ソードアート・オンライン デュアルユニークスキル 第十五話 七十四層のデュエル
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デュオ視点

考えるのをやめてから、さらに30分後

シリカが目を覚ました。

 

デュオ「あ、おはようシリカ。」

 

シリカ「ふわぁぁぁ・・・あ、デュオさん、おはようございます・・・」

 

シリカは欠伸をしながら、挨拶し返してくる。

まだ眠そうなぼんやりとした目付きをしたシリカは

まるで子猫のようで実に愛らしい。

 

デュオ〈猫耳と尻尾つけたら、面白そうだな・・・〉

 

不意にそんな考えが頭をよぎる。

すると、シリカがもじもじとしながら聞いてきた。

 

シリカ「あの・・・あたしの顔に何かついてますか・・・?」

 

デュオ「えっ・・・?いや、別に。」

 

どうやら俺は、無意識のうちにシリカの顔を見つめていたらしい。

俺は若干焦りながらも、それを悟られないように平然とそう答えた。

 

デュオ「それじゃあ、俺は朝飯作ってるから。着替えたら出てきて。」

 

シリカ「はい。」

 

俺はシリカを部屋に残して、キッチンへ向かった。

最近、食材調達をしていなかったため、食材が大分減ってきている。

 

デュオ〈そろそろ補充するかな・・・〉

 

そう思いながら、俺は朝食の用意を進める。

調理が終わってそれをテーブルに並べ終えたその時、部屋からシリカが出てきた。

 

デュオ「ちょうどできたよ。早く食べよう。」

 

シリカ「はい。」

 

俺とシリカは向かい合うようにして席に着くと

「いただきます。」と言ってから朝食を摂りはじめた。

 

デュオ「ところで、シリカは今日何してるんだ?」

 

シリカ「特に予定はありませんよ。デュオさんは?」

 

デュオ「俺は前線に出るよ。」

 

シリカ「そうなんですか・・・気をつけてくださいね。」

 

デュオ「ああ、わかってるよ。」

 

そう言った後、食事を終えた俺たちは

外に出た。(俺は転移門広場に向かうため、シリカは見送りだ。)

 

デュオ「じゃあ、行ってくる。」

 

俺は装備を確認してから、剣を背負い直してそう言う。

 

シリカ「いってらっしゃい。頑張ってきてください。」

 

デュオ「わかってる。ああ、夜には帰るから。」

 

シリカ「はい。」

 

そんなやり取りをしてから、俺は転移門広場に向かい、

そこから現在の最前線である七十四層へ跳んだ。

 

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転移門に出現した俺は、とりあえず広場の端のほうに移動して

アイテムを確認する。

とりあえず、一通りのアイテムは揃っているようだ。

所持品{ポーション×10、解毒ポーション、回復結晶×5、解毒結晶、転移結晶×4、回廊結晶×3、ブラッドボーン(剣)×30、}

 

デュオ〈さて、そろそろ行くかな・・・ん?あれってキリトじゃないか・・・?〉

 

出発しようとした時、相変わらず全身真っ黒な装備の剣士キリトを見つけた。

あの様子からすると、誰かを待っているようだ。

俺が声をかけてみようと思った瞬間、転移門に青いテレポート光が発生し

なぜか2mほど上空にポリゴンの出現が確認された。

数秒後、そこに1人の少女が出現した。

少女は仮想の重力に遵って落下していく。

 

デュオ〈これは当たるぞ・・・〉

 

俺の予想通り、少女は真下にいたキリトに激突、2人は派手に地面に転がった。

ちなみに俺は、落ちてきた少女のことを知っていた。

すらっとした体を白と赤を基調とした騎士風の戦闘服に包んだ栗色の長いストレートヘアの少女。腰には赤い鞘に収めた白銀の((細剣|レイピア))を吊るしている。

 

デュオ〈あれ、間違いなくアスナだ。〉

 

それがわかった瞬間、俺は助けに行くのをやめた。理由は2つ。

1つ、KoBの副団長ともあろう人がなぜ、こんなおっちょこちょいをしでかしたのか知りたかったから。

もう1つは2人の体勢だ。現在、キリトの上にアスナが乗っかって倒れているのだが、キリトはそのアスナの胸を鷲掴みにしている状態になっている。

すると、キリトはアスナのことを除けようとしたのか、鷲掴みにしているアスナの胸を2,3回揉んでしまった。

 

アスナ「や、や・・・っ!!」

 

バッチコーン!!

