真・恋姫†無双 〜我天道征〜 第15話
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注意 本作の一刀君は能力が上方修正されています。

 

   そういったチートが嫌い、そんなの一刀じゃないという方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

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【語り視点】

 

「さらば、天の御遣いよ!」

 

程遠志の戟が、そのまま一刀へと振り下ろされる。

 

 

しかし、程遠志は気付いていない。

滝の様に流れていた汗が、今は僅かも出ていないことに。

乱れ切っていた呼吸が、会話の途中からすっかり正常なものへと変わっていたことに。

そして、決して怒らせていはいけない人物の逆鱗に触れてしまったことに。

 

 

ズドォン!

 

ものすごい音とともに、戟が地面へとめり込む。

しかしそのことに、程遠志は戸惑いをみせる。

なぜならその一撃は、一刀の体を叩き潰してなければならないはずなのに、一刀を逸れて横の地面へと向かっていたからだ。

 

そんな一刀は、俯いたまま程遠志に向かって拳をつきだす様なポーズをとっていた。

しかしその手には、20cm程ある平らで爪状の黒い金属が握られていた。

忍者特有の武器、苦無である。

一刀はその苦無で、程遠志の攻撃を横へと逸らしたのである。

 

 

「くっ、最後まで醜く足掻きおって。」

 

程遠志はしばし困惑していたが、それが一刀の最後の悪あがきだと考え、もう一度戟を振りかぶる。

 

「今度こそ、終わりにしてくれる!」

 

その台詞とともに戟を振り下ろそうとするが、今まで俯いたままだった一刀が、その顔をゆっくりとあげる。

 

(ゾクッ!)

 

すぐさま程遠志は後ろに下がり、一刀と距離を取る。

体内を駆け巡る血が、全て水にでもされたように冷たく感じる。

全身は自分の意思とは無関係に震え続け、思う様に動かすこともままならない。

呼吸も、まわりの空気が薄くなってしまったかのように、いくら吸っても楽にならない。

 

程遠志は、今までに経験したことのない感情に襲われていた。

絶対的な死。

そんな恐怖を、今まさに味わっている。

 

 

立ちあがった一刀は、そのまま服に付いた埃を払い落す。

いつの間に仕舞ったのか、その手に先程まで持っていた苦無はなかった。

次に落とした刀の元まで歩き、それを拾い上げ2・3度振るった後、腰に差していた鞘へと仕舞う。

全ての準備が終わったのか、その顔がゆっくりと程遠志のほうへと向けられる。

 

(ゾクゾクゾクゾクッ!!)

 

一刀の顔つきは、至って普通である。

しかし程遠志は、先程以上の恐怖が襲い、頭がパニックに陥る。

 

「ひぃー、ぜ、全軍突撃!あ、あいつを、あの天の御遣いを殺せ!すぐ、今すぐにだ!行け、行けー!!」

 

そんな命令ともいえない指示を出し、自身はすぐさま人混みの中へと逃げ込んでいった。

始めこそ、自分達のトップの人間の慌てぶりに戸惑っていたが、先程までの優勢な状況を思い出し、それぞれが武器を構える。

 

 

その状況を確認した一刀は、先程よりも鋭い目つきで周りを見回す。

そして一呼吸した後、自分にだけ言い聞かせる様、小さく名乗りをあげる。

 

「北郷忍軍上忍、北郷一刀。いざ、参る。」

 

その静かな言葉は、一刀以外の誰の耳にも届くことはなかった。

しかし、それをきっかけに一刀は、黄巾党の群れへと駆けだしていった。

 

 

 

 

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「・・・ん?」

 

場所は変わり、洛陽近郊のとある平野。

そこに一人の少女が佇んでいた。

いや、正しくは一人の少女が数えきれない程の無数の骸とともにいた。

 

 

彼女の名は、呂奉先。

大陸一の武を持つとされる、天下無双の武将である。

 

なぜこんな状況になっているかと言えば、こちらにも黄巾党の大部隊が攻めてきたためである。

そして、それに気付いた呂布が真っ先に向かい、たった一人でこれらを追い払ってしまったのである。

この武勇により呂布は、その容姿と戦いぶりから後に、『真紅の鬼神』と呼ばれ大陸中にその名が知られることになる。

 

そんな呂布は、既に戦いが終わったにも関わらず、東の地平線をじーっと見つめていた。

そこへ、

 

「恋殿ー!!」

 

呂布の真名を呼びながら近づく女の子がいた。

名前は陳宮。

呂布の軍師をしている女の子であり、呂布のことを自分の主と慕っている。

 

