■29話 霊帝死す■ 真・恋姫†無双〜旅の始まり〜
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■29話 霊帝死す

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息が荒く落ち着かない。やってしまった事への後悔が自分自身を苛む、けれどこれしか方法が無かったのだと言い聞かせる。

 

逃げてきた、ついに逃げてきてしまった。

 

流されるがままに歯車を進めてしまった……もう時雨の計画が始まってしまう。もう俺が逃げた所で事態は刻一刻と進んでいく事には違いない。

 

時雨の計画には賛同できない部分もある……でも実行しなければ月と詠の命が、董卓軍みんなの命が冤罪で散ってしまう。それだけはどうしても耐え切れない。

 

知り合っていなければどうでもよかったかも知れない、でも知り合ってしまったから助けたい。

 

どうすればいいのかなんてもう考える暇もない、ただひたすら早く進まなければいけない、時雨が想定する時間よりも早く行動を起こさなくてはいけない。そうしなければ最終的な時雨の行動を防ぐことなど出来るはずもないのだから。

 

走りながら夜空に浮かぶ月を見て神仏定めぬままに祈りを捧げる。

 

そんな俺を嘲笑うかのように月の明りを遮り蝙蝠が飛んでいき、祈る事まで無駄な事の様にも思えてしまう。

 

どんどん膨らむ不安に押しつぶされない様に力強く前へと進む。

 

今出来ることはそれしかないのだから

 

それをしなければならないのだから

 

一刀は混乱しながらも、不本意ながらも抗えずに計画に沿って行動していく。

 

北郷隊と共に目指すは陳留。

 

今はただ、一刻も早くこの手紙を曹操へと届ける為に……。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「一刀が戻ってきたですって?」

 

一刀が帰ってきたという報告を受けて疑問に思う、世界を見てまわるのならばもっとかかると思っていた。

 

確かに最近不穏な気配が、というより袁紹が不穏な動きを見せているのは掴んでいる。それに関係するのであれば今回の突然の帰還も納得できるかもしれない。

 

「っは! 報告によれば北郷が幾ばくかの兵を引き連れ一人で戻ってきたようです」

 

「一人で? 時雨は一緒ではないの?」

 

「それが……」

 

傍に控えていた秋蘭が何かを言いよどむと同時に勢い良く扉を開けて一刀が転がり込んできた。

 

「華琳! 手紙を、この手紙を読んでくれ!」

 

扉を開けたままの勢いで私に迫る一刀を秋蘭が阻む。これほど急いでいるからには事情があるのだろうけどもう少し冷静になって欲しい。

 

「北郷殿、少しは落ち着いてください」

 

「そんなこと言っていたら時雨の策が無駄になるかもしれないだろ! それに間に合わなくなるぞ!」

 

以前の様に控えめに喋る事しか出来なかった一刀からは考えられない勢いで捲し立てる。何が彼をそこまで駆り立てるのか少し興味がわく、これ以上取り乱されて話が遅れても堪らないし不敬な行動は不問にしよう。

 

「いくら北郷殿といえど華琳様の前で無礼は許さぬぞ?」

 

「いいわ、秋蘭。一刀、その手紙を見せなさい」

 

一刀が本当に事の重大性を理解してやって来たのなら今はとりあえず手紙を確認して現状起こりうることを理解しなければいけない。

 

無知は罪だ。最善を尽くすために必要な知識は無駄な程あるぐらいが丁度いい。なら目の前にある知識を無視する選択肢などあろうはずもない。

 

一刀は秋蘭が退くとすぐに私の前にやってきて手紙を差し出してくる、それを無造作に掴み取って広げてみる。

 

「これは時雨が華琳にと渡した手紙だ。華琳ならこれを見れば全て理解するはずだと」

 

そういって後ろに下がる一刀を一瞥してすぐに手紙を読み始めた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

?拝啓 華琳様?

