東倣葵童詩
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東倣葵童詩 〜 The Ballad of East and West.

青い瞳の巫女と今どきの妖怪による些細な話。

 

1話

 

眼前に広がるビルの海。空には飛行物体が飛び交い、

大地はアスファルトに覆われその中を人間達が循環している。

そんな中でも、神社はその形だけを現代に残していた。

もう、神社の本当の主など居ないというのに。

 

大都会の片隅に位置する名も無い神社。彼女達はそこにいた。

 

 ? 「求人を見て来たって?」

 

神社の境内では二人の人間が立ち話をしていた。

神社にやってきたのは金色に輝く髪と青い瞳を持った、この場所には

あまり似合わない少女であった。

 

カタリナと名乗る少女は深々と頭を下げると、緊張した趣でこちらを見つめている。

 

 ? 「留学生ねぇ…いいわ。 私はここの管理をしている淀。よろしくね。」

 

神社の主は私では無いのだが、その主はもういない。

しかし、私ではこの神社をこの場所に維持する事はできない。

参拝客も何も無いこの神社に人間を募ったところで先は見えていたのだが、

意外であった。

 

 カタリナ 「ところで、ここは私服で良いですか?」

 淀 「?」

 

私服も何も、特に仕事と言える仕事は無いのだから何でも良いと思っていたが、

どうやら彼女は違ったらしい。

カタリナが鞄から取り出したのは、赤と白の巫女装束のような服だった。

現代のものとはかけ離れたデザインだったが、私にはどこか懐かしく感じた。

 

 淀 「いや、別に巫女を募集していたわけじゃないのだけれど…

    まあいいでしょう。 別にそれらしい仕事は無いけどね。」

 

カタリナは目を輝かせて礼を言うと、神社の奥へと走っていった。

その時である。

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 カタリナ 「誰?」

 

誰? 私に話しかけているのか。

彼女は神社の奥へいったはずだ。

目の前にいるのは…

 

 カタリナ 「でたなヨーカイ!」

 

私は目を疑った。 しかし、疑問よりも先に笑いがこみ上げていた。

こんな事を言われたのは何時ぶりか。 こんな人間を見たのは何時ぶりか。

 

彼女は神社の管理人を操作している私を妖怪と認識したのだ。

 

 淀 「あっはははは! よくわかったな人間。」

 カタリナ 「すごい! 本当にヨーカイが棲んでるなんて!」

 

現代の人間では、私の事を妖怪として認識する事はできないと思っていたが、

彼女の眼には見たままの私が映っているのだろう。

 

 淀 「確かに私は妖怪だ。 お前がさっきまで話していたのは私の分身。

    ・・・しかし、取って食おうというわけじゃあ無い。

    この神社で仕事をして欲しいというのは変わらないのだ。

    どうする?」

 カタリナ 「まかせて!」

 

彼女はより一層目を輝かせ、神社の奥で着替え始めた。

 

今の時代に、この国の人間でない者から妖怪という言葉が出てくるとは。

私が生きてきた中で、こんなにも珍しい出来事があっただろうか。

妖怪を目の前にした時の反応も、私の知っている人間とは違っていた。

 

青い瞳の不思議な人間は、巫女として神社で働く事となった。

彼女が神社の新しい主となれば、これからも神社を守る事ができる。

それこそが私の願いであり、神社の主への恩返しとなるのだ。

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青い瞳の巫女さん代理

○カタリナ(Katharina)

巫女さんのアルバイトを始めた西方の国の留学生。

 

名も無い神社の妖怪

○淀(Yodo)

人間そっくりな分身を使って神社の主を募っていた妖怪。

説明
・オリキャラしかいない東方project系二次創作のようなものです。
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