そんな呂布が何も言わず、いきなり一人で外へと駆けだしてしまったため、急いで追いかけたのだ。

だがいかんせん、体格も体力も違いすぎるため、追いついた頃には全てが終わった後だった。

 

 

「・・・ちんきゅ。」

 

呂布の方もそんな陳宮に気付き振り返るが、またすぐに東の方角へと視線を向けてしまう。

 

「はぁはぁ、れ、恋殿。こやつらは、今、うわ、さの、黄巾、党、ですな。」

「・・・うん。」

 

陳宮は走ってきたため、息も絶え絶えで呂布へと質問をする。

そんな陳宮に呂布は、短い返事一つで返す。

 

「で、ですが、さすが、恋、どの、なの、です。はぁはぁはぁはぁ。こんな、やつ、ら、ひとひ、ねりで、ゴホゴホゴホ!」

 

少しむせた様である。

呂布は何も言わず、そんな陳宮の背中をさすってあげていた。

 

 

「ケホケホ、はぁー、しかし、恋殿。さっきから、何を見ておられるのですか?」

 

しばらくして息も整ってきたのか、落ち着きを取り戻した陳宮が、ずっと同じ方向を見続けている主に質問をする。

 

「・・・向こうに、とても強い奴がいる。」

 

呂布はぼそっと呟くように、その質問へと答える。

 

「な、なんですとー! どこなのです?こちらに向かってきているのですか?」

 

そんな呂布の言葉に、陳宮は慌てて同じ方角へと視線を向ける。

 

「・・・大丈夫。こっちには、こない。ずっと、ずっと遠い所にいるから。」

「そ、そうなのですか? はぁー、良かったのです。」

 

続いての呂布の言葉を聞いて、安堵の息を漏らす。

 

 

「まあ、いくら強いといっても、天下無双の恋殿の敵ではないのです。はっはっはっ!」

 

と思えば、今度は自分の主の強さを讃え、大笑いしだした。

 

「・・・・・わからない。」

「へっ?」

「・・・そいつも、とても強い。だから、勝てるかわからない。」

「な、な、な、なんですとっーー!!!」

 

本日一番の叫びが、辺り一面に木霊する。

 

「そ、そんな、恋殿と比肩するほどの者がいるなんて・・・」

 

その顔は不安から次第に暗くなるが、次の瞬間には、

 

「そんなこと、あり得ないのです! 恋殿こそが最強!天下無双で、唯我独尊なのです!」

 

駄々をこねる子供の様に、怒り出す。

 

 

さっきから、そんな風に急がしく感情を変える百面相の陳宮に、呂布は優しく頭を撫でてあげる。

 

「れ、恋殿?」

「・・・大丈夫。恋、負けない。」

「は、はい♪」

 

陳宮は、さっきまでが嘘の様に笑顔になり、頭ナデナデを堪能していた。

 

呂布は、最後にもう一度だけ東の方を見た後、そのまま自分達の家へと帰って行った。

そう、その方向こそ陳留のある方角であり、一刀が戦いを繰り広げている方角でもあった。

 

 

 

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【side 華琳】

 

「う、そ・・・」

 

私は指示も出せず、呆然としてしまった。

自分の瞳に映る光景が信じられず、ただ立ちつくしてしまったのだ。

 

 

一刀は無事で、今も黄巾党達と戦い続けていた。

一刀が無事だったことは、願っていたことだしとても嬉しい。

だが、私の心はそれとは違う感情で一杯であった。

 

(目の前で繰り広げられているあれは何? あんな戦い方、人の身でありながら可能なの?)

 

そう、目の前で起きている一刀の黄巾党達との戦い方だ。

もちろん以前見せてもらった戦いの様に、あの白銀の刀で敵を斬り倒してもいる。

だが、それだけではなかった。

 

 

一刀は何もしていないはずなのに、ある一角の黄巾党達が次々と倒れ出す。

その者達は地面を転がり、這いつくばり、とても苦しんでいるようだった。

そしてそのまま、何かを求める様に手を伸ばしたまま動かなくなる。

 

次に一刀へ向けられ、無数の矢が雨の様に射かけられる。

一瞬、刀が光ったと思ったら、一刀がその刀を振るうことによって、そこから無数の光の粒子が矢へと飛んでいく。

そしてその光は、向かってくる矢を次々と叩き落としていく。

その矢が地面に全て降り注いだ後、一刀のまわりにだけ矢が一本も落ちていない、空間を作り出していた。

 

そんな攻撃の合間をぬい、一刀が何かを投げる。

距離があったためそれが何かは判別できず、目を凝らして確認しようと思った矢先、

 

ドッカーン! ドガンドガーン!!