 

いやはや、いい天気ですね。

こういった日はやはりのんびりすごしたいものです。

 

でもどうやらそういうことは出来ないみたいでして

一刀の話によればもうすぐ反董卓連合が出来て俺の居る場所は戦場になるようです。

全く困ったものだと思います。

 

俺はここにいる人を殺したくはない。

 

だから俺が考えうる限りの策を弄させてもらいます。

詳細は一緒に記載しておきますのでちゃんと目を通してください。

 

この策で華琳には董卓軍のメンバーを助けて欲しいのですが

もちろんただというわけではありません。

 

策通りに進めて貰えれば名声も戦力の増強も容易にできるはずです。

他にもいくつかの好条件を乗せておきますのでそれも策の詳細を見て確認して下さい。

 

華琳ならこの案を受けてくれると信じています。

それに今の一刀を見てもらえれば策の成功率も自ずと分かると思うので色々試してみた下さい。

 

?敬具 紀霊?

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

時雨からの手紙を見て部下の前だというのに思わずため息を付きそうになってしまった。

 

時雨はどうやら私を振り回し足りないみたいだ。

 

この曹孟徳とあろうものがこうも好き勝手を許してしまうなんて癪ではあるが後手に回っている現状でできることなどほとんどない。

 

とんだ甘ちゃんになったものだわと自分を責めて苦笑を浮かべても周りがあたふたするだけなのでやりはしないがそれでも自分を問い詰めたくなってしまう。

 

といっても手紙の策は決して悪いものではない。

 

というよりは将来の私にとっては好都合としか言いようが無いといっても過言ではない。これを実行すれば私の覇道はより確実なものへと変わる事だけは確かだろう。

 

それだけに癪である。絶好の機会は物にするつもりだが手のひらの上で転がされるというのはあまり好きではない。

 

今だけ調子に乗らせておいて後で仕返しをしようとも考えるがこの策のとおりに進んでいけばそれが出来るわけも無い。

 

「一刀、あなた時雨から策の詳細を聞いているのかしら?」

 

「一応聞いた……」

 

いまいち顔に覇気が見られない、ということはやはりこれはそういった意味なのだろうか? 情報が少ないけれどこの策を見る限りそうとしか思えない。

 

どちらにしても私は私のしたいようにすればいいだけなのだから気にしても仕方が無い、するかどうかが重要だ。この手紙の結果など握りつぶして自分の都合のいいようにしてしまえばいいのだし。

 

「時雨はこれを本当に実行する気なのね?」

 

「ああ」

 

実行する気ならあまり時間は無い。一刀が此処に来るまでにかかった期間と私のところに入ってきている情報を統合すれば自ずとそのことが分かる。

 

無駄にしている時間が無いのなら無為に過ごす必要も無い。

 

「わかったわ。秋蘭、皆を集めなさい」

 

「っは!」

 

秋蘭が皆を呼びに出ると一刀が珍しいことにこっちを睨んでくる。いつの間にこんな暑苦しい男になったのか、これが時雨の影響だと思うと少し眉をひそめてしまう。がいい傾向だと思うのも確か。

 

「待ってくれ華琳! 手紙には時雨の策が詳しく載っていたんじゃないのかっ」

 

「ええ、そうよ」

 

「なら時雨を止めなくていいのか? あいつは……」

 

「私はそれが私の覇道をより確実にするものならやると決めているわ。ただ私は時雨の策に完全に乗るわけではない、とでもいっておきましょうか」

 

落ち着きのなかった一刀が私の発言を聞いて理解したらしい、頭も少しよくなっているようにも感じる、というより冷静な判断が下せるようになっている。一体どんな教育したのか不思議でならない。

 

「そうか、なら良かった」

 

途端に嬉しそうにわらう一刀を見て時雨についていって少しは変わったと思っていたけれど、根本は何も変わっていないと理解する。さすがに人格を変えるほどの何かを行ってはいないらしい。

 

でも時雨の手紙には成長したようなことが書いてあるし到底コレだけだとは思えないのだけれど……

 

