単一の幸福を求めて… 第13話 前編
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第13話 孫呉の暗き、闇

 

白斗

「ふむ、活気は悪くないが……」

 

俺は町にやってきていた。

 

荊州南陽郡は人口も多く、豊かな土地である。

 

街には雑貨に食材、武具の修理の看板を掲げてる店もあれば、湯気を立てる料理の屋台もある。一見、活気があり栄えて見えるが……

 

白斗

「店が乱雑に配置されていてどこに何の店があるのか解り辛いな……、それに大通りから少し外れれば……」

 

そこは貧困層の居住区となっており、飢えた民や痩せた子供などが生活していた。

 

白斗

「貧富の差が激しいな……」

 

袁術の度重なる徴税で荊州の民は疲弊している状況であった。

 

白斗

「これじゃあ、いつ一揆が起こってもおかしくないな。 美羽に奢侈な生活をやめるように言ってみるか」

 

俺は美羽をどうやって上手く説得しようかと考えながら歩いていると、街の中央広場の辺りに何やら人だかりが出来ていた。

 

白斗

「なんだ?何かあったのか?」

 

ここからでは何が起こってるのか、まったく見えないが……

 

白斗

「…………」

 

俺はゆっくりと人混みに近づき、人波に隠れるように動き、中央に近づいた。

 

俺は建物の影から人混みの原因を覗き見た。

 

するとそこには―――。

 

孫策

「人質を離しなさい」

黄巾党

「離せと言われて、はい、そうですかーって聞けるかよ!」

 

爺さん

「……しぇ、雪蓮ちゃん…………」

 

婆さん

「うぅ……」

 

黄巾党の残党らしき数人の男たちと孫策一人が、真正面から対峙していた。しかも残党たちは、町人らしき老夫婦を人質に取っている。

 

白斗

「状況がよく解らんが、何やらまずい雰囲気だな」

 

それにしても、黄巾党の連中はこんな状況で人質を取ってどうするつもりだ?さっさと逃げればいいものを……

孫策

「おまえたちは、この状況で人質を取って、どうするつもりだ?」

黄巾党

「どっ、どうって」

 

孫策

「まさか人殺しをしたい訳じゃないでしょう」

 

黄巾党

「うっ……そっ、そんな口きいていいのかよ? オレたちにゃ人質がいるんだっ。いつでもこうして剣を動かせば……」

 

爺さん

「ひいぃっ!」

 

孫策

「でも殺しちゃったら、あなたたちの大事な人質が、いなくなっちゃうわよ。意味なくない?」

 

黄巾党

「あ……」

 

孫策

「……やっぱりわかってなかったのね。阿呆の相手は疲れるわ」

 

黄巾党

「なっ……!!」

 

孫策

「ねえ、二人を離せば、命だけは助けてあげる。……どう?」

 

黄巾党

「………………」

 

 

白斗

「……迷ってるみたいだな」

 

孫策が交渉を持ちかけてから、男たちは口を噤んだまま。迷っている証拠だろう。

 

白斗

「さっさと解放するしか道はないんだがな……」

 

だが恐らく孫策は……

白斗

「(んっ?……なんだ?)」

 

周りの人混みに違和感を感じ、注意深く辺りを見回す。

 

白斗

「(あれは…………兵士か?)」

 

見れば黄巾の残党を刺激しないようにするためか、人混みの中で町人と同じ格好をした兵士が数人、武装せずに移動していた。

 

白斗

「(既に誰かが動いているか……)」

 

誰かが動いてるなら俺のすることはないな……取り敢えず成り行きを見守るか。

 

目の前で対峙する、孫策と男たち。

 

すると人混みの中から一人の男が一歩前に出てきた。

 

 

一刀

「おい!!!」

 

黄巾党

「……なんだぁ、おまえは!?」

 

孫策

「!!」

 

一刀

「なんだ、って言われたら答えにくいんだけど……、そこの孫伯符の関係者だよ」

 

黄巾党

「この女のぉ……?」

一刀

「ああ。彼女の参謀だ」

 

孫策

「…………?」

 

白斗

「(あれは……北郷か?何をするつもり………まさか!?)」

 

一刀

「……それでだ。俺の方からも提案だが、ここでお互いに睨み合っていても、仕方ないだろう?