 

大きな音ともに、黄巾党たちの中で爆発が起きる。

その近くにいた者たちは、とんできた瓦礫などにくらい、次々と倒されていく。

もちろん、その爆発自体に巻き込まれた者は、すでに人としての形を保ってはいなかった。

 

 

そんなあり得ない光景が、私の目の前で繰り広げられていたのだ。

あれらは、本当に人間技なのだろうか?

まだ五胡の妖術だと言われた方が、信じられるというものだ。

 

しかしそうでないなら、あれは一体?

まるで、人ならざるものの力で裁きを受けた様な、そんな殺され方だ。

そう、それこそ一刀のことを示す、天の力で。

 

 

そんなことを考えている間も、一刀は黄巾党達を倒し続ける。

何かに気付いたのか、光り輝く白銀の点が、一際大きい黄色い塊の方へと向かい、その中を削りながら進んで行く。

中心へと着くと、そこには明らかに他の黄巾党達とは身なりの違うものがいた。

どうやらあいつが、この部隊の指揮官のようだ。

 

その者と一刀の戦いが始まるも、勝負は一方的なものだった。

遠目から見ても一刀の優勢であり、ついには地へと倒れ伏した。

指揮官を失ったのが大きいのだろう、他の者たちが蜘蛛の子を散らすように逃亡し始める。

一刀は、それらへも追撃をかける。

 

 

そこまできて、やっと私は我へとかえる。

周りを見ると、春蘭を始め他の兵達も同じような状態になっていた。

夢でも見ている様な、ただ唖然としている状態だ。

 

「しっかりなさい、春蘭!」

「か、華琳様?私は、一体??」

 

私が喝をとばすと、春蘭もようやく我へとかえる。

 

「私達も、すぐに黄巾党達の殲滅へと向かうわよ。すぐに、全兵へ指示を出しなさい!」

「ぎょ、御意!

聞け!我らはこれより、逃亡を始めた黄巾党どもの殲滅へと入る。奴等を、一人たりとも逃すな!!」

「「「「「・・・おぉーーー!!!!」」」」」

 

兵達もなんとか我へとかえり、返事をする。

私達はそのまま丘を駆け下り、逃げまどう黄巾党達へと追撃をかけるのだった。

 

 

 

 

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【語り視点】

 

華琳達がまだ丘の上にいた頃、実際の戦場では何が起きていたのか?

少しだけ、時間を遡る。

 

 

一刀は駆け出す。

黄巾党達へと向かって。

そのままぶつかると思ったが、一刀はひしめき合っている人の群れの中へとスッと入っていく。

そして、風が吹きぬけるかのように、僅かな隙間を通り過ぎていく。

恐ろしいのは、その風が通り過ぎた後の者たちは、いつの間にか首を斬られ、胸を突かれ、腹を割かれ、叫びをあげる間もなく絶命させられていく。

 

 

敵はそんな一刀の姿を捉えられず、次々と仲間を殺されてゆく。

そんな見えない恐怖に怯えていたが、不意に今まで見えなかったはずの人物が、自分達の前方へと姿を現す。

チャンスと思った者達が、一刀へと向かってかけ出そうとする。

 

「北郷流忍術 『石楠花(シャクナゲ)』 」

 

そんな言葉とともに、黄巾党達は自身の違和感に気付く。

息が、吸えないのだ。

 

「ヒー、ヒー」「かっ、はっー」

 

いくら大きく呼吸をしても、肺の中へと空気は入ってこず、さらに苦しさが増す。

その苦しみに、胸を押さえ、喉を掻き毟る。

次第にその顔は苦悶に彩られ、顔色は赤黒く変わり、色々な体液を垂れ流す。

ついには、様々な苦しみの形をとりながら、その動きを止める。

一刀は動いてもいないはずなのに、次々とそんな死が広がっていく。

その様子に、黄巾党達はさらなる恐怖を感じるのだった。

 

 

しかし実際には、一刀は攻撃をしていたのだ。

一刀の手には白い粉が握られており、風下の方へと向かい、それを極微細に撒いていた。

その粉は風に乗って薄く薄く広がり、目視できないレベルとなり、呼吸とともに体内へと入っていく。

そしてそれを吸った者が、呼吸困難へと陥り、死へと導かれていた。

 

 

「う、撃てーっ!!」

 

