SAO〜黒を冠する戦士たち〜 第百六十六技 傷を背負う者
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第百六十六技 傷を背負う者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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カノンSide

 

見られた? 何を? 人を殺すところを? 誰に? 好きな人、大切な人に?

 

「カノン、おめぇ…」

 

「ぁ、や…ち、ちが……」

 

違う? 何が? 違わない……あたしは、人殺しなんだ…。

 

「カノン、クライン! 無事か!?」

 

「あ…こ、公輝……」

 

そこにシャインが到着したけれど、あたしはパニックのあまり彼の本名を呼んでしまった。

 

それに対してギョッとした様子を浮かべたもののすぐにあたしの様子に気付いたのか、真剣な表情に戻った。

 

「……クライン、何があった…?」

 

「いや、俺達は問題ねぇよ。俺がここに来た時はカノン一人でな。敵さんには逃げられたみてぇだぜ」

 

クラインさんはシャインに気付かれないようにと、そう言葉にしてくれたみたい。

 

だけどシャインは気付いている。だからなのかもしれない…。

 

「そっか。なら先に戻って報告してくるからよ、二人はゆっくり来な。待ってるから…」

 

あたしのことを気遣ってか、いつもの笑顔を浮かべて答えると討伐戦の場所に戻っていった。

 

カノンSide Out

 

 

 

シャインSide

 

「シャイン! カノンとクラインさんは!?」

 

戻る途中でこちらに向かっていたのだろう、ティアと合流した。

 

「二人とも無事だ。けど……」

 

「……何が、あったんですか…?」

 

俺は見たままの、予想できることを考えて答えた。

 

「多分だが、クラインの奴…カノンがデモントを殺したところを見たのかもしれない」

 

「っ!?……そ、そんな…」

 

俺の回答に愕然とした様子のティア。

 

当たり前だろうな…親友が人を殺したところを、その親友が好きな人が目撃しちまったのなら。

 

「俺達に出来ることは何もねぇ……全部クライン次第だ…。あいつの気持ちと、カノンの想いを……信じるしかない…」

 

「そう、ですね。信じましょう、二人を……」

 

クライン……カノンを、奏を頼むぜ…。俺はそう心の中で託した。

 

 

 

「それで、デモントの事はどう話すんですか?」

 

ティア、お前は今このタイミングでそれを聞いてくるか…まぁいいや。

 

「『逃げるデモントに俺達が追いついた時、黒いローブを着込み、仮面を着けた奴が現れてデモントを殺した。

  俺はそいつを『嘆きの狩人』と判断して、手を出さずに撤退を決めた』…と、答える」

 

「それが一番ですね…」

 

そういうわけで俺とティアは皆が集まっている場所に向かった。

 

シャインSide Out

 

 

 

カノンSide

 

あたしとクラインさんは、先程まで戦場であった場所に向かっているけれど、

その足取りは重く、一歩一歩が滅多に進まない。

 

「………」

 

彼は何も聞いてこない。それは優しさなのだろうけど、今はそれが辛いかな…。

 

「聞かないん、ですか…?」

 

「聞いてほしいのか?」

 

あたしが聞き、そう言われるとなんて答えればいいのか分かりませんね。でも…そうですね。

 

「今から話すのは、独り言ですから…」

 

「おぅ……」

 

短い返事だけを返して、聞き入ることにしてくれたようです。

 

「あたしの兄、従兄妹のお兄さんなんですけど……デモント、いえ、鬼船に殺されたんです…」

 

「っ!」

 

彼が息を呑んだのが分かった。それでも…立ち止まって話を続ける。

 

「兄の名前は((霞音|かのん))、年はあたしより五つ上でした。

 八年前、当時十歳だったあたしと中学三年生だった霞音兄さんは、よく自宅の近くの公園に遊びに行ってました。

 受験が近くても、退屈していたあたしに構ってくれて。近所に住んでいたから余計に…」

 

本当に楽しかった。恋とは違うけど、兄さんのことは大好きだった。

 

