甘えんぼ命
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 本日残った仕事の残りを、家に帰ってごはんの後に部屋の中のパソコンで

打ち込んでいた。うちの会社のパソコンはノートだったので上司の瞳魅に

頼んで貸してもらうことができたのだった。

 

 まぁ、彼女はうちに住み着いていることもあって、何かあっても勝手が良いと

思ったからだろうけど。

 

 軽快にキーを叩く音を鳴らしていると、それとは別のコンコンという音が

部屋の入口の方向から聞こえてきた。それはノック音であることがわかった。

 

 振り返ってみると、いつもの吊り上った目尻がちょっと下がっている。

私の彼女。命ちゃんだ。

 

「あの・・・いいですか?」

「うーん、今仕事中だったけど・・・」

 

 私が最後まで言葉を言い終わらせる前に「仕事」という単語を聞いた

途端。彼女は両手と首両方を同時に左右に振ってすごい慌てた様子で

謝っていた。

 

「だったらいいんです! 邪魔してごめんなさい」

「ちょっと、待って」

 

 振り返り去ろうとする命ちゃんに私は立ち上がって急いで彼女の腕を

つかんだ。彼女は普段は用がないときはあまり私の部屋を訪れることはしない。

 

「気になるじゃん」

「大したことじゃないので・・・」

 

「それでもいいの!」

 

 本当に何でもかんでも遠慮がちに行動するから、私は今の仕事を後回しに

してもいいくらい、命ちゃんにかまいたいのだ。

 

 まぁ、言うほど急いでるものでもないし、もうすぐ終わるから息抜きに

ちょうどいいと思うのだ。

 

 私の強い語気に命ちゃんは観念したのか、一息つくと背を向けてた体を

戻して私と目を合わせていた。きつそうな表情なのにどこか守ってあげたくなる

かわいい表情をしている。今はちょっともじもじ顔だけど。

 

「ふふ、よろしい」

「失礼します」

 

 命ちゃんがそう言った刹那、シャンプーの仄かな香りが私の鼻に入っていく。

命ちゃんは腰を屈めて私に抱き着いてきたのだ。

 

 スレンダーで引き締まった細い命ちゃんの腕が私の首に巻かれる。

セーターを着ているから、まるでマフラーのような心地である。

 

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 そして、私の体は引き寄せられてギュっと思い切り抱きしめられた。

 

「はぁ、萌黄ふかふかで気持ちいい」

「私も気持ちいいけど、なにかあった?」

 

「んー、特には」

「でも、何か寂しげに見えたけど」

 

「そう、ですね。でもたまにはそういう気分にもなりますよ」

「まぁね」

 

 人の心はふと気持ちが乱れることもある。そういう時は何かで発散しなきゃだけど。

命ちゃんにとってのこの行為がそれに当たるのだとしたら、とてもうれしいことだ。

 

「まるでぬいぐるみみたい」

「ちょっと・・・」

 

 不満げな私の声に反応して私の体に顔をうずめていた姿勢を戻して

私の顔を覗いてくる彼女。

 

「どうしました?」

「それじゃ、私はぬいぐるみの代わりみたいじゃない〜」

 

 ちょっとだけムラッときていた気持ちはどこへやら。

今度は私の方が寂しい気持ちにさせられた。

 

「違いますよ。逆です。ぬいぐるみは萌黄の代わりみたいなものです」

「代わりになるの!?」

 

 それはそれで寂しくなるじゃないか、と思った時。

どきっとするような笑みを浮かべて訂正してきた。

 

「それはやっぱり全然ですけど、見てると萌黄のことばかり思い出して

それが自分のがんばりに繋がってるんです。

それに寂しいって理由だけで萌黄のとこにいけないですし」

 

 まぁ、それが理由で仕事場に来るわけにはいかないね。

だからその寂しさをごまかすためのぬいぐるみだというわけか。

 

「私は一番萌黄が好きです。安心してください」

 