そんな声とともに、上空から矢の雨が降ろうとしていた。

周りには、まだ自分達の仲間がいるにも関わらずにだ。

どうやら、弓隊の部隊長が恐怖に耐えかね、攻撃の指示を下したようだ。

その事態に、周りのものはパニックなるが、一刀は冷静なままだ。

 

ゆっくりと腰に差していた刀を抜くと、その刃が光り輝きだす。

 

コツン

 

一刀はそんな刀の腹へ、拳を軽く当てる。

するとそこから細かいヒビが入り、それは刃全体へと広がっていく。

一刀はそんな刀を構え、上空を見据える。

 

 

「北郷流剣術 『雪柳(ユキヤナギ)』 」

 

その掛け声とともに、刀を振るう。

すると、その刃についていた無数の欠片が、矢へと向かってとんでいく。

その欠片は、矢を斬り刻み、打ち落とし、矢の雨の中にぼっかりと穴をつくる。

 

「ぎゃー」「助けてくれー」「うわー」

 

そしてその穴はそのまま一刀を通り抜け、一刀の周りへは矢の雨を齎す。

 

 

「す、すぐに次射の準備をしろ!」

 

そんな異様とも言える光景をみた部隊長は、次の攻撃の準備を急がせる。

しかし一刀が、そんな大きな隙を見逃すはずもなく、攻撃を繰り出す。

 

「北郷流忍術 『鬼灯(ホオズキ)』 」

 

ザスッガッズガッ

 

「うげっ」「ぎゃっ」

 

何人かの者に小刀が当たり、そのまま倒れる。

 

 

「お、驚かせおって、よし構え(シュ〜〜)ん?」

 

そんな音が、すぐ近くから聞こえてくる。

その音に耳を傾けると、先程攻撃をくらいやられてしまった者から聞こえてきた。

あらためて見ると、その小刀は柄の部分が通常の者よりかなり大きく、不格好なものだった。

さらにそこには、導火線のようなものがついており、それが音の発生源となっていた。

 

「なんだ、これh」

 

ドッカーン! ドガンドガーン!!

 

それを確認しようとした時にはすでに遅く、大爆発とともに体が吹き飛ばされる。

その爆発は弓隊のあらゆる場所で起き、密集していたことも重なって、多くの者が吹き飛ばされる。

直撃を避けた者も、爆風により飛んできた瓦礫に当たり、次々と倒されていく。

そしてその被害は、弓隊全体へと及ぶほどだった。

 

一刀は爆発により浮き足立っている部隊へと駆けだす。

人に紛れ、爆煙に紛れ、その被害から逃れた者たちを、次々と斬り殺していく。

 

 

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こんな人間離れした戦い方をする一刀に対し、黄巾党達は皆があることを思い出す。

 

( 「我、天の御遣いなり! 大陸に混乱と禍を齎す黄巾党どもよ。今すぐ悔い改めよ!

  さもなくば、天の御遣いの名において、天よりの裁きを下す!!」 )

 

そう、一刀が初めに忠告した言葉である。

「天よりの裁き」まさに一刀のしていることは、そう表現するしかなかった。

黄巾党の中で、大きな動揺が広がっていった。

 

 

それは、程遠志も例外ではなかった。

今、目の前で起こっていることもそうだが、先程一刀から受けた強烈な殺気。

あれを思い出すだけでも、また体が震えてくるほどだ。

 

「て、撤退する。今すぐ俺を守りながら、逃げるぞ!」

 

そんな程遠志は、周りのものに声をかけ、すぐに撤退という選択肢を選ぶ。

 

「他の者たちは、どうしましょう?」

「か、構わん、放っておけ!奴等がいれば、俺が逃げるだけの時間稼ぎくらいにはなる!」

 

そんな最低ともいえる指示を出し、程遠志を守る様に一部の部隊だけが、その戦場から離脱しようとしていた。

 

 

しかし、それを許さない者がいた。

 

「ぎゃっ」「ひぎょ」「うごっ」

 

後方から、そんな声が聞こえる。

 

「な、何が起きてる!」

 

程遠志に、まさかという恐怖が募る。

 

「あ、あの者です。あの、天の御遣(ドサッ) 」

「ひぃ〜。」

 

後方の様子を報告していた者が、その言葉の途中で体を前方へと倒す。

そして程遠志は、その者の後ろに一刀がいたことに、小さな悲鳴をあげてしまった。

 

 

「部下を見捨てて、自分だけ逃げようってか。やっぱクズだな、お前。」

 

一刀は、程遠志に冷たい視線を向ける。

 

「く、ううう、こ、この化け物がー!!」

 

