永夜恋文
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きっと、私と彼女は対として産まれて来たのだ。

 

燃え盛る火炎の中に放り込んで、真っ黒に焦げた肌を愛でたい。薄氷張る水中に沈めて、歯根の合わない口に接吻したい。粉挽器に突っ込んで細切れになった肉片に埋もれて眠りたい。千切れる程、首を絞めて、開かれる眼を愛おしげに舐め回したい。私の物だと印を付けるために全身を青あざで覆い尽くしたい。

愛おしい、愛おしい、愛おしすぎて、死んでしまう。殺してしまう。

もし彼女が蟷螂に生まれていたなら、私も蟷螂だっただろう。もし彼女が蔦だったなら、私も蔦に生まれていただろう。

もし彼女が生まれていなかったら、私も生まれていなかっただろう。

どんなに生まれ生まれ生まれ生まれて生まれても、どんなに死に死に死に死んでも、私達はお互いに愛し合い、そして殺し合うのだ。

あゝ輪廻の輪から追放され、永久に繋いだ手を切り落とし合うことが出来る。

なんて劣情、なんて熱情、なんて満ち足りた感情。

彼女に自分の頭でも送りつけようと思う。包みを開けた瞬間の彼女が顔を想像するだけで、私は恍惚に浸ってしまう。

そして包みを開かれた途端に首筋に噛みついてやるのだ。きっと彼女は喜んで喉笛を掻き切られるだろう。真っ赤な鮮血が前掛けのように垂れて、彼女の白い肌によく映える。

自分の血と彼女の血の境界が無くなったときに、私は笑いかけるのだ。彼女も体積がやや足りなくなった喉元から隙間風を吹かせて、笑うのだ。

それから名残惜しそうに私を引き剥がして、お相子だと言わんばかりに近くにあったすり鉢に放り込まれ、すり潰され、すり身団子として私は彼女の口で食されるのだ。

そして、彼女の胃の中で再生し、彼女の半身に真っ赤な大輪の花を咲かしつつ、私はまた誕生する。

その光景を前にすればどんな芸術も叶わないであろう。

あゝあゝ生きているって素晴らしい。こんなにも痛みを感じることが出来る。こんなにも思い焦がれることが出来る。殺意、悪意、好意、決意、敬意、誠意、そんなもの今ここに生きている、そのことだけで、それ以外は全て犬に喰われてしまえ!永遠に救われない私は永遠に救いを求める。それでも永遠は私にまた彼女と出会わせてくれた。

どんなに思い思い思い思うとも聖も知ることはないだろう。杳々たり杳々たり甚だ杳々たり。深く冥い夜の中、一際、輝いて見えた星が彼女だった。かつて手の届かないそれはとてつもなく憎々しく思えた。しかし、今は違う。私も今や一つの紅の星となったのだ。互いに惹かれあい、互いに互いを焼きつくし合い、全てが無へと還った時に私達は一つになろう。

それまでは二人で生きて死んで生きて死んで生きて死んで、そしてまた産まれよう。

どうか死に給うなかれ!どうか生きることなかれ!

明けない永夜の中、私達は須臾の時を過ごす。

三千世界、六道の輪廻を超え、いつまでもいつまでもいつまでもいつまでも

説明
書いてて楽しかった気がする。
てるもこわっしょい。
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