IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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オランダのとある空港。そこの入り口から出てきたのは…

 

「…よし、準備はいいな?」

 

「もちろんよ」

 

「ああ」

 

「……………」

 

瑛斗、鈴、一夏、そして梢。全員IS学園制服姿である。

 

「…まさか、オランダに来ることになるなんて・・・」

 

梢は思わず独りごちる。

 

「アタシも昨日の夜までは思ってもみなかったわよ」

 

鈴はぐーっと伸びをしながら言った。

 

「瑛斗がここまで行動的とはな」

 

一夏は瑛斗の方を見て笑う。

 

「まあ、タイミングっていうのもあったな。ですよね、エリナさん?」

 

そう言って振り返る瑛斗。視線の先には自動ドアから出てくるエリナ・スワンとエリス・セリーネの姿があった。

 

「そうね。私も昨日の夜までまさかあなたたちを連れてオランダに来ることになるとは思わなかったわ」

 

「自分もっす」

 

エリナとエリスはマーシャル社との会合の為にオランダへやって来たのだが、昨晩瑛斗はそれに同行させてもらうことを頼んでおいたのだ。

 

「助かりましたよ。おかげでオランダに来れました。ロウディで来るのが一番手っ取り早かったんで」

 

「いいのよ。瑛斗の頼みですもの。上手くいくといいわね」

 

「…あの、それで、ここへは何をしに?」

 

梢はずっと気になっていた疑問を瑛斗にぶつけた。

 

「そうだな。ここまで来れば言ってもいいか。オランダに来た目的はな、戸宮ちゃん、お前のその不安定な立場を確かなものにするためだ」

 

「………?」

 

「回りくどい言い方すんじゃないわよ。簡単に戸宮を正式なオランダ代表候補生にしてもらいに来たって言えばいいじゃない」

 

「…え……」

 

鈴の言葉に少し驚いた顔を見せる梢の顔を見てから、俺の考えはこうだ、と瑛斗は説明を始めながら歩き出した。

 

「オランダ政府がお前の代表候補の採用を不正なものにしてるなら、正式なものにしてもらえばいい」

 

「…でも」

 

「でも、そんなにすんなりいくもんなんすか?」

 

「もちろん。楯無さんが『企業秘密』な下準備をしてくれてるらしいですから。本人の了承がいるからって言うんで戸宮ちゃんには来てもらったんですよ」

 

「なるほどね。じゃあ織斑君と凰ちゃんも連れてきたのはどうして?」

 

「一夏と鈴の二人は護衛です」

 

「護衛?」

 

「亡国機業が何もしてこない確証があるわけじゃないですし。もしもの事も考えて、ってやつです」

 

「箒とセシリアも来たがってたけど、良かったのか?」

 

「あー、いいのよいいのよあの二人は。そんなに大人数で行っても面倒なだけでしょ?」

 

「お前に言われてもなぁ…」

 

と、話しながら歩いていると瑛斗たちは目的地である『IS委員会オランダ支部』に到着した。

 

「さてと、到着だ」

 

「じゃあ、私とエリスはこっちだから。また空港で落ち合いましょ」

 

「はい。お仕事頑張ってください」

 

「あ、あの、桐野さん!」

 

「はい?」

 

エリスが瑛斗に声をかけた。

 

「…え、と……」

 

しかし声をかけてきたは良いがそこから何も言わない。

 

「?」

 

「ま…また後でっす!」

 

顔を赤くして言った言葉は、なんとも普通なものであった。

 

「? は、はぁ」

 

きょとんとする瑛斗たちをよそにエリナは笑いを堪える。

 

「ふふ…はいはい、行くわよエリス」

 

「あっ、ま、待ってっすー!」

 

先に歩き始めたエリナの後を追うようにエリスは駆け足で去って行った。

 

「なんだったんだ? 最後の…」

 

「さあ? ただの挨拶じゃないのか?」

 

首を捻るダブル唐辺木に鈴は、(こいつらは…)と、梢は(…もしかして、二人とも、気づいてない?)とジト目×2を向けるのだった。

 