それに一応自分の部隊も持っているみたいだし、一体何がどれほど成長したのかしら? 後で試してみましょうか。

 

そうして今後のことに考えを巡らせていると外から騒がしい音が近づいてきた。それがなんなのか即座に理解して丁度いいと笑みを浮かべる。

 

「一刀、頑張りなさい」

 

「おう!」

 

元気に答える一刀。

 

きっと誤解しているだろうけど、別にそれはそれで構わないだろう。全ては時雨のせいだけれど一人でのこのこ帰ってきた一刀も悪いのだから。

 

「時雨はどこだ!」

 

「今回は俺一人でかえ……」

 

突然乱入してきた春蘭に答え終わる前に刃を突きつけられる一刀。

 

「時雨を出せ北郷!」

 

「ちょ、待ってくれって時雨は」

 

「しぃぃいいいぐぅうれぇぇぇぇええええええ!」

 

全く話を聞く気が無い春蘭を見て愚かでも可愛いと思ってしまう自分は相変わらずだなと認識しながら事の成り行きを見守る。

 

春蘭が寸止めするかどうか五分五分な気もするがいざとなれば自分が止めればいいと思っていたのだが、驚いた事にガキンと鈍い音を響かせながら一刀が春蘭の一撃を刀で受け止めていた。

 

「っな!?」

 

「いきなり斬りかかってこないでくれよ」

 

「北郷の癖に生意気な!」

 

確かに以前の一刀を知っていれば生意気な事この上ない態度だがそれだけの振る舞いを出来るほどには力をつけて来ているらしい。

 

実際先ほどの一幕は偶然ではないらしく、何度も金属音を響かせながら春蘭と打ち合っている。

 

とはいってもまだ春蘭の域には達していない様だ。防ぐだけで反撃する暇がない、否、その防ぐこと自体もさほど時間をかけずに出来なくなるだろう。

 

今も怒った春蘭が大人気なく本気を出している為にじわじわと危なげに一撃一撃を処理している。冷静なところは評価していいが前に出る勝負強さが足りない、これでは斬りつけてくださいと言っているようなものだ。

 

成長はしているがやはりまだまだといった所だろうか、あんな役立たずとも言える状態からここにしただけでも十分凄いとは思うけれど欲を言えばもう少し育てて欲しい。

 

時雨はやはり必要な人材だとしみじみ思わされる。それが時雨の思惑通りだというのは癪だがいつか倍でやり返してやれると思えばまだ我慢も出来る。

 

時雨の事について改めて考え始めると一刀が予想通り刀を吹き飛ばされて決着がついてしまった。

 

「強くなったと思ったのにこれじゃ自信がなくなるな……」

 

「ふんっ、北郷の癖に防ぐのが悪いのだ」

 

それは俺に死ねといっているのか? みたいな顔をしている一刀を見て再度考えを固める。

 

強くなった、二合も打ち合えば死ぬと思ったのが正直な感想だった。それが今では呼吸は荒くとも会話できる余裕があるのだから、まだまだ弱いけれどもそれでも十分な成長と言える。

 

「華琳なにか酷いこと考えてなかったか?」

 

「酷いこと? それは何を指して言ってるのかしら? 貴方の不甲斐無さかしら? そんなのいつも通りなのだし酷くも無い気がするけれど」

 

きちんとした評価を下しているのだけれど一刀は落ち込んでしまった。本当なら少し褒めてもいいかと思ったのだけれど自分の事を過大評価しているともとれる発言をしていたのでそれは無しという結論がすでに出ているので今更発言を覆す気はない。

 

「そうか……」

 

が、負けた事と低い評価をした事で自分の実力をきちんと把握も出来ただろうし褒めてやる気を出させるのも手ではある。

 

下げては上げてを繰り返せば従順な部下が出来やすいから尚更である。

 

「でも思ったよりも成……」

 

折角ほめようとしたのに途中で新たな闖入者が大声を発しながらやってきてしまった。

 

