ワイルドに飲む会「一緒にいると似てくるという話」
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今月はヒーローが繁忙期なのか、なかなかスケジュールが抑えられず、ゲストがバーナビー・ブルックスJr. 一人だけです。意外とヒマなのかBBJ? 場所はフォートレス・タワーのおしゃれなレストラン。僕たちが到着すると、すでにバーナビーが一人でロゼを飲んでいました。やっぱりヒマなのかBBJ?

 

 

バーナビー・ブルックスJr.(以下「B」):「なんで今日、ゲスト僕一人なんですか? いつももう一人ゲストいるでしょう?」

編集長ウラジーミル・バラノフスキー(以下「長」):「いやー、なんかみんな忙しいみたいでさあ。その点、お前はアレじゃん、タイガーがいるところなら、どこへでも来るだろ?」

B:「……」

編集部新人シモン・ソシュール(以下「新」):「ちょっと、なに言ってんですか? バーナビーさんめちゃめちゃ忙しいんですよ、タイガーさんのいるところならどこへでも行きたいけど行けないことのほうが多いんですよ!」

長:「それ、フォローのつもりなの?」

新:「ていうか、そのタイガーさんはどうしたんですか。何故いないんですか」

B:「さあ……。さっき僕の携帯に『わろい、遅れる』って入ってました」

長:「なんなの、わろいって」

B:「あの人、タッチパネル苦手なんです。手が滑ったんでしょう」

長:「苦手な携帯をスポンサーに使わされるタイガー。かわいそう!」

B:「そんなことないです、アレはとってもいい携帯ですよ! 僕もそろそろ買い換えようかと!」

長:「タイガーへのスポンサーの心証を悪くしておいて、自分のスポンサーにしようと画策するバーナビー。なんてひどい!」

B:「違います!」

長:「頭いい人って、ホント怖い!」

B:「だから違うって言ってるでしょう! 僕はタイガーさんをフォローしようと!」

長:「ダメな先輩のフォローをする健気な自分を演出するバーナビー。おそろしい子っ」

B:「だから違います!」

(タイガー到着)

ワイルドタイガー(以下「T」):「いやー! 悪い悪い! 遅れちゃって!」

B:「タイガーさん! なにしてたんですか、一体」

T:「それがさー。モノレール乗ってたら妊婦さんが産気づいちゃったんで病院に連れてったんだよ。そしたらそこで子どもが迷子になってたからお母さん探して、そしたらそのお母さんが亡くなった旦那さんにもらったピアス失くしたっていうから探して、そしたら看護婦さんが」

B:「もういいです。だいたい分かりましたから。あなたはなんでそんなにお節介なんですか!」

T:「えー、仕方ないじゃん。あと、おばあちゃんに道を聞かれて連れてってあげたら感謝されてさ、ほら、オレンジいっぱい貰ったんだよ。すごくね? わらしべ長者みたいじゃね?」

B:「わらしべ長者は全然そういう話じゃないです。いい加減にしてください」

T:「バニーなんで機嫌悪いの? バラさん、またバニーちゃんのこと苛めたんでしょ?」

長:「イジメてねーよ。イジってたけど」

T:「そうかー、苛められたか、バニー」

B:「僕はバニーじゃない! バーナビーです!」

新:「えー、そんなわけで、今日はバーナビーさんセレクト、フォートレスタワーのレストランなわけですが」

T:「強引に進めたな」

新:「ここってアレですよね。T&Bバディ初期の頃に放映された、あのうさんくさい『バディは仲いいんですよ』特番の舞台」

T:「うさんくさいっていうな!」

B:「ええ、思い出の場所ですね」

長:「お前らが初めて一緒に壊した公共施設だもんな」

B:「違いますよ! 壊したのはタイガーさんです!」

長:「連帯責任だよねー」

T:「ねー」

B:「タイガーさんはすぐそうやって、僕を巻き込もうとする!」

T:「だってー、ほら、始末書書くのも裁判所行くのもさ、二人でだったら、それはとっても嬉しいなって。そんで、上司に怒られても隣に口のうまいバニーちゃんがいたら、もう何も怖くない」

B:「どこの魔法少女ですか!!」

長:「でも、ぶっちゃけ仲悪かっただろ、あの頃」

B:「僕たちずっと仲いいですよ」

長:「なんでそんなに嘘ばっかつくの? ねえ、なんで?」

T:「バラさん、絡み酒になってるよ!」

長:「タイガーもバーナビーのこと、ムカついてたでしょ?」

T:「いやいや……ははっ」

長:「笑ってごまかすなよ! ムカつく新人だっただろ? こんな仕事なめてるヤツとは一緒にやれんとか思っただろ?」

T:「いや、デビューしたときから、バニーちゃんはどんな仕事でもいやな顔ひとつせずにこなす、よく出来た新人だったよ」

長:「そうかなあ。あの頃は公式には言えなかったけど、ちょいちょいバーナビーにインタビューとかグラビア撮影とかドタキャンされたりしたよ? 最近は全然ないけど。やっぱりあの頃はちょっとテングになっちゃってたんでしょ、バーナビーさん?」

