IS 飛翔する白き翼 第5話
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第5話

 

倉持研究所玄関

 

玄関には親子と思われる2人が立っていた。一人は中肉中背で、メガネをかけたおじさんだった。そして、もう一人は、あまり背は低く、栗色の長い髪を無造作にしており、頭のてっぺんから出た1本のアホ毛が特徴の色白の高校生と思われる女子だった。

 

「早く来んかなあ〜」

 

「もうすぐだ。ほら、来たみたいだぞ」

 

言葉とともに門から黒塗りのセダンが入ってきて2人の前に止まった。そして、IS学園の制服の少年と黒いスーツの女が降りてきた。

 

「ようこそ倉持技研へ、織斑先生にヒイロ・ユイ君」

 

「お久しぶりです、倉持博士。で、こいつが…」

 

「ヒイロ・ユイだ」

 

「どうも、私がここの所長の倉持 丈太郎です。そして、隣が娘です」

 

「倉持 沙紀です。よろしくお願いします」

 

「まあ、立ち話はなんですから話は研究室にどうぞ・・・」

 

一通りの挨拶が済むと倉持博士はヒイロ達を研究室に案内した。

 

第2実験室

 

「これが、頼まれてたウイングガンダム専用オートクチュール「フルアーマーパック」です」

 

倉持博士はそのデータを液晶画面に表示してヒイロ達に見せた。

 

「装備に関しては私が説明するきね。このフルアーマーパックの特徴はウイングを競技戦用にする為の武装やき。総火力、機動性はノーマル時よりか劣ってるんよ。その代わりに防御力の強化並びにマルチロックオンシステムを使った広域殲滅に主眼を置いた装備になっちゅう。それに、ミサイルは多種多様な種類に換装可能。それに、この装備でも変形は可能やし、緊急時には強制解除もできるきね。どう、これでえいかな?前に解析されたデータを使ってるき、ちゃんと装備できると思うよ?」

 

「すごいな…」

 

千冬がデータをみて感嘆の声をあげた。

 

「しかし、確かここでは第三世代型試作ISを入れて2機も開発中だったのでは?」

 

「ええ、そうですよ。ですが、この依頼が来たときには『夜影』はほぼ完成していましたし、最後の1機の方はシステムだけ・・・・それに何より、あの『ガンダム』に携われると聞いて職員一同励みましたからなあ・・・まあ、実のところを申しますとガンダムの存在を知った時から設計はしてましたし・・・・」

 

「?」

 

「新型機の情報が入れば一度それ用の追加武装を設計したくなるんだよね」

 

話によると技術屋としての性分らしかった。

 

「でも、いうなればビーム兵器をやりたかったがやけどね…」

 

そういって、残念そうに沙紀はヒイロの顔をうかがう。

 

「それに関しては無理だ」

 

「はあ〜残念。あっ!そうだった!すまんけどウイングのMR(マルチロックオン)システムは使わせてくれんかな?」

 

「なぜだ?」

 

「いやあ、IS用のMRシステムってまだ実用段階じゃなくて、うちで今開発中の『打鉄弐式』にどうしても必要ながよ。それにそのパイロットが友達やき…かまんろうか?」

 

「………それぐらいならいいだろう」

 

ヒイロは少し考え大丈夫だろうと思い許可をした。ヒイロが知っている限り、この世界のマルチロックオンシステムは実験段階とはいえ開発はされている為に問題ないと判断したことと、友達のことを思っての事は本当なのだろうと沙紀のまっすぐな目を見て思った為であった。

 

「ありがとうヒイロ!これでやっと簪ちゃんのISも完成するよ!」

 

 

ヒイロは倉持博士に促され、ウイングを機器にセットしてパソコンの前に座ると、オートクチュールをガンダムに最適化、並びにインストールを始めた。もちろん、頼まれたシステムも少しいじってコピーしておいた。

 

 

1時間後…

 

実験用アリーナ

 

パックのインストールが終わったのでテストの為にアリーナに来ていた。

 

「では、ユイ君。ガンダムを展開してくれ」

 