それも、あの日が訪れるまでは……。

 

「それが、八年前の十二月一日。

 あたしが学校から帰って、兄さんも学校から帰ってきて、いつものように二人で一緒に公園に遊びに行きました…。

 陽が暮れてきたから、家に帰ろうとしたその時に……鬼船が現れたの…」

 

霞音兄さんと手を繋いで公園から出ようとした時だったっけ。

 

「顔を隠してなかったから、あたしも霞音兄さんもまったく警戒していなかった。

 だけど、あいつは通り過ぎた瞬間にあたしの背中を、隠し持っていた包丁で何度も切りつけてきた…。

 兄さんはすぐにあいつから包丁を奪おうとしたんだけど、取っ組み合いになった時に、

 鬼船は隠していたもう一つの包丁で、兄さんの胸を一突きした……それでも、

 兄さんは奴から離れないで、何度も切りつけられて、

 あたしは体を動かすことも出来ないくらいに出血して、

 最後には……兄さんはあたしに覆いかぶさるように…力尽きた……」

 

「………」

 

横目に見るクラインさんは手が真っ赤になるまで握り締めている。

 

リアルなら血が流れているはず。そして、凄く悔しそうな表情をしている。

 

「あたしはそのまま意識を失って、気が付いたら病院のベッドの上でした。

 ティアも、家族も、みんなが目を覚ましたことを喜んでくれた……。

 でも、あたしの背中には一生消えない傷痕が残り、心の中には鬼船への復讐心が沸き起こりました…。

 そして、その事件から八年……ようやく、あたしの復讐は成功した…そういうわけです…」

 

あたしは自分の過去の全てを話した…さすがに、狩人のことは話せないけど…。

 

でも、なんだかスッキリしたかな。

 

「さて、皆のところに行きましょう。待っていると思いますから…」

 

「……あぁ…」

 

クラインさんは何かを考えている様子だったけど、取り敢えず戻ることにした。

 

カノンSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

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後書きです。

 

今回は、カノンの過去話ということになりました。

 

回想にすると長くなりそうでしたので、話しによる状況整理ということで。

 

それでは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
第百六十六話になります。
クラインに現場を見られたカノンは、どうするのか?

どうぞ・・・。
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コメント
雨音 奏様へ GOしてもらいます(本郷 刃)
今だクライン!レッツゴー!(雨音 奏)
アサシン様へ では、幸を与えましょうか・・・(本郷 刃)
かの子等に幸あれ(アサシン)
遼東半島様へ そう言っていただけると、ホッとします・・・是非、お楽しみに♪(本郷 刃)
本郷さんへ 気張らなくてもだいじょうぶですからw続き楽しみにしてます!(遼東半島)
kaito様へ みなさんからのプレッシャーが・・・!(本郷 刃)
サイトさん地獄なので銃剣は意味ないと思いますがw でもクラインの漢を魅せる場面は楽しみですw(kaito)
サイト様へ よし鬼船、地獄詰所に行って来いwww(本郷 刃)
クラインよ!今こそ漢を魅せるとき!・・・えー鬼船さん、鬼船さん至急地獄の詰め所までお越しください!銃剣両手に待ってまーすwww(サイト)
魅沙祈様へ 魅せましょうか!(本郷 刃)
さぁ…クライン!!漢を見せろ!!!!(魅沙祈)
不知火 観珪様へ 背中と心の傷も、クラインならばやってくれますね!(本郷 刃)
まぁ、クラインだし問題はないでしょう。 そんなに背中の傷もココロのキズもクラインなら癒してくれるでしょうし、時間はかかるかもしれないですけど、本当の意味で笑えるようになって欲しいですねー(神余 雛)
Kyogo2012様へ クラインの答えこそ、漢の見せ所ですね。(本郷 刃)
クラインがどう答えるかがミソとなりそうだな。どちらにしてもうまくいくことにはまちがいないかと思いますが・・・・。クラインよ、漢の見せ所は今だ。見せてやれよ。(Kyogo2012)
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