Zone Of the Altanative -終末の女神と白銀の英雄-
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「あだっ!?」

 

 痛ぇ!?頭打った頭を!?

 

「いつつつ・・・ここ・・・何処?・・・うっ!?」

 

 痛ぇ!?今度は頭痛かよ!?いたたたたたた!!

 

 何か・・・頭の中に流れ込んで・・・・っ!

 

「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・っ!そうだ!俺は確か桜花作戦を成功させて元の世界に・・・。」

 

 ってか、ここは何処だよ?俺の部屋じゃねぇし・・・周りはコンピューターや、散らばった何かしらの資料のような物と・・・ビーカーにコーヒー?

 

 ・・・なんだろうな?夕呼先生を思い出すんだが・・・。

 

「俺・・・戻って来たんじゃ「あら、やっと目が覚めたわね・・・白銀。」っ!夕呼先生!?」

 

 マジで夕呼先生がいたよ!?って・・・あれ?何で夕呼先生が俺の事を覚えてるんだ?

 

「・・・・夕呼先生?」

 

「相変わらず面白い顔をしているわね。ここは帝都大学の私の研究室よ。ちなみに、年は1998年4月よ。」

 

 1998年!?予想より2年早いんですけど!?

 

「ってか、今・・・俺の名前を呼びませんでした?」

 

「あら、呼んだわよ?し・ろ・が・ね。」

 

 え?どういうこと?

 

 俺、帰って来たのか?でも、1998年って言ってたし・・・・あれ?

 

 それに・・・俺、体がそのままなんだが?

 

「あ・・・え?ど、どうなってんだ?」

 

「理由は分からないわ。白銀、一応アンタの肉体も前の世界のままよ。」

 

 夕呼先生でも分からないなんてな・・・・ん?先生の後ろに何かいるな?

 

「お久しぶりです、白銀さん。」

 

 ・・・え?かす・・・み?

 

「か、霞!?一体どうして?」

 

 もう何がどうなってるのか訳が分からん!

 

「まだ解らないの?白銀。 私達・・・ループしてきたのよ。」

 

「っ!?う、嘘だろ・・・?」

 

「・・・・。(フルフル)」

 

 でもなんで夕呼先生と霞が?

 

「そ、それじゃあ・・・桜花作戦の事も・・・?」

 

 そう言えば、俺が消えた後・・・どうなったんだろうな?無事に人類は助かったのかな?

 

「ええ・・・。ごめんなさい、白銀。アンタ達には・・・辛いことをさせたわ。」

 

「ちょっ!?ゆ、夕呼先生!頭を上げて下さい!確かに・・・大きな犠牲を払って作戦は成功しました。・・・辛いこともありました。だけど!それは俺達でなきゃ、出来なかったんでしょ?なら、仕方ないじゃないですか。あいつらも・・・先生の事は恨んでませんよ。それに・・・こうやってまたループできたんです。今度こそ、俺はアイツ等を守って見せますよ。」

 

「ありがとう・・・そう言ってもらえると、肩の荷が下りた気がするわ。」

 

 なんだろう・・・いつもの先生にしては覇気が無い気がする。

 

「・・・白銀、アンタに伝えなければならない事があるの。それは・・・桜花作戦後の地球の未来についてよ。」

 

「・・・伝えなければいけないこと?」

 

 なんか・・・すごく嫌な予感がする。

 

 こう・・・胸がざわつくような・・・。

 

「・・・ええ。桜花作戦であ号標的は確かに倒したわ。でも、まだ地球には多くのハイヴとBETAが残っていたの。でも、アメリカやソ連はそのことを考えずに、自分たちの領土や利権の獲得の為に色々暴走したわ。そして、愚かにも人間同士で戦争が起こったの。もちろん、日本やイギリスなんかはそんなことしなかった。でも、アメリカやソ連の戦争は世界を巻き込んだの。」

 

「っ!!?」

 

 嘘だろ・・・おい。

 

「そして、世界中のハイヴのBETAが一斉に侵攻を開始したの。当時、戦争で疲弊した各国にBETAの物量に敵うはずも無く、あっという間にやられていったわ。さすがにアメリカやソ連も戦争なんかしている場合じゃないって気付いたけれど・・・もう手遅れだったわ。」

 

 だったら・・・俺達がやったことは・・・・?