程遠志は、恐怖を振り払うかのように攻撃する。

しかし一刀は、それをいとも容易く避け、その眼前へと刀を突き付ける。

 

「う、く、くそー!」

 

程遠志は一瞬動きを止めるも、戟を振り上げることでその刀を払い、また攻撃を繰り出す。

しかし、それもあっさりと一刀に避けられ、今度は首元へと刀を突き付けられる。

 

 

「さっきまであんなに弱っていたはずなのに、なんでこんなに動けるんだ。」

 

程遠志は観念したのか、攻撃をやめ、一刀に疑問をぶつける。

一刀も、それに対し口を開く。

 

「・・・演技だよ。お前達を、油断させるためのな。」

「演技?なぜ、そんなことをする必要がある?」

「天和、張角たちのことを聞き出すためだ。」

「なんだと?」

「捕まえて口を割らせるのはこともできたが、それだと嘘をつかれる可能性があったからな。

 油断させれば、口も軽くなるかもしれないと思ったが、どうやら正解だったみたいだ。」

「く、ううう・・・」

 

一刀のそんな発言に、程遠志は自分がまんまと策に嵌められたことを悔しがる。

 

 

「な、何故、あの三人のためにそこまでする?」

「約束、したからな。」

「約束、だと?」

「ああ。困ったことになったら、絶対助けに行くと、あの三人に言ったんでな。

 もし、お前らみたいなゲスに利用されているなら、絶対助けに行くべきだからな。」

 

一刀は、以前交わした三人への約束を守ろうとしていたのだ。

 

 

「甘い奴だな。そんなことのために、あんな危険を冒すとは。」

「黙れ。 お前みたいな奴には、一生わからない。」

「くくく、そんな甘いから、こういう隙が生まれるのだ!」

 

程遠志がそういうと、一刀目掛けて矢がとんでくる。

どうやら、密かに周りの部下へと指示を出していたようだ。

一刀はそれにも動じず、一つ一つ避け、払い、処理していく。

 

 

「隙あり!!」

 

程遠志も、それくらいで一刀を討ち取れるとは思っていなかった。

一刀が矢の処理に追われ、自分から意識を離した隙を狙い、戟を振り下ろした。

しかし、

 

「そんなもん、ねえよ。」

「(ミシッ)ぐうっ。(カランカラーン)」

 

左上からの攻撃を、一刀は刀で逸らすことにより、自身の右下へと流す。

そしてそのまま体を回転させ、戟を握っていた程遠志の手へと回し蹴りを叩きこむ。

程遠志はその痛みにより、戟を手放してしまった。

 

 

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「今度こそ、終わりだな。」

 

一刀はそんな程遠志へと、再び刀を突き付ける。

 

「すいませんでしたー!」

 

すると程遠志は、ものすごい勢いで土下座をしだした。

 

「私も、厳政に命令されていただけなんです。こんなこと、したくはなかったんです。」

 

一刀に勝てないとわかると、命乞いをしだしたのだ。

 

「厳政。それがお前達の本当の首領の名前か?」

「はい、その通りです。もし助けて頂けるなら、他にも色々話させて頂きます。」

「お前、黄巾党首領の一の家臣じゃなかったのか。」

「あ、あれは、つい調子に乗ってしまいまして、私如きそんな大それたものでは。」

 

一刀がつっこむと、程遠志は乾いた笑顔で必死に言い訳を始める。

 

 

そんな程遠志に、一刀はさらに刀をつきつける。

 

「ひぃ〜、ゆ、許して下さい!もう、こんなことはしません!本当です。だから、命だけはー!」

 

程遠志は恥も外聞も捨て、涙ながらに必死に懇願する。

 

チンッ

 

一刀は刀を鞘へと戻し、そのまま背を向ける。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

それを見た程遠志は、一刀へ感謝の言葉を述べる。

 

 

「お前は、3つの間違いを犯した。」

「へっ?」

「1つ目に、黄巾党なんかに身を窶したこと。」

「は、はい、もう二度と黄巾党なんかいたしません。」

 

一刀の言葉に戸惑っていた程遠志だが、すぐに一刀の指摘した間違いを悔いる様な台詞を吐く。

 

「2つ目に、俺の大切な人達を傷つけようとした。」

「も、申し訳ありません。知らなかったこととはいえ、心から謝らせてください!」

 

程遠志はそんな心にもない台詞を吐きながら、先程自分が落とした戟を探す。

そして、一刀が今だ後ろを向いていることを確認し、その戟を握る。

 

「3つ目に」

「馬鹿が、死ねー!!」

 

