魔法少女リリカルなのはmemories 閑章 第七十七話
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 オリヴィエが次に意識を取り戻したのは聖王家の城の中だった。

 

「……どうしてここに?」

 

 意識を失う寸前の記憶が即座に思い出せず、どうして自分は寝ていたのだろうかと自問する。

 見覚えのある自分の部屋。雰囲気から位置まで何も変わっておらず、変わっていないのにその中にいたオリヴィエだけは不思議な感覚に陥っていた。

 まるで、自分の中に何かが足りないかのように――

 

「目が覚ましましたね」

 

 するとノックもせずに部屋の中に入ってきたネネがオリヴィエがベッドの上で座っている姿を見て、ホッと安心をしていた。

 一体何があったのか未だに思い出せずにいたオリヴィエはネネの姿を見てすぐさま尋ねる。

 

「……私は一体どうしたんだ?」

「私たちがオリヴィエ聖王女が戻ってくるのが遅いと思い、城へと突入してみたらオリヴィエ聖王女が道の真ん中で倒れていたのです。来たときにはオリヴィエ聖王女しか居ませんでしたので何があったのかは分かりませんでしたが」

「いや、それを言ってくれたおかげで思い出した」

「そうですか。それなら良かったです」

 

 そうだ、自分は夜天の書の守護騎士であるシグナムと戦い、その途中で何者かにリンカーコアを抜き取られたのだという事を思い出した。

 不思議な感覚に陥っていたのはリンカーコアを抜き取られたおかげで魔力が急激に激減しているからだと理解し、多分今の状態でティルヴィングを出すことも難しいだろうと思った。

 

「それで一体何があったのですか?」

「……私は夜天の書の守護騎士、シグナムと戦い、その途中で邪魔が入りリンカーコアを抜き取られた」

「っていうことは夜天の書は……」

「あぁ、リンカーコアを抜き取られたという事は多分夜天の書の所有者はミハエル・ミストルではなく、情報通りアンビュ・エメジスタなのだろう。守護騎士たちはアンビュ・エメジスタの命令を受けて私を襲い、別の守護騎士、多分シャマルによってリンカーコアをん抜き取り、私の魔力を徴集したのだろう」

 

 だがそうだとしても、どうして自分を生かしたのかという事が疑問であった。情報通りならば私も殺しておくべきだと思うし、敵の王である自分を生かしておく意味がないはずだ。それなのにシグナムは主が生かしておけと言ったという事は何か考えがあっての事だと思え、一体彼らは何を企んでいるのかと思うのだった。

 

「とりあえず、今のままでは私も出動出来ない状況だ。当分は様子を見ることしかできないという事か……」

 

 正直言うと、こんなところで呑気にしている場合ではないのだが、今戦いに行ったところで勝ち目がないかもしれない。自分が出動したとしても、唯の足手まといとしかならず、場合によってはそれが敗因になる可能性だってあり得た。

 部下に任せるべきかとも思えたが、そうしたら多分こちらに攻め込んできて、聖王家が負けるという事も考えられた。自分自身の力の強さによってここまで戦況を左右するとは思わず、それがオリヴィエにとって悔しかった。

 

「ところで、あの城には人が居たのか?」

「いえ、どうやら今回の事は向こうの思い通りに私たちが動かされていたようで、オリヴィエ聖王女のリンカーオアから魔力を奪ったという事を考えると、それだけの目的だったのかと」

「……一体、魔力を徴集したら何が起こるんだ?」

「さすがにそれは調べようがありません。プログラムを変えた張本人が分かれば分かるかもしれませんが……」

 

 そう、プログラムを変えられた夜天の書が一体どんな力を齎すのか調べようもなく、実際に見てみなければ分からないという事だった。

 それを行う前に阻止したいところであったが、先ほども言った通り今すぐ動ける状況ではない。早く魔力が回復するのを待ち、その間にもアンビュ・エメジスタの拠点強いている場所を特定し、一気に勝負をつけることを考えた。

 

「とりあえず今は、自分の回復に専念せなければな」

「そうですね。料理もこのオリヴィエ聖王女の私室まで持ってくるように頼みますので」

「あぁ、そうしてくれ」

「それでは侍女にそのように伝えてきます」

 

 ネネは侍女にそう伝えるために部屋を出ていき、部屋の中はまたオリヴィエ一人となった。

 魔力が回復するまでは特にする事もなく、オリヴィエは動く気もしなかったのでベッドの上で座っているままであった。

 

「暇だな」

 

 何もしてなければ魔力は回復するだろうし、数日掛かるとは思うがこれと言ってする事がなかった。

 こんな状況で暇なんてしている所ではないのだが、真面目にする事がない。矛盾しているのだが、実際そうなのだから仕方がなかった。

 

「……私が回復している間にも多分彼らは次々に行動を移してるだろうな。一体何処まで進んでおるか……」

 

 自分が回復するまでにはもう止められないという状態だけは避けたい。本当にこんな事をしているの場合ではないのに、何もできないという事が今のオリヴィエにとって一番辛い事であった。

 シグナムと戦っているときに、他の敵が居るという考えを忘れていなければこのような状態にならないと思い、あの時の自分に対して恨みを持っていた。

 過ぎた事を今更恨んだところで過去に戻れるわけでもないし、意味がない事はオリヴィエにも分かっていた。時間が止まったり過去に戻れたりすることはないんだから。

 

「何事もなければ良いのだけどな……」

 

 そのようになるとはなるわけがないと分かりながらも、オリヴィエは思ってしまうのだった。

説明
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

消されていた記憶とは、なのはと青年の思い出であった。

二人が会ったことにより物語は始まり、そしてその二人によって管理局の歴史を大きく変える事件が起こる事になる。

それは、管理局の実態を知ったなのはと、親の復讐のために動いていた青年の二人が望んだことであった。



魔法戦記リリカルなのはmemories ?幼馴染と聖王の末裔?。始まります。
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