル達の様子に笑顔を浮かべっぱなしだ。守護騎士達も心配していた再襲撃がなかった事に安堵し、リインは眠そうなツヴァイを抱き抱えて母のような笑みを見せている。

 

 やがて話も終わり、五代達は手を振ってすずか達と別れた。またねとそう告げ合って。これで全てが終わった。そう思って帰路に着く五代達だが、六課に戻った彼らが見たのは予想だにしなかった光太郎達の姿だった。

 食堂で疲れ切ったように眠るヴァルキリーズと真司にアギト。グリフィス達は指揮所で仕事中だが、下手をすると疲れて寝ているかもしれないと光太郎は苦笑した。そういう光太郎はまだ意識もしっかりしているが、それでもどこか疲れが見える。更に、そこにはいないはずの者達の姿までもあったのだ。

 

「……ゼスト隊の皆さんにギンガまで」

「すまんな。少し寝かせてやって欲しい」

「何が……あったんですか?」

 

 ゼストは光太郎と同じく起きてはいる。だが、やはり今にも気を抜いたら眠りそうなぐらい疲れが見えた。ギンガはクイントと共に寄り添うように眠っているし、メガーヌさえソファをベッドに眠っている。そんな光景を見てはやてが息を呑んだ。

 何せ、何もグリフィス達から報告や連絡が無かったからだ。しかし、帰ってきたらこの現状だ。故に事情を聞こうとはやてが光太郎へ尋ねた。その時、そこへ五代達にとっては久しぶりの、スバル達にとっては初めての声が聞こえてきたのだ。

 

「はやてさん、その気持ちは分かるけど」

「みんな疲れてるだろうし、明日にした方がいいだろうね」

 

 リーゼ姉妹がその場へ姿を見せて五代達へ微笑みかける。それに喜びを見せる五代達だったが、二人の状態に疑問を浮かべた。彼女達だけはまだ元気そうだったのだ。

 

「聞きたい事や言いたい事は分かるけれど、今日はロッテの言う通りもう休んだ方がいいわ」

「幸い明日はあたし達がオフだからね。朝食食べがてらにでも話すよ。ね、光太郎」

「ああ。とにかく、今日は疲れた。残って良かったと思ったぐらいにね」

 

 その光太郎の言葉から全員が大体の事情を理解した。ここにも邪眼の襲撃があったのだと。五代達が海鳴で過ごしていた頃、何が六課であったのか。それは翌朝に語られる事になるのだった。

 

 

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海鳴サイド終了。長丁場になりましたが、マリアージュは怪人ではありません。その理由も含めた話は次回へ

 

やりたかった事は特になし。あるとすれば一斉爆発を背に全員がサムズアップという戦隊モノのようなノリぐらいです。

説明
聖王教会から依頼された出張任務。その行先はなのは達の生まれた街海鳴だった。
仕事でありながらどこか休暇のような雰囲気のなのは達。だがそこへも闇の足音が近付いているのだった。
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