 

「・・・・・・私と霞はあの時、横浜基地にいたわ。もうBETAがすぐそこまで来ていてね・・・このまま逃げてもどうせ死ぬだけだから、霞と一緒に新しい造ってた凄乃皇五型のML機関を暴走させて道連れにしたわけ。佐渡島みたいにね。」

 

 ・・・無駄だったのか?

 

「・・・んだよ・・・それ。それじゃあ・・・俺達がやった事は・・・全部・・・無駄だったのかよ?」

 

 巫山戯るなよ・・・・。

 

「アイツ等の死は無駄だったって・・・いうのかよ?まりもちゃん、伊隅大尉、速瀬中尉、涼宮中尉・・・委員長、タマ、彩峰、美琴、・・・冥夜や純夏の死も・・・無駄だったのかよ!!!」

 

 それでは、あいつらは何の為に死んでいったんだ?

 

 そんな・・・んじゃ・・・あいつらが浮かばれねぇじゃないか!!!

 

「だから・・・・今度こそ、人類を救うわ。まりもや、アンタ達も・・・絶対に救ってみせる。だから・・・白銀。もう一度・・・私に力を貸してちょうだい。」

 

 ・・・そっか。夕呼先生も・・・悔しかったんだろうな・・・・。

 

「・・・らしくないッスよ、夕呼先生。いつもの先生なら、力を貸しなさい!って有無を言わさずに言うじゃないですか。」

 

 夕呼先生はいつも厳しく、冷酷に命令するけど・・・本当は夕呼先生が優しい人だということも、不器用だということも解っている。立場と責務がそう言わざるを得なかっただけに過ぎない・・・今ならそう思える。

 

「・・・うふふ。そうね・・・まさか白銀に言われるとはね。いいわ、白銀!アンタの力、もう一度私に貸しなさい!」

 

「はい!!」

 

 もちろんだ!!

 

「それじゃあ早速【香月博士、白陵基地からお電話です。】・・・一体何かしら?・・・もしもし?アタシだけど・・・・・・なんですって?」

 

 ん?何か問題でも起きたんかな?

 

 夕呼先生・・・顔が険しいッスよ?

 

「?夕呼先生、何かあったんですか?」

 

「・・・白銀。早速イレギュラーが発生したわ。朝鮮半島で光州作戦が始まってるのは知ってるわね?」

 

「え、ええ。確か、彩峰中将が処刑される原因になった作戦ですよね?」

 

 それが原因でクーデターが起きたんだっけ?

 

「そう。でも、朝鮮半島に進軍しているBETAの半数近くが進路を変えて光州の北10km地点に集結しているの。」

 

「はぁ!?前の世界じゃ、そんなことは・・・。一体どうして!?」

 

「実はその少し前に謎の高エネルギーがその地点で発生したのよ。それが何かは分からないけど、原因なのは確かよ。私はこれから白陵基地に行くわ。白銀、アンタも来なさい!」

 

「はい!・・・って、ええええ!?俺もッスか!?」

 

 いやいやいや!俺、まだ入隊してないッスよ!?

 

「づべこべ言わない!さっさと来なさい!」

 

 ちょ!?引っ張らないでー!?

 

「・・・いってらっしゃい。」

 

 霞・・・見てないで助けてくれよ・・・・。

 

 

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 1998年 同日 朝鮮半島 旧全州の荒原

 

 

 何も無い荒れ地に空間の歪みが突然起きた。

 

 バチバチッ――バチンッ!!

 

 そして20m程の人型ロボットのような物が現れる。

 

 それに続くように更に二機が現れた。

 

 

 

 

「・・・・・ここは?」

 

 俺が目を覚ますと、真っ暗な空間にいた。

 

 ただし、何かに座っていると気付いたのは頭がハッキリした時だ。

 

[おはようございます、マスター。]

 

 そして、真っ暗な空間に色んな機器の光が灯ると俺の相棒、キュベレイが声を掛けた。

 

 それを切っ掛けに、俺の頭の中に色んな情報が入ってきた。

 

「ぐっ!そうか・・・着いたのか。」

 

[はい。サクラとハヤテも無事に転送が完了しています。2人とも、すぐ側にいます。]

 

 キュベレイがそう言うとちょうど2人から通信が入った。

 

 回線を開くと、桜と疾風の顔が映し出された。

 

『零!無事?』

 

『零さん!ここ、何処ですかぁ〜!?』

 

 桜も疾風も無事なようだ。

 

 取りあえず疾風は落ち着け。

 

「ああ、何処も異常は無い。それと疾風、それぐらい自分でやれよ・・・。」

 

『あっ!そ、そうでしたね!えっと〜・・・・ふぇ?』

 

 ん?どうかしたんだろうか?