「華琳様! あの害虫が帰ってきたと聞いたのですがっ、ぁぁああ!? 害虫の癖に華琳様の視界に入るんじゃないわよ、この屑!」

 

褒めることが出来なかったうえに桂花から止めをさされる一刀を見て少し不憫に思う。

 

「どうせ俺なんて俺なんて……」

 

だからといって部屋の隅にわざわざ移動してうじうじするのはどうだろうか。

 

「お似合いね! 害虫は害虫らしく部屋の隅でそうやってうじうじしておけばいいんだわ! それこそずっとね!」

 

相変わらず一刀に容赦のない桂花には呆れ半分といった所。

 

本当は少しイラついたけれど嫉妬深い桂花も可愛い。後で存分に教育という名の可愛がりをしてあげなくてはいけない。

 

そんな楽しい考えに浸っていると桂花に続いてぞろぞろと残りのメンバーが集まりだした。

 

「あ、兄ちゃん! 久しぶりー」

 

のんびりと扉から入ってきた季衣と流々は隅でうじうじしていた一刀にすかさず反応を示し、明るく元気づける。

 

「季衣ちゃんか……そっちは?」

 

「私は典韋と申します。あなたは一体?」

 

「ああ、ごめんね。俺は北郷一刀っていう天の御使いだ」

 

「なるほど、あなたが……なら私のことは流々って呼んでください。その、私はお兄様って呼びますから」

 

「たぶん真名だよね? いいの?」

 

「季衣が許しているなら構いません」

 

「わかった。よろしくね」

 

「さて、自己紹介も終わったみたいだし話をしていいかしら?」

 

一刀と流々の自己紹介が終わったところで話を止める。うじうじしてるのを相手するのは少し面倒だったので有難い。

 

この話をする上で少しでも冷静に聞かせる必要がある。歴史を知っているのならばこの出来事も知っているだろう、そして時雨の策もこの事が重なるのならより現実味を帯びてくる。

 

「一刀、一つ言っておくわ。もう霊帝は死んだのよ」

 

「っな!?」

 

おそらく一刀はここに来る途中だったから聞いていなかったのだろう。かなり驚いていてるが気にせず話を進める。

 

「そして予想にはなるけど反董卓連合が出来るならそろそろよ」

 

そう言った時丁度部下が扉から入ってきた。

 

「華琳様、袁紹より使者が参りました」

 

「ほらね」

 

かなりタイミングがいいがそろそろ麗羽が痺れを切らせるんじゃないかと思ってたので驚きはしない。以前から影で動いていたし来ないほうが不思議といっても過言ではない。

 

部下に使者を通すように伝えて呆然としている一刀を置いて状況を進めていく。

 

「曹操、董卓は霊帝の亡き後殿下を裏から操り民草に重い重税を課し、至福を肥やしている。これを良しとしない場合は反董卓連合に参加されるように」

 

やってきた使者のあまりのふてぶてしさに眉をひそめる。さすが麗羽の部下といった所か。

 

「あなた誰に口を聞いているのかしら?」

 

その言葉を合図に秋蘭が矢の照準を合わせ、春蘭が剣を伝令の首に添える

 

「私は曹孟徳、あなたの主に伝えなさい。躾のなっていない部下を次によこしたら首をはねると……それと反董卓連合は参加しましょう」

 

「ひ、ひぃい!?」

 

「誰かこの無礼者を追い出しなさい」

 

兵士に連れられて腰を抜かした伝令役が城の外へと連れて行かれる。

 

全く麗羽には困ったものだ、ちゃんとした使いすらまともに送れないなんて。もしかしたらあれでまともだと思っているのかもしれないが。

 

「華琳様」

 

「わかっているわ桂花、あなたの意見を聞こうと思ったのだけれど……あなたにはこっちを見て欲しくてね」

 

そういって時雨からの手紙を渡す。

 

手紙を読み進めていく桂花の顔色がほんのり赤くなり次第に青くなって行く。私が何かする以外にあまり不機嫌な態度を崩すことの無い桂花がこれほど動揺するとは思っていなかった。

