IS x 龍騎?鏡の戦士達 Vent 24: 理由(ワケ)
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「はあ・・・・」

 

もう何度目かも覚えていない溜め息。鈴音は手の中にあるデッキを見つめていた。モンスターは現れる度に倒していたが、持つのが段々と億劫になって来ている。だが、だからと言って手放せばドラグレッダーに襲われてしまう。そんな時に耳鳴りの様な音がして、気配のした窓を見ると、黒い蝙蝠をモチーフとしたライダーが戦っていた。その動きは一切の無駄が無く、短時間でディスパイダーを倒した。彼女はナイトと簪の会話を偶然見聞きしてしまったのである。

 

「仮面ライダー、ナイト・・・・か。(一度会った方が良いわね。)」

 

キイイイイィィイイイィイイイィイィィィインンン

 

「おいでなすったわね・・・」

 

鈴は洗面所に行って変身し、そこからミラーワールドに飛び込んだ。廊下を歩いて行くと、ディスパイダー・リボーンが目に入る。

 

「いたわね・・・」

 

窓を突き破って飛び降りると、ディスパイダーを蹴り飛ばし、着地した。

 

「鈴。いや、今は龍騎か。」

 

「え・・・・この声・・・一夏・・・?!そうなんでしょ!?一夏!」

 

「ああ。ライダーとしては充分力を付けたみたいだな。」

 

背中にウィングウォールを装備したままで現れたナイトはゆっくりと歩み寄った。

 

「このデッキ、私は、もういらないの。だから」

 

「ライダーの((運命|さだめ))からは逃げられないぞ。それに、お前は家族を取り戻したくないのか?」

 

「え・・・・・?」

 

「司狼さんは世界中にコネを持ってる。中国にも当然ある。だから、それでまた円満な親子に戻れる。政府に縛られる事も無くなるぞ。」

 

「でも、そんな事したら・・・」

 

「自由国籍持ちになると言うだけだ。身柄の安全も保障される。AD・VeXのIS乗り達は全員そうだぞ?どうだ?」

 

だが、龍騎は何も言わずに俯いたままだった。

 

「まあ、答えは今すぐ出さなくても良い。あ、ディスパイダーは俺が倒すからな。」

 

『ファイナルベント』

 

飛翔斬で後ろからディスパイダーRを貫いた。ダークウィングがそのエネルギーを摂取しようとしたが、ドラグレッダーに妨害されてしまう。

 

「ちっ・・・」

 

「何で・・・・何でよ・・・・?!何でアンタがライダーなのよ!」

 

『ソードベント』

 

ドラグセイバーで突然切り掛かられ、ナイトはダークバイザーでそれを受け止める。

 

「俺が選んだからだ。お前もオーディンからデッキを受け取った時に言われた筈だ。これは戦う為の力で、宿命からは逃げられないと。お前こそ、半端な覚悟でライダーになった訳じゃないだろう?まあ、いらないと言うのなら、お前からデッキを貰うまでだ。ただ、そうすればお前は世界を変える為の力を失うと言う事を忘れるな。」

 

「え?きゃあ!」

 

その言葉に気を取られ、押し返された所で蹴りを食らって壁に叩き付けられた。

 

「どう言う、意味よ・・・?」

 

「言葉通りの意味さ。俺は、司狼さんと一緒にこの世界を変える。バランスを元に戻すんだ。この世界を・・・・また、あるべき姿に戻す。男も女も関係無い世界に。それに乗るか反るかは、お前の勝手だ。だが、反るならそのデッキはお前から奪う。持ってても仕方無いしな。」

 

それだけ言うと、ナイトはミラーワールドを出た。だが、それを見ていた人物が一人いる事を彼はまだ気付いていなかった。

 

 

 

 

 

「兄さん。」

 

「どうした、マドカ?」

 

「兄さんに会いたいと言う人が・・・」

 

「俺に?」

 

一夏は念の為に十を左腰に差し込み、ロビーに出た。そこで待っていたのは、水色の髪の毛を持ち、赤い目をした上級生だった。手には『始めまして』と達筆で書かれている扇子があった。

 

「こんにちわ、一夏くん。」

 

「生徒会長御自らここまで来るなんて随分暇なんですね、更識先輩。(分かる・・・・コイツは、分かっている。幾つもの『死』を潜り抜け、見て来た・・・・そんな奴だ。)」

 

一夏は薄笑いを浮かべながらも、内心は何が起ころうとも対処出来る様に構える。

 

「あら、いきなりご挨拶ね。お姉さん泣いちゃうわよ?」

 

おどけてみせた楯無だったが、その目は冷静に彼を分析していた。そして彼女は感じた。彼は間違い無く強いと言う事を。自分と似通った匂いを本能的に感じ取ったのだ。

 