そして、3つ目を話そうとしていた一刀目掛けて、斬りかかろうとする。

 

 

しかしここで、程遠志は自身の異変に気がつく。

自分の見えている景色が、縦に線が入った様に、左右ずれているのだ。

 

「あ、れ・・・?」

 

そんな程遠志の体は縦一文字に斬られ、戟を握った右半分だけがその重さにより残り、左半分が持ち上がる様にずれていた。

 

ドシャ

 

そして程遠志は、そんな自分の姿を確認することなく絶命した。

 

「3つ目に、俺はお前を許すなんて一言も言ってない。」

 

一刀はそれだけを言って、その場を離れる。

 

 

「て、程遠志様がやられた!」

「天の御遣いに殺された!」

 

程遠志がやられたという事実はすぐに広がり、黄巾党全体が限界間近になっていた。

 

「・・・死神。」

 

誰かが、ポツリと呟く。

 

「あ、あれは、俺達の命を刈り取るためにやってきた死神だ。」

 

一刀の数々の技や、それによって殺された骸を見て、誰ともなしにそんな声を上げる。

 

「こ、ここにいたら、俺達もあんな風に殺されちまう!」

 

そう叫び、一人の者が逃げ出す。

 

「ひ、ひぃー」「助けてくれー」「死にたくねえー」

 

それはとうとう、残ったもの全員へと伝搬していく。

それこそ蜘蛛の子を散らすように、皆が我先へとその場から逃げだす。

 

 

そんな様子を見ていた一刀は、まだ結構な数が残っていることもあり、それらへと追撃をかけに向かう。

 

「「「「「おぉーーー!!!!」」」」」 ドドドドドドドッ

 

するとある一方から、そんな雄たけびとともに、多くの足音が聞こえてきた。

もちろんそれは、華琳と春蘭の部隊の足音であり、逃げまどう黄巾党達へと向かっていく。

 

「あれは、春蘭の部隊? 華琳の牙門旗も! 良かった、無事合流できたんだ。」

 

一刀も、それが春蘭の部隊であり、華琳が無事合流できたことに安堵する。

 

 

春蘭の部隊は、そのまま逃げる黄巾党たちへと向かっていった。

それを確認した一刀は、自分の役目は果たしたと思い、その場に立ちつくす。

そんな一刀へと、一人の人物が近づく。

 

「一刀。」

「・・・華琳。」

 

それ以上言葉はなく、ただ目で語り合う。

華琳は今までの不安から解放された反動か、若干だが目元が潤んでいた。

そんな華琳に、一刀はただこう言ってあげる。

 

「ただいま、華琳。」

 

もちろん、いつものあの笑顔で。

それに対し華琳も、笑顔でこう返す。

 

「ええ、おかえりなさい、一刀。」

 

二人は、お互いの無事を心から喜びあった。

 

 

 

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残りの黄巾党達は、春蘭の部隊により大部分が倒され、それから逃れた者はごく少数だった。

その者達も、目の前で起きた天の御遣いの裁きを恐れ、二度と黄巾党になることはなかった。

 

そしてその者達が伝えた話により、噂とされていた天の御遣いが、本当に実在するという話が大陸中へと広がる。

またその戦いぶりも伝えられ、『白銀の死神』という二つ名も、ともに広がっていった。

呂布の『真紅の鬼神』、一刀の『白銀の死神』の名は、黄巾党を恐れさせる対象として噂され、後に天下無双の象徴としても、大陸中で語られることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

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あとがき

 

sei 「はい、やっと戦闘終わりました。

   チート、チートと書いてきて、やっとこさ自分の作品での一刀の本気を書けました。

   まあ、多少やりすぎな気もしますが、これも外史の一つの形ですよね♪

 

   さて今回のゲストですが、解説が多くなりそうということで、それに適した人物に来てもらいました。

   まー、ついでに言うと、出番がまだまだ先になりそうなので、それも考慮してということで、どうぞー。」

 

稟「前半は良いのですが、後半は聞き捨てなりませんよ、sei 」

 

sei 「はい、今回のゲストの稟でーす。」

 

稟「流さないで下さい!」

 

sei 「何か気になることでも??」

 

稟「後半の、出番が先という所です!」

 

sei 「ああー、だって事実だしー。」

 

稟「軽いっ! もっと他に言い様があるでしょうに。」

 

sei 「いくら嘘をついた所で、稟の出番が先なのは変わらないんです。だから、あきらめろ(`・ω・´)キリッ 」

 