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IS委員会オランダ支部の建物に入った瑛斗たちは、すでに待っていた職員に迎えられた。

 

「あの、多分もう話は通ってると思うんですが」

 

瑛斗が言うと、小柄な男性は額の汗をぬぐいながら頭を軽く下げる。

 

「え、ええ。こちらへ…」

 

そう言うと男は瑛斗たちを奥の通路へと案内した。

 

「……………」

 

「……………」

 

他の作業をしている職員たちが様子を伺うように瑛斗たちを見る。

 

(…なに? この嫌な感じ……)

 

鈴はそんな職員たちを見て眉をひそめた。

 

「こちらです…」

 

案内されたのは会議室と書かれた部屋の扉の前だった。

 

「よし、行くぞ戸宮ちゃん」

 

「………」

 

梢が頷いたのを見て瑛斗は扉を開けて中に入ろうとする。

 

だが一夏と鈴は引き留められた。

 

「なんですか?」

 

「も、申し訳ございません。ここに入れるのは桐野氏と戸宮氏のみと担当に言われているので…」

 

「どうしてアタシたちはダメなのよ!」

 

鈴が食って掛かるが男は申し訳ございませんの一点張りである。

 

「いいよ。俺と戸宮ちゃんだけでなんとかなるって」

 

瑛斗はそう言うと扉の向こうへ入り、それを確認した男は足早に立ち去った。

 

「…どうも、引っかかるのよねー」

 

鈴は腕を組んで壁によりかかる。

 

「大丈夫さ。書類にサインするだけなんだろ?」

 

「そっちじゃなくて、この、こう、ここの雰囲気が引っかかるの」

 

「考えすぎじゃないのか? 昨日の今日だし、そうなるのも無理ねぇよ」

 

「そうならいいけど…」

 

鈴はふぅ、と息を吐いた。

 

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「………」

 

部屋の中に入った瑛斗と梢の前には椅子に座っり眼鏡をかけ、スーツを着た細い男がいた。

 

「どうぞ、お座りください」

 

促された二人は並んだ二つの椅子に腰を下ろした。

 

「で、俺たちがなにをしに来たかは…分かってますよね?」

 

「はい。そちらの方のオランダ代表候補生としての正式な手続きでございますね」

 

男は数枚の書類を梢の前に差し出した。

 

「そちらの書類をご覧になっていただいた後、一番最後の書類にサインを。それで正式に代表候補生として認可されます」

 

「……………」

 

梢は書類を手に取り黙読する。瑛斗はその間になんとなく男の手元を見た。

 

(…ん?)

 

そこで気づく。

 

「あの…」

 

「は、はい?」

 

「手が震えてますけど、大丈夫ですか?」

 

「え、あ…」

 

男の手は小刻みに震えていて、額には汗が浮かんでいる。

 

「具合悪いんですか?」

 

「いっ、いえ! お気になさらず」

 

男は慌てて首を振り、額の汗をぬぐった。

 

(楯無さんが裏で動いてくれたって言うし、脅されでもしたのかな…)

 

そんなことを考えていると、書類を読み終わった梢が書類に名前を書き終えていた。

 

「…これで、いいの?」

 

書類を返された男は書類に書かれた梢の名前を確認して頷いた。

 

「は、はい。これであなたは正式にオランダの代表候補生として認可されました。これまでの無礼をお詫びします」

 

最後に詫びの言葉を述べて男は立ち上がった。

 

「どうぞ。もうお帰りになっていただいてよろしいですよ」

 

促されて部屋から出ると一夏と鈴が声をかけた。

 

「上手くいったか?」

 

「もちろん。これで戸宮ちゃんの無罪は確定さ」

 

「…ありがとうございました」

 

ペコ、と頭を下げる梢に瑛斗はうんうんと頷いた。

 

「じゃ、終わったんならさっさとお暇しましょうか」

 

鈴はスタスタと足早に通路を歩き出す。

 

「あ、おい待てよ」

 

一夏たちもその後を追って通路を歩く。

 

「……………」

 

出ていく四人を見送った職員たちは、ほっと息を吐いたのだった。

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