 

時雨が絡むと周りの新鮮な反応が見られるから面白い。もしかしたら私もそうかもと思うと嫌になるが部下の新たな一面が見られるのなら多少振り回されても構わないかもしれない……仕返しは絶対するけど。

 

「っな! お父様はこんなことを考えているのですか!? また私を置いて行ってしまうのですか……?」

 

悲しそうに俯く桂花に声をかける。一体どんな出来事があって今の現状を投げていているのかは分からないけれど今必要なのは嘆くことでも、その原因を特定することでもない。

 

「桂花、そうさせないためにあなたの頭をつかいなさい」

 

「は! 華琳様、きっとやり遂げて見せます」

 

顔を上げて桂花は決意を目に宿らせて手紙を持ったまま部屋を出て行ってしまった。本当は取り乱した分可愛がろうと思ったのだけれど今は無理のようだ。

 

「秋蘭! 春蘭! 兵をまとめなさい、季衣と流々は兵糧を確保しなさい、一刀は……そうね、あなたの隊を私に見せてみなさい」

 

「「「「「っは!」」」」」

 

返事をした後各自散らばって行く。

 

「華琳、俺の隊を見せるって……具体的には調練の風景でも見せればいいのか?」

 

「ええ、それでかまわないわ」

 

そういって一刀の隊へと向かっていく。

 

さて、紀霊は一体どこまで一刀を成長させているのかしらね、隊を持つということの意味を理解しているとは思えないけれど錬度の高い兵を育てられるのならそれだけでも有用だ。

 

さっきの春蘭とのやりとりで少なからず期待してしまう。

 

風評ぐらいしか役に立たなかった一刀が果たしていかほどのものになっているのか……。

 

笑みが止まらないわ、時雨は私を本当に楽しませてくれる。

 

不思議と足取りが軽い華琳はそのまま演習場へと歩いていった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「霊帝が死んだわ」

 

詠からそう聞いたのは一刀が逃げ出してわずか数日後の事だった。

 

あそこで逃がしていなければ手遅れになっていた、本当に危ないタイミングだった。

 

諜報活動はやっぱり重要だよなと思いつつ話の続きをせかす。

 

「それだけじゃないんだろう?」

 

「ええ、ボクが調べた結果諸侯が嫌な動きを見せているわ」

 

「嫌な動きとはなんだ?」

 

わざわざ尋ねてくる華雄。城の者なら接点の多い場所の情報は少なからず持っているというのに、後でお勉強しろと視線を向ける詠の目から逃れるように顔を背けるのが痛々しい。

 

「とりあえず諸侯の動向を探りつつ様子見といったところか?」

 

とりあえず華雄は無視して話を進める。

 

「なんや思っていた以上に面倒なことになってるんやな」

 

「月がまだ殿下の所から戻っていないことも不安ね」

 

霞が言うように面倒な自体になっている。特に詠が懸念している月が殿下の所に出向いてから全く音沙汰がないというのも大きな問題だ。

 

まぁそれもあっちゃんなどに頼んで既に調査済み……軽く監禁されているが月の居場所はわかっているし逃亡の手配もすんでいる。

 

そしてさらに数人の部下を身近に配置して動きがないか常時見張っていてもらっている。

 

計画に支障が出てはかなわないから何事も万全の体制で挑まなくてはいけない。

 

「月のことは俺に任せていろ、どうにかしてやる」

 

「ほ、本当!?」

 

「時雨そないなこといってええのんか?」

 

期待の声を上げる詠とは反対に疑う霞。

 

「問題ない、今の朝廷は腐りきっている。隙だらけといっても過言じゃない」

 

「そうか、そんならええけど」

 

適当に誤魔化す、霞は結構鋭いのであまり詳しく話すとばれそうだ。

 

「もし何かあったらいうです! ねねは友達なのですから、どんどん頼ってもらってかまわないのです」

 

「ありがとうな」

 