稟「良い顔で言っても一緒です!ああーもう、わかりましたよ。

  なら今回のゲストの役目、しっかりと努めさせて頂きます。」

 

sei 「話が早くて助かります。」

 

 

稟「では、今回一刀殿が使った技について、その解説からしていきましょうか。」

 

sei 「ういうい。」

 

稟「まず、なにか白い粉のようなものを使った『石楠花』という技、あの原理は一体?」

 

sei 「はい、あれは基本的に毒を使うもの全般に用いられる名称なのです。」

 

稟「それでは、あの粉も毒だったと?」

 

sei 「そうです。今作で用いた物は神経性の毒で、呼吸筋を麻痺させ、敵を呼吸困難にさせていたのです。」

 

稟「そんなもの、いつの間に用意したのですか?」

 

sei 「私の勝手な想像ですが、忍者って毒に詳しそうなイメージがあったんです。

   なので、この外史の植物・生物・無機物などから作りだした、特製の毒があれなのです。」

 

稟「まあ、納得しておきましょう。

  では次に、刀が光ったあの『雪柳』という技、あれは?」

 

sei 「特に書いてこなかったのですが、実は一刀は気が扱えます。」

 

稟「また、いきなりですね。」

 

sei 「あれは刀の表面にその気を薄く纏わせ、さらにそれを細かくすることで、広範囲・大多数への攻撃を可能にした技なのです。」

 

稟「つまりあの刀を叩いたのは、その気を細かくするためだったということですね。」

 

sei 「その通りです。理解が早いと助かりますねー。」

 

稟「3つ目の技、あの爆発した『鬼灯』という技については?」

 

sei 「本編で、小刀の柄が大きいという表現がありましたよね。」

 

稟「そういえば、書いてあったような気がしますね。」

 

sei 「あそこに爆薬が仕込んであり、導火線からの火が引火することで、大爆発するというシンプルな仕組みです。」

 

稟「そんなに、上手くいくものなのですか?」

 

sei 「さあ?まあ物語ということで、科学的な原理はなあなあにして下さい。」

 

稟「まあ、いつものことですね。」

 

sei 「他にも、汗を大量にかいたり・ひいたりや、程遠志を斬った技なんかにも名称があるのですが、

   あんまり書くとネタがなくなってしまうので、それはまた後でということで。」

 

稟「ふむ。ここまで見て思ったのは、一刀殿の技、仲間が多いと使いづらそうなものが多いですね。」

 

sei 「はい、今回紹介した技なんて、乱戦なんかじゃ絶対使えませんよ。

   これこそ13話で、一人の方が本気を出しやすいと言った理由でもあります。」

 

稟「ちゃんと、あの発言にも意味はあったのですね。

  そして、あなたも人並みに物事を考えてはいたのですね。」

 

sei 「はい、その通りです。 ・・・あれ?さらっと馬鹿にされたような?」

 

 

稟「次にコメントについてですが、sei ドM説のものが多いですね。」

 

sei 「違うのに・・・ orz 」

 

稟「ですが、ああ書いてあれば、誰でもそう思うでしょ。」

 

sei 「それは、そうかもしれないですけど・・・。」

 

稟「そもそも、いじってほしくないのであれば、あんなこと書かなければ良かったのです。

  あれでは、いじってほしいと自分から宣言した様なものです。」

 

sei 「だって・・・」

 

稟「ん?」

 

sei 「だって、ボケなあかんて、ボケなあかんて思ったから!!」

 

稟「若手芸人ですか!」

 

sei 「思いついたネタがあれしかなかったんや、だから、だから・・・、ううう。」

 

稟「まったく。第一貴方は、我々の作者だという自覚が足りません。いいですか、そもそも・・・・・(くどくどくどくど)」

 

――――― 30分経過 ―――――

 

稟「・・・ということを常に考え、これからも精進しなければならないのですよ。わかりましたか?」

 

sei 「トッテモ、ナガイデス <丶´Д`> 」

 

稟「これでも、加減はしましたよ。それに愛紗殿や冥琳殿よりは、まだましでしょう。」

 

sei 「そ、そうですね。あの2強に比べれば、可愛いものですよね。」

 

稟「あのお二人にも怒られたくなければ、頑張ることですね。」

 

sei 「ハイ、ソウデスネ。」

 

 

稟「さて、今回はこれくらいにしておきましょう。 sei 次回はどうなるのですか?」

 

sei 「次回は、残りのお片付けと後日談的な話になります。」

 

稟「ほかには、何かないのですか?」

 

sei 「うーん、まあ書くかどうか検討中な内容なら。」

 