「任務了解。フルアーマ−ウイング起動」

 

博士からの指令でヒイロはFA(フルアーマー)ウイングを展開した。いつものスマートな姿とは違い、中世の騎士の鎧を着たような姿があった。翼もミサイルコンテナ兼ブースターパックがあるため、別の様相を呈していた。

 

「ではこれから出てくるターゲットを撃破していってくれ。まずはガトリングだ」

 

「了解」

 

ヒイロが答えると前方に1つの的が現れる。それを、ヒイロは右手のガトリングで撃ち破壊した。

 

「よし、つぎはヒートロッドだ」

 

というなり今度は3つの的が現れた。ヒイロはまずガトリングを仕舞い、ヒートロッドを1つの的に突きさせると今度はそのまま横に薙ぎ払い、残った2つも破壊した。

 

(やはり遅いか…)

 

ウイングの機動性の低下に多少苦戦しつつもテストをこなした。

 

「こんどはマイクロミサイルです。25機の目標を同時に撃破してください」

 

「了解した」

 

そして、ヒイロを取り囲むように25個の的が現れた。

 

「目標を確認。これより殲滅する」

 

そう言って、瞬時に目標全てをロック、ミサイルを発射した。25機のミサイルは白い尾を引き、不規則な動きをしながら目標に命中した。

 

指令室

 

「すごいな・・・彼は・・・・幾らMRシステムが優秀とはいえ、あれほどの数をほぼ一瞬で認識・・・・それに、初めての装備でもあれほど使いこなせるとは・・・・」

 

ヒイロの動きをみていた博士はそうつぶやいた。

 

「ヤツの動きは並み大抵のものじゃない・・・・」

 

千冬の言葉に博士はうんとうなずく。

 

「完了だ。では、次の訓練の前に昼食にするから一度戻ってくれ」

 

「了解」

 

ヒイロは地上に降りてウイングを解除すると指令室に向かった。指令室に着くと沙紀がヒイロに感想を聞いた。

 

「どうやった?」

 

「問題ない・・・機動性が落ちたのには多少手間取ったがな」

 

「そうか〜問題無くてよかったよ。まあ、ご飯をたべようか」

 

「そうだな・・・」

 

そして、全員は昼食をとる為に食堂に向かった。

 

 

研究所内食堂

 

「あれ〜?ヒイろんだ〜きぐうだね〜」

 

「布仏 本音か。なぜここにいる?」

 

ヒイロが食堂に着くとクラスメイトである本音が水色の髪に眼鏡をかけた女子とご飯を食べていた。

 

「いや〜簪ちゃんのメイドだからね〜。ヒイろんこそなんで織斑先生とここにいるのかな〜」

 

「ヒイロのISのオートクチュールを受け取りにな・・・」

 

「ガンダムの・・・オートクチュール・・・・」

 

本音と一緒にいる女子がなぜか目をキラキラさせながらヒイロを見た。

 

「そうだ、ヒイロ。そこにいる更識 簪は暗部の家の出でな。しかも日本の代表候補生だ」

 

「…こんにちは…更識簪…です」

 

おどおどしたように簪が挨拶した。

 

「そして、本音の家である布仏家はその家に代々仕えているんだ。別にヒイロにいっても大丈夫だろ布仏?」

 

「大丈夫だよ〜」

 

千冬の説明で納得したヒイロはさっきからずっとこちらを見ている簪に

 

「俺になんか用か?更識 簪」

 

「えっ!?いや…なんでも…ない…です…」

 

ヒイロに突然声をかけられた簪はひどく狼狽していた。実は少しオタク的面があり、ガンダムの姿は簪にとってとても心に打たれるものがあった。

 

そんな時に沙紀が

 

「ああ、そうやった!!簪ちゃん!打鉄・弐式が完成できるようになったきね!!」

 

「本当ですか!!」

 

さっきまでの物静かなイメージとは思えない大音量の返事が食堂に響く。

 

「ちょっと声大きいで」

 

「ごめん…うれしかったから…」

 