「その程度で泣く程ヤワじゃないでしょう。久々の休日でゆっくりしたいんです。用があるなら簡潔にお願いします。」

 

「じゃあ、単刀直入に言うわ。貴方のコーチをやりたいと思ってるの。」

 

「・・・・・成る程。折角の魅力的な誘いですが」

 

「良いじゃないか。やってやれよ。俺もまあ一応勝てるが、お前はまだISでは経験不足だ。ここは一つ頭を下げる位の度量を見せた方が懸命だと思うがな。お前、未だスコールやオータムにも勝ててないだろうが?」

 

「向こうの方が明らかに連続稼働時間が長いんだから。経験と歳の差って奴だろう?」

 

一夏は余り気は進まなかったが、とりあえず承諾した。

 

「ああ、そうそう。貴方、彼と世界を変えたいそうね?黒い((騎士|ナイト))さん?」

 

「何の話ですか?」

 

廊下を歩いている途中で一夏は出来るだけ表情を読み取られない様に無表情を装った。

 

「とぼけなくても良いわよ。貴方が変身解除する所、見ちゃったし。バレちゃったら色々と大変よ?」

 

「だったらあんたを餌にすれば良いだけだ。」

 

一夏はデッキからダークウィングのカードを取り出した。

 

「無理ね。」

 

楯無も胸ポケットから水色のデッキを取り出してみせる。一夏はそれを見て僅かに目を見開く。見間違える筈も無い、ライダーのデッキであった。

 

「アビスのデッキ・・・・!」

 

「そうよ。私も一応((貴方達|AD・VeX7))と協力関係にあるから手荒な事は基本しないけど、あくまで貴方が事を構えると言うなら、私も容赦しないわ。」

 

二人が向き合う中、ミラーワールドではダークウィングとアビスラッシャー、アビスハンマーの合計三体が互いを威嚇し合っていた。

 

「分かった。流石にアビソドンを相手にはしたくないですし。でも、一つ聞いて良いですか?妹の事について。」

 

「簪ちゃんに・・・・何をしたの?」

 

 

警戒の色を強め、楯無は殺気立ち始めた。

 

「何もしちゃいないですよ。あいつは自分の専用機を自分で組み立てようとしています。自分の力で。会長を超える為に。自分がコンプレックスの対象だって事、理解してるんですか?」

 

「分かってるわ・・・・でも、簪ちゃんは私には見向きもしてくれないし・・・」

 

「じゃあ、俺が話をつけます。」

 

それで良いだろうと言わんばかりに踵を返そうとしたが、突如楯無の後ろに現れた人影に反応してしまい、掌打で相手を後ろに吹っ飛ばす。

 

「まだいるみたいですね。いつもこんな調子なんですか?」

 

「まあ、そうね。お姉さんは学園最強だから♪後、簪ちゃんの事だけど、恥ずかしながらお願いしても良いかしら?お礼はちゃんとするから。後、タメ口で良いわよ?気にしないから。」

 

「分かった。」

 

生徒会長の座を狙って来た愚かな連中を二人で一掃した後、分かれた。気分転換に一夏は道場に向かうと、壁に立てかけてあった木刀を掴んでそれを振った。だが、

 

「・・・・・軽過ぎるな・・・・」

 

そう、元々ウィングランサーやダークバイザーなど通常の刀等よりも重い物を毎度振り回しているので、竹刀は疎か木刀でも軽く感じてしまうのだ。オーダーメイドを注文する事も出来るのだが、それもかなり時間が掛かる。

 

「来た意味なかったか、これは?」

 

「一夏。」

 

「ん・・・?おお、ラウラ。どうした?模擬戦はもう終わったのか?」

 

「うむ。シャルロットの武装の多さには手を焼いてしまう。あれではまるで歩く武器庫だぞ。」

 

「ああ、確かにな。あれは・・・・俺でもギリギリ勝てた位だから・・・・で、何だ?俺に用があるんだろ?」

 

「その・・・・フリーゲンの事なのだが、新しい武器で剣があるのだ。剣術はその、不得手でな。少々手解きをお願いしたい。」

 

言い難そうにラウラがゴニョゴニョと口ごもる。

 

「まあ、する分には構わないが木刀が俺には軽過ぎるから加減が難しくなるぞ。それでも良いのか?」

 

「寧ろ全力で来て貰わなければ私が拍子抜けだ。」

 

「そうか。ほらよ。」

 

竹刀を渡し、自分も二本を持って構えた。

 

「お前に剣術を教えるとなると時間も手間もかかる。それに俺は教えるのは苦手でな。攻撃されれば避けるか防御しろ位の事しか言えない。だから、勘を頼りに動け。ある程度甘い所は俺が指摘する。」

 