稟「気になりますね、それは一体?」

 

sei 「ふむ、ちょっとお耳を拝借(ゴニョゴニョゴニョゴニョ)」

 

稟「ふむふむ、なっ! そ、そんなことが、あ、ああ、そ、そんな、だ、駄目です、いけません、か、ぷはーっ!」

 

sei 「・・・どこまで想像したのか。まあ、今回はこれで終わりということで、また次回ー。」

 

 

 

 

稟「い、いけません、華琳様・・・・・(ドクドクドクドク)」

 

 

 

説明
初めこそ優位に戦っていた一刀だが、次第に劣勢へと立たされてゆく。
ついには、一刀の頭上へとその凶刃が振り下ろされる。
時を同じくして、一刀の救援へと向かった華琳は、そこで信じられない光景を目の当たりにする。
果たして一刀は、そして華琳の見たものとは。
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コメント
はるか 様>主人公は、そう簡単に死んではいけないのですってね。(sei)
一刀生きてた、よかったー(涙)(はるか)
アーモンド 様>え、えーと、何勝手に出演交渉をしてるんでしょうか? 前回の仕返しですか、仕返しなんですね!! (ちなみに、愛紗の出番はもう少し後です。そこは譲れねぇ。)(sei)
愛紗さん少しお話が.........次回の......あとがき......はい.......はい。お願いしますね(ニッコリ)(アーモンド)
サイト 様>恋姫キャラたちもどっからともなく武器を出したりしてるので、すでに四次元ポケットの原理がこの外史ではあると考えていますw だから一刀も、話によっては武器がバンバン出てくるかもしれません。(sei)
・・・忍者だしやっぱり真っ黒な服装をするのかな?それに上忍ですか戦闘服の中が四次元ポケットみたいになってるのかな?(サイト)
TINAMI発現世行きデスヒトヤ 様>それを忍術っぽくアレンジしたのが、今回の技ですね。さすがに、本物は使えませんからねw(sei)
本郷 刃 様>如何だったでしょうか。ご期待に添える、楽しい骸になっていたでしょうか?w(sei)
メガネオオカミ 様>そうですよね。忍法とは、科学で解明できない不可能を、可能にしてしまう魔法の言葉ですもんね(`・ω・´)キリッ (sei)
真山 修史 様>そうですねー。そういった内容のカラミも、どこかしらで書けたらいいなー。まあ、ネタが出ればですけどw(sei)
shukan 様>少しでも騙せて良かった。凪に限らず、他のキャラの立ち位置もまだフワフワしてるので、どうなるかはお楽しみということでw(sei)
ロンリー浪人 様>冤罪だー!!誰か証人を、弁護士を、弁明の余地を(ぽんっ)、ぎにゃーーーーーー!!!(sei)
イマ 様>ただ強いだけだと逆に話にならなそうだったので、少し制限を設けてみました。 キャラトークはあくまでおまけですよ、おまけw(sei)
アルヤ 様>これからの話にも、少しでも忍者っぽさを出していきたいですね。(sei)
前原 悠 様>はい。稟もあとがきも、いつも通りの運転ですw(sei)
レイブン 様>そうですね。 まともに戦えば恋が圧勝ですけど、一刀が自分のやり方で戦えれば一刀有利な感じですね。(sei)
毒ガス、爆弾ってところか(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
一刀の楽々、骸クッキング♪ 愉快な骸の出来上がりwww(本郷 刃)
科学的な原理→大丈夫、忍法に不可能はありませんから(`・ω・´)キリッ (メガネオオカミ)
一刀が気を使える・・・仕込みのある武器・・・凪と真桜との絡みが気になりますね(真山 修史)
見事に一刀の演技に踊らされた自分が通りますよ〜。凪スキーな私は今後の凪の立ち位置が気になるところ。次も楽しみに待ってますよ〜。(shukan)
確かに、禀は二胸(誤字に非ず)に比べれば(長さ的にも大きさ的にも)たいしたことはないd……ナ、ナンデショウ、リンサン? イマノセリフデスカ? ……seiサンニイワサレマシタ。(ロンリー浪人)
チートな一刀だけど、意外に制限が多いですね。 最後のキャラトークで危うく今回の内容すべて忘れそうになりましたw(イマ)
忍者一刀か。続きが楽しみだ。(アルヤ)
稟は通常運転なんですね^^;;(前原 悠)
強さは試合は恋、勝負は一刀が勝って感じですかね。(レイブン)
タグ
真・恋姫†無双 一刀 華琳 春蘭 あとがきは平常運転 

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