 

とんでもない行動をしてしまったキリトにアスナの鉄拳が直撃。

キリトはその場所から吹き飛ばされてこちらに飛んで来た。

 

デュオ〈ちょっと待てい!!〉

 

キリト「うわあああ・・・!!」

 

キリトは俺のいるところのすぐ近くにあった石柱にぶつかって停止する。

一方キリトを吹き飛ばしたアスナは顔を真っ赤にしながら胸の前で腕を交差させ、キリトを睨んでいた。その目には凄まじい殺気が込められている。

 

キリト「いってててて・・・」

 

片目を閉じたまま体を起こしたキリトは、アスナの様子を見て自分が何をしたかを悟ったようだ。

右手を閉じたり開いたりしながら、こわばった笑顔とともに口を開いた。

 

キリト「や・・・やあ、おはようアスナ。」

 

キリトの言葉にアスナの殺気がいっそう強まり、キリトはビクっとする。

その時、再び転移門が発光する。

アスナは、はっとした表情で振り向くと、慌てた様子で立ち上がり素早くキリトの後ろに回りこんだ。

キリトも立ち上がるとゲートを見る。

俺もそれに釣られるようにしてゲートを見ると、そこにいたのはKoBのユニフォームを着込み、やや装飾過多気味の鎧と両手用剣を装備した男性プレイヤーだった。

名前は確かクラディール。アスナの護衛をしていた長髪の男だ。

そいつはキリトの後ろに隠れているアスナを見つけると、憤懣やるかたないといった様子で言った

 

クラディール「アスナ様、勝手なことをされては困ります・・・!さあギルド本部まで戻りましょう。」

 

どうやらこの男は無理矢理にでもアスナを連れ戻すつもりらしい。

 

アスナ「いやよ! てゆーか、なんであなた私の家の前にいたのよ!?」

 

クラディール「こんなこともあろうかと、一ヶ月前からアスナ様の家の周囲で張っていたからです!」

 

得意げにそう言うクラディールにさすがの俺も引いた。

 

デュオ〈これは相当な重病人だな・・・しかもアスナ様って・・・どんだけ崇拝してんだよ・・・〉

 

アスナ「そ・・・それ団長の指示じゃないわよね・・・?」

 

クラディール「私の任務はアスナ様の護衛です!それにはご自宅の監視も・・・」

 

アスナ「ふ、含まれないわよ・・・!!」

 

クラディール「聞き分けの無いことを仰らないでください・・・さあ、本部に戻りますよ。」

 

クラディールはそういうとキリトのことを乱暴に押しのけて、アスナの腕を掴もうとした。

だがそれは俺が突き出した大剣によって遮られた。

 

デュオ「その辺にしておいたらどうだ?」

 

俺は剣を背中に戻しながら言う。

 

クラディール「なんだ貴様・・・?」

 

クラディールは殺気のこもった表情でこちらを睨む。

俺は怯むことなく、逆に余裕の表情でクラディールを睨み返す。

 

キリト「デュオ!」

 

アスナ「デュオ君!」

 

デュオ「よう。2人とも相変わらず大変そうだな。」

 

クラディール「デュオ・・・?そうか!どこかで見たと思ったら・・・」

 

クラディールは思い出したようにそう言う。

 

デュオ「ああ、そういえばボス戦で何度か見たことがあるな。」

 

クラディール「ボス戦にしか現れない貴様が何の用だ?」

 

デュオ「俺だって前線攻略ぐらいするさ。それより、なんでアスナを連れ戻そうとしてるんだ?」

 

俺がそう言うとクラディールは見下すようにこちらを見て言う。

 

クラディール「ふん。決まっているだろう。貴様らのような雑魚プレイヤーにアスナ様の護衛は務まらないからだ!」

 