「良かったね〜簪ちゃん」

 

「それで、提案ながやけどね・・・完成する時期が遅くなる代わりに予定よりパワーアップさせてみん?」

 

「え・・・・・・」

 

「しかも、これをすれば今よりはるかに高性能になれるし、尚且つ第3世代型にも移行できるようになるんよ!!」

 

沙紀の突然の提案に簪は驚いた。何せ、今開発中の第二世代型『打鉄弐式』は世界初のMRシステムを実装したISであり、その他の面でもかなり優秀な機体だったからだ。まして、日本での第3世代型ISは先ほど開発された夜影とあと1機だけだからだ。(白式は雪片弐型によって第4世代型なので入らない)

 

「沙紀、それはどういうことだ?」

 

「近頃、たくさんのデータを手に入れることができたので可能になったんですよ!まあ、詳細はまだ言えませんけどね」

 

そういう沙紀の目線はちらちらヒイロのほうへ向いていた。

 

「で、どうする?やってみん?」

 

沙紀の言葉に簪は少し考えていた。

 

「やったほうがいいんじゃないかな〜ね、ヒイろんもそう思うでしょう?」

 

「・・・・性能が高い方が良いに越したことはないからな」

 

 

「うん・・・・わかった。沙紀ちゃんお願い・・・・」

 

 

沙紀はその言葉を待ってましたとばかりに立ち上がった。

 

「まかせちょって!!」

 

そういうなり、沙紀は走ってどこかへ行ってしまった。

 

「また始まってしまいましたか・・・ああなれば食事と風呂以外開発室から出てきません・・・」

 

博士はため息をつきながら言った。

「おや、もうこんな時間ですか・・・では織斑先生、ユイ君次の訓練に移りますか?」

 

「そうですね。では、ヒイロ行くぞ。布仏、更識もそれではな」

 

「じゃあね〜ヒイろん」

 

「ああ、それじゃあな・・・」

 

そう言って席を立ったヒイロに簪が声をだした。

 

「あっ、待ってください!」

 

「?」

 

「わたしの・・・・私のISが完成したら戦ってください!!」

 

 

「・・・・いいだろう」

 

ヒイロには理由はわからなかったが、簪の真っ直ぐな目と言葉を受けてそう約束した。

 

 

実験用アリーナ

 

アリーナの中央でヒイロはFAウイングを纏って対戦者を待っていた。博士の提案で、完成されたばかりの第3世代型IS『夜影』の実戦訓練をついでに一緒にやってしまおうという事になったのだ。

 

「日本初の第3世代型IS夜影・・・高機動型の機体であり、特殊兵装であるジャミング装置『闇夜』は5分間いかなるセンサー、レーダーにも反応しない奇襲戦による一撃離脱をコンセプトにした機体か・・・」

 

ヒイロは博士から提示された夜影のデータをみていた。

 

(デスサイズと似たような機体か・・・・だが、あちらの方が厄介だがな…)

 

同じガンダムパイロットであるおさげが特徴的なやつの顔を思い浮かべながら、相手ピットの方を見た。ヒイロの機体に装備されているミサイルは、データ収集も目的としている為に、通常弾のほかに榴散弾や照明弾、小麦粉が入った弾まである。

すると、ピットから漆黒のISが飛んできた。パイロットはこの研究所のテストパイロットの一人だろう。

2人が所定の位置に着くと千冬によるアナウンスが流れた。

 

「これより、FAウイングガンダム ヒイロ・ユイ対夜影 黛 香織による模擬戦を開始する・・・・では、・・・・・・・開始!!」

 

開始と同時に夜影はクナイを投げつけてきた。ヒイロはそれをヒートロッドで払い落とし、バード状態になって夜影を追った。そして、ある程度近くになるとMS状態になってサーベルを抜き、夜影と切り結んだ。ビームサーベルと刀が何度もかち合い火花を散らす。

 

「なかなかやるな・・・・・」

 

ヒイロは一度距離を取るとマイクロミサイルを放った。白い尾を引きながらミサイルは不規則に夜影にせまる。

 

