魔法少女リリカルなのはmemories 閑章 第七十二話
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「シエルフィか?」

「いえ、ベスカ・アンデュリッヘです」

「アンデュリッヘか。入れ」

 

 そのノックの音の人物がシエルフィ・シルヴェルンだと思ったオリヴィエであったが帰ってきた言葉は部下であったベスカ・アンデュリッヘの声だとわかる。

 オリヴィエはアンデュリッヘを部屋の中に入れ、言われた通りアンデュリッヘは中へと入るのであった。

 

「……窓を見ていたのですか?」

「あぁ、少しな。それで用件は何だ?」

 

 こんな時に部屋に来るという事は何か重要な話でもあるという事だろうと思ったオリヴィエは、アンデュリッヘの言葉を待っていた。

 

「オリヴィエ聖王女殿下はこれから予定通り動くのですよね?」

「その通りだ。それがどうしたのか?」

「それで思ったのですが、敵の情報を知るためにも一度私は聖王家から離れて状況を把握しておいた方がよろしいかと」

「なるほどな……」

 

 アンデュリッヘが言いたいことは、余り他国に知られていない自分が他国へと向かい、状況を報告するという事。確かに今の状況ならばそれをやっておく必要はあったと思うが、もしばれたらアンデュリッヘの命がかなり危うい事となる。

 だがアンデュリッヘがそのような事を言いだしたという事は彼もそれなりの覚悟があるという事だろうとオリヴィエは思った。

 

「だが今の状況、アンデュリッヘの正体が聖王家の人間だとばれれば生きて帰れないぞ。それでもいいのか?」

「そんな覚悟は出来ていますからこそ、オリヴィエ聖王女殿下に頼んでいるのです」

「そこまで覚悟が決まっているのならば私は構わんが……」

 

 進まなければ始まらないとはオリヴィエも思うが、優秀であるアンデュリッヘをもし亡くすとなれば支障になりかねない。アンデュリッヘは聖王家を支えていた人物の一人だし、亡くすにはもったいない人物であり、アンデュリッヘに対してそのように命令するのは悩むことだった。

 

「どうやら私が殺されないか心配しているようですが、今日的でなければ大丈夫です。それくらいでなければ今まで私がオリヴィエ聖王女殿下に目を付けられるわけがありませんし」

「……そうれもそうだな。ならば余り深追いはせぬようにせめて忠告しておくよ」

「分かりました。それでは私はこれから準備に取り掛かりますので」

 

 アンデュリッヘはそう言ってオリヴィエが居る部屋から出て行く。それを見たオリヴィエはもう一度窓から外を見る。

 

「……私が決めた事だ。次元世界を守るためにも動かなくてはならない」

「やはり、その意志は変えないのですね」

 

 突然、背後から声が聞こえてくる。聞き覚えのある声であったが、オリヴィエは即座に振り返る。

 そこに居たのは声を聴いた限りでは予想通りの人物で、オリヴィエが聖王家の中で一番心を許しているシエルフィ・シルヴェルンであった。

 

「シエルフィか。あまり驚かせるなよ」

「いえ、本来ならば普段通りノックしようとしていたのですが、生憎ドアは開けっ放しであったもので」

「アンデュリッヘの奴、ドアぐらいしっかりと閉めておけ」

 

 自分もそのまま閉めなかったというのもあったが、それでも閉めなかったアンデュリッヘの方がいけないだろうと思ったオリヴィエであり、溜息を吐くのだった。

 だがシエルフィが来た理由はなんとなくだが知っており、彼女がここ最近やっている事を考えれば一つしか考えられない。

 

「それで、あの一件はどうした?」

「それについては大丈夫です。魔法がなくて、且つ程よく技術が進んでいる場所を見つけましたし、移動する全て準備が整いましたのでいつでも行くことが出来ます。ですが、オリヴィエ聖王女殿下の勇姿を見れないことだけは悔しいですが」

「そう言うな。だけどシエルフィに与えた任務は極秘だとしても重要な事だ。聖王家の王女は私を最後で終わりにするつもりなんだから」

「……本当にそれでいいのですか?」

 

 オリヴィエに向かって本来言うつもりではなかったことをシエルフィはつい言ってしまう。シエルフィに与えた任務は、オリヴィエから生まれた娘を遥か遠くの次元世界に逃がすという事だった。

 正直その話を触れられたときに、シエルフィはかなり驚かされた。この先も聖王家は続くものだと思っていたし、オリヴィエが最後で途絶えることになるとは思ってもいなかった。

 

「構わない。娘の成長姿を見れないことは辛いが、娘に聖王家の王女を継いでほしくないんだ。それに、この先の世界でこのような事態を生んでしまった時の為に、あの聖剣と最近作った二つの((聖玉|せいぎょく))をシエルフィに私は託したのだろう?」

「……歴代の聖王家の王女が使っていたとされる、あの聖剣までオリヴィエ聖王女殿下が手放すとは思いもよりませんでしたが」

「そう言うな。あの聖剣がなくても何とかなる。いざとなればゆりかごを動かせばいいのだからな」

 

 シエルフィは今の会話だけでオリヴィエが意志を全く変える余地はないと理解する。自分がこれからどれだけ言おうとも彼女は私の言葉を聞いてくれないだろうと。

 

「……本当に意志を変えないのですね」

「当然だ。戦地で死ぬ覚悟だって私にはとうに出来てる。今更後戻りはするつもりはないのだから」

 

 オリヴィエの幼いころから身近にいたからこそ分かる。もう、彼女の覚悟は決まっていると。

 同い年で、幼い時は親友みたいな感じだった時から見ているので、オリヴィエの性格を一番知っていると過言ではなかった。

 

「……それでは、私はこれで聖王家から離れます。予定通りあなたの娘を連れて」

「あぁ、よろしく頼んだ」

「オリヴィエ聖王女殿下……いえ、オリヴィエ。今までありがとう」

 

 最後にシエルフィはそのように言い、部屋を後にするのであった。

 シエルフィが居なくなったことでまたしてもオリヴィエは部屋の中で一人となる。だがその顔はシエルフィの言葉を聞いて笑っていた。

 

「ありがとうか……それは、私が言うはずの言葉なんだがな」

 

 幼いころから自分の面倒を見てくれて、親友みたいな関係であった事にありがたかった。シエルフィが居たからこそ今の自分が存在するぐらいであったからである。

 そして、オリヴィエは数分経つと部屋から出て行き、その翌日には戦争へ赴くのであった。

説明
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

消されていた記憶とは、なのはと青年の思い出であった。

二人が会ったことにより物語は始まり、そしてその二人によって管理局の歴史を大きく変える事件が起こる事になる。

それは、管理局の実態を知ったなのはと、親の復讐のために動いていた青年の二人が望んだことであった。



魔法戦記リリカルなのはmemories ?幼馴染と聖王の末裔?。始まります。
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