クラディールは“雑魚”の部分を妙に協調して言う。

 

デュオ「護衛されてる人より護衛してる人のほうが弱くちゃどうしようもないだろ。」

 

クラディール「何だと・・・!!」

 

デュオ「心配するな。キリトも俺もお前より強いから。」

 

クラディール「き・・・貴様・・・!!そこまで言うからにはそれなりの覚悟があるんだろうな?」

 

クラディールは手を振ってメニューウインドウを呼び出す。

どうやらデュエルを申し込む気のようだ。

 

デュオ「悪いけど、俺は別行動だから、やるならキリトと戦ってくれよ。」

 

キリト「お、おい!」

 

デュオ「いいだろ別に?だいたいお前が戦ったほうが早いだろ。」

 

クラディール「どっちからでもいい!!2人とも倒してやる。」

 

デュオ「ほう〜おっかねえ・・・」

 

キリト「はあ・・・アスナ、どうする・・・」

 

アスナ「私は構わない。」

 

キリト「・・・いいのか?ギルドで問題にならないか・・・?」

 

アスナ「大丈夫。団長にはわたしから報告する」

 

アスナのお許しを得たキリトはデュエルを受託する。

 

デュオ「後悔してもしらないぞ。」

 

クラディール「黙れ!!このガキを倒したら次はお前だ!!覚悟をしておけ!!」

 

デュオ「大丈夫。おそらくお前じゃキリトには勝てないから。」

 

クラディール「ガキィ・・・」

 

挑発されたクラディールは顔面蒼白なり、こちらを睨んできた。

だが、カウントが開始されるとキリトに向き直る。

 

クラディール「ご覧くださいアスナ様!私以外に護衛が務まる者など居ないことを証明しますぞ!」

 

叫びつつ腰から両手剣を引き抜く。対してキリトも背から片手剣を抜く。

2人とも突進系の構えをしている。

俺はキリトから離れながら、思った。

 

デュオ〈あれを使う気だな。〉

 

そしてデュエルは始まった

まず動いたのはキリト。下段の受身気配を見せていたが予想に反し上段の片手剣突進技【ソニックリープ】で仕掛けた。対してクラディールはキリトとは一瞬遅く両手用大剣の上段ダッシュ技、【アバランシュ】を放つ。ライトエフェクトを纏った2つの剣が衝突する。

その瞬間、耳をつんざくような金属音とともにクラディールの大剣は折れ、半分が空中ですれ違い着地したキリトとクラディールの中間の石畳につきたった。

 

クラディール「な、なんだと・・・!?」

 

驚きを隠せないクラディールの手から残った剣が消滅し、それと同時にクラディールは膝をついた。

 

キリト「武器を替えて仕切りなおすなら付き合うけど・・・もういいんじゃないか?」

 

キリトがそう言うとクラディールは「アイ・リザイン」と言った。

 

アスナ「クラディール、血盟騎士団副団長として命じます。本日を以て護衛役を解任。別命あるまでギルド本部にて待機。以上。」

 

クラディール「・・・なん・・・なんだと・・・この・・・」

 

かろうじてそれだけが聞こえた。

その後、クラディールはふらついた足取りで転移門まで移動し、

 

クラディール「転移・・・グランサム」

 

と言った消えた

 

アスナ「・・・ごめんなさい、嫌なことに巻き込んじゃって・・・」

 

キリト「いや、俺はいいけど・・・」

 

デュオ「よくあることだ。それより攻略に行くんじゃないのか?」

 

アスナ「あ、そうだった!じゃあキリト君、行こうか。前衛よろしく」

 

キリト「いや、ちょっと、前衛は普通交代だろう!」

 

アスナは街の外に続く道をすたすた歩き出す。

キリトもそれに続く。

 

アスナ「明日は私がやってあげるから。」

 

キリト「えぇぇぇ・・・!!」

 

などと言うやり取りも聞こえてきた。

 

デュオ〈相変わらず仲良しだな。〉

 

俺は思わず微笑んだ。

 

デュオ「さて俺もそろそろ行くか。」

 

俺は気を引き締め直してから、キリトたちが歩いていった方へ歩き出した。

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