 

「どうした?」

 

『えと・・・・此処、朝鮮半島みたい・・・。』

 

 ・・・・・は?日本じゃなくて?

 

[座標を確認しました。ここは朝鮮半島の((全州|チョンジュ))から北に3kmの地点です。

 

「日本じゃねぇのか・・・。って、今何年か分かるか?」

 

 オーディンが意図して日本じゃなくて朝鮮半島に送ったというなら1998年だと思う。

 

[近くにあるサーバーをハック。・・・出ました。現在、1998年4月20日 1300時です。]

 

 ビンゴだ!

 

「桜!周囲20km圏内に索敵をしろ!疾風はそのまま待機!」

 

『了解よ!』

 

『は、はいですっ!』

 

 もしかすると光州作戦が始まってるかもしれない。

 

 なら、急いで彩峰中将のカバーをしないと彼が処刑されてしまう!

 

『出たわ!ここから南に40km先に50万以上を確認したわ。でも、殆どが時速60〜80kmで移動中よ。』

 

 もう始まっていたか!なら、俺がやることは・・・。

 

「桜!疾風!俺達は彩峰中将を探し出し、彼が抜けた地域周辺のBETAを一掃するぞ!」

 

『了解!』

 

『わ、分かりました!』

 

「ネメシス、起動!」

 

[了解しました。ネメシス、起動します。]

 

 俺は2人に命令を出すと愛機ネメシスの主機に火を入れ、起動した。

 

 すると、膝を着いて座っていた状態から立ち上がり、直立する。そして背中にある翼状のウィスプも開いた。

 

 2人も同様に起動したようだ。

 

「((イレギュラー1|零))、全システム((異常なし|オールグリーン))!」

 

『((イレギュラー2|桜))、全システム((異常なし|オールグリーン))!フレイヤ、いつでも行けるわよ!』

 

『((イレギュラー3|疾風))、全システム((異常なし|オールグリーン))!ニュクス、行けます!』

 

 そして地上から30m程浮遊し、発進する。

 

「いくぞ!」

 

 キィィ・・・バシュンッ!!

 

 スロットルを絞り、爆音を響かせた。

 

 その速度は時速1000km。瞬間的に出した速度で、普通の人間なら掛かるGで死んでいる。

 

 だがこの機体の対G制御は高く、俺達にとって苦にならない。

 

 さて、そう思ってる内に光州の近くまで来た。

 

「キュベレイ、通信を傍受できないか?」

 

[可能です。・・・・・傍受しました。国連軍という軍の通信です。]

 

 そうして聞こえてきたのは慌てた様子で叫んでいる者達だった。

 

『((CP|コマンドポスト))!こちらサンダー1!帝国軍の部隊が勝手に持ち場を離れやがった!どうなってんだ!』

 

『こちらCP。どうやらその部隊は取り残された住民の避難を優先しに行った模様!何とかしてそこを死守するんだ!』

 

『冗談じゃねぇぞ!?一個大隊で数万のBETA相手にどうやって対応しろってんだ!援軍を寄越してくれ!』

 

『サンダー1、現在送れる援軍は無い。何とかして守り通してくれ!』

 

『ふざけんな畜生!』

 

 そういって通信が切れた。

 

「キュベレイ、今の兵士の現在地は分かるか?」

 

[お待ち下さい・・・・・出ました。此処から南東に7kmです。]

 

「分かった。全機、クロークモード起動。」

 

『『了解よ!(了解しました!)』』

 

 クロークモードを発動して姿を隠した。

 

 因みに、クロークモードではフレイヤだけ光学迷彩とジャミングにより探知を防いでいるのだが、俺のネメシスと疾風のニュクスはベクタートラップでのステルス機能を使っている。