B:「それは! 急病で……」

長:「でもその日の夜には、普通に出動したりしてたけどな」

T:「あの頃は、そのー、バニーちゃんは色々大変で、そのー、どうしても気分がすぐれない……じゃなくて! そのー、いろいろ…いろいろあったんだよ!」

長:「なんでタイガーがそんなに汗びっしょりになって言い訳してんの」

新:「きっとバーナビーさんは、イボに記憶を弄られて、インタビューが入っていることを忘れさせられてたんですよ!」

T:「それだ!」

長:「なにが『それだ!』なの。全然説得力ないよ、その説」

B:「まあ、いいじゃないですか。そんな昔のことは」

長:「なんなの、その適当なごまかし方は。そういうとこ、タイガーに似てきたよ。似なくていいところだけ似てきたよ、お前は!」

B:「そんな馬鹿な! 僕とこのおじっ…タイガーさんのどこが似てるって言うんです!?」

長:「今、おまえおじさんって言いそうになっただろ!」

B:「なってません」

長:「いいや、言いかけてたね。やっぱりおじさんって呼んでんだな!」

B:「呼んでません!」

T:「まーまー」

長:「じゃあなんだってんだよ、おじっタイガーってよ」

B:「……あだ名です!」

長:「あだ名なわけないだろ! 万が一あだ名だとしてもおじっタイガーのおじは、おじさんのおじだろ!」

T:「まーまーまーまー」

B:「違いますよ。おじっおじや…怖じけ…おじっ牡鹿のおじです!」

長:「完全に今考えただろ! しかも牡鹿ってなんだよ!」

T:「まーまーまーまー」

B:「あなたもなんなんですか、さっきからまーまー言って。まーまーってあだ名にして欲しいんですか!」

T:「ひでえ! 俺バニーちゃんを庇ってあげたのに! しかもバニーちゃん、ネーミングセンスがない!」

新:「最近のバーナビーさんは、ほんとおもしろいですねえ(しみじみ)」

T:「よかったなあ、バニー。おもしろいって!」

B:「うれしくありません!」

新:「でも昔のバーナビーさんより、今の方が絶対いいですよ」

長:「そうだよなー。正直に言うと、昔のバーナビーってあんまり好きじゃなかったんだよ」

T:「え!! その言い方だと今は好きってこと?」

長:「え……、べ、別に、好きじゃねーよ!」

新:「編集長! ツンデレに! ツンデレになってます! 全然可愛くないですけど!」

長:「そうじゃなくて! 昔のバーナビーって、なんでもソツなくこなしちゃって、仕事は仕事って割り切ってる感じがして、あー、コイツはすぐヒーロー辞めるなって俺は思ってたわけ。やっぱりヒーローって大変な仕事だから、適当な気持ちでは続けらんないし、そもそも生半可なことやってたらすぐ怪我しちゃうしね。だから、俺が当時のバーナビーに求めてたのはさっさと人気出てとっととタレントにでもなってくれってことだけだったね。下手なことして怪我なんかされたら、タイガーが気に病むだろ? まあ、予想通りとっととコイツはヒーローを辞めたわけだ。俺ってすごい! 伊達にMH記者10年やってないわ!」

新:「でも、戻ってきたじゃないですか」

長:「だからな、これが似ちゃったんだよ、タイガーに」

T:「似てるかな?」

長:「最近バーナビーモノ壊しすぎでしょ」

新:「先週バーナビーさんがモノレールのレールひん曲げたときには叫びました。なんでそこまでやる必要が?」

長:「それはアレだよ。ポセイドンラインの売り上げを落として、スカイハイのヒーロースーツの性能を落とそうと……」

B:「そんなこと考えてません!」

長:「まあ、でも最近のすぐ熱くなってもの壊してでも人命救助を優先するバーナビーはキライじゃないぞ」

新:「どうしたんですか…。バーナビーさんを褒めるなんて、そんなの編集長じゃない!」

T:「あした吹雪くんじゃね?」

長:「ところでバーナビー。今度、臨時増刊号の企画を通さなきゃならないんだけどね。バーナビーのセミヌード写真集っていう企画を考えたんだけど、どう?」

新:「大人って、汚い!」

T:「どう、じゃねーよ! そんなのヒーローの仕事じゃありません! バニー断れ!」

長:「やめろやー、タイガー! 俺が発行人に怒られてもいいのか!!」

B:「やってもいいですよ」

T:「ちょ、え? バニーちゃん?」

B:「ところで編集長、実は僕、仕事のギャラ改定しようと思ってて。まあ、インタビューとかそういうのは今までどおりでいこうと思ってるんですけど、グラビアは今の十倍くらいでどうですか」

長:「十倍ぃい? 何言ってんの、出せるわけないでしょ?」

B:「はあ。それは残念ですね。この話は無かったことに」

長:「ええぇ? 十倍? いや、でも取り返せるくらいは売れるかな? でも会議通るのコレ? そもそもそんなギャラ吹っかけられてんじゃねーとか怒られちゃうよどうする? ねえ、どうしたらいいと思う? ねえ?」

新:「違う企画考えればいいんじゃないですか」

長:「なに言ってんだ。とりあえずバーナビーの写真載せとけば売れるんだよ! しかもセミヌードとかだと正統派ファンだけじゃなくて、ネタ用にみんな買ってくれるんだよ。水着のドヤ顔写真一枚入れとけばバカ売れなんだよ!」

T:「バニーちゃん。もう、この会社で写真集だしちゃダメだよ…」

長:「待って! タイガーからもぜひバーナビーを説得してよ!」

T:「こんなん説得できるかあ!!」

 

 編集長はこの後もバーナビーを口説いていましたが、バーナビーのギャラが下がることはありませんでした。僕は「ファイアーエンブレムの人生相談DX」という、マーベラスな増刊号企画を提出したのになぜか通りませんでした。解せぬ。(シモン・ソシュール)

説明
マンスリー・ヒーロー カルチャーコーナー内の記事という設定の作品です。よろしくお願いします
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TIGER&BUNNY 鏑木・T・虎徹 バーナビー・ブルックスJr. 

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