 恥ずかし気もなくそう言い切る彼女の姿は輝いて見えて直視できなかった。

 

「うん、わかった」

 

 うなづくと私は一度命ちゃんから体を離してから、手をとってベッドへと

導いてあげた。

 

「仕事いいんですか?」

「本当のところ、ちょっと命ちゃんにいじわるしたかっただけなの。

今やってるやつなんて後少しってとこだったよ」

 

「まぁ、萌黄ったら」

 

 うれしそうに微笑む彼女を見て、私は胸の内が温かくなった。

改めて命ちゃんが私の彼女になってくれてよかったと思えた。

 

 柔らかいベッドに重みがかかり、ゆっくりと沈んでいく感覚と

同時に唇に温かく湿った感触を覚えた。

 

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 珍しく命ちゃんの方から私へとキスを仕掛けてきたのだ。

命ちゃんの匂いと夜食べたごはんの微かな味に私の溜まってきた

ものが吹き出しそうになってきた。

 

「命ちゃんかわいい」

「あら、それは私のセリフですよ」

 

 命ちゃんもやや赤らめた表情と目尻が下がってきたところを見ると

体の方がどうやらテンションあがってしまったらしい。

 

 そんなことをいう私もすっかり体が火照ってしまい、やや汗ばんですらいる。

 

「大好きです・・・萌黄」

 

 一度離した唇を、求めるように再び触れてくる。私ももっといっぱいしたかった。

その気持ちがキスをした中、舌で愛しい相手を探していると。

 

 触れ合う二人の舌が愛しいようにこすり付けあった。ぬめぬめして

温かくて、とろけそうになる。

 

「ぷはぁっ・・・」

「ふぅ・・・」

 

 二人とも息が続かなくなって鼻からするには少々興奮しすぎていた。

 

「はぁ・・・」

 

 色っぽく目を細めて汗ばんでいる命ちゃんがセクシーすぎて私は彼女の

首筋を軽く噛むと、やらしい声を発した。

 

「あっ、何をするんですか・・・」

「ぐへへ、お嬢さんの色気がたまんなくてねぇ」

 

「どこのおじさんですか、まったくもう」

「えへへ」

 

 ちょっとふざけると、命ちゃんはツッコミを入れてきて楽しそうに笑った。

 

「今日しようか」

「えぇ・・・」

 

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 命ちゃんがうれしそうにつぶやきかけた時、外から声がかかってきた。

 

「命ー、いるー?」

「あ、マナカちゃん」

「ちっ・・・」

 

 いいところでなんという邪魔が入ってしまったのか。これじゃ中途半端に

気持ちがたぎっただけで、仕事をするのがだるくなりそうだ。

 

「萌黄ごめんなさい、今日はここまでで」

「うん、いってらっしゃい〜」

 

 命ちゃんの心配にならないように表情は明るく振舞って送り出そうと

立ち上がろうとした際に不意にもう一度、濃厚なキスをされた。

 

「行ってきます」

 

 そういって、不意打ちにぼーっとしている私を置いて彼女はサッと

扉を開けて出ていった。

 

「がんばるか」

 

 口には彼女の感触が、部屋には彼女の香りが残っていた。

最後まで私のことを想ってくれたことが何よりうれしくて、さっきまで

沈みかけていた気持ちが戻り、やる気が漲ってきた。

 

 このことを瞳魅に話したらムッとした顔をされて、惚気とさえ言われて

しまった。これは惚気というのだろうか。

 

 当の本人たちには気づかないことが多いことを知った。

平和で気持ちがほのぼのになれる、そんな私たちの日常である。

 

お終い

説明
命と萌黄のイチャイチャ日和なSSです。書けば書くほどただのバカップルですねwでも可愛いから書いちゃいます。癒されますし。この雰囲気が少しでも読んでる人に伝われたら幸せですけどね。
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オリジナル 命一家 百合 イチャイチャ キス GL 

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