 

 これを総称してクロークモードと名付けている。

 

 

 付け焼き刃だが、これで移動中に目視や電探に引っかかることは無い。

 

 ただ、こっちに来た時に探知されていたらあまり意味が無いかもしれない。

 

[残り15秒で目的地に到達します。]

 

「了解。」

 

 そしてすぐに目的地に着いた。

 

 ただ、そこの惨状は酷かった。

 

 何機もの戦術機がひしゃげ、喰われた様子やバラバラに爆散した物が散らばっていた。

 

 だが、生きている者もいた。

 

 しかし、数百ものBETAに苦戦していた。

 

『くそっ!サンダー7!囲まれているぞ!』

 

『だったら見てないで何とかしてよ!サンダー4!!』

 

『だけどこっちだって手一杯なんだ!!』

 

『こちらサンダー2!俺が行く!』

 

 サンダー2と思わしき機体が囲まれているサンダー7の援護に向かう。

 

 機体はF−15と思われる。

 

『サンダー2、早くして!もう残弾が!』

 

『っく!も、もう少しだ!』

 

 ここで俺達は行動を始める。

 

「イレギュラー1からイレギュラー2、3へ。全機戦闘モードへ移行!兵器使用は格闘装備及びショットのみ!((S・W|サブウェポン))は使用禁止だ!ゼロシフトもだ。まぁ、こいつら相手にS・Wは必要ないだろう。いくぞ!!」

 

『イレギュラー2、了解!』

 

『イレギュラー3、了解!』

 

 そして俺達が乱入する時、先ほどのサンダー7が((要撃級|グラップラー級))10体に囲まれていて、危険な状態だった。

 

『サンダー2!まだなの!?はやく・・・はやくしてよぉ!!』

 

『くそっ!俺も囲まれた!!』

 

『きゃあっ!?』

 

『サンダー7!?大丈夫か!?』

 

 そしてサンダー7が突進してきた((突撃|デストロイヤー))級に跳ね飛ばされた。機体こそバラバラにならずに済んだものの、脚部が損傷して立てなかった。

 

『っく!なんとか・・・っ!?き、機体が・・・動かない!?うそ・・・・そんな!!』

 

『サンダー7!早く((緊急脱出|ベイルアウト))するんだ!!((戦車|タンク))級が群がるぞ!?』

 

 隊長機のサンダー1が脱出を促すが・・・。

 

『い、嫌だ!?今出たら喰われる!!』

 

『そんなこと言ってる場合か!?このままじゃどの道喰われちまうぞ!?』

 

 だが既に戦車級が数体群がり始め、機体に齧り付いた。

 

『い、嫌ぁああああああ!!来ないでぇえええええ!!』

 

『・・・くそっ!!』

 

 援護に行けない今、女性衛士の命は無いだろうと誰もがそう思い、仲間が喰われ行く様をその場に居る全員が歯を食いしばって耐えた。

 

 もう彼女は絶対に助からないだろう・・・・・・ここに俺達が居なければな。

 

「ロック・・・ファイアッ!」

 

 俺は右腕に装備されているショットで数体の戦車級を正確に撃ち抜いた。

 

 それと同時にクロークモードが解除された。

 

『ファイアッ!』

 

『ふぁ、ファイアッ!』

 

 桜と疾風も周囲に居るBETAをショットで撃ち抜いた。

 

 まだ沢山いるが、当面の危機は逃れたはずだ。

 

『・・・え?』

 

 女性衛士が乗っている戦術機は戦車級に装甲を喰われ、操縦席が丸見えだ。

 

 あと少しでも遅かったら彼女の命は無かったな・・・。

 

 あ〜あ、大の大人が涙と鼻水で顔がグシャグシャだな・・・。

 

「こちら、イレギュラー1。そちらの女性衛士・・・大丈夫か?」

 

 俺は通信回線を開いて女性衛士に呼びかけた。

 

 もちろん、周波数はキュベレイがハックして教えてくれた。

 

『え、ええ・・・大丈夫です・・・?』

 

 どうやら思考が追いついていないようだ。

 

「そこの戦術機。彼女を早く回収しろ。」

 

「え?あ、ああ。」

 

 女性衛士の援護に入ろうとしていた衛士に俺は回収を促した。

 

