チートでチートな三国志・そして恋姫†無双
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第22話 ”苦肉の計”

 

 

 

 

 

 

「そうですね。さて、”徐州”……といっても小沛の制圧ですが、此方の兵は8000人ほど出せるでしょう。敵の全兵数は7000人前後ですから、兵力差だけを考えても余裕があります。

 

それで、部隊を分けるときには桃香様の部隊と星さんの部隊に分け、それ以上分けることはするな……というのがご主人様からの指令なので、星さんが大将として出るべきでしょう。他には鈴々さんと桔梗さん。文官からは私、沮授と……」

 

「私が出ます!!」

 

?統が決然とした面持ちでそう言った。

 

「糜竺、糜芳姉妹と陳珪、陳登父子との繋がりということを考えてもそれしかないでょうね……。ところで、手は大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫です。前々回は椿さん、前回は玉鬘さんにやってもらいましたし、今の朱里ちゃんには任せられないですから頑張ります!」

 

「はうう……。その言い方は酷いですよぅ……。」

 

 

そう、今回の会議中、?統は一言一句違わず皆の発言を書き続けているのである。なお、前回の会議は沮授が、前々回の会議では田豊がその役割を担っていたのだ。

 

 

この”会議の発言録を作る”というのは、生徒会の仕事を手伝った(藤田に無理矢理手伝わされた)ときの経験によるものである。当初はわざわざそんなことをする理由がよく分からなかったのだが、早坂から”意思決定の過程”を残しておくというのはとても重要なことである……と聞いて理解したのだった、?統や沮授らが書いている今の状況を自分で直接知ることはできない。つまり、これをやっておかなければ”意思決定の過程”がよく分からずに”結果”だけを知ることになってしまう。そのため、この仕事をするように言ったのだった。後に北郷はこれを見るときに”ある事実”を再確認して愕然とするのだが、それはまた別の話である。

 

 

「馬を5000まで増やすことができたのは大きいですね。白露様、様様です。今回は2000くらい出せますかね。」

 

諸葛亮がそう言うと、皆は一様に頷いた。大麻からとれる油や繊維との交換で大量の馬を手に入れることができたのだ。

 

 

「さて、どう攻めるのが良いですかな?」

 

「突撃・粉砕・勝利なのだ!!」

 

趙雲の言葉に張飛がそう答えると、諸葛亮、?統、田豊、沮授以外は揃って溜め息をついた。

 

「その通りです。まあ、色々と策は練ってありますがね。」

 

「ちょ、ちょっと椿ちゃん!? そんな無茶苦茶な戦法じゃだめでしょ!?」

 

いえ、それが一番手っ取り早いです。糜竺、糜芳姉妹と内通していた結果と間者の集めた情報を総合するとそうなるんです。ただ、桔梗さんには辛い役を引き受けて貰わなくてはなりませんけど……。」

 

そう田豊が言うと、文官3人以外の頭に疑問が浮かんだ。”策”があるにせよ、”辛い役”をさせるほどのことがあるとは思えなかったからである。

 

「なんじゃ? 儂にどんな役をさせようというんじゃ?」

 

「一度、敵の捕虜になって頂きます。”苦肉の計”とでも言うべきでしょうか。

 

敵の将で厄介なのは2人。黄忠と魏延です。黄忠は弓の名手として名高く、魏延は接近戦で無類の力を発揮する猛将です。ただ正面突破で行っても勝てるでしょうが、この2人を殺すのは勿体ないんです。幸いにして太守の韓玄や州牧の陶商らとの”関係”は深いものではないので、その”関係”を上手く断ってやればそこまでの被害もなく勝利できると思われるのです。」

 

と言った田豊の言葉を諸葛亮が引き継ぎ、

 

「黄忠は未亡人で娘が居るのだそうです。その娘が”人質”という形で太守の韓玄に囚われているため、黄忠は韓玄の命令に従わなくてはなりませんし、黄忠に付き従ってきた魏延も必然的にその味方をしなければならない……ということです。ただ、”関係”はそれだけなので、娘をこちらで解放してあげれば何の問題もなく私たちの味方になってくれる……筈です。」

 

 

と締めくくった。

 

 

「作戦としては、以下のようになります。

 

 

魏延が親衛隊を率いて陣取っている拠点に鈴々さんが突撃し、敵兵全員をもれなく捕虜にした後、魏延に黄忠を、小沛の民を救う気概があるかを訊ねます。

 

無ければ、残念ですが死んで頂いて攻城兵器である井闌と投石車を用いて正面突破……です。この場合は娘のことに構わず黄忠も死んで頂くことになると思います。

 

救う気概があるのならば、桔梗さんを捕虜として小沛まで戻って貰います。あとは星さんと鈴々さんが城の正面にどっしりと構えていればいいだけです。あの旗にある”動かざること、山の如し”です。そうして黄忠が出陣するのを待ちます。

 

ちなみに、魏延には

 

”敵将

 

――つまり桔梗さんです――

 

との戦いで傷ついたため、数日は戦に出られない”ということにしてもらいます。

 

”弓の名手”といえど、鈴々さんなら充分に一騎打ちも可能でしょう。全軍かそれに近い数が出るまでは”動かざること、山の如し”です。そして、時を見計らって糜竺さんが桔梗さんを解放し、魏延と2人で黄忠の娘を助け出し、韓玄を殺します。あとは小沛の城門から堂々と韓玄の首を掲げて出てくれば良いです。

 

もしも城に籠もる作戦をとられたならば、攻城兵器を用いて野戦に持ち込みます。いずれにせよ、私と藍里さんの言葉を信じて臨機応変に対応して頂く必要はあるかと思います。」

 

 

と沮授が説明すると、太史慈と廬植は同じことを思った。”敵でなくて良かった……”と。

 

 

「もし魏延が寝返らずに儂を殺して”戦果”としたらどうするんじゃ? まだ死にたくはないからのう……。」

 

と厳顔が聞いた。かなり危険な策だけに厳顔の心配も大きかったのだ。

 

「こちらの間者は相当の数で小沛に潜入しています。魏延の行動も逐一監視できる体制を整えています。それに、魏延の”親衛隊”にも既に数名が入っていますし、”逃がす”ときにはこちらから選りすぐりの兵を”監視役”として入れます。我々は親衛隊の武装も熟知していますから、問題ありません。ほんの少しの時間さえあれば解放できるような体制ができている……ということです。

 

仮に、向こうが”見せしめの処刑”を行おうとするなら、間者軍団との内乱が勃発しますから心配はあまりありません。」

 

という田豊の説明で、

 

「”あまり”……。まあ、危険な道を進むのもたまには良かろうな。儂にそういう役が廻ってくるのは初めてじゃしな。」

 

と、”それなりに”納得した口調で言った。そう、厳顔はここにいる将のなかで張飛に次ぐ古参の将なのだ。が、これまでは単なる一将軍としての役割以上のものは与えられてこなかったのである。

 

実はこの”苦肉の策”を考えたのは田豊である。公孫?の配下にいたころから?を落とすまでの道のりは簡単な説明を受けていたので、概略は知っていたのである。

 

公孫?のところに居たときや?を落とすときには関羽、張飛、趙雲の陰に隠れていたし、北海周辺の賊討伐で目立つ戦功をあげたのは趙雲と張?であった。そのため、多少危険であっても引き受けるだろうと踏んでいたのだ。

説明
第2章 劉備たちの動向 安住の地を求めて 〜神の視点から〜

先に謝っておきます。これから、桔梗さん(厳顔)が好きな方には辛い内容が続きます....。すみません。
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