そう言うやいなや、一夏は竹刀を振り下ろしたが、ラウラはそれを避けながら接近し、突きの構えに入る。

 

「やっぱり筋は良いな。」

 

一夏も僅かに顔をそらしてそれを回避し、もう一方の手に握った竹刀でそれを弾き、更に足元を薙いだ。それを飛び越え、真っ向から振り下ろして来る。竹刀のぶつかる乾いた音が道場に響いた。

 

「相手の動きを良く見ろ。決して目を離すな。瞬きですら、相手を一瞬見失う。常に相手を見据え、対処しろ。」

 

振り下ろされた竹刀を交差させた竹刀で受け止め、柄を軽く頬に当てた。

 

「何も刃だけが武器ではない。柄の余った部分も超近距離では有効な打撃に使える。」

 

「成る程・・・確かにナイフの柄もこめかみに叩き付ければ殺さずに済むのと同じ原理か・・・・」

 

「まあ、ナイフとは違うがな。感じとしては同じだ。後・・・・お前フェンシングとかやった事あるか?」

 

「フルーレは無いが・・・サーブルを少し齧る程度だ。」

 

「出来るだけでも上出来だ。剣は突きも振りも出来る物だからな。クラリッサと少しスパーリングでもやっていれば少しずつマシになるだろう。プラズマ手刀での戦闘に馴れてるなら、出来るまでそう時間は掛からない筈だ。まあ、その内剣術も教えてやるがな。」

 

「よろしく頼む。」

 

「おう。」

 

後片付けをしている間、ラウラが再び口を開いた。

 

「一夏、一つ聞きたい。」

 

「ん?」

 

「お前は、何故そこまで強い?何故ライダーになった?」

 

「タッグトーナメントの時に言ったよな。俺は俺にしか馴れない。だから((千冬姉|目標))は俺のやり方で超えると。そう思うと、自然と体を動かしたくなる。ライダーになったのは、そのきっかけを掴む為、かな?」

 

「きっかけ?」

 

「強くなりたいと願うのは、別に悪い事じゃない。ただ、自分の身も守れずに他人を守るなんて無責任な事はしたくないし、言わない。俺達人間は命あっての物種だ。てめえがくたばってたら、一体誰をどう守るんだ?そうだろう?だからそんな千冬姉の強さに、俺は憧れた。司狼さんが、俺にその力をくれた。だから俺はその力で、守りたい。守る為に戦いたい。そろそろ出るぞ。休日とは言え、部活はあるみたいだ。邪魔をしちゃ悪い。」

 

二人は後片付けを済ませると足早に退室した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏、私は、一体・・・・・・何をしていたのだ・・・?!」

 

箒は現在謹慎中の為、自室にいたが、彼女は泣いていた。司狼から渡された封筒に同封されていた手紙二枚とリボンを見て、自分の愚かさを改めて思い知らされた。

 

『箒、この手紙を読んでいると言う事は、これが最終通告だと言う事だ。ギリギリまで渡して欲しくなかったから司狼さんに持っていてもらったけど、もし読んでいるなら、俺もそろそろ限界だ。お前が剣道を始めた理由は自分を制する為だったのに、いつからそんなに力に溺れ、傲り高ぶる様になった?お前が剣道を始めた理由は何だ?昔の俺が知ってる箒に戻ってくれる事を、切実に心から願っている。だが、もしこの警告を無視するようなら、俺も俺なりにけじめをつけさせてもらう。たとえ刃を交える事になってもだ。

 

織斑一夏

 

追伸:少し遅くなったけど、誕生日おめでとう。プレゼントを同封します。』

 

これが一通目であり、二通目は司狼からだった。

 

『篠ノ之、率直に言おう、お前は真面目過ぎる。もっと馬鹿になれ。それと、一夏に固執し過ぎだ。男なんて世界中にいるんだぞ。独善的な考えを押し付けるのも大概にしておけ、でないと絶交を言い渡される可能性が更に跳ね上がる。お前がISを束から強請った所為でこの世界に新たな火種が生まれた。俺と一夏はこの世界から女尊男卑を排除しようとしているのに、お前は結果的に俺達の邪魔をした。もし邪魔を続けると言うのなら、俺達は容赦しない。たとえ最終的にお前を殺し、束を敵に回す事になってしまっても、俺達は戦い続ける。一夏もその所存でいた。だから、早い所目を覚まさないと、色々と手遅れになる。一夏との関係が、特にな。

 

御鏡司狼』

 

(私は・・・・あの時・・・・全国大会では只相手を叩きのめす事しか、勝つ事しか眼中に無かった・・・・あれは只の・・・暴力に過ぎないではないか!!どうすれば良い・・?私は一体、どう一夏と向き合えば良いのだ・・・・?!)

 

説明
楯無登場です。
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タグ
IS 仮面ライダー龍騎 

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