『な、なんだ・・・あの機体は!?』

『あんなの見たことねぇぞ?』

『米国の新型か?』

『しかも、あの翼・・・浮いてるぞ!?』

『それに・・・犬?みたいな頭をしてるわね。』

『それに脚部も細すぎだ。』

 

 他の隊員達が通信で騒ぎ始めた。

 

 ちなみに、俺には全部聞こえてます。

 

 そして、俺の前に一機の戦術機が出てきた。

 

『こちらサンダー1。そこの所属不明機、仲間を助けてくれて感謝する。私は国連軍第112大隊サンダー中隊隊長のリゲル・ブラウン大尉だ。CPに問い合わせたが、イレギュラーというコールサインは友軍には無いし、機体も該当するものが無い。すまないが、そちらの所属と名前、階級を教えてくれ。』

 

 仲間を助けた事には本当に感謝しているみたいだが、警戒しているのか、突撃砲を構えてる。

 

 失礼な奴だとは思わない。それが戦場では必要なことだと理解しているからな。

 

 だが、嘘を吐いてもすぐにバレる。だが、((彼女|・・))なら恐らくこちらに接触してくるだろう。

 

 だから、彼女が出てくるまで俺達は交渉をしない。

 

「答えられない。」

 

『な、なに!?それはどういう意味だ!』

 

「そのままの意味だ。ただ、我々は[地下100m周辺に熱源反応を探知。BETAと思われます。]っ!?」

 

 俺が説明しようとした時、突然地震が起きた。

 

「全機、後退しろ!BETAが地下から来るぞ!!」

 

『『『『『『!?』』』』』』

 

 俺達3人はすぐに回避行動を取ったが、サンダー中隊は何が起きたか理解できず、硬直していた。

 

 そして、土煙が上がり、地中から大量の要撃級と戦車級のBETAが現れた。

 

『な!?地下からだと!?全機、後退だ!!』

 

『ぐぁああああああああ!!』

 

『サンダー6!?くそっ!そこら中からBETAgぎゃあああああああ!!』

 

 運悪く、BETAの真上にいた二機の衛士が要撃級に殺られた。

 

『くそったれ!こちらサンダー4!後退すrぐあっ!?』

 

『きゃあああ!!』

 

 先ほど女性衛士を回収したサンダー4の機体が要撃級の前腕に殴られ、胴体がひしゃげた。

 

『サンダー4、7!?大丈夫か!?』

 

 しかし、女性衛士は運が良かった。

 

『う・・・うぅ・・・。こ、こちら・・・サンダー7。私は無事ですが・・・サンダー4の頭部に破片が・・・・。』

 

 だが、戦車級が倒れたサンダー4の機体に群がる。

 

『あ・・・あぁ・・・・また・・・・。』

 

 このままでは、彼女が死んでしまう上に、全滅してしまう。

 

 だけど・・・そんなことは俺がさせない!

 

「イレギュラー2、3!周囲の敵を殲滅するぞ!((H|ホーミング))ミサイルとHレーザーの使用を許可する!!」

 

『了解!』

『了解です!』

 

「いくぞ、キュベレイ!!」

 

[イエス、マスター。]

 

 俺はスロットルを引き絞り、サンダー4に群がっている戦車級をブレードで切り裂いていく。

 

「大丈夫か?」

 

『は、はい・・・・。あの・・・また助けて貰って・・・ありがとうございます。』

 

 もう殆ど諦めていたのか、かなり放心していた。

 

 近づいてくるBETAをショットで撃ち抜きながら、俺は思案した。

 

 どうする?このまま置いて行く訳にもいかない。なら・・・。

 

[後方に要撃級5体接近。] 

 

 俺は翼状ウィスプの右半分を一瞬停止し、その場で180度旋回する。

 

 続いて近くに来た2体を素早くブレードで切り裂き、残りの3体をショットで撃ち抜いた。

 

「サンダー1。彼女を早く回収しろ。回収が完了するまで俺が援護する。」

 

『だが貴様は!・・・っく!仕方ない、話は後だ!』

 

[3時の方向に要撃級8、戦車級17。]

 

「次から次へ湧きでて来やがって!」

 

[ターゲットロック。]

 

「くたばれ!」

 

 俺は目標をマルチロックし、Hレーザーを撃った。

 

 数十本のレーザーはまるで生きているかのように敵を追尾し、正確に射貫く。

 

 そして25体のBETAは全て沈黙した。

 

[3時及び6時の方向にBETA多数。]

 

「っち、キリが無ぇな・・・。」

 

 回収まであと少し。だけど、Hレーザーも全周囲をロックできない。それならば!