既に動き回っていることを掴んでいるのだろう、気遣ってくれるねねの頭を撫でて逆におとなしくさせる。

 

なんな中クイクイ、クイクイとなぜか服の両端が引かれる。

 

視線を向けてみればかごめと恋が二人揃って服を掴んでいた。

 

「恋にもかごめにも期待してるからな」

 

何をして欲しいのか察して撫でてやる。

 

「……まかせる」

 

「時雨、私……守る」

 

満足した二人がキリッとした顔を見せる。次の瞬間にはいつもの顔に戻っているが頬に朱色になっているのだけは戻らなかった。

 

「あーーー! ずるいっ、時雨は私が守るんだ!」

 

「むむ! 時雨私と勝負しろ!」

 

「華雄なにいうとんねん! こういう時はウチらもくっつくんや!」

 

「な、何を言っているっ……結婚もしていないのにそうむやみやたらとくっついては・・・・ぶつぶつ」

 

「うわー、思ってたよりもうぶなんやな……まぁええわ、ウチも撫でてーなー」

 

綾と霞が突っ込んでくる。いつも通りの華雄に安心感を覚える。何故か今日は皆がいつも以上に接近してくるのに戸惑いを覚える。

 

最近霞とは厨房でねねが膝に座った時に勢いで真名を交換してからというもの積極的にくっつこうとして来る。

 

それに対抗してかこの頃綾もくっついてきて困ってしまう、今日はピークといっても過言ではない。

 

撫でるのはいやではないし、逆に手触りが気持ちいいし喜ぶ顔が見れるから構わないのだが必要以上に体をくっつけられると色々困ってしまうのだ、男的に。

 

「なんか楽しいそうね。ボクだけこんなに悩んで馬鹿みたいじゃない……」

 

ああ、詠が不機嫌に……どうしてくれるんだ。後でどうやってご機嫌とるか……。

 

そう思いながらも抱きついてきた綾と霞を撫でる。こういう態度が周りの甘えを助長するとは考えない辺り駄目な時雨と言える。

 

「むふふー、やっぱりこれええなー」

 

「時雨はやさしいからすきー」

 

「ダメ……時雨、私……の、もの」

 

抱きつき組みの言葉に意を唱える様に頭を振ってこちらに突っ込んでくる恋。

 

「れ、恋殿ーーー! ねねもおりますっ!」

 

それにあわせてねねが突入してきて二人して俺に抱きついてくる。それに戸惑いを隠せなくなってしまう。

 

時雨は自分が何で急激にモテるのか全く心当たりが無い。

 

「あ、厚い……」

 

照れ隠し半分本音半分の発言だったが顔がデレデレしていたためだろうか、詠の不機嫌オーラが増した気がする。

 

「ふんっ、良かったじゃない」

 

一言そう呟いて出て行ってしまう詠を動けずに見送ってしまう。

 

あー、後で機嫌取りに行かなきゃと思いつつも当分離してくれなさそうな皆を撫でながらどうするか悩むのだった。

 

誰かが見ていたらきっとリア充爆発しろと叫んだことだろう。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

それから数日後に反董卓連合の話が入ってきた。

 

それと同時に俺の策が本格的に動き出す。

 

董卓達は絶対殺させない。

 

「俺に策がある」

 

反董卓連合から流れて伝わってくる情報を聞いた怒り狂う皆をなだめて話し始める。

 

これは俺が考えうる最善の策だと提案し、誰もが半信半疑ながらそれなら勝てると信じて乗ることした。

 

それを見て時雨は一人笑う。これからのことを思い浮かべて

 

それは自嘲か、はたまた愉悦か

 

その笑みの意味は時雨にしか分からない。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

■あとがき■

リアル繁忙期が辛い。

 

小説書きたいのに時間が無いって嫌だねー。

1話1話で話があんまり進まないので連続して投稿したいのに

ままならないわ。

説明
編集して再投稿している為以前と内容が違う場合がありますのでご了承お願いします
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