俺たちだって、おまえたちが人質を解放するまでは、ここを動く訳にはいかないんだ」

 

黄巾党

「じゃ、じゃあ、どうしろって言うんだよ?」

 

一刀

「だから言ってるじゃないか。人質を解放すれば命は保証してやる。どこへなりと逃げて行けばいいさ」

 

黄巾党

「くっ……誰がそんな話、信用できるかってんだっ……!」

 

一刀

「どうしてだ? 参謀の俺が言ってるんだぞ。孫策だって、ここで無用な血を流すことは望んでないはずだ。なあ?」

 

孫策

「……ああ。当然だ」

 

黄巾党

「う………………」

 

 

さすがは天の御遣いだな。 孫策と対等に話す北郷の言葉には、説得力があるのだろう。

男たちの心はかなり揺れている様子だ。

これならば、無血でこの場を収めることができるかもしれないな………

 

一刀

「さあ、その人たちを解放してくれ。必ず、このまま逃がしてやるから」

 

黄巾党

「……本当か?」

 

一刀

「勿論だ。だから、武器をしまって……――」

 

孫策

「一刀、礼を言うぞ」

一刀

「え?」

 

孫策

「………はあぁッ!!!」

 

黄巾党

「うわあああぁぁっっ!!!!」

 

一刀

「っっ!!」

 

白斗

「(…………おいおい)」

 

孫策の振るった切っ先が、人質をとらえていた残党を切りつける。

血しぶきが飛び、鈍い音を立てて、血溜まりがひろがる。

 

黄蓋

「よくやった、北郷。うまく隙をつくってくれた」

 

一刀

「え……隙っていうか、俺は……」

 

突然のことに唖然としている北郷に、黄蓋殿が近づく。

 

孫策

「早く、人質を!!!」

 

警備兵

「はっ!」

 

配置されていた警備兵たちが飛び出し、人質となっていた老夫婦の下に駆けつける。

 

老夫婦は目の前の光景に青ざめてガタガタと震えている。

 

警備兵

「さ、こちらへ」

 

爺さん

「お、おう……ありがとよ……」

 

黄巾党

「ちっ……逃がすかよ!!!!」

 

一刀

「あぶないっ!!」

 

周りを取り囲んでいた残党の一人が、武器を構え老夫婦に背後から襲いかかる。

 

警備兵が人質を庇い応戦しようとするが間に合わない!

 

一刀

「―――っっ!!」

 

孫策

「はあぁっ!!!」

 

黄巾党

「ひいぃっっ!!!!」

 

孫策

「……大丈夫? おじいちゃん」

 

血みどろの剣を手に、孫策が爺さんに微笑みかける。

 

爺さん

「……………(コクコクッ)」

 

爺さんはぽかん、と言葉を発することも出来ない様子で、ただ首を縦に振っている。

 

残された黄巾の男たちも、容赦ない凄惨な光景に戦意を失っていた。

 

背を向け逃げ出すもの、腰を抜かして地面に崩れ落ちるものなど、様々だ。

 

孫策

「さて……と」

 

黄巾党

「ひっ、ひいぃっ!! お、オレたちが悪かったッ!もうしねえ! もうしねえから、勘弁してくれよ」

 

孫策

「あら、そうなの? 残念」

 

黄巾党

「あぁ……っ、ほ、ほら……なっ?」

 

男は武器を置き、両手を挙げて、戦意がないことを示してみせる。

 

孫策

「ふぅん……」

 

黄巾党

「ひ……っ!!!」

 

孫策

「もう、言うことはないかしら」

 

黄巾党

「ふっ、二人を離せば、命だけは助けてやるって……そう言ったじゃねえかっ!」

 

孫策

「……離せば、ねぇ。あなたたち結局、最後まで解放してくれなかったと思うんだけど?」

 

黄巾党

「うぐっ……だ、だけど……もうオレたちゃこうして降参してるんだし……あんた、無抵抗の人間を手に掛けるのかっ?」

 

孫策

「あんたがそれを言うの?」

 

黄巾党

「……ひっ、卑怯だぞ!! だだ、だってさっき参謀とやらが……」

 

孫策

「はっ……つまらん。もういい

お前たちは、一度、人としての仮面を脱ぎ捨て、獣に墜ちたのだ」

孫策が男に剣を突きつけ、

 

孫策

「人に戻れると思うな」

 

"グサッ!!"

 

そのまま剣を男に突き刺した。

 

孫策

「…………………」

 

黄巾党

「あわっ……あわわわわ……」

 

男から剣を引き抜き、孫策はへたりこんでいた黄巾党の残党に血みどろの剣を振り上げる。

 

"シュンッ!!"

 

そして残党に容赦なく降り下ろすその時――

 

説明
真・恋姫無双の二次創作です。

主人公はオリキャラです、苦手な方は御遠慮下さい。

今回はちょっと長くなったので前編・後編わけました。
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タグ
恋姫†無双 恋姫無双 白斗 孫策 黄蓋 一刀 

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