 

[Hミサイル24発、展開。]

 

 俺の後方にベクタートラップによって収納されていたHミサイル24発が現れる。

 

 ベクタートラップ―――、メタトロンの空間圧縮効果を利用した格納装置。 スピンとエネルギーを与えられたメタトロンによって圧縮された空間は、

 本来ならゴムのように急激に復元しようとするが、ベクタートラップではこの歪みに貨物を巻き込んだ状態で固定することで、容積を縮小している。

 格納した物質の質量は変わらず、大量の電力を必要とするため、コロニー内施設や大型貨物船などでしか使用されていないがジェフティは武器、弾薬の

 格納庫として搭載しており、アヌビスは機体ごと収納させるステルス能力としてベクタートラップを使用していた。

 つまり、フレイヤは格納庫、ニュクスは格納できる物がほんの少しとステルス機能として活用しているのだ。

 

「消え失せろ。」

 

 そして、 HミサイルがBETAに向かって行き、次々と蹂躙する。

 

 一発の威力が高いので、数体まとめて吹き飛ばしたりもした。

 

『こちらイレギュラー2。こっちは粗方片付いたわ。』

 

『こちらイレギュラー3。こちらも完了しました。』

 

 桜と疾風が報告する。

 

 疾風は戦闘でスイッチが入ると性格が一変する。無表情で敵を屠っていく様はちょっと怖かった。

 

 それで、100体以上のBETAを一瞬で始末した俺達にサンダー中隊は驚愕していた。

 

『ひゃ、100体以上のBETAが一瞬で!?』

 

『な、なんなんだよあのレーザーは!?まるで生きてるみたいだったぞ!?』

 

 ちなみに、生き残ったのはあの女性衛士と隊長機を含めて5人だ。

 

[エマージェンシー。]

 

 ん?なにかあったのか?

 

[現在、朝鮮半島に進軍しているBETAの半数近くが進路を変えてこちらに迫ってきています。一番近い敵の到着まであと10分。]

 

「なっ!?」

 

 忘れてた!BETAはより高度な機械を優先的に狙ってくるんだった!ネメシスは高性能を通り越して異常だからな・・・狙ってくるのも当然か。

 

 それに大群じゃなくて半数だし・・・。

 

 SWの使用制限がある中でそれはキツい。

 

『零、どうすんの?』

『指示を。』

 

 どうするもこうするも無い。

 

 俺達の目的は国連の被害を減らし、彩峰中将を助けることだ。

 

 それと、彼女に話さなきゃいけない事もある。

 

「イレギュラー隊は国連と帝国軍の撤退が完了するまで待機。それと・・・ブラウン大尉、いい加減香月博士に出てくるように言ってくれるか?」

 

『っ!』

 

 そんなに驚かなくてもいいだろうに。

 

「なに、簡単なことだ。博士ならそれぐらいやってもおかしくないと思っただけさ。」

 

『あら、バレちゃったかしら?』

 

 そして香月夕呼博士がモニターに出てきた。

 

 何故彼女が俺達の周波数を知っているかというと、俺がブラウン大尉に送ったからだ。

 

 もちろん、使い捨ての周波数だ。

 

「初めまして、だな。出来れば4人で話したいのだが?」

 

『ああ、安心してちょうだい。こっちも人払いをしてるわ。それより、顔を見せてはくれないのかしら?』

 

 香月博士と俺達3人だけなので、俺達は素顔をさらけ出した。

 

『っ!意外と若いわね。』

 

「まぁな。で、そちらの用件を聞こうか・・・。」

 

『じゃあ単刀直入に聞くわね。貴方達は何者で、何が目的なの?』

 

 何者で何が目的か、と聞いてきたか。となると、この世界の人間でない可能性は勘ぐられているかもしれない。

 

 彼女相手に論戦なんてしたくもない。よって、ここは正直に言うべきだろう。

 