「くっ、しかたない・・・・『闇夜』!!」

 

黛が闇夜を起動した途端に夜影に向かっていたミサイルがあらぬ方向へ飛んで行った。闇夜が発動すると、ウイングの武装だとミサイル、背部2連装レーザー砲は意味をなさない。

 

「闇夜か・・・・」

 

ヒイロはそう判断すると、武器をミサイルからガトリングに変え、システム補助なしで夜影に向けてはなった。回転する銃身から放たれる弾丸が夜影のエネルギーを着実に削っていく。

 

「こんなに高速で移動する目標にシステムの補助無しで当ててくるなんてね・・・・噂では聞いていたけど、これは千冬さん並みかそれ以上!!」

 

ヒイロが優勢に戦っていたが、どちらも決定打を欠いていた。そこへ、クナイがガトリングに突き刺さる。

 

「ちっ!」

 

ガトリングを投げ捨てると、腰からサーベルを抜き取った。

 

「ガトリングがなければ!!」

 

夜影は刀を2本両手に持ってウイングに迫った。そして、何回もウイングのサーベルと夜影の2刀が切り結ばされ、何度も火花が散る。黛は両刀を頭上から振り下ろすとヒイロはサーベルとシールドで受け止めた。黛は腕部のスラスターを吹かして、ウイングを押し切ろうとする。だが、ヒイロはこの時を待っていた。ヒイロはマシンキャノンを展開すると、超至近距離で放つ。ほぼゼロ距離の為、全弾直撃して夜影のエネルギーが見る間になくなっていった。

 

「これで終わりだ・・・・」

 

その言葉と同時にヒイロは夜影を蹴り飛ばした。壁にぶつかると夜影のエネルギーはゼロになった。

 

「任務完了・・・」

 

そこに、アナウンスがかかる。

 

「終了だ!二人ともご苦労だったな。では、戻ってくれ」

 

「了解」

 

「・・・・わかりました」

 

 

指令室

 

部屋にはスタッフを除き、博士と千冬、香織がいた。ヒイロは別室にて休憩してもらっている。

 

「お久しぶりですね、千冬さん」

 

「そうだな、1年ぶりか・・・どう思う現IS日本代表から見て?」

 

黛は現在ISの日本代表なのだ。今日はたまたま専用機である夜影を受け取りに来て、調整がてらにこの模擬戦を受けたのだ。

 

「桁違いですね・・・あんなに強いのは千冬さん以外に初めて会いましたよ。それに、IS自体の性能もすごかたです」

 

そう悔しそうに黛は答えた。日本代表のプライドとしては勝ちたかったのだろう。

 

「まあ、そうだろうな・・・」

 

「しかし、2人ともあれほど機体を乗りこなしてもらえるとやったかいがあったと思える」

 

博士はとても満足なようだった。

 

 

玄関

 

黛は修復された夜影を受け取るとすぐに帰ってしまった。沙紀も簪のISの開発のために出てこず、博士とスタッフたちがお送りすることになった。

 

「今日は本当にありがとうございました。倉持博士・・・」

 

「いえいえ、スタッフ一同いい機会を得られました。こちらこそありがとうございます。また、何かありましたら連絡をしてください」

 

そう言って、全員が頭を下げる。そして、ヒイロと千冬を乗せた車は発進した。

 

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いかがだったでしょうか?FAウイングと夜影は結構前から温めてきたものです。今回の戦闘では夜影の強さをうまく表現することはできませんでしたが、実際はかなり優秀な機体です。

 

これからも続々、オリキャラ、オリISを出していきます。簪と沙紀のISはお楽しみに!!(といっても、沙紀の機体は今度の小説設定で出ますけどね…)

 

次回は本編か小説設定2を検討中・・・設定の方が有力ですがね。

説明
今回はウイングのオリ武装、オリキャラ、オリISが出ますのでお楽しみに!!
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コメント
自分もクライシスさんと同意見です!次回も期待して待っています!頑張ってください!(蒼崎夜深)
中々楽しめました!次回も期待です!(クライシス)
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