「そうだな・・・因果律の彼方からやって来た者、とでも言えば分かるか?」

 

『因果律?』

 

「とぼけても無駄だ。貴女が因果律量子論を唱えていたのは知っている。」

 

『・・・・どこまで知っているの?』

 

 しかし、香月博士は大して驚いていないように見えた。

 

 いや、驚いているには驚いているのだが、反応が微妙に薄い気がした。

 

「大体のことは知っている。00ユニット、空の上で逃げる準備をしているオルタネイティブ5推進派。一番深いのはこの二つぐらいか。」

 

『なるほど・・・ね。』

 

 香月博士が何か考え込むような仕草をしている。

 

『ちょっといいかしら?』

 

 しかしそこへ、桜が割って入った。

 

『香月博士、一つ質問があるのだけれど・・・いいかしら?』

 

『ええ、どうぞ。』

 

 一体なにを聞くんだ?

 

『博士、白銀武って知ってるでしょ?』

『・・・っ!』

 

 それは質問というより確認に近かった。

 

『何で分かったのかという顔をしているわね。簡単よ?リアクションが低すぎるの。まるで、一度身近に体験したかのように低すぎたの。』

 

 なるほど・・・確かに低かったような・・・。

 

『・・・私も焼きが回ったかしら?』

 

『あら、本当に知ってたの?』

 

 っておい!カマ掛けだったのかよ!?

 

『・・・やられたわね。』

 

『カマ掛けて正解だったわ。うふふ。』

 

「まったく・・・。」

 

 あまり無茶をしないで欲しい。俺の胃に悪い。

 

『・・・はぁ。ええ、知ってるわよ。だけどそれが何だというの?』

 

 さて、白銀武を知っているなら話が早い。

 

 恐らく、彼は何らかの理由でこの時期にループしたのだろう。

 

「交渉して欲しい。」

 

『・・・へぇ。貴方達は何をやってくれるのかしら?』

 

「・・・白銀武及び彼の周囲の人物を救い出し、オルタネイティブ4の完遂すること。そして・・・我々の正体。」

 

『・・・で?そっちの要望は?』

 

 要望を聞き出すということは、交渉してくれる可能性があるということだ。

 

「我々を貴女の私兵に加えてもらう、ということ。」

 

『そう・・・そういう事ね。』

 

 さすがは香月博士。今ので目的を理解したか。

 

『つまり、後ろ盾が欲しい訳ね。』

 

「その通りだ。戦力としてはこの世界で最高の戦力が3つも付いてくるのだ。悪い取引じゃないと思うが・・・返答は如何に?」

 

 これで断られたら、その時はその時だ。邪魔な奴等を排除しつつ、白銀達を助けるだけだ。

 

『・・・いいわ。乗ってあげる。』

 

 よし!

 

「感謝する。それともう一つ質問があるのだがいいか?」

 

『何かしら?』

 

「香月博士はもしかして・・・・((記憶|・・))があるのか?」

 

『・・・まぁ、いずれは分かることだし、そう隠す事じゃないかもね。ええ、前の記憶はあるわ。』

 

 やっぱりあったのか!もしかしたらそうかもしれないと思ったが、本当にあったとは・・・。

 

 俺が思ったより、意外とスムーズに事が運べるかも知れない。

 

[敵との接触まで、残り7分。]

 

「では香月博士、時間が余りない。俺達が私兵になることに当たって、命令をいただきたい。」

 

 これで俺達の今からの行動は香月博士の名の下に行われる。

 

 後は彼女が何とかしてくれるだろう。

 

『いいわ。なら、国連軍と帝国軍の撤退準備が完了するまで時間を稼ぎなさい。あれだけ体言を吐いたからには、できるわよね?』

 

 香月博士が挑発するような笑みを浮かべた。

 

 さすがにこの大軍を補給も無しで三機で抑えるのは無理と分かっていて言っているのだろう。

 

「了解、命令を受諾。我々は三機で敵の進行を食い止め、帝国、国連両軍の撤退準備の時間を稼ぎます。」

 

『え・・・?』

 

 香月博士が一瞬呆けた顔をする。

 

「何か?」

 

『い、いえ・・・何でもないわ。』

 

 俺はちょっとしてやったり、と思った。香月博士の顔、思い出すだけでも笑えてくる。まさか極東の魔女と呼ばれた彼女があんな顔をするなんてな。

 

[敵との接触まであと3分。]

 

 ドドドドドッという地鳴りが聞こえたか思うと、先頭集団の突撃級が地平線を埋め尽くすようにこっちに迫ってきている。

 

「っと・・・ではこれより任務を開始する。」

 

『そう・・・ま、期待して待ってるわ。』

 

 そう言って通信を切った。

 

『ねぇ・・・零?本当に大丈夫なの?いくら曇りで衛星から姿を見られないと言っても、偵察に来た奴等を全機撃墜することは結構骨が折れるのだけど?』

 

「そのための疾風だ。」

 

『ふぇ?』

 

 いきなり話を振られて変な声を上げた。

 

 何気にスイッチがオフになってるし・・・。

 

 一応・・・人の話を聞いてたよな?

 

 疾風はどこか抜けた所があるからな・・・。

 

 おっと、もう目の前に来てるな。

 

「イレギュラー2は俺と敵を撃破する!イレギュラー3はステルス機能を使用し、帝国、国連に関わらず、観察しようとする機体を報告される前に全て撃墜しろ!生きて帰すな!」

 

『『了解!!』』

 

 そして俺達は蹂躙を始めた。

 

「キュベレイ、いくぞ!!」

 

[イエス、マスター。]

 

 先ず、戦闘の突撃級をショットで脚部を撃ち抜いて転倒させる。

 

 後続の突撃級は転倒した個体にぶつかり、次々と自滅していく。

 

 そして、俺は収束型レーザー砲のハルバードを展開する。

 

「くたばれ!」

 

 それを少し凹んだ隊列にぶちかます。

 

 防御に特化したマミーヘッドでも簡単に貫くこの威力。

 

 BETA如きではバターの様に溶けていく。

 

 だが、エネルギーの消費量が大きいのであまり多用はできない。

 

『いくわよ、フレイヤ!』 

 

[ええ、やってやりましょう!]

 

 穴の空いた先にいる要撃級の群れに桜はスロットルを全開で突っ込む。

 

 一瞬にして距離が詰まったところをブレードを展開した桜が敵を蹂躙する。

 

 まるでダンスを踊っているような綺麗な動きだな。

 

 だが、こっちも負けていられない。

 

 幸いにも((光線|レーザー))級はまだ辿り着いていない。

 

 なら、俺は少しだけ高度を取って奇襲を掛ける!

 

[Hレーザーを使用。マルチロック。]

 

 そしてロックしたのを確認して俺はHレーザーを撃つ。

 

 それぞれがロックした敵に向かって正確に射貫く。

 

 今の一撃で数十の要撃級が沈黙した。

 

「さあ・・・楽しい((戦い|パーティ))の始まりだ!」

 

 

 

 

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第一話 イレギュラー
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コメント
ありがとうございます!もう少しで更新します!(クライシス)
次回楽しみに待ってます!(しもっち)
でも、アレにどうやって手を加えるんです?そもそもメタトロンが無いと話にならないし・・・。超伝導ならグレイ9でカバーできなくも無いですが、空間圧縮の性質は無理ですねw(クライシス)
JAMいいですよねいと今日届いた新アルバム聴きつつカキコ(笑)OFの技術をどこまで活用できるかですやね夕呼先生の腕の見せ所は、武あたりもノリノリで意見だしそうだけどw(氷屋)
いやぁ、マブラヴは神作ですね!! 私も主題歌を聴いてからJAMファンになりましたw 流石に新型機は合作は無理でしょうね・・・技術的にw あ、でも夕呼さんなら普通にやりそう・・・。(クライシス)
Lさん、ですよねぇww 作りますよ?w(クライシス)
マブラヴは結構はまったですねい、オルタ(18禁)の主題歌聞いてからJAM projectのファンになっちゃってCDやライブのBD買いあさったりとか(笑)武の新型機は戦術機とOFの合作ですかな、さてこの先どう原作が変わっていくのか楽しみです(氷屋)
やっぱり最強格のOF三機いたら無双ですね〜武ちゃんの戦術機はオリジナルで作りますか?(ウルズ7)
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